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『漱石のことば』の著者・姜尚中さん 「漱石の時代と現代は似ている」

『漱石のことば』の著者・姜尚中さん 「漱石の時代と現代は似ている」

J-WAVE平日夜の番組「JAM THE WORLD」のワンコーナー「BREAKTHROUGH!」。4月12日(火)のオンエアでは、火曜担当の堀潤がナビゲート。「夏目漱石の作品から今を生き抜くヒントとなるような言葉を探ろう!」をテーマに、漱石文化に詳しい東京大学名誉教授の姜尚中さんをお迎えして話をうかがいました。

姜さんは3月に夏目漱石の名言集『漱石のことば』(集英社)を上梓。全部で148の言葉が収録されていますが、その中から「人に嫌がれるために生きる」という言葉を取り上げました。

「人に嫌がられでもしないと苦しくて生きていられない、存在を人に認めさせることができない、だから嫌われてみようとでも思う、という内容です」(姜さん)

これに対して堀も、「まさに現代に響くというか、さまざまな社会問題を読み解く中でこういった言葉が輪郭を際立たせてくれますね」と感心。

さらに姜さんは、「他者を攻撃して、他者に嫌がられることではじめて自己確証できる。欠落部分が多くて埋められない。埋められないときに、他者との否定的な関係しかさしあたりできない。それがヘイトスピーチになったり、誰かが過ちを犯した場合には、そこに一斉に攻撃的な視線を投げかけたり。自分の中に柔然なものがない。それが漱石の100年前の時代。今と似ていると思う」と解説してくれました。

また、「誰でも心の底を叩くと悲しい音がする」という言葉にも注目。

「表面的には笑っていたり『こいつはどんなに叩いても“ぐうの音”も出さない人間だ』と思っている人も、叩いてみれば悲しい音がする。これは漱石の中にある“哀れ”という感情。他人に対する哀れさ、それを知っていれば、めちゃくちゃに人を叩いたり、人をバッシングすることに快感を持つことはなくなると思う。漱石はあの当時『他者に対するリスペクトがなぜなくなったんだろう』と、すごく矛盾を感じていた」と教えてくれました。

番組では、「夏目漱石にコメントを求めたいニュースは何ですか?」というテーマで、リスナーからメッセージを募集しました。これに対しては、「地元住民の反対で保育施設が立てられない」「苦情でCMが打ち切り」などについてのコメントを聞きたいとの声が多数。

姜さんに“漱石だったらどう言うと思うか”を聞いてみると、次のように語ってくださいました。

「彼が最後に到達したのは自己本位。利己本位ではない。他者と同調することを最も嫌がった。体制に順応したり『皆がこうするからこうする』など。これはある種の群集心理。漱石の時代は群衆がはじめて登場した時代でもあります。ポーツマス条約への群衆の怒りなど、これは政治もコントロールできなかった。得体の知れない匿名の力が同調を強いるわけですよね。これに図にのって人が動いていく。これを漱石は一番嫌がった。『坊ちゃん』で悪ガキに対してあそこまでなぜ正義感を示したのか。これは子ども達とはいえ付和雷同しているからです。現代のバッシングとかは、そういう見えない形の同調、圧力だと思う。昔で言う群衆的状況でしょうね」

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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