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アジア人の表現は「哀愁」がある─Night Tempoがシティポップを例に分析

アジア人の表現は「哀愁」がある─Night Tempoがシティポップを例に分析

DJ/プロデューサーのNight Tempoが、日本の音楽と出会ったきっかけや韓国の音楽シーンについて語った。

Night Tempoが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。オンエアは8月11日(金)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談議を繰り広げる番組だ。

この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。Night Tempoはおしゃぶり梅昆布、品川巻き、黒ごま寒天もちを持参し、ビールとともに楽しんだ。

人生を変えたパソコンとの出会い

Night Tempoは韓国・ソウル出身。あまりしゃべらず、外にも出ないような幼少期で、小学2年生くらいまでずっと寝ていたと打ち明ける。

Night Tempo:全部つまらなくて。

クリス:どこから変わったんですか。

Night Tempo:最初のきっかけはパソコンの存在を知ってからですね。パソコンを買ってもらって、そこから中毒になって。小学2年の末くらいでした。そこから職業まで続きました。もともとプログラマーだったんです。5年前までサラリーマンをやってて。だから好きなパソコンの仕事もやって、パソコンでできることで健康な趣味は何があるのかなって思ったら音楽作りがあって、たまたま趣味で音楽作りをやってなぜか今このスタジオに座っているっていう。

クリス:パソコンの何が救ってくれたんですかね。

Night Tempo:しゃべらなくてもよかったことだと思います。文句を言ってこないから。パソコンって自分の思うまま動いてくれるから、そこが好きだったと思います。

クリス:初めて買ったCDは?

Night Tempo:Winkの『Twin Memories』っていうアルバムを買ってもらいました。ここにヒット曲がだいたい入ってるっていう。

クリス:これはリアルタイムではなくて90年代後半くらいに聴いて。

Night Tempo:リリースしてからけっこうあとに聴きました。

Wink『Twin Memories』

クリス:Winkは韓国でもある程度ポピュラーだったんですか?

Night Tempo:いいえ。韓国にたまに日本版が市場で安く売ってたりしていて、そこでチラッと見たのもあったり。やはり小学生とか中学生はお金がないから買えないんですよね。よくお父さんが日本に行くことができたので、ちょっとお願いしますってことで。たまたま日本が好きな韓国のおじさんがいてWinkと森高千里さんを教えてくれました。

クリス:90年代の韓国と日本の音楽って似てました?

Night Tempo:すごく似てました。理由はグレーかもしれないですけど、どちらかというと韓国と日本って文化断絶になってたんですよね。90年代終わりまで。だから韓国に日本のものがちゃんと流れてこなくて。当時の韓国の音楽を聴いてみると、なんかどこかで聴いたことがあるような……って。

クリス:日本のポップスと韓国のポップスって、例えば演歌のあたりってすごく似てるような気がするんですけど、日本よりもヒップホップは韓国の人のほうがグルーヴが馴染んでるような気がします。世界的に韓国語の持つ独特のリズムがラップに向いているような感じがしていて。ビートがR&Bっぽいのが日本よりも多い気がします。

Night Tempo:当時からロサンゼルスに住んでる人が多くて、そこでヒップホップをやっていた人が流れてきて、結構韓国でも活躍していて。だからもっとアメリカに近いけどアジアのエッセンスが入ってオシャレになったと思います。

アジア人は「哀愁」が体に染み込んでいる

日本のシティポップが人気な理由についてNight Tempoは「今、聴いてもオシャレ」だと答える。

Night Tempo:今の音楽とはまた別物だと思うんですけど、当時みなさんロマンがあって、いろんなものを見て、感じるものをそのまま表現してるから。今は制限が多いですよね。こういう言葉は言っちゃダメ、こういうトピックスはダメとかいろいろあるから、当時のほうが自由に言えたと思います。僕は最初ネットで外国人のコミュニティからいろんな音楽を一緒に作る方法とか情報があるよって交換をしていて、そのときに知って。初めて知ったのは2010年くらいです。最初は中山美穂さん、角松敏生さんを知って。角松敏生さんから山下達郎さんや竹内まりやさんを知って、そこからどんどん聴くようになって、竹内まりやさんの『Plastic Love』も知って。僕が所属していたコミュニティでは2014年くらいにはすごく有名なネタになっていました。

竹内まりや『Plastic Love』

クリス:今、韓国は世界的に音楽を発信するカルチャーになっていますが、シティポップも実はデイヴィッド・フォスターとかのアメリカのウエストコーストのサウンドに影響を受けていたと思うんです。例えば山下達郎さんとかのサウンドの違いってなんでしょう? 歌詞なのかな。

Night Tempo:詞もあるんですけど、表現について例えばアジア人はなぜか体に染み込んでいるのが、「悲しい」ですよね。でも向こうは「フィーリング」ですよね。そこの差だと思います。

クリス:なるほど。哀愁っていう部分ですね。

Night Tempo:しかも同じ曲を日本で日本の歌手が日本語にして歌ったりしたときは、雰囲気が完全に違うんですよね。そういうのがアジア人のソウルだと思います。

韓国の音楽シーンが世界に広がったきっかけは?

話題は韓国の音楽の変化について。韓国は長年かけて日本色からアメリカ色に移行していったとNight Tempoは語る。

Night Tempo:どちらかというと日本のプロデューサーがBIGBANGの初期の曲とかを書いているけど、水面下でどんどん日本の色からアメリカの色に変わって、それが馴染んでいつの間にか洋楽ベースになっていったってことですね。きっかけはPSYの『GANGNAM STYLE』。最初はYouTubeとかSNSでバズって流れが作られていって、そのあとにBTSとかそういうのがバーンと受けて、そこからアメリカも馴染みがあるから韓国からのものなのかってことで、ただただ聴いてくれる。そういうきっかけがあるからっていうのは大きいですね。

Night Tempoは「韓国はトレンドが変わるのが早い」と続ける。

Night Tempo:去年はやったものは今年は終わりとか。でも日本の方って一度好きになるとずっと好きなんですよね。その差もあると思います。僕はどちらもいいと思います。シーンが長く持つことも大事だと思いますし。韓国はただただ変わっていくのが早いからどんどん対応していくんですよね。そこがちょっと違うところなのかなっていうのは両国に行ってみて思うことではあります。

そんなNight TempoとJ-WAVEがタッグを組み「4」人の豪華ゲストを迎える一夜限りの歌謡ショー「祝・日比谷野音100周年 J-WAVE & Night Tempo present ザ・ナイトテン4」を11月4日(土)に東京・日比谷野外大音楽堂で開催する。

「祝・日比谷野音100周年 J-WAVE & Night Tempo present ザ・ナイトテン4」
https://www.j-wave.co.jp/special/nightten4/

クリス:これはNight Tempoさんがプロデュースするってことですよね。

Night Tempo:そうですね。今まで自分がやってみたかったことをJ-WAVEさんが叶えてくださって、思ったより大きいことになってるなって思ってちょっと責任を感じています。

このイベントには野宮真貴、早見 優、松本伊代、渡辺満里奈が登場。またNight TempoがプロデュースするFANCYLABOも出演する。

クリス:FANCYLABOはどんなユニットなんですか。

Night Tempo:自分が作りたかったアイドルユニットがあって、音楽は僕が作って、アイドルシーンの2人が歌ってくれるんです。音楽性は完全に僕寄りで、曲を表現してくれるのが元アイドルの2人で。モチベーションになったのはWinkで、2人がカッコいい音楽をいろいろ表現するっていう。でもただのアイドルユニットじゃなくて、普通に音楽ユニットとして観てもらえたらうれしいです。

Night Tempoの最新情報は、ユニバーサル ミュージックの公式サイトまで。

番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。

・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html

『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週金曜23時から。

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番組情報
SAPPORO BEER OTOAJITO
毎週金曜
23:00-23:30