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「ファッションで学ぶ音楽史」 いま、最前線にいるアーティストは?

「ファッションで学ぶ音楽史」 いま、最前線にいるアーティストは?

「ファッションで学ぶ音楽史」を特集。東京・渋谷のセレクトショップ「Archive Store」のマネージャー・鈴木達之さんが解説した。

この特集を扱ったのは、J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。オンエアは8月15日(木)。

【SONAR MUSICは番組公式LINEでも情報発信中】

ファッションと音楽の密接な関係

今回は「ファッションで学ぶ音楽史」と題して、鈴木さんとその歴史を追っていった。

鈴木:テーマが広義なので、今回は音楽から影響を受けたファッションということで、ミュージシャンのスタイルが反映されてきたメンズファッションやストリートファッションをメインに話したいと思います。

あっこゴリラ:音楽とファッション史をざっくり年代別に教えてもらえますか。

鈴木:だいたい60年代以降について語られていることが多いです。60年代だとモッズファッション。タイトなスーツのスタイルにミリタリーのモッズコートを着たり、スクーターに乗ったり。それがザ・フーとかあの辺がスタイルを反映させて。今のメゾンブランドも意識して作られているのかなと。

あっこゴリラ:今でも人気のスタイルですよね。

鈴木:あと同時代だとヒッピーとかサイケデリックのスタイルですね。ウッドストック・フェスティバルの影響が大きくて。特にジミ・ヘンドリックスのカラフルなフレアパンツとか、民族的なスタイルは今でもかなり影響を与えていますね。

あっこゴリラ:この辺りの音楽を特に愛しているミュージシャンもいますよね。

70年代に入るとグラムロックから影響を受けたファッションが台頭する。

鈴木:主にT・レックスのマーク・ボランだったり、デヴィッド・ボウイですね。かなりグラマラスで派手なロックのスタイル、髪型もめちゃくちゃ奇抜なスタイルですね。そこのアイコンになっているのがデヴィッド・ボウイですね。当時、山本寛斎さんの衣装を着ていたり、アーティスティック過ぎてすごいですね。あとジェンダーレスだったりとか自由なスタイルでしたね。

あっこゴリラ:メイクもしていましたよね。70年代はパンクもありますよね。

鈴木:そうですね。その頃は特にニューヨークのパンクも盛り上がっていたんですけど、どちらかというとロンドンのパンク、特にセックス・ピストルズのスタイルは、今もかなり影響を与えているのかなと。ボロボロの切り裂かれたようなTシャツに安全ピンとか付けたり、ボンテージのパンツを穿いたりとか。衣装を提供していたのがヴィヴィアン・ウエストウッドとか。マルコム・マクラーレンがセックス・ピストルズを立ち上げたとかもあるので。あとはモッズの進化形でネオ・モッズというスタイルがあって、それがザ・ジャムのポール・ウェラーがかなりアイコンになっていましたね。

あっこゴリラ:ネオ・モッズってどんなスタイルですか。

鈴木:60年代のモッズをもっと洗練したスタイルで、基本的には変わらないんですけど、スーツだけじゃなくて、もうちょっとカジュアルにキメてもよく、とにかくタイトなスタイルですね。

2000年代後半のヒップホップファッションはかなり重要

80年代は特にヒップホップが隆盛する時代となり、オールドスクールのヒップホップで言えばラン・ディーエムシーやパブリック・エネミーなど、スポーツファッションを取り入れたスタイルやオーバーサイズなスタイルが特徴的で、今でもストリートに影響を与えている、と鈴木さんは言う。

あっこゴリラ:ダボダボな感じがずっとかわいいなって。自分が思春期に影響を受けたファッションって、大人になってもかわいいなって。

鈴木:今、まさにダボダボなファッションがトレンドですからね。

あっこゴリラ:では90年代は?

鈴木:その頃はグランジのスタイルですね。主にニルヴァーナのカート・コバーンがかなりファッションアイコンになっていて。グランジのスタイルで言うといわゆる汚れたスタイル、ボロボロな古着を重ね着するようなスタイルで、毛羽立ったネルシャツだったり。

あっこゴリラ:毛羽立ったね(笑)。

鈴木:80年代がどちらかというと、ゴージャスで装飾性の高い、高価なスタイルからのカウンターカルチャーで、「汚れていたりボロボロでもかっこいよね」という流れになった。その中心がカート・コバーンやニルヴァーナなのかなって。

あっこゴリラ:社会背景も影響していますよね。80年のほうが景気が良くて、90年代になったら(景気が低迷していくので)、音楽もそのカウンターになって、ファッションもそれにひも付いていくっていう。

鈴木:89年から91年にかけての世界的な大きな変化や不景気、日本ではバブル崩壊など情勢も不安な時代だった。カウンターで古着の文化とか、若者のユースカルチャーが一気に広まったのかなと思います。

続いて、2000年代は今でも通じるものもありつつ、ヒップホップが中心になっていったという。

鈴木:今でも活躍しているファレル・ウィリアムスとかカニエ・ウェストとか、かなりヒップホップのスタイルが進化してきて、どちらかというと普通のBボーイというよりは、裏原宿ファッションをミックスしたようなBボーイのスタイルが隆盛してきて。2000年代後半のヒップホップのファッションはかなり重要だと思っています。

あっこゴリラ:それを考えると東京のストリートファッションってオシャレですよね。ずっと世界にずっと影響を与え続けている発信地なんなだって。

鈴木:特に90年代の裏原宿カルチャーに関しては、ヒップホップのスタイルに影響を与えているので、アーティストは裏原宿のデザイナーを神のようにリスペクトしていると思います。

インスタグラムが登場しファッションが大きく変化

その後、SNSが世界中で普及していったが、その影響から音楽とファッションの関係はどう変化していったのだろうか。

鈴木: 2000年くらいからmixiとかあったじゃないですか。でも、どちらかというと2008年のiPhoneが出たのが、かなり大きなターニングポイントなのかなと。あとインスタグラムが2010年から始まったんですけど、日本語版が出てすごく拡散されていたのが2014年以降なので、2014年以降のファッションについての話ができたらなと思います。

あっこゴリラ:どんな感じで変化していったのでしょうか。

鈴木:SNSがなかった時代は、情報が雑誌・テレビ・ラジオなど一方的なもので、それをキャッチするのに知識とかアンテナが必要でした。2000年以降、不景気になっていきグローバリズムが加速、ファストファッションが出てきたのがiPhoneの登場と同時期なんですよね。2008年に日本にもH&Mが上陸したりして、一気に普及していったのと同時にシンプルでミニマルなライフスタイルを重視したスタイルになりました。そこにリーマンショックもあったり。そういうところで、スティーブ・ジョブズとかがアイコンになっていましたけど、シンプルなノームコアなスタイルが流行していきました。それが以前でした。

2014年にインスタグラムが一気に流行し始めてからは、さまざまな情報共有やそれぞれが関心を持っているものについて、どんどんビジュアル化していった。それにより、それまでのノームコアやファストファッションのカウンターとして、ギラギラしたゴージャスでラグジュアリーなストリートファッションが一気に出てきたと鈴木さんは話す。

鈴木:2013年にメルカリができたり、海外でもオークションサイトが続々と立ち上がって、個人間同士で物や知識をシェアできる時代が始まって、そこで古着が一気に過熱的に盛り上がってきたと同時に、先ほど言ったラグジュアリーなストリートファッションが、2014、15年から一気に加速していきます。代表的には特に日本だとBIGBANGのG-DRAGONですね。日本のファッションファンにはめちゃくちゃ刺さっていましたね。

あっこゴリラ:では、それ以降は?

鈴木:特にアメリカのヒップホップが世界的にさらに人気になり、そのファッショニスタとか、時代のアイコンになったアーティストがエイサップ・ロッキーだったり、トラヴィス・スコット、カニエ・ウェストですね。その人たちが中心になって、彼らが着たものが全部プレミア価格になったり人気になったり、一気に注目されました。アメリカのヒップホップアーティストたちを中心にオーバーサイズでラグジュアリー、かつ過去の名作をミックスしたスタイルが時代の最先端のスタイルになって注目されていきました。ブランド的にはラフ・シモンズや、日本の裏原から出てきたナンバーナインとか、アンダーカバーとか、90年代のデザイナーズファッションの中心と言ってもいいメゾン・マルタン・マルジェラ(現:メゾン マルジェラ)などの過去のアーカイブをミックスして、ラグジュアリーストリートのファッションを確立したのが、アメリカのヒップホップアーティストですね。

今のトレンドセッターはファレル・ウィリアムス

加速度的に多様化する現在、ファッションもその影響を受けているという。

鈴木:今までの法則で言えば20年周期で揺り戻しがあり、オーバーサイズからタイトになって、シンプルからカラフルになって……を繰り返していたのが、SNS普及以降、それがどんどんミックスされていって、足し算じゃなくて、かけ算になっているんです。

あっこゴリラ:確かに。

鈴木:昔はわざと汚れたようなグランジのスタイルはシルエットが細かったんですけど、今はオーバーサイズをキープしたままグランジ、かつトップスが小さくなってきて、それがグランジを越えてヒッピーみたいなスタイルになってきて、どんどんミックスされてきて。プラス足元はスケーターな感じとか。

あっこゴリラ:その感じ、すごく好きです(笑)。

鈴木:どんどんカルチャーがミックスされて、この先どうなっていくか予測ができないくらい新しくなっていっています。でもその中心になっているのがヒップホップのアーティストだったりとか、感度の高い人たちがどんどんトレンドに対して、違いを作っていっていると感じます。

今、ファッションの最前線にいるアーティストとして、鈴木さんはファレル・ウィリアムスを挙げた。

鈴木:ルイ・ヴィトンのデザイナーをやっていて、完全に中心だと思います。ミュージシャンからデザイナーまでやって、しかもルイ・ヴィトンですからね。

あっこゴリラ:ファレルというとNIGOさんのイメージが強いですよね。

鈴木:もともと2人でブランドをやっていたりとか、20年くらい前からいろいろ一緒にやっていたりとか、とにかく親交が深くて。ファレル自体も裏原のファッションの影響をかなり受けているので、その影響を今のトレンドに落とし込んでいるって意味では、ファッションはデザイナーかつトレンドセッターかなと思います。

音楽を愛する全ての人と作り上げる(超)進化型音楽番組『SONAR MUSIC』の放送は毎週月曜日から木曜日の22時から。

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