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なぜフジロックが「ふるさと納税」で楽しめるようになったのか? その想いやメリットを関係者に聞いた

なぜフジロックが「ふるさと納税」で楽しめるようになったのか? その想いやメリットを関係者に聞いた

フジロックのチケットが、ふるさと納税の返礼品になった──今年、こんなニュースが音楽ファンを驚かせた。フジロックを主催する株式会社スマッシュ 執行役員の石飛 智紹さんは、こう語る。

「正直、ふるさと納税のような制度の導入を待っていたところがあります」

いったい、なぜ? その背景にある想いや、フジロックと湯沢町との歩みとは。また、ふるさと納税はどのようなメリットがあるのか、関係者へのインタビューで解き明かしていく。

話を聞いたのは、石飛さんと、新潟県湯沢町の町長である田村正幸さん、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンク 代表取締役 川村 憲一さん。聞き手を務めたのは、フジロックのオフィシャルプログラムである『GRAND MARQUEE』のナビゲーターであり、音楽家のタカノシンヤ。(J-WAVE NEWS編集部)

フジロック開催地は「世界でも稀に見る環境」

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参加メンバー:(上段左)新潟県湯沢町の田村正幸町長、(上段右)株式会社スマッシュ 執行役員の石飛 智紹さん、(下段左)ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンク 代表取締役 川村 憲一さん、(下段右)タカノシンヤ

タカノ:最初に町長の田村さんにお伺いします。湯沢町で暮らす人々にとって、フジロックというのはどんな存在なのでしょうか?

田村町長湯沢町にとっては、夏の風物詩であり、なくてはならないものですね。それは経済面においても言えることで、特に夏の観光はフジロックにシフトしています。

タカノ:フジロックのために、日本全国、ひいては世界中から人が集まりますもんね。

田村町長:本当に世界中から湯沢に来てくださって。周辺の店舗も大変喜んでいます。湯沢町にとって本当にありがたいイベントです。

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スキーなど冬のイメージがある湯沢町だが、四季折々で自然の美しい景色を楽しめる。写真提供:湯沢町

タカノ:スマッシュの石飛さん、フジロックにとっては湯沢町、苗場ならではの魅力はどういったものなのでしょうか?

石飛:フジロックは“自然と音楽の共生”を目指してスタートしました。その点、湯沢町や苗場は、深い森と山に囲まれていて、澄んだ空気、清らかな水の流れがあります。そんな素晴らしい土地の国立公園でフェスができるということにまず喜びがあります(※フジロックを開催しているのは上信越高原国立公園の一角)。また、スキーリゾートなので一定のインフラが整っていることも、フェスを開催する上でとても大きいことですね。あとは深い森と山が、音を吸音してくれるんです。ですから、大音量で音楽を鳴らしても残響ゼロ。これは世界でも稀に見る環境です。そして、何よりも町長をはじめ、地元の方々の温かな歓迎ムード。それが海外から来る方も含め、来場者の心に残る理由なんじゃないかなと思います。

タカノ:僕も先日、ボードウォークを整備するボランティア活動に参加させていただいて、湯沢町のあたたかみを感じました。

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会場の森を縦貫する「ボードウォーク」。その修繕・整備には、地元の人をはじめとするボランティアも関わっている。ボランティアに参加したタカノは、2023年のフジロックが初めての参加となるため、『GRAND MARQUEE』ではフジロッカーたちに魅力を聴くコーナー「ROAD TO FUJIRODK」を毎週水曜日にオンエア中だ

涙するほどの悔しさを経て、絆がより強まった

タカノ:フジロックは20年以上湯沢町で開催されていますが、開催を重ねて進化していく中で、湯沢町とスマッシュのやりとりも多かったと思います。特に印象的だったやりとりはありますか?

田村町長:よりよいものにしていこうということで様々な協議はしてきましたが、やはり特に印象的だったのは3年前、新型コロナウイルス感染症によってフジロックが開催できなかったときですね。「開催してほしい」という声も多かったですし、主催者としても「やりたいけどできない」という状況で。その時期のオンライン会議で、石飛さんが涙されたんです。その涙に、石飛さんのフジロックへかける強い想いを感じましたし、改めて私どもは開催地として、しっかりと応援しなければならないと思いました。

石飛:2020年はフジロックが始まってから初めての中止。原因が原因なだけに、本当に悔しい気持ちで中止をお伝えしたのを今でもよく覚えています。翌年に開催できたことも含め、コロナ禍を、湯沢町の皆さんと観客の皆さんと一緒に乗り越えてきたことで、特別な絆を形成できたんじゃないかなと思っています。

「ふるさと納税とフジロック」そこにある想い

タカノ:そうやって築いてきた湯沢町とフジロックの関係性が高じて、今年から湯沢町のふるさと納税の返礼品として、フジロック’23の入場券や会場で使える食事券などが加わりました。そもそも返礼品としてフジロック関連のものが加わったのはどういった経緯だったのでしょうか?

石飛:実は導入のきっかけになった出来事があるんです。それは2004年の新潟県中越地震。中越地震が起きたとき、フジロックのファンのみなさんが自分たちの第二の故郷である新潟の皆さんのことを心配されていて、当時のBBS(掲示板)で「スマッシュは何かやらないんですか?」という意見がたくさん我々のもとに届いたんです。それをきっかけにチャリティーコンサートを、町と共同主催で開催して、結果、数千万円の義援金を新潟県へお届けすることができました。そのときのことがずっと脳裏にありまして、正直、第二の故郷を思いやるファンの皆さんの声が地元に届けられる、このふるさと納税のような制度の導入を待っていたところがあります。

タカノ:そうだったんですね。そもそもふるさと納税にはどのようなメリットがあるのか、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営している株式会社トラストバンク・代表取締役の川村さん、改めて教えてください。

川村:ふるさと納税にはいろいろなメリットがありますが、今回は5つほど挙げさせていただきますね。まず1つ目は、自分の好きな街、お世話になった街を、寄付という形で応援できること。2つ目は、寄付の使い道を指定できること。街の活性化に使ってほしいとか、子育て支援や教育支援に使ってほしいとか。災害があったときには災害支援として寄付することもできます。

3つ目は返礼品がもらえること。これまではその土地の特産品などのイメージが強かったと思いますが、最近は旅行券やフジロックの入場券のような体験型のものも増えているんですよ。4つ目は税金控除。上限はありますが、2000円を除いた金額が、翌年の住民税の控除(※1)や所得税の還付(※2)という形で戻ってきます。返礼品がもらえて、税金も控除されると考えると、「お得」という考え方もできるのかなと思います。最後は、今まで知らなかった日本各地の魅力を再発見できるということ。単純に税控除の制度ということではなく、それを超えて地域とのつながりのきっかけになれる、ひいては自分自身の価値観を見つめ直すような制度になっているんじゃないかなと思います。

※1 控除とは、税金から一定の金額を差し引くこと / ※2 還付とは、納めた税金の一部が戻ってくること
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具体的に、どう湯沢町の役に立つのか?

タカノ:このふるさと納税ですが、具体的には湯沢町のどのようなことに活かされるのでしょうか?

田村町長:ふるさと納税で納めていただいた税金の使い道としては「美しい自然や景観を守り、安全なまちづくり」「人口減少を抑制し、持続的な観光その他産業の振興」「安心して暮らすための福祉・保健・医療の充実」「未来を担う子どもたちのための子育て・教育の充実」「その他、町長が必要と認める事業」の5つから選べるようになっています。湯沢町は現在“観光立町宣言、湯沢町「君と一緒に暮らす町」”というスローガンを掲げていて、中でも特に、少子高齢化、人口減少の課題解決には力を入れています。平成28年からは医療費の無料化に取り組んでいますし、今年からは保育園も含めて給食費を無償化しています。また湯沢に住みながら東京へ働きに行く際の交通費等に関しても月5万円負担するというような取り組みも行っています。そういった持続可能な街、安全なまちづくりに役立たせていただければと思っております。

タカノ:僕個人的にも、この取り組みをきっかけに、フジロックだけじゃなく、その湯沢町自体にも関心を持ってもらえたらいいなと思っています。ちなみに、今からふるさと納税をしてもフジロックには間に合うのでしょうか?

川村:もちろん! フジロック関連の返礼品の寄付は締め切りが6月30日までですので、それまでに申し込みをしてもらえば間に合います。ただ用意数には限りがあるので、この記事を読んだ方はなるべく早めに寄付いただいたほうが良いかなと思います。あと、すでにフジロックのチケットを購入してしまったという方もいらっしゃると思いますが、入場券だけでなく、フジロック会場内飲食店限定のお食事券も返礼品としてご用意いただいていますので、ぜひそういうものを活用していただければと思います。

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「ふるさとチョイス」より、フジロック関連の返礼品の一部。各日のチケットやお食事券などを取り揃える。

フジロック会場内で楽しめるグルメは?

タカノ:お食事券、僕も気になっていました。ということで、せっかくなので、フジロックでオススメの食事や店舗があったら教えてください。

田村町長:地元からもたくさんの店舗が出店させていただいていて、一つに絞るのはなかなか難しいですが、一番はやはり苗場食堂ですね。湯沢産や南魚沼産のコシヒカリに野沢菜や切り刻んだ漬物を乗せた「きりざいめし」が人気メニューです。地元ならではのメニューですし、価格も大変安いので、ぜひ食べていただければと思います。あとは、地元のホテル関係者が出店している鮎の塩焼きもおいしいです。この鮎の塩焼き、なんといってもビールにぴったりです(笑)。ほかにもたくさん地元の人が出店している店舗はありますので、ぜひ地元グルメを味わってみてください。

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苗場食堂は、場内最大のホスピタリティ・エリア「OASIS」にある。夜は桟敷席がステージに。



川村:弊社の担当者は、越後もち豚のもち豚串を必ず毎年食べると言っていました。あまりにもいつも担当者が話しているので、もち豚串はインプットされていて、フジロックに行ったら絶対に食べたいなと思っています。

石飛:越後のもち豚串は、超人気ですね。それで言うと、例えば新潟県産の津南ポークを扱った料理や、千葉県の白姫豚を使ったメニューなどもあって。豚肉を食べ歩くなんてのも面白いかもしれませんね。やっぱりみなさん、お肉をよく食べるんですよ。でもそうすると翌朝、ちょっともたれるので……先ほど町長がおすすめされていた苗場食堂でコシヒカリのごはんを食べて腸を整える、ということで、特に苗場食堂はいつも朝が長蛇の列です(笑)。ほかにもビーガンラーメンやプレミアたこ焼きなど、本当に多種多様なメニューがありますので、ぜひいろいろ食べてみてください。

タカノ:お話を聞いているだけでおなかが空いてきてしまいました(笑)。もう一つ気になる返礼品がありまして。フジロックの森プロジェクトボックスティッシュ。こちらが生まれた背景も教えていただけますか?

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石飛:これは「フジロックの森プロジェクト」の実行委員会が用意している返礼品になります。これまでにも開催地周辺の森林整備で伐出された間伐材から紙を作り、「フジロックペーパー」として、フジロックのポスターやフライヤーに活用してきました。これが、いよいよボックスティッシュを作れるまでに進化しまして。ふるさと納税の返礼品としても、ボックスティッシュを加えました。使えば使うほど湯沢の森林が整備されるという自然に優しいボックスティッシュとなっていますので使っていただきたいですね。

タカノ:箱のデザインもカッコいいですよね。日常生活にフジロックが入り込んでいくようなイメージで。

石飛:そうですね。フジロックの森を彷彿とさせるようなデザインになっています。J-WAVEのスタジオやトラストバンクさんのオフィスでもぜひ使ってください(笑)。

タカノ:僕も使いたいと思います!

恩返しが、自分へのサービスにも繋がっていく

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タカノ:では最後に、フジロックで湯沢町に訪れる方や、ふるさと納税を迷われている方にメッセージをお願いします。

川村:ふるさと納税をするということは、自治体さんが持っている予算だけでは解決できないことの力になる、貢献できるということ。つまり、その街の未来を作るということなんです。皆さんの寄付で、フジロックと湯沢町の未来をさらに活気溢れるものにしていただけたらうれしいですし、我々もその一員になりたいなと思っています。

石飛:湯沢町へふるさと納税することで、フジロック開催地への直接的な納税になるんです。それがひいては来場する皆さんに対してのサービスにつながっていく。まずはそのことを知ってほしいなと思います。個人的なことですが、私は自身の地元の北九州市と、湯沢町と、「朝霧ジャム」開催地の富士宮市、それぞれにふるさと納税をしています。そもそも主体的かつ能動的な住民税の納税って、これまでなかったこと。自分で選んで納税できるというのは、すごく素敵なことだと思うので、まずはふるさと納税を体験してみてほしいです。

田村町長:このフジロックのふるさと納税をしていただくことで、湯沢町の応援につながるということは先ほどからお話しさせていただいている通りです。しっかり、持続可能な街づくりに役立たせていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。何よりもまず、ふるさと納税をしてフジロックという世界的なロックフェスを楽しめるということは、私の立場でこんなことを言うのは申し訳ないですが……“お得”なことだと思います。コロナ禍での制約のある大変な困難な3年を乗り越えて迎える今年のフジロック。湯沢の豊かな自然の中で、今までの疲れをとっていただきながら楽しんでいただければと思います。

タカノ:実際にフジロック関連のふるさと納税をされた方の応援コメントを僕も読ませていただいたのですが、本当にフジロックに対する愛や湯沢町への感謝に溢れていて。湯沢町とフジロックは多くの方の人生を豊かにしているんだなと改めて思いました。今日は本当にありがとうございました!

(取材・文=小林千絵)

関連リンク

・「ふるさとチョイス」内のフジロック関連返礼品のページ
https://www.furusato-tax.jp/feature/a/fujirock2023_0112

・「FUJI ROCK FESTIVAL '23」公式サイト
https://www.fujirockfestival.com/

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