音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
「今年多かったゴミ」時代を反映した特徴は…芸人でゴミ清掃員のマシンガンズ・滝沢秀一が語る

「今年多かったゴミ」時代を反映した特徴は…芸人でゴミ清掃員のマシンガンズ・滝沢秀一が語る

ゴミ清掃員としても活動するお笑い芸人、マシンガンズ・滝沢秀一が、「ゴミ清掃員の視点から見えるゴミ」をテーマに藤原しおりと語り合った。滝沢が登場したのは、J-WAVEの番組『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』。オンエアは12月3日(土)。

同番組はラジオを「ラボ」に見立て、藤原しおりがチーフとしてお届けしている。「私たちそれぞれの身近にある困りごと」をテーマ(イシュー)に取り上げてかみ砕き、ラボの仲間としてゲストを「フェロー」として迎え、未来を明るくするヒントを研究している。

【関連記事】およそ20年後はごみが捨てられなくなる!? 「処分場の裏話」を、 ごみ清掃員芸人が明かす

ゴミの「量」に驚き

滝沢は2007年と2008年に『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)準決勝に進出したお笑いコンビ・マシンガンズのツッコミ担当。10年前、友人のツテでゴミ収集会社に就職。現在は肉体労働をしながらたまに漫才をする「ゴミ清掃員芸人」として活躍している。2020年10月には環境省のサステナビリティ広報大使に任命。生活や仕事に役立つゴミの意見交換をおこなうクラウドファンディングによるオンラインコミュニティ「滝沢ごみクラブ」、Twitterのハッシュタグ「#ゴミ清掃員の日常」などで発信を続けている。さらに『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』(白夜書房)、『ゴミ清掃員の日常』(講談社)などゴミに関する本を上梓した。

ゴミ清掃員という仕事について、『宇宙人と見つける仕事図鑑』(文響社)から一部抜粋、編集加筆を加えて紹介。「ゴミ清掃員・ゴミ収集員」という仕事は、ゴミ収集・運搬業を行っている会社に入るか、自治体に直接採用される。家庭や店、会社から出されたゴミを集め、処理施設まで運ぶ仕事。2、3人の作業員でチームになり、ゴミ収集車に乗って担当地域を回りながらゴミを集め、収集車がいっぱいになると処理施設へ行ってゴミを輩出する。集めたゴミの分別や収集車をきれいにする洗車もおこなう。

滝沢:いままで芸人しかやってなくてゴミのことなんか考えてなかったから、ゴミの世界に入って一番びっくりしたのは量です。自分がゴミを出すといったら1袋だけだから「大して出てないだろうな」と思うけれども、地域のゴミを回収すると「これだけ出ているんだ」って驚きます。

滝沢は雇用の問題を指摘した。

滝沢:予算が削減されて雇用も削減されると不幸しか生まないなと最近思ってたりしているんです。予算が削減されたから「減車」といって、いままで2台で回収していたところを1台にしちゃうとか。そうなると仕事量が倍になったりするわけなんですよ。

藤原:もう1台分、回らないといけないですもんね。

滝沢:だからどんどん仕事的には大変になっているのかな。

藤原:収集車の台数が予算の関係で減らされるとなったときに、清掃員さんの数も減らされたりするんですか?

滝沢:たとえば3人ずつで乗っていたのが1台だと3人だけになるわけですよね。運転手も2人必要だったのが1人になるわけだから、やっぱり減ります。基本的には自治体の公務員と言われる人ってお金が高いので、なるべく募集しないでこれを減らそうとしているんですけど、これもこれで僕はどうなのかなと思います。地域に密着していたりするじゃないですか。自分の地域のことを全部知っているわけだから、その人たちは意外と「このゴミが出てないな。あの人大丈夫かな?」「あのおばあちゃん大丈夫かな?」と地域の見張り番みたいなことも兼ねていたりするんです。

焼却炉の数が世界1位の日本

エジプトで開催され11月20日に閉幕した、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、アフリカのゴミ問題がクローズアップされた。アフリカでは現在、管理型処分場への埋め立てやリサイクルなどにより適切に処理されている廃棄物は全体の1割未満とされている。自然発生的にできた集積場に野積みされるケースも多く、この集積場がメタンの発生源とも指摘されている。

藤原:日本は焼却炉の数が世界1位ということも知りませんでした。焼却率も世界ダントツです。日本は国土が小さいことから、一度ゴミを燃やして最小限の大きさにしてから埋め立てる必要があるため、世界全体でみて焼却率の数値が高いそうなんです。

滝沢:ゴミって出したら燃やしてそれで終わりみたいなことじゃなくて、ちゃんと最後まで管理しなきゃいけなかったりするんです。面白いのが「ゴミを維持する」みたいな考え方。ゴミって燃やしたらそれでお金はかからないだろうと思われるかもしれませんけど、東京都の最終処分場に雨が降るじゃない? そうするとその灰を通したところが下にしみていって、もちろん海に出ないようにはしているんだけど、これがすごく有害な液体になってしまったりするんです。そうなってくると、それをそのまま下水に流せなかったりするのね。なので、きれいにしてから下水に流したりするんだけど、それが年間25億円かかるのよ。

藤原:かかるなあ。

滝沢:だから、あるだけでお金はかかるんだよね。これがどんどん増えれば増えるほど処理しなければいけない水が増えていったりするから、基本的にゴミは必要最低限に。まあ出さないのはなかなか難しいからね。そういうところをみんなに知っていただけたらうれしいなと思います。

藤原:ゴミは捨てた時点からお金がかかるんだ。

滝沢:かかるんだよねえ。みんなが出したゴミではあるんだけどね。なのでみんなで減らしていくというのが大切かなと思います。こういう最終処分場がなかったら、それこそゴミであふれかえるからね。

ゴミの「捨て方」に性格が出る

滝沢は毎日のようにゴミを回収していると、ふと「これは一体なんだろう」という思いがよぎることがあるという。

滝沢:もちろん生活しているからゴミが出るんだけれども、「ゴミを出すことに飽きないのかな?」と思ったりとか(笑)。まあゴミが出てくるから飽きるわけない。邪魔なわけだから捨てる。むしろちょっと眉間にしわを寄せながら「くさい」みたいな感じで捨てたりするけど、それを回収していると「なんなんだろうな」と思う。

滝沢は「ゴミを全体として見ると、地域のある姿とか、そういう風に見えてくる。地域によって出る傾向や商品が違ったり」という。

滝沢:あとはゴミを個人で考えれば、誰にも相談されないで捨てるから「捨て方」にも性格みたいなのが出たりするんです。ようは資源とかでも缶だったら立てて置く人がいれば、ガラガラガッシャンとする人もいて。この2人は性格が違うなと思ったりするわけなんです。そこにも個性があったりするし、誰にも見られていないときにどういう自分であるかというのが、ゴミなんじゃないのかなと思ったんです。汚く出している人は、ほかでもトラブルが起こるんじゃないのかな? とか。1個ルールを破る人って2個も3個も破る人間なんじゃないのかなって、そういう風に思えてくるんです。

【関連記事】ゴミ出しは“出す”だけじゃない。パートナーに気づいてほしい「名もなき家事」の大変さ

滝沢は近年のゴミの傾向について、羊羹(ようかん)やレトルト牛丼といった、まだ賞味期限も切れていないものがゴミとして捨てられていることに注目。

滝沢:「フードドライブ」って、まだまだ食べられる食べ物を集めて恵まれない方に渡したりするんだけど、そこにすごくいろいろ寄付されたものがあって「これはどういう人たちが渡しにくるんですか?」って訊いたら「コロナ」だって。俺はそのときにピーンときたの。Twitterとかを見ていると芸人がコロナになって大量に食べ物が送られてくる画像が出てくるのよ。地域や自治体によっては送ってもらえるんだよね。「すごくありがたいです。外に出られないから助かります」みたいな。牛丼のレトルトや羊羹などいろいろなものが入っていたりする。たとえばこれが若い人だと食べられるけどさ、年配の方ってそんなに全部食べ切れないじゃない。そういう人たちがフードドライブに持って来たりする。だけどこのフードドライブを知らない人たちは捨てちゃう。これが今年の特徴。

藤原:ゴミを見てその結果に行きつくのがすごいですね。

滝沢:すごくいっぱい食べる人も食べない人も同じだけの量をあげるから、やっぱりそこでゴミが生まれてきちゃうんだよね。

藤原:ゴミにいまの状況が反映されるんですね。

滝沢:ゴミにはストーリーがあるよね。

滝沢は最後に、ゴミと環境に関する教育について語った。

滝沢:いまSDGsをやっているから、若い子は牛乳とか当たり前のように前からとるようになってたりするのよ。「学校で教わった」って言うから、こういう教育みたいなのは5年後10年後にきいてくるんだろうなって思う。これを聴いている人で若い子がいたら、大人になって自分が社会に出ることになったら「あのときこういうことを言っていたよな」っていう人がちょっとでも広がればいいなと思います。

J-WAVE『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
番組情報
HITACHI BUTSURYU TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY
毎週土曜
20:00-20:54