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ヘリコプターが楽器に?  クラシカルDJ・水野蒼生がなんでもありな「クラシック」を紐解く

ヘリコプターが楽器に? クラシカルDJ・水野蒼生がなんでもありな「クラシック」を紐解く

指揮者でクラシックDJの水野蒼生が「なんでもあり」なクラシックの世界を解説した。

水野が登場したのはJ-WAVEで放送された番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。オンエアは5月30日(月)。

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「完ぺきに放送事故」な曲

この日は「あなたはまだ知らない、なんでもありのクラシック」と題してクラシックを特集。水野は「いわゆるみなさんが『クラシック』とイメージするのとはかけ離れたものを今日はお届けしようと思ってます」と意気込んだ。

水野:本当に攻めると放送事故になりかねないんですが。
あっこゴリラ:(笑)。
水野:そこは一応ラジオでかけられる範囲の選曲はしてきました。
あっこゴリラ:たとえばそんなギリギリなものというのはどんなのがあるんですか?
水野:いま聴こえてないですか?
あっこゴリラ:え? なにも聴こえないです(笑)。どういうこと?
水野:ジョン・ケージという作曲家がいまして。
あっこゴリラ:出た出た!
水野:『4分33秒』という、大傑作があるんです。これはたまにピアニストの人が自分のソロコンサートのアンコールとかでやったりするんです。
あっこゴリラ:え、やるんですか? これ一応私も知ってるけど。
水野:ご存知ですか?
あっこゴリラ:有名ですよね。
水野:ちゃんと楽譜もあるんです。
あっこゴリラ:あるんだ!
水野:詳しくは忘れたけど全部で3楽章あるんです。
あっこゴリラ:3楽章あるの!?
水野:それで、全部休符です。本当に振り切ってしまうとここまであるんです。
あっこゴリラ:最初にキワキワなの出してきましたね(笑)。

あっこゴリラが「要するに現代アートみたいなことなんですか?」と質問すると、水野は「現代アートのようにコンセプトがある」と回答。リサイタルの場合は全くの無音状態とはならないため、客席から聞こえる衣擦れの音や呼吸音、その他の環境音を含めて4分33秒間「静寂を楽しむ」意図があるという。

あっこゴリラ:ビックリしたんですけど、コンサートのアンコールで普通にやられたりするんですか?
水野:YouTubeとかで検索すると、けっこう出てきます。カーテンコールで出てきて、座ってピアノの蓋を閉じて、もう沈黙みたいな。
あっこゴリラ:私も「本当にあるのか?」と思ってさっき調べたんですよ。あったの! しかもフルオーケストラでね。チューニングとかもちゃんとするのよ。
水野:マジですか(笑)。それは俺も観たことない。
あっこゴリラ:「ここから曲始まるのかな?」と思ったら、マジで全員で静まり返るっていうね。
水野:なかなか勇気がいりますよね。
あっこゴリラ:全員修行だよね。聴く側も修行だし。
水野:本当にそうですね(笑)。多分お客さんとかも秒数を数え始めちゃいますよね。
あっこゴリラ:(笑)。そういう意味ではすごく突きつけるものがある楽曲ではあるのかな?という感じがします。
水野:インパクトは間違いなくあったと思います。クラシックをそんなに聴かない人でも「この曲知っている」という人は多いと思うので。
あっこゴリラ:私でも知ってたから。
水野:ほかの現代音楽とか聴いたことがないという人も「この曲知ってる」というのは全然あるので。

カウンターカルチャーとして生まれた『4分33秒』

1952年に発表された『4分33秒』。水野は19世紀の後半までクラシック音楽は発展し続け、「簡単にいうと、どんどん大規模で派手なものになっていった」と話す。そうした流れはある程度でピークを迎え、20世紀の初頭に「いままでやっていたこととは違うことをやろう」という流れが生まれたのだという。

水野:そのときに「じゃあほかの道を探そう」といって、前衛的な人たちがいろいろな実験をするんです。最終的に「ドレミファソラシド」というあらゆるジャンルで使われている音階というものすら放棄しちゃうというクレイジーな人もいまして。
あっこゴリラ:そこも“縛り”じゃないかと。
水野:そうそう。そこでキーが存在しない「無調音楽」というのが生まれるんです。そこからクラシック音楽とはちょっと違うシーンに移って、「現代音楽」とか「コンテンポラリー」みたいに言われる音楽がどんどん盛り上がっていって、その流れの中で『4分33秒』みたいな作品が生まれるようになったんです。
あっこゴリラ:あらゆるジャンルもどんどん進化していくと飽和状態みたいになっていって、カウンターが生まれて……みたいなのってあるんだけど、ここまで振り切っているのは面白い。やっぱりクラシックは歴史がほかのジャンルとくらべると圧倒的に長いじゃないですか。
水野:数百年とかずっとやっていたので、その分カウンターがとんでもないビックバンを起こしちゃって。
あっこゴリラ:本当ですよね(笑)。その反動がね、パンクみたいなことですよね。
水野:本当にクラシック界のパンク精神で生まれたということで間違いないです。
あっこゴリラ:面白い。クラシックって誰でもやっていいものなんですか?
水野:それはもちろん。だから最近とかだと楽譜が読めない、書けないという人でもクラシカルな音楽とか劇伴とかバリバリ書く作曲家もいます。
あっこゴリラ:すごい。

ヘリコプターもプレイヤーに

まさかの「無音の曲」から始まった「なんでもありのクラシック」の世界。続いて水野は20世紀に活躍したドイツの作曲家、カールハインツ・シュトックハウゼンの『ヘリコプター弦楽四重奏曲』を紹介。スタジオではヘリコプターの飛ぶ音が流れ始めた。

水野:これはちょうどヘリが4機飛び立つところです。実際にヘリを4機飛ばして演奏する曲です。
あっこゴリラ:え? ヘリの音も使うっていうこと?
水野:ヘリも楽器のひとつ。
あっこゴリラ:(笑)。操縦士さんもプレイヤーだ。
水野:それプラス、操縦士さんが運転するヘリのなかに弦楽四重奏が1人1機ずつ乗り込むんです。バイオリン2人とビオラとチェロが1台ずつに乗り込んで、そこで演奏をします。
あっこゴリラ:バラバラで?
水野:はい。
あっこゴリラ:それはお互いの音は聴こえてる?
水野:一応トランシーバーをつけてるっぽいんですが、実際に演奏した人は終わったあと「なにもお互いの音が聴こえなかった」って言ってました。
あっこゴリラ:(笑)。ちょっとまって、それ分ける必要あったの? 同じヘリにすればいいのに、なんで4機に。
水野:(笑)。これは調べたので概要を読みますね。「それぞれのヘリコプターに1人ずつ奏者が乗り込み、ヘリコプターのなかで演奏する。これらのヘリコプターはコンサートホールなどの周りを旋回し、そのなかでそれぞれの奏者が演奏し、その音と映像をコンサートホールに中継する」という曲なんです。お客さんはコンサートホールに集まって、プロジェクターで投影してスピーカーで音を流して観ているという。
あっこゴリラ:それはどんな気持ちで観ればいいの? 試されているの?
水野: 1回死ぬまでに生で体験したいんですよ。
あっこゴリラ:(曲を聴いて)プロペラの音とセッションしているじゃん!
水野:この曲のすごいところが、4人全員がピッタリ合わないといけないタイミングがあって。
あっこゴリラ:ええ! トランシーバーなのに?
水野:そう。しかも周りのほかの音がなにも聴こえないのに、合わさないといけないんです。後半になると「ドイツ語で弾きながら数字をしゃべる」というのがあるんですけど、数字がどんどんデカくなるごとにそれを4人同時に言うみたいな。
あっこゴリラ:ええ……なんでそんなことをわざわざしたの?
水野:これは演奏とかじゃなくてコンセプトなので。
あっこゴリラ:(笑)。ズレたら曲として成立していないみたいなことになっちゃうの?
水野:やっぱり「揃えたかったよね」みたいになるんじゃないですかね。ちゃんと楽譜はあるので。
あっこゴリラ:これ……クラシック?
水野:俺もわからない(笑)。
あっこゴリラ:(笑)。
水野:ライブ映像がそれぞれヘリの中の4分割みたいになっているんですけど、ピタッと合っているんですよ。叫ぶシーンとかもピタっと合ってて。音が聞こえにくいところでリハをやったりするんじゃないですか、わからないですけど(笑)。
あっこゴリラ:なるほどね(笑)。いやでもすごいね、みんながちゃんとやるんだから。
水野:何度も再演されています。俺はこれ金払って観に行きたいです。
あっこゴリラ:逆にここまでいったら観てみたいですね。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。

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2022年6月7日28時59分まで

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