J-WAVEで放送中の番組「Hitachi Systems HEART TO HEART」(ナビゲーター:小林武史)。2月19日(日)のオンエアでは、作家の重松清さんをお迎えして、「語り継ぐこと」をテーマにお送りしました。
『希望の地図 3・11から始まる物語』や『また次の春へ』など、震災に関する書籍の執筆を続ける重松さん。一瞬にして街が消え去った震災の後、作家として大きな衝撃を受けたと言います。
「小説って人の命や街や、そういうものが根っこにあるんだけれども、その根っこが一瞬にして消えてしまって、小説を書く、命を書く、街を書くってなんだろう? ということが問い直されたというか…」(重松さん)
さらに福島原発の事故を受けて、震災後に「自分の言葉はどこまで届くか、その射程を考え、さらに長く深くしたかった」と重松さん。何百年、何千年という単位の長い時間をかけて行われる廃炉作業に対し、作家として一時の感情的な言葉ではなく、5年、10年、時間をかけて読者の心に沁みていく言葉で小説を書こうとしているのだそうです。
「果たして自分ができているかどうか、本当に6年近くずっとそればっかり考えています」と被災地で取材を続けている重松さんは、どうしたら自分の言葉が届くのか、自問自答しながらも震災に向き合い続けているそうです。しかし長い取材の中では、様々な温度差を感じるそうで…
「復興の最前線に立っている人たちもいれば、やっぱりまだ立ち上がれない人たちもいる。震災の直後っていうのは、みんながひと塊りで“被災者”というくくりでしたが、6年も経つと、マラソンの選手たちがばらけていくような感じで…。その時に、マスコミの報道や僕たちのルポルタージュが、先頭集団を描いていくのか、真ん中あたりの集団を描いていくのか、リタイア寸前の人たちをなんとか救っていくのか、しっかり分けていかないといけないと思いました。先頭集団だけ書いて『もうこんなに復興進みました』って言われちゃうと、やっぱりそれは困ってしまうし。その一方で、不幸な話ばかりでも希望が見えなくなってしまうし、だから難しいんだろうなって思うんですよね」(重松さん)
最後に、重松さんはこんなエピソードを語りました。
3年前の2月12日、陸前高田市と飯館村を訪れた時のこと。前日の月命日は、陸前高田にうっすら雪が降ったのですが、今は更地となった場所に花が手向けてあったのだそうです。雪の上に足跡が残っており、それを見て重松さんは、「この雪がなかったら、ここに花を手向けに来る人がいるんだってことを気づかずに終わっていたかもしれない」と感じたのだとか。その一方で、同日に飯舘村に入ると全く足跡がなかったそうで、この違いにも雪がなければ気づけなかったと重松さん。
「僕たちの仕事って、そいういう雪のような存在というか、この文章のおかげで、そういえばこんなこともあったなあとか思い出すみたいなね。そういうきっかけになるといいなと思ってます」と語っていました。
震災から6年。震災の記憶を風化させないためにも、一人一人が雪のような存在となって語り継ぐことが大切なのかもしれません。
さて、小林武史の「Hitachi Systems HEART TO HEART」は、次回3月19日(日)が最終回です。一体どんなテーマになるのか、どうぞお聴き逃しなく。
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:「Hitachi Systems HEART TO HEART」
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
『希望の地図 3・11から始まる物語』や『また次の春へ』など、震災に関する書籍の執筆を続ける重松さん。一瞬にして街が消え去った震災の後、作家として大きな衝撃を受けたと言います。
「小説って人の命や街や、そういうものが根っこにあるんだけれども、その根っこが一瞬にして消えてしまって、小説を書く、命を書く、街を書くってなんだろう? ということが問い直されたというか…」(重松さん)
さらに福島原発の事故を受けて、震災後に「自分の言葉はどこまで届くか、その射程を考え、さらに長く深くしたかった」と重松さん。何百年、何千年という単位の長い時間をかけて行われる廃炉作業に対し、作家として一時の感情的な言葉ではなく、5年、10年、時間をかけて読者の心に沁みていく言葉で小説を書こうとしているのだそうです。
「果たして自分ができているかどうか、本当に6年近くずっとそればっかり考えています」と被災地で取材を続けている重松さんは、どうしたら自分の言葉が届くのか、自問自答しながらも震災に向き合い続けているそうです。しかし長い取材の中では、様々な温度差を感じるそうで…
「復興の最前線に立っている人たちもいれば、やっぱりまだ立ち上がれない人たちもいる。震災の直後っていうのは、みんながひと塊りで“被災者”というくくりでしたが、6年も経つと、マラソンの選手たちがばらけていくような感じで…。その時に、マスコミの報道や僕たちのルポルタージュが、先頭集団を描いていくのか、真ん中あたりの集団を描いていくのか、リタイア寸前の人たちをなんとか救っていくのか、しっかり分けていかないといけないと思いました。先頭集団だけ書いて『もうこんなに復興進みました』って言われちゃうと、やっぱりそれは困ってしまうし。その一方で、不幸な話ばかりでも希望が見えなくなってしまうし、だから難しいんだろうなって思うんですよね」(重松さん)
最後に、重松さんはこんなエピソードを語りました。
3年前の2月12日、陸前高田市と飯館村を訪れた時のこと。前日の月命日は、陸前高田にうっすら雪が降ったのですが、今は更地となった場所に花が手向けてあったのだそうです。雪の上に足跡が残っており、それを見て重松さんは、「この雪がなかったら、ここに花を手向けに来る人がいるんだってことを気づかずに終わっていたかもしれない」と感じたのだとか。その一方で、同日に飯舘村に入ると全く足跡がなかったそうで、この違いにも雪がなければ気づけなかったと重松さん。
「僕たちの仕事って、そいういう雪のような存在というか、この文章のおかげで、そういえばこんなこともあったなあとか思い出すみたいなね。そういうきっかけになるといいなと思ってます」と語っていました。
震災から6年。震災の記憶を風化させないためにも、一人一人が雪のような存在となって語り継ぐことが大切なのかもしれません。
さて、小林武史の「Hitachi Systems HEART TO HEART」は、次回3月19日(日)が最終回です。一体どんなテーマになるのか、どうぞお聴き逃しなく。
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【番組情報】
番組名:「Hitachi Systems HEART TO HEART」
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
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