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坂本龍一の姿勢から、どんな影響を受けた? Bialystocks・甫木元 空が音楽ルーツを語る

坂本龍一の姿勢から、どんな影響を受けた? Bialystocks・甫木元 空が音楽ルーツを語る

2人組音楽ユニット、Bialystocksのボーカル・甫木元 空が、初めて買ったCDや、坂本龍一から受けた影響を語った。

甫木元が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談議を繰り広げる番組だ。オンエアは4月21日(金)。

この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。甫木元は野村煎豆加工店の「ミレービスケット」を持参し、ビールとともに楽しんだ。

音楽の原点は、ザ・ビートルズ

Bialystocksは2019年に結成。4月7日にデジタルシングル『頬杖』をリリースした。



そして5月5日(金・祝)、6日(土)の2日間、東京・六本木ヒルズアリーナで開催されるフリーライブイベント「J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S Chris Peppler EDITION」に出演する(Bialystocksは6日に出演)。

甫木元はBialystocksの活動について「やっとアルバムができる、ライブができるというタイミングでコロナ禍になってしまった」と語る。

甫木元:(ライブで)歓声とかがなかったので、今はそれにいちいち反応しちゃいますね(笑)。

クリス:Bialystocksとしては反応がないのが原点というか、静かに聴いてもらうことが、意図的ではないにせよ、1つのライブのかたちだったんですね。

甫木元:ラジオもリモートが多かったので、こうやって対面で話せるのって単純に“話してる感じ”がしますよね。

クリス:我々もリモートに慣れちゃったから。

甫木元:すごいことになりましたよね。

ここからクリスが甫木元の音楽遍歴を紐解いていく。

クリス:初めて買ったCDはなんだったんですか?

甫木元:ザ・ビートルズの新譜が出るぞっていう話題と共に、父親と一緒にCD屋さんに行って、デザインがカッコよくて、僕が買ったというか父親に買ってもらったんですけど、ビートルズの『Let It Be... Naked』でした。



甫木元:『Let It Be』のアルバムが、2003年に曲順とか収録曲とかちょっと変えたバージョンが出て、これがずっと家の中で小学生のときに流れていました。ミュージシャン一人ひとりをはっきりと意識するようになったのはこのアルバムが原点だなって感じがしますね。

クリス:なるほど。

甫木元:もともとの『Let It Be』のアルバムをポール・マッカートニーがどうやら気に入ってなかったみたいで、こっちのほうがビートルズが本来目指していたものに近いのではないだろうかっていう。でも本人たちは全くノータッチで、エンジニアの人たちが「本当はこういうことをやりたかったんじゃないか」「これが本当の姿なんじゃないか」っていうのを想像したのかわからないですけど、全部許諾したらしくて。

クリス:聴いていてかなり影響を受けました?

甫木元:僕はこっちを先に聴いていたので、オリジナルを聴いたとき逆に違和感があって、それはどうなんだろうなって。

甫木元は「本当か嘘かわからないですけど」と前置きしつつ、甫木元の父はビートルズの日本武道館公演の音漏れを聴きに行くくらい好きだったそうで、「とにかく家でずっと流れてたので、聴くと幼少期の頃を風景と一緒に思い出す」と当時を振り返った。

父親の本棚で見つけた一冊の本

甫木元はミュージシャンでありながら、映画監督としても活躍している。

【関連記事】映画監督としても活動するBialystocks・甫木元空が、ものづくりの原点を見つめ直したときに出会った曲

クリス:幼い頃はいわゆる芸術家になりたいと思ってたんですか。

甫木元:全くなくて。母親がピアノの先生を家でやっていて、父親がミュージカルの演出みたいなことをやってたんですけど、すごく大変そうだったので、自分とはほど遠い世界の話だなって。そういう大変なことを知ってたので、自分がやるって意識は向かなかったんですよ。母親がピアノの先生なのでやらされるんですけど、皿洗いとかしながら「今の音は違う」とか言われるのが本当に嫌で、すぐに挫折してしまいました。音楽は挫折の連続で今まで生きていますね。

クリス:中学、高校あたりはどんな少年だったんですか。

甫木元:聴く範囲はちょっと変わっていって。それこそ父親の本棚に坂本龍一さんが監修した『非戦』(幻冬舎)っていう本があって。
『非戦』(2002年刊)
2001年、9月11日の米国での同時多発テロ事件。それによる米国の報復攻撃に対して坂本龍一を始めとする『非戦』編集チームが、戦争が答えではない。非戦=戦わないことによる平和な世界の実現について考える材料を提供する。大手メディアでは扱われにくいネット上の情報を中心に内外から50人以上の評考を集めた1冊。
幻冬舎ホームページより)

甫木元:いわゆる戦争とか社会問題に対してミュージシャンの向き合い方をしている人たちに、その本からなのか、意識が行くようになって。RCサクセションとか、ビートルズやジョン・レノンが何をしていたのかとか。坂本龍一さんやYMOなど、ひとつの本から枝葉のようにやっと聴けるようになってくるというか。これを誰がプロデュースしていて、とか。この本のデザインも真っ白な表紙に「非戦」とだけ書いてあって、高校生のときに単純に気になって手に取ったんだと思います。

「戦争の匂いを少しでも感じていた人たち」の活動に考えたこと

クリスは「甫木元さんにとって、坂本龍一さんはどんな人でした?」と質問する。世界的な音楽家でありながら、音楽以外にも『非戦』を始めとするメッセージを発信して、“場所”を作っているような印象を受けたと話す。

甫木元:「自分の音楽を文字として具現化して表現している」とはまた違う、“場所”を作っている感じがして。『非戦』で、「どういうふうにみんなで考えようか?」みたいな。

坂本のそうした姿勢に感銘を受けたそうだ。故・大江健三郎さんにも触れながら、「戦争の匂いを少しでも感じていた人たち」が放つ存在感からの影響を語る。

甫木元:今までの反戦運動として、拡声器を持って国会のほうに向かって行くようなデモのかたちもあるんですけど、その前に、「今起こっていることについて自分たちが何もできなかった」こと、例えばジョン・レノンがいくら叫んでもベトナム戦争は終わらなかったりとか、ミュージシャンの声や文章が戦争に立ち向かえなかったあと、じゃあどういう風にするのか?っていうことの、一個の指針を出していたのかなって思っていて。これを引き継ぐことは誰もできないと思うんですけど、下の世代がどういう風に社会に向きあっていくのかを考えていくことが……身につまされるというか。声に出せる人がどんどん亡くなっているなって思いますね。

クリス:教授(坂本龍一)は1952年生まれで、戦後10年以内に生まれていて、教授の場合は国会議事堂の前でシュプレヒコールするのではなくて、教授の音楽にそれが出てるなっていうか。教授の音楽を聴くと、決して軍国じゃないなって気がします。闘争心じゃなくて、愛情というかイノセンスというか、そういうのが教授の音楽の好きなところですね。

【関連記事】坂本龍一が生前に語った、「日本では珍しく言葉とメロディーが一体化している」アーティストは

甫木元:坂本さんは、環境問題や最新テクノロジーに率先して挑んだり、人間と機械にピアノをチューニングしてそれと一緒に共演したり、無垢な音楽、メロディーをやりながら、それとは逆のAI的なものとぶつかり合ったときにどうなるのかだったり……常に実験をされていたというか、「教授」と言われていますけど……僕はお会いしたことがないから(実際は)わからないですけど、ずっと目的地がないなかで実験を繰り返されていた人なんだろうな、と想像しますね。

4月28日(金)23:00-23:30の同番組でも、甫木元がトークをする。放送後から一週間はradikoでも再生可能だ。

【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20230421230001

番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。

・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html

『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週金曜23時から。

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2023年4月28日28時59分まで

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番組情報
SAPPORO BEER OTOAJITO
毎週金曜
23:00-23:30