「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」が、2024年7月28日まで、東京国立博物館・表慶館で開催中だ。
J-WAVEでは、同展覧会と連動したスペシャル・プログラム『J-WAVE SELECTION Cartier MUSUBI-Dialogue of Beauty and Art』(ナビゲーター:クリス智子)を6月30日にオンエア。ゲストには、フランスに所縁のある文章家の内田也哉子と、俳優の窪田正孝が登場。日本とフランスの文化の共通点や違いや、受け継いでいきたい“絆”について語った。現在、ポッドキャストでも配信しているほか、ウェブメディア「The Fashion Post」で記事も掲載中だ。
【「The Fashion Post」記事】余白からひろがる世界。窪田正孝が対話するカルティエと日本(外部リンク)
【「The Fashion Post」記事】振り返ると、すべてが繋がっている。内田也哉子が対話するカルティエと日本
展覧会は、どのような魅力を持つのか。ここではレポートをお届けする。(J-WAVE NEWS編集部)
まず最初に目に飛び込んでくるのは、日本をはじめとした東洋の様式が反映された作品たちだ。創設者のルイ・カルティエは、ジャポニスムが広がる前から日本に関心を示していたという。展示品の中には、パリの「日本美術の友の会」に属していたカルティエ宛てに送られた、夕食会への招待状の模写もある。手鏡に着想を得た「日本風の鏡」という名の置き時計や、あの“ビリケンさん”が鳥居の上に座っているデザインのミステリークロックなどが並ぶ中、目を奪われたのは印籠型のヴァニティケース。これらは1890年頃の作品。当時ヨーロッパではアール・ヌーヴォーが流行っていたが、カルティエはその流れに乗らず、東洋美術を研究・再解釈して独自のスタイルを展開していったという。130年以上も前から、カルティエと日本の絆が築かれ始めていたことがわかる。
見進めていくと、型紙のモチーフも展示。そこには波模様や鱗模様などがぎっしりと書き込まれており、現在の作品に通ずる緻密さを感じ取ることができるはずだ。実際、そのモチーフは2024年に制作された腕時計にも施されているという。もちろん「日本風」のブローチやイヤリング、葛飾北斎の浮世絵の波をデフォルメ化したような模様のコームなど、年代を問わずに多くの作品が展示されており、楽しむことができる。
その先に進むと、動植物をモチーフにした作品が並ぶ。一つひとつが精巧かつ洗練された作りになっており、思わずうっとりするほど。その中にスズラン、アジサイ、フラワーのミニチュア作品があるのだが、その緻密さに驚く。中でも1908年に制作されたスズランは、一見すると桶のような鉢植えに植えられているようにも見え、ここからもまた日本のテイストを感じることができた。
階段を上がると、これまで日本で開催された主要展覧会の歴史がわかる展示へ。有名な「スカラベ」ブローチや「トゥッティフルッティ」ブレスレットなどが展示されており、満足度は十分。個人的には、「パンテール」クリップブローチの美しさに惹きつけられた。同作はウィンザー公爵に販売された立体的なパンテール作品の2作目。カルティエを象徴するパンテール(=ヒョウ)が大きなサファイアに乗っている同作は息を飲むほどに光り輝いていた。
その先は、カルティエと日本の歴史が徐々に現代に近づいていく。日比野克彦や香取慎吾、田原桂一、レアンドロ・エルリッヒなど、1947年、東京・原宿に日本初のブティックをオープンして以降の様々なアーティストとタッグを組んだ作品が連なっている。“カルティエといえば”と言っても過言ではない「トリニティリング」を2022年に阿部千登勢が再解釈した「Trinity for Chitose Abe of sacai」コレクションも展示されており、日本人のセンスとカルティエの親和性の高さを感じられた。
同展では所々にインスタレーションも展示されている。その一つが宮島達男の「Time Go Round」。暗闇の中、1から9までの数字がくるくると周りながら浮遊しており、その没入感は格別だ。同展が日本初の展示とのことなので、ぜひ体験してみてほしい。さらに、ビートたけしが2018年から2023年に制作した新作絵画を同展で初展示。鮮やかな色使いと独創的なタッチの絵画は、老若男女問わず受け入れられそうだ。
カルティエと日本の歴史を知ることができる、貴重な機会である同展。「カルティエ=世界5大ジュエラーの一つ」という広く知られている認識はもちろんのこと、芸術性やアーティストの才能の発掘などに力を入れてきたことを改めて確認し、知見を深めることができるはずだ。
(取材・文=高橋 梓)
・会期
2024年6月12日(水) ~2024年7月28日(日)
・場所
東京国立博物館 表慶館(東京・上野)
画像クレジット:© Cartier
J-WAVEでは、同展覧会と連動したスペシャル・プログラム『J-WAVE SELECTION Cartier MUSUBI-Dialogue of Beauty and Art』(ナビゲーター:クリス智子)を6月30日にオンエア。ゲストには、フランスに所縁のある文章家の内田也哉子と、俳優の窪田正孝が登場。日本とフランスの文化の共通点や違いや、受け継いでいきたい“絆”について語った。現在、ポッドキャストでも配信しているほか、ウェブメディア「The Fashion Post」で記事も掲載中だ。
【「The Fashion Post」記事】余白からひろがる世界。窪田正孝が対話するカルティエと日本(外部リンク)
【「The Fashion Post」記事】振り返ると、すべてが繋がっている。内田也哉子が対話するカルティエと日本
展覧会は、どのような魅力を持つのか。ここではレポートをお届けする。(J-WAVE NEWS編集部)
作品に見る、カルティエと日本の絆
カルティエが日本に最初のブティックを開いてからの50年を記念した「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」。これまでカルティエと日本を結んできた様々なトピックと作品、そしてカルティエ現代美術財団と日本のアーティストを繋ぐ作品、という2軸で構成されている。本稿ではカルティエファンの方も、そうでない方も、思わず見入ってしまうであろう同展についてご紹介したい。まず最初に目に飛び込んでくるのは、日本をはじめとした東洋の様式が反映された作品たちだ。創設者のルイ・カルティエは、ジャポニスムが広がる前から日本に関心を示していたという。展示品の中には、パリの「日本美術の友の会」に属していたカルティエ宛てに送られた、夕食会への招待状の模写もある。手鏡に着想を得た「日本風の鏡」という名の置き時計や、あの“ビリケンさん”が鳥居の上に座っているデザインのミステリークロックなどが並ぶ中、目を奪われたのは印籠型のヴァニティケース。これらは1890年頃の作品。当時ヨーロッパではアール・ヌーヴォーが流行っていたが、カルティエはその流れに乗らず、東洋美術を研究・再解釈して独自のスタイルを展開していったという。130年以上も前から、カルティエと日本の絆が築かれ始めていたことがわかる。
その先に進むと、動植物をモチーフにした作品が並ぶ。一つひとつが精巧かつ洗練された作りになっており、思わずうっとりするほど。その中にスズラン、アジサイ、フラワーのミニチュア作品があるのだが、その緻密さに驚く。中でも1908年に制作されたスズランは、一見すると桶のような鉢植えに植えられているようにも見え、ここからもまた日本のテイストを感じることができた。
階段を上がると、これまで日本で開催された主要展覧会の歴史がわかる展示へ。有名な「スカラベ」ブローチや「トゥッティフルッティ」ブレスレットなどが展示されており、満足度は十分。個人的には、「パンテール」クリップブローチの美しさに惹きつけられた。同作はウィンザー公爵に販売された立体的なパンテール作品の2作目。カルティエを象徴するパンテール(=ヒョウ)が大きなサファイアに乗っている同作は息を飲むほどに光り輝いていた。
没入感のあるインスタレーションも
ここでカルティエ財団と日本のアーティストを繋ぐ作品群に変わっていく。まず目に飛び込んでくるのは、イッセイ・ミヤケの作品たち。その先には、ビートたけし、森村泰昌、横尾忠則、中川幸夫などのアート作品、次のルームには杉本博司、川内倫子、荒木経惟、森山大道、ウィリアム・エグルストンの写真作品が展示されており、川内のスライドショー「Cui-Cui」も上映されている。同展では所々にインスタレーションも展示されている。その一つが宮島達男の「Time Go Round」。暗闇の中、1から9までの数字がくるくると周りながら浮遊しており、その没入感は格別だ。同展が日本初の展示とのことなので、ぜひ体験してみてほしい。さらに、ビートたけしが2018年から2023年に制作した新作絵画を同展で初展示。鮮やかな色使いと独創的なタッチの絵画は、老若男女問わず受け入れられそうだ。
(取材・文=高橋 梓)
展覧会の詳細
カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話・会期
2024年6月12日(水) ~2024年7月28日(日)
・場所
東京国立博物館 表慶館(東京・上野)
画像クレジット:© Cartier