J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING INSIGHT」。アメリカの独立記念日である7月4日(水)のオンエアでは、アメリカ文学、ポピュラー音楽が専門の慶應義塾大学教授・大和田俊之さんに、ラップ・ヒップホップ文化とアメリカの現在についてお訊きしました。
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■ヒップホップがロックを抜いた
まずはヒップホップの成り立ちについて訊きました。
大和田:1970年代のニューヨーク・ブロンクスからはじまった運動です。ヒップホップは音楽と捉えられていますが、もともと、DJ、ブレイクダンス、ラップ、グラフィティの4つの文化全体をヒップホップ・カルチャーと呼んでいました。
別所:現代のヒップホップのブームを分析すると、どんな社会背景が読みとけますか?
大和田:去年話題になったのは、アメリカの音楽業界全体でヒップホップとR&Bが占める割合が24%と、はじめてロックの20%を抜いて最も大きなシェアを占めるようになったんです。
別所:これはどうしてなんでしょう?
大和田:一般的にはストリーミングが流通することによって、ヒップホップはループ構造の曲が多いので、ストリーミングのずっと曲がかかっているかたちと相性がいいといわれています。結果的にループを用いた楽曲が、ヒップホップだけでなくてポップスの領域にもどんどん浸透していて、ヒップホップのプロデューサーがポップスの曲を作るようになったり、アメリカのポピュラー音楽全体に、ヒップホップ的な楽曲が広まっているんです。
■ラッパーがロールモデルになるケースも
別所:音楽でスターダムにのし上がったラッパーたちは、出身地への貢献も深いといいますが……。
大和田:「レペゼン」という言葉があるように、地元を代表してヒップホップのシーンに打って出るというイメージなので、今年「FUJI ROCK FESTIVAL '18」に出演するケンドリック・ラマーや、「SUMMER SONIC」に出るチャンス・ザ・ラッパーなど、成功すると地元の学校などに多額の寄付をしてコミュニティーに還元している感じですね。
別所:ロールモデルになる例も出てきているということですか?
大和田:割と悪いことをしていた人もいると思うんですけど(笑)、成功すると成功したなりの行動が求められるので。ジェイ・Zもドラッグを売っていた時期もあるようですが、今はいかにアフリカ系アメリカ人の若者のロールモデルになるかということで色々活動していますね。ドラッグなど体験をしているから説得力もあるんです。
■ヒップホップが変容してきた!?
大和田:ヒップホップ界で最近、メンタルヘルス問題が話題になっていまして、うつ病や精神的な問題が曲として歌われるようになっているんです。先日、ファッションデザイナーのケイト・スペードさんや、人気シェフのアンソニー・ボーデインさんの自殺がアメリカで話題になりましたが、アメリカ社会全体が、ポジティブに強さが求められる社会だと思われていたのが、強さ・ワルさを全面に出していたヒップホップという音楽ジャンルでも、弱さや脆さを表現する楽曲が出てきて、興味深いことだと思います。
別所:ヒップホップが変容しはじめたということですか?
大和田:精神的な病とは別に、2000年代後半くらいから、ヒップホップにもインディーロックのような内省的な曲が出てきたんですね。カニエ・ウェストとかキッド・カディが先駆ですけど。攻撃的一辺倒ではないヒップホップが出てきたといわれていて。それが昨今のミレニアル世代の繊細さとか弱さとか、逆にいうと日本人にとっては共感しやすくなっているんじゃないかと思います。
■ヒップホップ界からノーベル文学賞受賞者も?
別所:改めてこのヒップホップ、音楽以外でどんな価値がみえてきていますか?
大和田:ラップミュージックとして言葉が重要なんですけど、ヒップホップの詞を文学のポエトリーとして読むという風潮が進んできていて、それこそシェイクスピアのソネットからヒップホップのリリックをどういうふうにつなげて、一緒に読むかということが起きているんです。そうするとこれまで学校で、詩って人気のあるジャンルじゃなかったと思うんですけど、アメリカではこれほど詩が若い人たちに浸透している時代もないといえるんです。
別所:近い将来、ラップ・ヒップホップのカルチャーからノーベル文学賞の受賞者が現れることになるかもしれませんね!
大和田:そうですね、ケンドリック・ラマーがこの前ピューリッツァー賞を受賞しましたし。
大和田さんの共著となる『村上春樹の100曲』や『文化系のためのヒップホップ入門』などが絶賛発売中です。こちらもぜひチェックしてみてください!
【この記事の放送回をradikoで聴く】
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
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【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/
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■ヒップホップがロックを抜いた
まずはヒップホップの成り立ちについて訊きました。
大和田:1970年代のニューヨーク・ブロンクスからはじまった運動です。ヒップホップは音楽と捉えられていますが、もともと、DJ、ブレイクダンス、ラップ、グラフィティの4つの文化全体をヒップホップ・カルチャーと呼んでいました。
別所:現代のヒップホップのブームを分析すると、どんな社会背景が読みとけますか?
大和田:去年話題になったのは、アメリカの音楽業界全体でヒップホップとR&Bが占める割合が24%と、はじめてロックの20%を抜いて最も大きなシェアを占めるようになったんです。
別所:これはどうしてなんでしょう?
大和田:一般的にはストリーミングが流通することによって、ヒップホップはループ構造の曲が多いので、ストリーミングのずっと曲がかかっているかたちと相性がいいといわれています。結果的にループを用いた楽曲が、ヒップホップだけでなくてポップスの領域にもどんどん浸透していて、ヒップホップのプロデューサーがポップスの曲を作るようになったり、アメリカのポピュラー音楽全体に、ヒップホップ的な楽曲が広まっているんです。
■ラッパーがロールモデルになるケースも
別所:音楽でスターダムにのし上がったラッパーたちは、出身地への貢献も深いといいますが……。
大和田:「レペゼン」という言葉があるように、地元を代表してヒップホップのシーンに打って出るというイメージなので、今年「FUJI ROCK FESTIVAL '18」に出演するケンドリック・ラマーや、「SUMMER SONIC」に出るチャンス・ザ・ラッパーなど、成功すると地元の学校などに多額の寄付をしてコミュニティーに還元している感じですね。
別所:ロールモデルになる例も出てきているということですか?
大和田:割と悪いことをしていた人もいると思うんですけど(笑)、成功すると成功したなりの行動が求められるので。ジェイ・Zもドラッグを売っていた時期もあるようですが、今はいかにアフリカ系アメリカ人の若者のロールモデルになるかということで色々活動していますね。ドラッグなど体験をしているから説得力もあるんです。
■ヒップホップが変容してきた!?
大和田:ヒップホップ界で最近、メンタルヘルス問題が話題になっていまして、うつ病や精神的な問題が曲として歌われるようになっているんです。先日、ファッションデザイナーのケイト・スペードさんや、人気シェフのアンソニー・ボーデインさんの自殺がアメリカで話題になりましたが、アメリカ社会全体が、ポジティブに強さが求められる社会だと思われていたのが、強さ・ワルさを全面に出していたヒップホップという音楽ジャンルでも、弱さや脆さを表現する楽曲が出てきて、興味深いことだと思います。
別所:ヒップホップが変容しはじめたということですか?
大和田:精神的な病とは別に、2000年代後半くらいから、ヒップホップにもインディーロックのような内省的な曲が出てきたんですね。カニエ・ウェストとかキッド・カディが先駆ですけど。攻撃的一辺倒ではないヒップホップが出てきたといわれていて。それが昨今のミレニアル世代の繊細さとか弱さとか、逆にいうと日本人にとっては共感しやすくなっているんじゃないかと思います。
■ヒップホップ界からノーベル文学賞受賞者も?
別所:改めてこのヒップホップ、音楽以外でどんな価値がみえてきていますか?
大和田:ラップミュージックとして言葉が重要なんですけど、ヒップホップの詞を文学のポエトリーとして読むという風潮が進んできていて、それこそシェイクスピアのソネットからヒップホップのリリックをどういうふうにつなげて、一緒に読むかということが起きているんです。そうするとこれまで学校で、詩って人気のあるジャンルじゃなかったと思うんですけど、アメリカではこれほど詩が若い人たちに浸透している時代もないといえるんです。
別所:近い将来、ラップ・ヒップホップのカルチャーからノーベル文学賞の受賞者が現れることになるかもしれませんね!
大和田:そうですね、ケンドリック・ラマーがこの前ピューリッツァー賞を受賞しましたし。
大和田さんの共著となる『村上春樹の100曲』や『文化系のためのヒップホップ入門』などが絶賛発売中です。こちらもぜひチェックしてみてください!
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【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/
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