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Adoが明かす「理想の姿」とは─宮沢賢治『よだかの星』への思いを語る

Adoが明かす「理想の姿」とは─宮沢賢治『よだかの星』への思いを語る

Adoがワールドツアー「Ado WORLD TOUR 2025 “Hibana”」を振り返り、自身の想いを語った。

Adoが登場したのは、10月13日(月)放送のJ-WAVE『J-WAVE SPECIAL Marubeni THE WORLD IS NOT ENOUGH』(ナビゲーター:サッシャ)。Adoのワールドツアーを音と証言ドキュメントで描く90分のスペシャルプログラムだ。

自分の知らない自分を見つけたい

2025年4月からスタートしたAdoの2度目のワールドツアー「Ado WORLD TOUR 2025 “Hibana”」では33都市、全34公演を開催。本人は当初「不安な気持ちが大きかった」と語るが、ほとんどの公演がソールドアウト。そもそも、世界でライブを行うことをAdoがイメージし始めたのはいつごろで、どのようなことがきっかけだったのだろうか。

Ado:はじめは、正直世界に行くことは想像していませんでした。でも、初めての日本でのツアーを終えてから「私はどこに向かっていくんだろう?」という、不安とは違いますが、「どうしようかな」という気持ちが生まれました。当時私にとってのいちばんの夢は「さいたまスーパーアリーナでワンマンライブをする」ということで、それが2022年に叶って。「終わったあとはどこに進んでいくんだろう」と。「世界に行ってみたい」という想いはそこからですね。もし自分が挑戦できるチャンスがあるのであれば、自分が知らない世界へ飛び出して、「自分の知らない自分を見つけたい」という想いが生まれました。その頃から今まで以上に野心的になったといいますか、「世界へ行ってみたい」と強く思うようになりました。

Adoはさいたまスーパーアリーナでのライブが夢だった理由についても語った。

Ado:もともと、ニコニコ動画が好きで。そのニコニコ動画でボーカロイドや歌い手というものに触れていたのですが、毎年開催される「ニコニコ超パーティー」というイベントがさいたまスーパーアリーナで行われていて。はじめは、そのイベントに出演したいという想いがあったのですが、その夢も抱きつつ、「さいたまスーパーアリーナをひとりで埋められるようになったら、それはすごいだろうな」という想いが段々と生まれてきまして。そこから、自分の人生のいちばんの目標として「さいたまスーパーアリーナでワンマンライブする」というものを掲げました。

日本のアーティストとしては歴史に残る規模のツアーとなった「Ado WORLD TOUR 2025 “Hibana”」。予想のはるか上をいく、破格のスケールのワールドツアーの幕が上がったのは2025年4月26日。会場はさいたまスーパーアリーナだった。

Ado:やはり、憧れとしていたさいたまスーパーアリーナに帰ってくることができたことは嬉しかったです。ちなみに、(2022年に初めて)さいたまスーパーアリーナでワンマンライブをしたあと、その年の10月に「(ニコニコ)超パーティー」にもありがたいことに出演させていただきました。「超パーティー」ぶりにさいたまスーパーアリーナに立ち、(ワールドツアーを)スタートにすることができたのは「ついに始まるんだ」「やってやるぞ」という気持ちでした。

「Ado WORLD TOUR 2025 “Hibana”」での海外最初の訪問地はタイ・バンコク。前回、2024年2月から4月にかけて行われたワールドツアー「Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish”」の際も、最初に訪れた場所だ。

Ado:タイのみなさんの情熱にいつも救われているなと思いまして。というのも、去年の世界ツアー「Wish」を行うまで一度も海外に行ったことがなかったのですが、人生初海外、初海外ライブがタイでした。すごく不安でしたが、イントロが流れた瞬間にタイのみなさんがすごく熱狂的に歓声を上げてくれて、「こんなに喜ばれているんだ」と感じることができました。それで一気にほぐれたといいますか、張っていた不安な気持ちが全てほどけたんです。そういった経験があったので、またバンコクに来られてうれしいという気持ちがありました。

ツアータイトルに込めた想い

AdoはワールドツアーのなかでボカロP、DECO*27の『ヒバナ』をカバーしている。ワールドツアーのタイトルも『Hibana』だが、どのような想いでつけたタイトルなのか、そしてDECO*27の『ヒバナ』をカバーした理由を語った。

Ado:(タイトルを)日本語にしたいなという気持ちがぼんやりとありました。そのなかで「Hibana」になったのは、今回のこのツアーがAdoというもの、そして日本を知っていただくきっかけになってほしいなという想いがありまして。そのきっかけを表わす単語があればいいなと思いまして、それが「Hibana」かなと。小さな火でもどんどん燃えたぎれば強大な炎となり、すべてを照らすような大きな力となり、大きな光となる。たとえ小さな火でもいつかは大きくなるかもしれないという、その期待と願いを込めて「Hibana」にしようと思いました。せっかく「Hibana」にするのであれば、私はボーカロイドと歌い手というものに助けられてきたので「歌ってみた」という文化ももっと広げたいと思い、DECO*27さんの『ヒバナ』を歌わせていただきました。今回「Hibana」というタイトルを通して、たくさんの方に楽しんでいただけるライブになっていたらいいなと思います。

日本という国に対しての想いもあるとAdoは続けた。

Ado:私には、世界を目標にして、かつ世界を相手に歌を歌うことで、日本のみなさんに貢献したいという想いがあります。私がボーカロイドや歌い手、日本の文化に救われたからこそ、プライドを持って「私が好きだ」と思うものを、よりたくさんの人々に伝えたい。私をきっかけにして、日本という国や文化がよりよく、もっと大きくなって、世界中で輝いてほしいという想いがあります。私がその先頭に立ちたいという想いではなく、いまの私にできることを100パーセント成したいという想いです。私にとって世界を相手にするということは、日本へ恩返しするということなのです。

6月のベルギーのアントワープ公演から、Adoのワールドツアーはヨーロッパ編へと突入。ベルリンではUber Arena、ロンドンではThe O2、パリではAccor Arenaと大規模な会場が軒並みソールドアウト。ヨーロッパでも熱い歓迎を受けた。

Ado:「ロンドンのO2は日本の武道館に近いところだ」というお話を聞いて、「そんなところがソールドアウトしたんですか?」という衝撃を感じました。ビリー・アイリッシュやブルーノ・マーズも立ってきた会場だったので、そこに自分が立つという実感が不思議といいますか。いま名前を挙げたおふた方は大スターも大スターだと思っているので、そんな方たちと同じステージにいまから立つんだという不思議な気持ちがありました。

新曲『MAGIC』をフルサイズでオンエア

番組では、10月31日(金)にデジタルリリースされたAdoの新曲で、アニメ『キャッツ❤アイ』のオープニングテーマ『MAGIC』をフルサイズで初オンエアした。Adoは曲を手がけることになったときの心境を語った。

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Ado:すごくうれしかったです。『キャッツ❤アイ』は私が生まれる前からありますし、私の母親がすごく好きな作品のひとつなので、たぶんいま母親も喜んでいると思います(笑)。そんなレトロな作品がいまこの時代に蘇ることも衝撃ですし、私がオープニングもエンディングも担当させていただけるのは本当にありがたい機会で、精一杯歌わせていただきたいと思いました。

サッシャ:『キャッツ❤アイ』もAdoさんも謎の存在で、誰なのか明らかになっていないという点で共通点があるように思います。そのあたりはどうなのでしょうか。曲作りで大事にしたポイントとあわせて伺いました。

Ado:普段は喫茶店を営む三姉妹。でも、夜はトシ(内海俊夫)を翻弄しながら父親に会うために美術品を盗んでいく怪盗で。私は誰かを翻弄したりはしませんが(笑)、そういった姿というのは、たしかにステージに上がる私と普段生活している私というので似ているところもあるなと思いました。三姉妹の華麗な姿や優雅さを楽曲のなか、歌のなかで表わしたいと思いました。でも、現代らしくリズミカルでキャッチーな楽曲ですので、それを歌としても体現したいなと、いろいろな声を使い分けたり、歌い回しも普段とは異なるもので表現してみたりと、工夫しました。

Adoは中南米でのライブについて振り返り、ライブをするまでは不安を抱えていたことを明かした。

Ado:奥が深いと言うのでしょうか。いちばん想像できませんでしたし、それこそ音楽という文化が根っこからあるといいますか。なんとなく私はそう思っていたので、中南米で私がライブをして、みなさんを盛り上げられるのかなと。でも、「いやあ、さすがだな」と思いました。それこそパッションといいますか、全力で「待ってました! 音楽最高!」というような感じの大合唱が起き、演者としてもすごく楽しかったです。

ワールドツアーは8月24日のハワイ・ホノルルで最終公演を迎えた。番組ではホノルル公演でのMCの様子をオンエアし、Adoは当時の胸中を振り返った。

Ado:グッときましたね。もう終わっちゃうんだと思いましたし、ホノルルのきれいな海がなおさらフィナーレ感がありました。こんなに広大で素敵な、きらきらと輝く海のそばでいよいよフィナーレが飾られるんだと、ジーンとくるものがありました。

Adoは、11月からドームツアーを開催する。11月11日(火)、12日(水)に東京ドーム公演、11月22日(土)、23日(日)に京セラドーム大阪公演を行う。ツアータイトルは「Ado DOME TOUR 2025『よだか』」。Adoはツアータイトルに込めた想いについて語った。

Ado:「よだか」は鳥のことですが、私は宮沢賢治さんの作品が好きで。宮沢さんの作品の『よだかの星』に影響を受けています。「よだか」と私はけっこう似ているな、重なるなと感じる部分がありまして。作品のなかでは、周りから酷い扱いを受けて「寂しい鳥」として描かれていると思います。その「よだか」が空の高いところまで羽ばたいて、羽ばたいたあとに一気に身をまかせて自分が星になるという描写をみて、「私もそうなりたい」と思いました。

そこにはAdoが目指す「理想の姿」があるという。

Ado:星になって輝き続けるという描写が、私が理想とする姿といいますか。そもそも、Adoというものは私にとって理想の姿であって、私は「理想の姿Ado」にずっとなりたいと思いながら歌ってきたところもあります。星になった「よだか」を見て、私もそうなりたいですし、これからそうなっていかなければいけないと、ふと思いました。「よだか」というツアーを終えた先は、より一層自分と向き合っていきたいなと思っています。また違う一歩を踏み出さなければいけないなと。そういった意味で「新しい私」というよりは、「なりたいと思っている私」になるための一歩にしたいという想いを込めて「よだか」と名付けました。

Adoの最新情報は公式ホームページまで。

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番組情報
J-WAVE SPECIAL Marubeni THE WORLD IS NOT ENOUGH
10月13日(月曜・祝)
20:00-21:30