和田アキ子が「もう、かなわない」と感じた女性シンガーは? 人生の寄り添った楽曲を語る

和田アキ子が亀田誠治とJ-WAVEで対談。和田が人生に寄り添ってきた音楽を語った。

和田が登場したのは、11月2日(日)放送のJ-WAVE『DEFENDER BLAZE A TRAIL』(ナビゲーター:亀田誠治)。毎回、音楽を愛するゲストを迎え、その人生に寄り添ってきた音楽の話を伺うプログラムだ。

大阪弁バリバリの少女が出会った運命的な1曲

番組では、ゲストの人生に寄り添ってきた音楽を聴きながら、そこにどのようなエピソードがあるのか、話を訊いていく。まず、和田は1曲目にレイ・チャールズの『I Can't Stop Loving You』をセレクトした。

Ray Charles | I Can't Stop Loving You (Visualizer)

和田:(私のなかで)「何か1曲」って言われると、レイちゃん。

亀田:レイ・チャールズをレイちゃんって呼べるのは日本でアッコさんだけだと思いますよ。

和田:でも、レイ・チャールズ本人にもレイちゃんって呼んだら「ハイ!」って言ってくれましたから。それで、この曲は私がレイちゃんと知り合うことになった運命の曲です。中学のときに近所のレコード屋さんで聴きました。

亀田:地元の大阪で?

和田:はい。私は未信者なんですけど学校がカトリック系で、小学校、中学校で英語を教えているような学校だったんです。私はそのとき大阪弁バリバリで、「なんでやねん」とか言いながら。中学に入ってクラスの女の子に「How do you do?」って言われて、「もう1回言うて。それ英語?」「うん、英語」って。英語の教科書は「a pen」とか「a book」とかそんなのなのに、「何その、How do you doって」ってことで、これは英語ができなあかんと思って。それで、よく父の用事でレコード屋さんに行っていて、三橋美智也さんとか春日八郎さんとか知ってたんですけど、ジャケットを見ていたら黒人でサングラスかけて、それまでの私の人生で黒人の方を見たことがなかったんです。

「その人はレイ・チャールズで、7歳で失明し、独学でピアノなどを学んで有名になった人だ」と、レコード店の店員に教えてもらったという。

和田:「この歌って何?」って訊いたら「I Can't Stop Loving You」って。そのときは読めなかったけど、「愛さずにはいられない」っていう意味だって教えてもらって視聴して「これ、ええわあ」って思って。当時、370円だったかな。そこから半年間で7枚くらい買った。

亀田:すごい。

和田:それで、家で父親がいない時間、学校から帰って聴いてみたら歌詞が短かったんですよ。だから覚えて「How do you do?」って言った子に歌ってみせたら「和田さん、めちゃくちゃうまい!」って言われて。だから、レイ・チャールズの数ある曲のなかでも、この曲との出会いは鮮明に覚えてますね。

亀田:レイ・チャールズの歌はアッコさんの歌に聴こえますよ。何かしら同じスピリットというかソウルを感じます。真似して似ているとかではなくて、同じ世界の、同じハートを持っている人の声色。

和田:レイ・チャールズは黒人ですごく差別を受けましたけど、私は当時、女性でこんなに大きいのはいなかったので、けっこういじめられたんです。そのときに「似てるものがあるな、いじめられても頑張らなきゃな」って思って。でも、こんなにすごい人とは思いませんでした(笑)。

「語りかけるように歌う」かなわないアーティスト

和田は2曲目にベット・ミドラーの『From a Distance』を紹介した。

Bette Midler - From A Distance (Official Music Video)

和田:芝居もうまいし、コメディーもできるし、泣かすのもできるし、歌もいいし。女性シンガーのなかで大好きですね。この人の歌は、『When A Man Loves A Woman』(邦題:男が女を愛する時)をカバーしようとしていて、たしかパーシー・スレッジとかが歌ってたと思うんですけど、カバーするならパーシー・スレッジじゃないほうがいいなっていろんな人のを聴いてたら「誰や、この人?」って。それがベット・ミドラーで。そうしたらいろんな歌を歌ってらして、『When A Man Loves A Woman』だけじゃなくて、いい歌がたくさんあるんですけど、やっぱり(『From a Distance』が好きですね)。

亀田:僕も『From a Distance』は大好きな曲です。湾岸戦争のころによくかかってました。

和田:語りかけるように歌うんですよ。もう、かなわないと思いましたね。

アポロ・シアターで歓喜したリハーサル

続いて、和田が「不可能かもしれない」と思ったことに挑み、そしてそれを乗り越えて実現したとき、そんな瞬間に背中を押してくれた1曲を訊くと、「すごく悩みました」と話しながらサム&デイヴの『SOUL MAN』と答えた。

Sam & Dave - Soul Man (Official Audio)

和田:さっき紹介したレイ・チャールズと知り合えて、「次はニューヨークのアポロ・シアターで一緒にやろうね」って言われて、でも私だけが行ったんです。レイちゃんはお亡くなりになられて。アポロ・シアターって、ブラックミュージックの聖地なんですよね。だから、マーヴィン・ゲイにしろプラターズにしろ、レイ・チャールズもそうですけど、それこそマイケル・ジャクソンとか、まず黒人じゃなきゃ出られないんですよ。私たちは黄色人種だからまったく出られない。でも毎週水曜だけ、いまもやってるらしいんですけど「アマチュアナイト」があって、歌手でもコントでもドラマでもなんでもいいからって、そこで日本人が出てたりして、面白い劇場だなって。でも、そこに自分が立てるなんて思ってなかったですから。

2008年、和田はアポロ・シアターで日本人ならびに東洋人ソロ歌手で初となる単独公演を開催。大成功を収めた。

和田:アポロ・シアターに黄色人種で出られたってのは、自慢になりますけど、いまだに破られてない記録ですね。日本のお客さまもいらっしゃるし、外国のお客さまもいらっしゃる。最初は「イエローが来て、なんだ?」ってスタッフが動いてくれなくて。リハーサルをやっていて、ゲストのサム&デイヴのサム・ムーアが来てくれて一緒に『SOUL MAN』を歌ったんですよ。それでリハーサルの途中くらいで休憩を入れたら、スタッフが「アッコはここで歌うために生まれてきたようなものだ」ってコロッと変わって(笑)。

亀田:してやったりですね(笑)。

和田:うちのバンマスと手を取り合って喜びましたね。「認められた!」って。うれしかったですよ。

思わず泣けてきた、心が揺れる1曲

和田が最後に紹介したのは、エイミー・ワインハウスの『Rehab』だった。

Amy Winehouse - Rehab

和田:彼女の特集映画みたいなのがあって。

亀田:おそらく『AMY エイミー』ってドキュメンタリー映画ですね。

和田:そうです。最後、亡くなるところも。

亀田:苦しいですよね。

和田:この『Rehab』は「日本で流していいの?」っていうくらいの歌詞。

亀田:赤裸々で。

和田:彼女がみんなに(ドラッグ)のリハビリを勧められたけど、お父さんも「行かなくていい、ステージがあるから」って言われて、「私も行く気がない」っていう病魔と闘っている歌です。曲を聴いていたら泣けてきちゃった。(亡くなるなんて)もったいない。なんでも歌えたのにね。

亀田:成功を積めば積むほど失敗したくないとか、もっとうまくやりたいとか、そういうプレッシャーもあるだろうし。難しいですよね。

和田:そうですよね。このリズムもいいじゃないですか。

亀田:オールディーズをリスペクトしていて。サム&デイヴとかもそうですが、アッコさんが選んだ血湧き肉躍るソウルを感じます。

和田:歌詞と違って心が揺れるというか。

大事に歌っていきたい人生の歌

「人生に寄り添ってきた音楽」を紹介してきた和田は、10月22日(水)にオールタイムベストアルバム『和田アキ子 オールタイムベスト』をリリース。ここではTani Yuukiが書き下ろした楽曲『愛ヶ十』(ありがとう)をオンエアした。

和田アキ子 × Tani Yuuki - 愛ヶ十【コラボ】

和田:『愛ヶ十』は、シンガーソングライターのTani Yuukiくんに作っていただきました。最初に楽曲をいただいたのは2023年だったんですが、Keyを決めるのとかも苦労して、一回、無理だとお断りしたんです。そのことを全然忘れていて、そのあいだに若い子とコラボをいろいろしたりして、ちょっと自分の資料を整理していたらこの歌詞が出てきたんですね。「こんな曲あったな」と思って、歌詞を読んだらそれだけで泣いちゃって。マネージャーに「『愛ヶ十』って歌詞出てきたんだけど、ものすごくいい歌だと思うから歌いたい」って言ったら「ええ!」ってなって。Taniくんは私のためにこの曲を書いたから「まだとってある」って言うんです。

亀田:すばらしい。

和田:「歌わしてくれるかな?」ってお願いしたら「喜んで」って。それでこのあいだ、一緒に歌ったんです。彼はまだ27歳だけど、表現がこれだけできる。「あんた、どれだけ苦労してきたの」って彼に言うくらいすごい詞なんです。私の(代表曲の)『あの鐘を鳴らすのはあなた』に匹敵するくらい大事に歌っていきたい人生の歌で、これは老若男女関係なく、人に「ありがとう」って言う愛を感じていただけたらなって想いです。

和田アキ子の最新情報は公式サイトまで。

『DEFENDER BLAZE A TRAIL』では、音楽を愛するゲストを迎え、人生に寄り添ってきた音楽、困難を乗り越えるときに出会った音楽について語り合う。オンエアは毎週日曜21時から。
番組情報
DEFENDER BLAZE A TRAIL
毎週日曜
21:00-21:54

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