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奴隷が地下鉄道を逃げる! 史実に虚構を交えた絶賛の一冊とは?

奴隷が地下鉄道を逃げる! 史実に虚構を交えた絶賛の一冊とは?

J-WAVEで放送中の番組『BOOK BAR』(ナビゲーター:大倉眞一郎・杏)。毎週ナビゲーターのふたりが「今読むべき本」としてオススメの本を持ち寄っています。11年目に突入した4月7日(土)のオンエアでは、杏が『日本人の質問』(著:ドナルド・キーン/朝日新聞社出版局)、大倉が『地下鉄道』(著:コルソン・ホワイトヘッド/早川書房)をそれぞれ紹介しました。


■思わず「なんか本当にすみません」と謝ってしまう本

日本文学者、ドナルド・キーンが書いた『日本人の質問』は、なんと35年のときを経て、今年文庫化された本です。

本書には、「刺身や納豆が苦手でしょ?」、「漢字って難しいですよね?」、「日本って変わってるでしょ?」といった、外国人からすると、うんざりしてしまう定番の質問への返しから始まり、日米の相互理解がどのように進んでいるのかなど、ドナルド・キーンさんらしい視点で書かれています。杏は、もしドナルド・キーンさんと対談する機会があれば、「この中の質問を投げかけない自信はない!」と言い切りました。

杏には、見た目は白人だけど日本育ちで英語が全くできない知人がいるそうで、彼女が街中で日本人に日本語で道を尋ねても、逃げられてしまうと言います。

:国際化が進んできているけど、やっぱり「外国人はきっと日本語がしゃべれない」って心の奥深くで思ってるんですよね。
大倉:日本語で話しかけられてるのに、英語に聞こえちゃってるんだよ、たぶん。


■事実を元に虚構を加えると、逆にリアリティが増す

大倉が紹介したのは、コルソン・ホワイトヘッドさんが書いた『地下鉄道』。本書は、ピューリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞など、さまざまな賞を獲得し、世界中で絶賛されている小説です。

物語の舞台は19世紀前半のアメリカ南部ジョージア州。農園で綿花摘みに従事する主人公の少女コーラは奴隷です。当時のアメリカ南部には、まだ奴隷制度が残っていました。

大倉:南部では、奴隷に対して人間としての扱いや尊厳は、一切求めてはいけないと、そういう存在だったんですね。やられ放題です。好き放題されて。ジョージアのプランテーションで、コーラは辱めに遭ったり、えらい目に遭うんですね。

そのつらさから逃げるための手段が、タイトルになっている「地下鉄道」です。コーラが目指すのは、すでに奴隷制度が廃止されているアメリカ北部。しかし、南部と北部をつなぐ地下鉄道は、実際には存在しません。

当時「地下鉄道」とは、奴隷を逃すための組織の暗号名として実在したそうなのですが、本書で著者・コルソンは、「実際に地下鉄道が走っていた」という虚構の設定で書いています。

大倉:それが逆にリアリティを増してるんですよ。どれだけこれが大変なことかと。(中略)駅も登場して、地下鉄があって、という描写があるんですが、それをどうやって隠して、どうやって言い逃れするかとか、そういうことが細かく書いてあるんです。だから、逆にどれだけの苦労があったかがわかるんですよ。

大倉は、この発想に「こんな書き方があるんだ!」と、とても驚いたと言います。現在、平積みになっている書店もたくさんあるので、ぜひ手に取ってみてください。

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【番組情報】
番組名:『BOOK BAR』
放送日時:土曜22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/

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