J-WAVEで放送中の番組『BOOK BAR』(ナビゲーター:大倉眞一郎・杏)。毎週ナビゲーターの2人が「今読むべき本」としてオススメの本を持ち寄って語り合います。6月16日(土)のオンエアでは、ゲストに作家の宮部みゆきさんをお迎えしました。
■ミステリーというジャンルは「懐が深い」
1987年に『我らが隣人の犯罪』で作家デビューされた宮部さん。それ以来、ミステリー、ファンタジー、SF、ジュブナイル、時代小説と幅広いジャンルでヒット作品を書き続けられていて、これまでの作品数は70作にものぼります。
幅広いジャンルの作品を書かれている宮部さんですが、自分では「ミステリー作家」だと思っている、とのこと。
宮部:ファンタジーっぽいもの、SFっぽいもの、時代小説も書きますけど、中身は全部ミステリーなので。何かしら謎解きの要素が入っていて、作品の構成もミステリーの構成の仕方ですから。
杏:確かに時代モノもそう言われてみればそうですね。
大倉:『ソロモンの偽証』もまさにそうでしたし。ただカタチをいろいろ変えて出てきてるってことなんですかね。
宮部:そうですね。逆に言うとミステリーっていうジャンルが、それだけ懐が深いっていうんでしょうか。どんなものでも入れられる。
これを聞くまで大倉は、宮部さんは作風ごとにスイッチを切り替えて書いているのかと思っていたそうですが、宮部さんの中ではどれもミステリーとして書いているため、あまり切り替える必要がないと明かしました。
■「現代ミステリーだけ書け」と言われた過去も
宮部さんはデビュー当時から現代ミステリーと同時並行で時代モノの作品を書いていますが、当初は「欲張らずに現代ミステリーだけ書け」と止められたのだそう。
宮部:今だと20代前半でデビューする方は珍しくないんですけど、30年前に私が出てきた時は27歳なんてあまりいなかったので、若いし社会経験もないし、そこへもって両方やるなんて欲張りすぎだと。「しばらくは現代ミステリーだけに絞って、時代小説は50歳過ぎたって書けるんだから」っていうアドバイスされたんですけど、言うことを聞かずに両方書いていました(笑)。
違う作風の小説を同時並行で書く……ということに驚かされますが、80年代後半から活躍するエンターテインメント系の作家は、最低3本、多ければ5、6本はかけもちして書いているそうです。
時代モノは、当時の空気感をつかむための取材が大変そうですが、宮部さんの場合は、それまでずっと好きで読んできた時代作品を参考にしているとか。
宮部:私は藤沢周平さんがものすごく好きで、今もちょっと疲れたときとか、「次どうしよう。何書いたらいいかわかんない」なんていうときに藤沢さんの作品を読むんです。
宮部さんに一押しの藤沢作品を訊くと……。
宮部:二冊あるんですけど、短編集で。『隠し剣シリーズ』が一冊。あれはもう文庫本の旧版がボロボロになっちゃったんで、新装版を書い直したんですよ。あまりにもボロボロになっちゃったんで(笑)。
もう一冊は『秘太刀 馬の骨』。時代小説ですが「これは完全にミステリーです」と宮部さん。「読む前になるべく情報を入れないで読んだほうがおもしろい」とおすすめしました。
■もはやライフワークとなった自作のシリーズは…
宮部さんは、今年4月に『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』を上梓。こちらは人気シリーズ『三島屋変調百物語』の5作目で、江戸時代が舞台の怪談ミステリーです。
宮部:三島屋という袋物のお店に、主人の趣味で一回にひとりずつお客さんをお招きして、怪綺談・不思議な話を語ってもらう。で、聞き手がその家の姪でたいへん器量良しの若い娘の“おちか”です。
おもしろい話を持ってくる人もいれば、深刻な身の上話、自分の人生に起こった恐ろしい話など、様々なエピソードが登場します。今作は二十七話目までで、ここでシリーズの一期が完結します。全体で4人の聞き手が立つ予定になっており、2期から2人目に入ります。
宮部:(シリーズは)もう10年くらいやってるんじゃないかな。2008年くらいからスタートしてますので。最初はもうちょっとスイスイ進むはずだったんですが(笑)。一編一編が長いので。語られる話だけ書いてたらもっとどんどんいけちゃったと思うんですが、周辺の話と、あとやっぱり江戸モノを書くと、その江戸の季節を何か入れたいから。
季節の食べ物や花のこと、季節変わりの行事など書きたいことを入れていくと、どんどん一話が長くなってしまうそうです。そのため不思議な話だけでなく、江戸の季節や人情話的なものまで、複合的な楽しみかたができる作品になっています。
杏:これは百まで?
宮部:百物語っていちおう百なんですけど、百話完結すると恐ろしいことが起きてしまうそうなんで、九十九話までいこうと。
大倉:そんなことここで言っちゃっていいんですか(笑)。
宮部:これは最初から「九十九話までがんばります」と宣言してますので。
当初は短編集5、6冊でおさまると思っていたそうですが、約4分の1ですでに5冊目。「じゃあ、もうライフワーク」と言う杏に「そうですね」と答えた宮部さん。5作目ですがまだ序盤なので、ぜひこの機会に『三島屋変調百物語』シリーズを手にとってみてください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『BOOK BAR』
放送日時:毎週土曜22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/
■ミステリーというジャンルは「懐が深い」
1987年に『我らが隣人の犯罪』で作家デビューされた宮部さん。それ以来、ミステリー、ファンタジー、SF、ジュブナイル、時代小説と幅広いジャンルでヒット作品を書き続けられていて、これまでの作品数は70作にものぼります。
幅広いジャンルの作品を書かれている宮部さんですが、自分では「ミステリー作家」だと思っている、とのこと。
宮部:ファンタジーっぽいもの、SFっぽいもの、時代小説も書きますけど、中身は全部ミステリーなので。何かしら謎解きの要素が入っていて、作品の構成もミステリーの構成の仕方ですから。
杏:確かに時代モノもそう言われてみればそうですね。
大倉:『ソロモンの偽証』もまさにそうでしたし。ただカタチをいろいろ変えて出てきてるってことなんですかね。
宮部:そうですね。逆に言うとミステリーっていうジャンルが、それだけ懐が深いっていうんでしょうか。どんなものでも入れられる。
これを聞くまで大倉は、宮部さんは作風ごとにスイッチを切り替えて書いているのかと思っていたそうですが、宮部さんの中ではどれもミステリーとして書いているため、あまり切り替える必要がないと明かしました。
■「現代ミステリーだけ書け」と言われた過去も
宮部さんはデビュー当時から現代ミステリーと同時並行で時代モノの作品を書いていますが、当初は「欲張らずに現代ミステリーだけ書け」と止められたのだそう。
宮部:今だと20代前半でデビューする方は珍しくないんですけど、30年前に私が出てきた時は27歳なんてあまりいなかったので、若いし社会経験もないし、そこへもって両方やるなんて欲張りすぎだと。「しばらくは現代ミステリーだけに絞って、時代小説は50歳過ぎたって書けるんだから」っていうアドバイスされたんですけど、言うことを聞かずに両方書いていました(笑)。
違う作風の小説を同時並行で書く……ということに驚かされますが、80年代後半から活躍するエンターテインメント系の作家は、最低3本、多ければ5、6本はかけもちして書いているそうです。
時代モノは、当時の空気感をつかむための取材が大変そうですが、宮部さんの場合は、それまでずっと好きで読んできた時代作品を参考にしているとか。
宮部:私は藤沢周平さんがものすごく好きで、今もちょっと疲れたときとか、「次どうしよう。何書いたらいいかわかんない」なんていうときに藤沢さんの作品を読むんです。
宮部さんに一押しの藤沢作品を訊くと……。
宮部:二冊あるんですけど、短編集で。『隠し剣シリーズ』が一冊。あれはもう文庫本の旧版がボロボロになっちゃったんで、新装版を書い直したんですよ。あまりにもボロボロになっちゃったんで(笑)。
もう一冊は『秘太刀 馬の骨』。時代小説ですが「これは完全にミステリーです」と宮部さん。「読む前になるべく情報を入れないで読んだほうがおもしろい」とおすすめしました。
■もはやライフワークとなった自作のシリーズは…
宮部さんは、今年4月に『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』を上梓。こちらは人気シリーズ『三島屋変調百物語』の5作目で、江戸時代が舞台の怪談ミステリーです。
宮部:三島屋という袋物のお店に、主人の趣味で一回にひとりずつお客さんをお招きして、怪綺談・不思議な話を語ってもらう。で、聞き手がその家の姪でたいへん器量良しの若い娘の“おちか”です。
おもしろい話を持ってくる人もいれば、深刻な身の上話、自分の人生に起こった恐ろしい話など、様々なエピソードが登場します。今作は二十七話目までで、ここでシリーズの一期が完結します。全体で4人の聞き手が立つ予定になっており、2期から2人目に入ります。
宮部:(シリーズは)もう10年くらいやってるんじゃないかな。2008年くらいからスタートしてますので。最初はもうちょっとスイスイ進むはずだったんですが(笑)。一編一編が長いので。語られる話だけ書いてたらもっとどんどんいけちゃったと思うんですが、周辺の話と、あとやっぱり江戸モノを書くと、その江戸の季節を何か入れたいから。
季節の食べ物や花のこと、季節変わりの行事など書きたいことを入れていくと、どんどん一話が長くなってしまうそうです。そのため不思議な話だけでなく、江戸の季節や人情話的なものまで、複合的な楽しみかたができる作品になっています。
杏:これは百まで?
宮部:百物語っていちおう百なんですけど、百話完結すると恐ろしいことが起きてしまうそうなんで、九十九話までいこうと。
大倉:そんなことここで言っちゃっていいんですか(笑)。
宮部:これは最初から「九十九話までがんばります」と宣言してますので。
当初は短編集5、6冊でおさまると思っていたそうですが、約4分の1ですでに5冊目。「じゃあ、もうライフワーク」と言う杏に「そうですね」と答えた宮部さん。5作目ですがまだ序盤なので、ぜひこの機会に『三島屋変調百物語』シリーズを手にとってみてください。
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【番組情報】
番組名:『BOOK BAR』
放送日時:毎週土曜22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/
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