“フジロック皆勤賞” クリス・ペプラーが忘れられないステージは?「あれほど音楽の力を感じたことはない」

クリス・ペプラーが亀田誠治とJ-WAVEで対談。クリスが「FUJI ROCK FESTIVAL」(フジロック)での忘れられないステージについて語った。

クリスが登場したのは、6月22日(日)放送のJ-WAVE『DEFENDER BLAZE A TRAIL』(ナビゲーター:亀田誠治)。毎回、音楽を愛するゲストを迎え、その人生に寄り添ってきた音楽の話を伺うプログラムだ。

僕も会場のみんなも号泣していた

クリスは、1988年のJ-WAVEの開局以来、『TOKIO HOT 100』(現在は『SAISON CARD TOKIO HOT 100』)をナビゲートするミュージックマスター。国内外、多くのアーティストへのインタビューも行い、常に最新の音楽シーンを熟知する音楽界のレジェンドだ。さらに、ベースプレイヤーでもあり、バンド活動も行っている。

今回は7月25日(金)〜27日(日)に開催される「FUJI ROCK FESTIVAL '25」に注目。これまでのフジロックの印象的なエピソードを中心にトークを展開した。

亀田:フジロックは1997年にスタートしたんですよね。

クリス:気付けば毎年行ってます。パンデミックで1回お休みしたんですよね。それ以外は毎年やっていて、初回は1997年に山梨県・富士天神山スキー場で行われて、1998年は東京・豊洲にて開催され1999年から現会場の新潟県の苗場スキー場になりました。

クリスは、これまで観てきたフジロックのステージで忘れられない1曲として、コールドプレイの『Every Teardrop Is a Waterfall』を挙げた。

Coldplay - Every Teardrop Is a Waterfall (Official Video)

クリス:2011年のフジロックで聴いた曲で。この年は東日本大震災から4カ月経ったころの開催でした。このときは、まだいろいろ海外アーティストは日本の状況に懸念を示していたというか。まだ海外から来てくれるアーティストは少なかったなかで、コールドプレイが来てくれて。この年のフジロックのトリを務めたんですよね。2011年の震災は、僕の人生のなかでいちばん不安で悲しく怖かった時期だったんですけど、コールドプレイがそれを洗い流すかのごとく。ステージでこの曲がかかったときに雨が降り始めて、多くの照明に照らされて、宝石の涙のように雨が降ってきて。そこで『Every Teardrop Is a Waterfall』をやって。

亀田:タイトル通りの光景が広がったわけですね。

クリス:「一粒の涙は滝のごとく」という。僕も号泣していたけど、会場のみんなも号泣していたんじゃないかな。本当に感動的で、悲しみを乗り越えて希望の光が見えたという、まさにあれほど音楽の力を(感じたことはこれまでになかった)。それも聴くだけではなくて、苗場の自然のなかでコールドプレイが演奏してくれている、多くの仲間たちが何千人もいるなかで、この曲を共有できたのは、僕にとっては一生に残る絵画のような記憶でした。あの試練、あの悲しみを乗り越えるということでは、まさにこの曲以外ないかなって気がしましたね。

ギプスをした手を高らかに挙げて「すげえロックだ」って

続いて、クリスはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Stone Cold Bush』をセレクトした。

Stone Cold Bush (Remastered 2003)

クリス:これはなんて言ったって、第1回のフジロックで大トリを務めたレッチリの曲なんですよ。この年は2日間の予定だったんですけど、初日、フェスが始まったときから雨が降っていて、雨から嵐へ。やむなく初日の夜にオーガナイザーがステージで「明日はキャンセルになった」と。その日の最後のステージを飾ったのが、レッチリだったんです。これも逆境と言いますか、このまま続けられるのか続けられないのか。その状況下でとにかくかっこいいステージだったんですよ。その前に、レッチリは来日しないかもしれないって事故が起こっていて。ボーカリストのアンソニー・キーディスがオートバイで事故って、手にギプスをしてたんですよ。ステージでその手を高らかに挙げて「すげえロックだ」と思って。まさにロックフェスって感じでしたよね。

熱気が湯気となり霧のような光景が広がっていた

3曲目にクリスは、ブランキー・ジェット・シティの『SOON CRAZY』を選曲した。

Soon Crazy

クリス:これは2回目の苗場ですよね。2000年のフジロック。ブランキーにとって、解散前の最後のライブがフジロックのGREEN STAGEだったんですよ。日本人アーティストとしてGREEN STAGEで初めてのヘッドライナーでした。たしか、それまでは大きなステージで日本人のヘッドライナーはいなかったんです。

亀田:このころから新しい日本のロック像というか、日本のアーティストがむき出しに音楽をやっていくかたちが浸透していった気がするんですよね。

クリス:ブランキーが出てきて、日本のロックってグループサウンズのときからあったし、それからもいっぱい出てきたけど、日本のロックって何だろうって。アメリカでもイギリスでもない、日本独特のロック感っていうところで、ブランキーがシーンに現れたときに「これだ!」ってパズルができあがったと強く感じて。そんなブランキーは10年間活動して、ラストダンスがフジロックだったんですよね。そのときがすごいライブで。みんなの熱気が湯気となり、霧みたいになって。

亀田:天候じゃなくて。

クリス:スモークマシンを焚いてるんじゃないかってくらい、本当にヤバかった。ブランキーの有終の美を観るために全身全霊で「ありがとう!」って想いが、あの湯気です。信じられないほどの光景でしたよ。

ステージにお客さんを上げすぎてしまい…

最後に、クリスはイギー・ポップの『Lust For Life』を紹介した。

Iggy Pop - Lust For Life

クリス:2回目のフジロックなんですけど、それは東京・豊洲で行われたんですよね。いわゆる、街なかにステージが作られていて。イギーは僕の父親と同じで、アメリカ・ミシガン州の出身なんです。僕が13歳くらいのときに、父親の実家に里帰りしたときに見つけたのが、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズの『ロー・パワー』でした。イギーは僕のなかで特別な存在なんだけど、フジロックの2回目はザ・ストゥージズではなくイギー・ポップとして来日して。とにかくイギーはあんなに破綻しているようで幸せな男はいないなっていう感じがまさにロッカーですよね。イギーって必ずステージにお客さんを上げちゃうんですよね。

亀田:そうですよね。

クリス:それで、上げすぎちゃって収集つかなくなったんですよ。一般のお客さんでぎゅうぎゅう詰め(笑)。音は鳴ってるんだけど、バンドが見えない。そこでイギーが「おまえら(メンバー)どこにいるかわからないけど、俺がカウントするからそれで終わりな!」「1・2・3、サンキュー!」って(笑)。

亀田:でも、すごくいいエピソード。

クリス:イギーはそのあと、苗場でもやってるけど、いい人なんです。バックステージから立ち去ろうとしたから、僕が「イギー!」って叫んだら「ヘイ、メン!」みたいにちゃんと挨拶してくれて(笑)。

亀田:イギー・ポップってエキセントリックなイメージは僕もないです。パフォーマンスはグイグイやりますけど、いわゆる反骨精神の音楽っていう。

クリス:そうですよね。彼はデトロイトからはい上がってきたっていうか。彼は小さいときに病気もしていて、その影響でスポーツができなかった幼少時代があったんですけど、そこが自分のエネルギーにもなって、いまではアメリカを代表するロッカーですからね。

亀田:2025年のフジロックで注目しているのは?

クリス:これぞフジロックっていうか、いままでのキャスティングにも感じられるけど、これからのフジロックのあり方みたいなのも暗示するようなラインナップですよね。

亀田:ヴルフペック(7月26日(土)に出演予定)が大好きだから、久々に「きたっ!」って感じ。僕も今年はお客さんとして観に行きます。何か一緒にしますか(笑)?

クリス:苗場食堂で毎年、演奏しているので。

亀田:じゃあ、混ぜてもらいます(笑)。

2025年のフジロックは、7月25日(金)〜27日(日)に苗場スキー場で開催する。詳細は公式サイトまで。

『DEFENDER BLAZE A TRAIL』では、音楽を愛するゲストを迎え、人生に寄り添ってきた音楽、困難を乗り越えるときに出会った音楽について語り合う。オンエアは毎週日曜21時から。
番組情報
DEFENDER BLAZE A TRAIL
毎週日曜
21:00-21:54

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