シティポップと短歌を組み合わせた書籍『シティポップ短歌』に注目した。
この内容をお届けしたのは、8月4日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
書籍『シティポップ短歌』には、ウェブで読める大人の音楽誌『otonano』で連載されていた、シティポップをお題にした短歌に、新規書き下ろしやディスクガイドが加えられている。シティポップと短歌が交差する魅力について、ナビゲーターの市川とともに語り合った。
市川:シティポップ短歌は、『otonano』で2022年に始まった連載がもとになっていますよね。今も継続中ですが、今回の書籍はそのなかから選ばれた作品を収録したものですか?
伊波:そうですね。連載作品に加えて、書き下ろしも収録しています。
市川:そもそも、この連載のきっかけを作ったのは栗本さんだったんですか?
栗本:そうですね。「otonano」が立ち上がることになり、連載企画を考えていたときに、たまたま本屋で伊波さんの最初の著書『ナイトフライト』(書肆侃侃房)を手に取ったんです。「なんだこれは」と衝撃を受けて。
伊波:ありがとうございます。
栗本:「この短歌とシティポップを組み合わせたら面白いんじゃないか」と思ったんです。それで伊波さんに連絡したところ快諾していただき、この連載が始まりました。
伊波:まずはアルバムを何度も聴き込みます。そうすると、その作品のテーマとか、よく使われている言葉が見えてくるんです。そこからイマジネーションを広げて作っていますね。
市川:『A LONG VACATION』では、どんな短歌になったのでしょうか。
伊波:「君の影だけがゆれてた 秒針も 睡ったような 夏の透き間で」という短歌です。
市川:おお~、アルバムの余韻が感じられるような。あとは、「透き間」の字も印象的でした。
伊波:短歌は目で見たときの印象も大切なので、漢字の選び方もかなり意識しています。
市川:この短歌は、アルバムのどんなエッセンスから生まれたのでしょうか。
伊波:『A LONG VACATION』のジャケットを手がけた永井 博さんの印象的なイラストがありますよね。あのビジュアルからイマジネーションを広げて作りました。
市川:そう考えると、シティポップと短歌は相性がいいのかなあって。シティポップは夏や車窓、夜といった情景や空気感を大切にする作品が多いですし、一瞬で風景が浮かぶような言葉や音楽があります。そのあたりが短歌とも重なるように感じます。
これに対し栗本は、「話し合いはしますが、ある程度は僕のほうから『これはどうですか?』と提案して、『ぜひやりましょう』という流れになることが多いです」と、お題が決まるまでのやり取りを明かした。
伊波:栗本さんのセレクトが本当に素晴らしくて。結果的に、自分がやりたいと思っていたような作品を提案してくださるので、毎回ありがたいです(笑)。
市川:仲よし(笑)。短歌にしたくなるアルバムには、どんな特徴があるのでしょうか。
伊波:やはり歌詞ですね。シティポップは歌詞も魅力的なものが多くて、そこから短歌で描きたい風景が見えてきます。それにジャケットも素晴らしい作品が多いですよね。
栗本:そうですね。あと、シティポップには生活に密着した歌詞というより、少しファンタジックでストーリー性のある作品が多いなと感じています。そうした世界観を「伊波さんが短歌に置き換えたらどうなるんだろう」というのを考えながらアルバムを選んでいます。
市川:本を見ると、カシオペアや高中正義さんなど、インストゥルメンタルのアルバムも多く収録されていますよね。もともと歌詞がない作品は、どのように取り組まれるのでしょうか。
伊波:それは本当に難しくて、毎回苦労してます(笑)。そこでも、ジャケットがかなり大きな手がかりになります。ジャケットのイメージや、歌詞がなくても音から見えてくる風景を短歌にしています。
栗本:言葉がないからこそ想像できることもあると思うんです。そこを言葉にできるのが伊波さんのテクニックなので、その部分はおまかせしています。
市川:「五・七・五・七・七」という限られたかたちのなかで、1枚のアルバムを表現するうえで、難しいのはどんなところですか。
伊波:アルバムにはいろいろな曲が入ってますから、ひとつに絞り切るのが難しいですね。そのなかで共通するテーマや軸を見つけ出すことが、いちばん苦労しているところだと思います。
市川:高中正義さんのページを見ていますが、「待ちわびていた 夏の日は 陸上のランナーのように 通り過ぎていく」という短歌が載っています。これもジャケットから発想したのでしょうか。
伊波:これは完全にジャケットからですね。
市川:暑さのなかをランナーが駆け抜けていくような情景が浮かびます。
伊波:それも、先ほどお話しした「音から見えてくる風景」なのかもしれませんね。
続いて、数多くのコンピレーションアルバムやライナーノーツ、音楽史に関する執筆を手がける栗本に対し、「短歌という視点でシティポップを取り上げてみて、新しい発見はありましたか」と尋ねた。
栗本:僕らは音楽を聴くとき、歌詞を重点的に追うというより、全体……特にサウンドに意識が向きがちなんです。でも、短歌を読んで「歌詞のこういうところをピックアップするんだ」みたいに新鮮に感じられて、あらためて歌詞や曲全体の雰囲気に注目しながら聴き直したりっていうこともしますね。発見だらけです。
市川:本を見ていると知らない曲やアルバムもあって、「聴いてみたい」という気持ちにもつながります。シティポップは音楽ジャンルであると同時に、空気感や雰囲気を表す言葉でもあると思うんです。それが海外で人気になって、今は高中正義さんのフュージョンにまで広がってきていますよね。この現象は面白いなと思うんですが、音楽ライターとしてご覧になって、この広がりは続きそうですか?
栗本:まだまだ広がるんじゃないですかね。ようやく海外の人たちが発見し始めたっていう段階だと思うので、僕らは知っていても世界ではまだ知られていない作品もたくさんありますし、逆に世界中の人たちが新たな作品を発見して、僕らが教えられることもあると思います。
市川:みなさんで短歌を読み合う会なんかもやりたくなってしまいますね。
伊波真人の最新情報は公式サイトまで。
栗本 斉の最新情報はX公式アカウント(@tabirhythm)まで。
J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを「今」の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。
この内容をお届けしたのは、8月4日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
『シティポップ短歌』誕生のきっかけは?
今回は、シティポップそのものではなく、シティポップを題材に短歌を詠む歌人に迫る。ゲストとして登場したのは、8月7日(金)に書籍『シティポップ短歌』(遊泳舎)を刊行した歌人の伊波真人と、同書で各アルバムのディスクガイドを担当した音楽・旅行ライター/選曲家の栗本 斉のふたり。書籍『シティポップ短歌』には、ウェブで読める大人の音楽誌『otonano』で連載されていた、シティポップをお題にした短歌に、新規書き下ろしやディスクガイドが加えられている。シティポップと短歌が交差する魅力について、ナビゲーターの市川とともに語り合った。
『シティポップ短歌』が8月7日に遊泳舎から刊行されることになりました。「otonano」での連載「伊波真人のシティポップ短歌」に書き下ろしを加えたものです。ディスク・ガイドは栗本斉さんです。どうぞよろしくお願いいたします! https://t.co/h7ebb5NRvf pic.twitter.com/qcNi9Uohzr
— 伊波真人 | 歌人 (@inamimasato) July 6, 2026
伊波:そうですね。連載作品に加えて、書き下ろしも収録しています。
市川:そもそも、この連載のきっかけを作ったのは栗本さんだったんですか?
栗本:そうですね。「otonano」が立ち上がることになり、連載企画を考えていたときに、たまたま本屋で伊波さんの最初の著書『ナイトフライト』(書肆侃侃房)を手に取ったんです。「なんだこれは」と衝撃を受けて。
伊波:ありがとうございます。
栗本:「この短歌とシティポップを組み合わせたら面白いんじゃないか」と思ったんです。それで伊波さんに連絡したところ快諾していただき、この連載が始まりました。
情景を31音へ落とし込む短歌の魅力
『シティポップ短歌』の第1回のお題は、大滝詠一の『A LONG VACATION』。特徴的なのは、楽曲ではなくアルバム全体がお題になっている点だ。市川は「1枚のアルバムを31音に凝縮するわけですが、具体的にはどんなふうに作るのでしょうか」と伊波に問いかけた。伊波:まずはアルバムを何度も聴き込みます。そうすると、その作品のテーマとか、よく使われている言葉が見えてくるんです。そこからイマジネーションを広げて作っていますね。
市川:『A LONG VACATION』では、どんな短歌になったのでしょうか。
伊波:「君の影だけがゆれてた 秒針も 睡ったような 夏の透き間で」という短歌です。
市川:おお~、アルバムの余韻が感じられるような。あとは、「透き間」の字も印象的でした。
伊波:短歌は目で見たときの印象も大切なので、漢字の選び方もかなり意識しています。
市川:この短歌は、アルバムのどんなエッセンスから生まれたのでしょうか。
伊波:『A LONG VACATION』のジャケットを手がけた永井 博さんの印象的なイラストがありますよね。あのビジュアルからイマジネーションを広げて作りました。
市川:そう考えると、シティポップと短歌は相性がいいのかなあって。シティポップは夏や車窓、夜といった情景や空気感を大切にする作品が多いですし、一瞬で風景が浮かぶような言葉や音楽があります。そのあたりが短歌とも重なるように感じます。
「音から見えてくる風景」を大切に
『シティポップ短歌』では、昭和・平成・令和と幅広い時代のシティポップを取り上げている。近年のアーティストでは、Lucky Kilimanjaroや離婚伝説も収録されていることに触れ、市川は「お題のセレクトはおふたりで決めているんですか」と質問した。これに対し栗本は、「話し合いはしますが、ある程度は僕のほうから『これはどうですか?』と提案して、『ぜひやりましょう』という流れになることが多いです」と、お題が決まるまでのやり取りを明かした。
伊波:栗本さんのセレクトが本当に素晴らしくて。結果的に、自分がやりたいと思っていたような作品を提案してくださるので、毎回ありがたいです(笑)。
市川:仲よし(笑)。短歌にしたくなるアルバムには、どんな特徴があるのでしょうか。
伊波:やはり歌詞ですね。シティポップは歌詞も魅力的なものが多くて、そこから短歌で描きたい風景が見えてきます。それにジャケットも素晴らしい作品が多いですよね。
栗本:そうですね。あと、シティポップには生活に密着した歌詞というより、少しファンタジックでストーリー性のある作品が多いなと感じています。そうした世界観を「伊波さんが短歌に置き換えたらどうなるんだろう」というのを考えながらアルバムを選んでいます。
市川:本を見ると、カシオペアや高中正義さんなど、インストゥルメンタルのアルバムも多く収録されていますよね。もともと歌詞がない作品は、どのように取り組まれるのでしょうか。
伊波:それは本当に難しくて、毎回苦労してます(笑)。そこでも、ジャケットがかなり大きな手がかりになります。ジャケットのイメージや、歌詞がなくても音から見えてくる風景を短歌にしています。
栗本:言葉がないからこそ想像できることもあると思うんです。そこを言葉にできるのが伊波さんのテクニックなので、その部分はおまかせしています。
市川:「五・七・五・七・七」という限られたかたちのなかで、1枚のアルバムを表現するうえで、難しいのはどんなところですか。
伊波:アルバムにはいろいろな曲が入ってますから、ひとつに絞り切るのが難しいですね。そのなかで共通するテーマや軸を見つけ出すことが、いちばん苦労しているところだと思います。
市川:高中正義さんのページを見ていますが、「待ちわびていた 夏の日は 陸上のランナーのように 通り過ぎていく」という短歌が載っています。これもジャケットから発想したのでしょうか。
伊波:これは完全にジャケットからですね。
市川:暑さのなかをランナーが駆け抜けていくような情景が浮かびます。
伊波:それも、先ほどお話しした「音から見えてくる風景」なのかもしれませんね。
短歌から広がる、新たな音楽の楽しみ方
市川は、『シティポップ短歌』について「曲の情景や感情、シチュエーションなど、純粋に音楽を聴いたときの感覚に近いものをすくい上げている印象があって、それもこの本の魅力だと思いました」と感想を語る。続いて、数多くのコンピレーションアルバムやライナーノーツ、音楽史に関する執筆を手がける栗本に対し、「短歌という視点でシティポップを取り上げてみて、新しい発見はありましたか」と尋ねた。
栗本:僕らは音楽を聴くとき、歌詞を重点的に追うというより、全体……特にサウンドに意識が向きがちなんです。でも、短歌を読んで「歌詞のこういうところをピックアップするんだ」みたいに新鮮に感じられて、あらためて歌詞や曲全体の雰囲気に注目しながら聴き直したりっていうこともしますね。発見だらけです。
市川:本を見ていると知らない曲やアルバムもあって、「聴いてみたい」という気持ちにもつながります。シティポップは音楽ジャンルであると同時に、空気感や雰囲気を表す言葉でもあると思うんです。それが海外で人気になって、今は高中正義さんのフュージョンにまで広がってきていますよね。この現象は面白いなと思うんですが、音楽ライターとしてご覧になって、この広がりは続きそうですか?
栗本:まだまだ広がるんじゃないですかね。ようやく海外の人たちが発見し始めたっていう段階だと思うので、僕らは知っていても世界ではまだ知られていない作品もたくさんありますし、逆に世界中の人たちが新たな作品を発見して、僕らが教えられることもあると思います。
市川:みなさんで短歌を読み合う会なんかもやりたくなってしまいますね。
伊波真人の最新情報は公式サイトまで。
栗本 斉の最新情報はX公式アカウント(@tabirhythm)まで。
J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを「今」の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。
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