音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
Z世代はタイパ・コスパより

Z世代はタイパ・コスパより"散歩のプロセス"を優先?SNSで話題の「伊能忠敬界隈」を投資家・田中 渓が解説

投資家・田中 渓が、SNSを中心に広まっている「伊能忠敬界隈」を取り上げ、「あえて歩く意味」について考えた。

この内容をお届けしたのは、8月14日(金)放送のJ-WAVE『VALTURE RADIO』(ナビゲーター:田中 渓)。合理化や最適化が当たり前になった今、あえて「手触り」から考えるラジオプログラムだ。効率だけでは測れない、人間の価値を見つめ直していく。

この日の放送は8月21日(金)28時ごろまで、radikoのタイムフリー機能で楽しめる。

長距離ウォーキングが若者に人気

先日、市場調査会社のアスマークがインターネットでアンケートを実施し、Z世代が選ぶ「これからもっとも流行るもの」のランキングを発表した。

そのランキングで3位にランクインしたのが「伊能忠敬界隈」。伊能忠敬は江戸時代に日本全国を歩いて測量した人物として知られている。歴史の授業で名前を覚えた人も多いだろう。

田中:「伊能忠敬界隈」とは、伊能忠敬のように驚くような長距離を徒歩で移動する人々を指す言葉。近年は健康意識の高まりに加え、歩くことが瞑想にもつながるとして、あえて徒歩での移動を選ぶ人が増えているそうです。

田中は「歩く人々が増えている背景」について考察した。

田中:(Z世代は)どちらかというと、普段の生活では効率、いわゆるタイムパフォーマンスやコストパフォーマンスを何よりも重視するデジタルネイティブの世代ですよね。そんな世代が、なぜあえてたくさん歩いて散歩をしたり、気が遠くなるような距離を徒歩で移動したりするのか。そこがポイントだと思います。かつては、このウォーキングや散歩は、どちらかというとシニア層の健康維持のようなイメージがあったと思います。

歩くことの広まりについて、田中はさまざまな側面があると指摘する。

田中:まず、歩くことのエンタメ化や、SNSで日常風景を発信する文化がありますよね。位置情報を使ったゲームから得られる達成感だったり、歩いた距離に応じてポイントを獲得できる「ポイ活」といったこともあって、歩くことが日常生活に浸透してきたのではないかと思っています。

田中は、さらに「歩くことのエンタメ化」について解説する。

田中:あるアプリでは、自分で歩いた距離が日本地図にプロットされていき、どんどん地図が完成していくんですね。自分が歩いてお金をかけずに作っていく、1日がかりの冒険ができるといった魅力もあります。歩くといろんな偶然の発見があったり、苦労してプロセスを踏んでいくことそのものが物語になっていくんですよね。アプリによってはSNSのように仲間を募って、「自分がこれだけ歩いたよ」というのを誰かが見てくれたり、誰かのものを見て「いいね」をしたりすることで、これ自体がエンターテインメントになっていくというのがあるんじゃないかなと思っています。

距離・軌跡・収集で楽しむ散歩

伊能忠敬界隈の人々が歩くコースには、少し変わった特徴がある。田中によると、好まれるのは信号で足止めされにくい河川敷や湖畔などのコースだそう。一方で、京都や札幌のように街が碁盤の目状になっている場所は、交差点ごとに立ち止まる必要があるため、意外と敬遠されるという。

歩くコースがマニアックであること自体もひとつのエンタメになっており、「面白いコースを見つけた」とSNSなどでシェアする楽しみ方も生まれていると田中は紹介した。

田中:あとはグッズですよね。足の負担を減らすためにはどういう靴を選んだらいいかとか、両手を自由に使ってスマートフォンと一緒に歩けるバックパックだったり、雨が降ったらどういうものを持って行けばいいかと情報交換をする。いろんなグッズや自分の経験をシェアしたり、非日常の場所で撮った写真をシェアしていく。そういった変わったアクティビティが流行っているそうです。

田中によると、伊能忠敬界隈の人々が歩くことに感じている面白さには、大きく3つほどの側面があるという。

田中:ひとつ目は、歩いた距離を何かに置き換えて、その達成度を競ったり、SNSなどでシェアしたりする。たとえば、「山手線1周分くらい歩きました」「○○川の上流から下流まで歩きました」「この街の旧街道を全部歩きました」みたいなかたちで、何らかの区切りを目標にして完歩していく。

2つ目は、GPSを使って歩いた軌跡そのものを楽しむ方法だ。

田中:これはランニング界隈でも流行っていましたけど、歩いたルートがGPSによって地図上にプロットされるんです。その軌跡を利用して犬の形を描いたり、きれいな円を完成させたりする「GPSアート」ですね。ランナーの人たちのなかには、お正月になると、その年の干支の形になるように街を走ったりする人もいます。

単に長い距離を歩くだけではなく、歩いた距離や軌跡をひとつの作品や達成の証として楽しむことも、伊能忠敬界隈の魅力になっているという。

田中:あとは、街の収集ですね。「〇〇線を制覇しました」「東京にある坂道を全部制覇しました」というようなものです。主にこの3つのカテゴリーで、みなさん歩いているようですね。

散歩は思考を整理する時間

ランニングとは別に、散歩そのものにも多くのメリットがあると田中は指摘する。マーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブズなど、さまざまな経営者が散歩を習慣にしており、社内に散歩のための道を設けるケースもあるという。

また、クリエイターのなかには、散歩をしながら電話会議をしたり、あえて散歩の時間を確保したりする人もいるそう。散歩は単なる運動にとどまらず、思考を整理する時間としても活用されていると田中は語った。

田中:(散歩を生活に取り入れると)ずっと室内にこもって、PCの画面やスマートフォンの画面を見ているのではなく、注意がちゃんと外界に向くんですよね。脳の「デフォルトモードネットワーク」と言うんですが、何かのタスクに集中しているのではなく、そうしたものから解放されているときに、これまでインプットしてきた情報や頭のなかでごちゃごちゃになっていたものが、散歩をしてリラックスしている状態になると、急につながってくることがあります。「アイデアを出すにはどうしたらいいんですか」というときに、よく「散歩をしろ」と言われるんですけども、散歩をする人は、その前に大量のインプットがあって、それが結びついていくということが大事だったりします。ちゃんといろんなことを詰め込んで散歩に出かけましょう、ということですね。僕もそういう目的で出かけたりします。

散歩には、ストレスホルモンを低下させる効果があるとされており、また誰かと一緒に歩く場合には、相手との心理的な距離を縮めることにもつながるという。会議室で向かい合って話す場面では、対立構造が生まれやすいと言われる一方、歩きながら横並びで話すことで互いの心理的な距離が縮まり、より自然にコミュニケーションを取れると田中は説明する。

田中:散歩にはたくさんのメリットがあると言われています。エンタメのひとつとして流行っているのかもしれないですけれども、こういう流れで若い人たちも外に出て歩くようになったらいいなと思ったりもします。

歩くことに「ご褒美」をプラス

続いて田中は、散歩する際におすすめのアプリを2つ紹介した。ひとつは「散歩で日本一周」だ。

田中:歩数分だけ勝手に日本を散歩してくれるという優れものです。しかも、バックグラウンドで動いてくれるので、たまにアプリを開いてみると、いつの間にか沖縄を1周していたり、東京から新潟まで歩いていた、みたいなことが起こるようで、けっこう面白いらしいです。それから、ちょっと企業のアプリケーションにはなってしまいますが、コカ・コーラさんが出している「Coke ON」というアプリがあります。

「Coke ON」では、自動販売機で飲み物を購入したときだけでなく、誕生日などにもポイントが貯まる仕組みがある。さらに、一定の歩数を達成することでもポイントを獲得できるため、日常の歩行がそのままメリットにつながる仕組みとなっていると田中は語る。

田中:ある種のポイ活ですね。「ただ歩いているだけで飲み物がもらえる」みたいな楽しみもありそうです。ということで、目的地へ向かうためだけではない「歩く意味」でした。みなさんにとって、歩く時間はどんな時間ですか?

ほかにも、番組内では作家・東野圭吾の作品とその魅力について語るひと幕もあった。番組はSpotifyなどの各種ストリーミングサービスで配信中。新エピソードはラジオで放送した翌週の金曜6時から配信している。

・ポッドキャストページ
J-WAVE『VALTURE RADIO』は、効率だけでは測れない、人間の価値を見つめ直すラジオプログラム。放送は毎週金曜5時から。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
radikoで聴く
2026年8月21日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
VALTURE RADIO
毎週金曜
5:00-6:00