ビリギャルが考える、受験に必要な「大人が子どもに挑戦させる勇気」

“ビリギャル”のモデルこと小林さやかさんが、自身の進学を振り返った。

小林さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』(ナビゲーター:志村季世恵/板井麻衣子)。この番組は、暗闇のソーシャルエンターテイメント『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』を主催するバースセラピストの志村季世恵が、暗闇のバーに毎回ゲストを迎え、一切、光のない空間で語り合う。

5月8日(日)のオンエアでは、志村と小林さんの対談をお届けした。

「ビリギャル」がヒットした理由を分析

小林さやかさんは、坪田信貴の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)の主人公、通称「ビリギャル」のモデルとなった女性だ。受験ストーリーが人々の注目を集め、有村架純主演の映画が2015年に公開された。

志村:私はさやかちゃんのことをビリギャルという名前でまず知ったんですよね。
小林:そうですね。
志村:本がありましたよね。
小林:『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』です。
志村:長いタイトルでしたね。
小林:そうそう(笑)。略してビリギャル。
志村:その頃からのことをお聞きしたいんですけど、ビリギャルって映画になったでしょう?
小林:そうだね。スタッフもびっくりするぐらいヒットして(笑)。皆さんに知っていただけるきっかけになりましたね。
志村:どうしてあの映画、本も含めてヒットしたんだろうって、ご自分で考えたことってあります?
小林:冷静に、私が実際に何をしたかっていうと、“受験しただけ”なんですよね(笑)。

小林さんは、作品が多くの人々から共感を得られた理由について「みんなが通る道を私も通ってきたから、イメージがしやすいものだったんじゃないかな」とコメントした。

小林:受験とか周りの大人に対してのモヤモヤとか、「学校のルールってクソ!」みたいなのとかを、私は真っ直ぐに表現しているんですね。それが、反発できずにいて悩んでいる子たちとか、親御さんとうまくいってなかった子とか、どこにでもあるドラマと私のストーリーが重なる部分が多かったんじゃないかなって思っているんです。だから、“すご過ぎなかった”っていうのがキーになったんじゃないかなと私は思っています。
志村:多くの人たちは自分の偏差値によって志望校を決めざるを得なくて、好きな学校に憧れているところがあると思う。「いまのこの成績だと無理だろう」って先生とかに言われると、親御さんも「そうだな」と思ってしまう。
小林:そう。
志村:自分の子どもが“悲しい気持ち”にならないように、いわゆる入りやすいところに入るっていうのが多いと思うんだけれども、さやかちゃんはそれを飛び越えたじゃないですか。
小林:そうだね。(入りやすい学校に入るという)価値観が逆になかったかも(笑)。

自分で決めて自分で挑戦することが大切

親が子に“挑戦をさせない”という選択を取らせるのは、どういった理由が考えられるのだろう?

小林:ビリギャルって言っていただけるようになって、いろんな人の悩みとか相談に乗ってきたんだけど、やっぱり周りの大人のほうが「挑戦させる勇気がないんだな」って思ってきた。
志村:そうかあ。
小林:本人より先に、その周りの人たちが「やってみな。あんただったらできるよ!」って言える人が、日本はすごく少ないんじゃないかなとちょっと思っています。
志村:うんうん。
小林:それって裏返したら、めちゃめちゃな“愛”なんだよね。「傷つけたくない」「傷ついてほしくない」「常に幸せでいてほしい」っていう愛だと思うんだけども、ずっと守ってあげられるわけじゃないじゃない? 親御さんとか先生たちって。
志村:そうだねえ。
小林:かすり傷をいっぱい作ってね、周りはハラハラするかもしれないけど、自分で決めて自分で挑戦して自分で失敗して、「こうやったら次は成功した!」みたいな経験が子どもたちにはすごく大事なんじゃないかなって思っているし、私はそれをやらせてもらえたってだけだと思うんだよね。
志村:(挑戦しないと)うまく諦めることも覚えてしまうじゃない? 「このぐらいかな」みたいなね。
小林:そうだね。
志村:本では「諦めなくてもいいんじゃない?」ってことをさやかちゃんは伝えてくれていて、“夢に向かって頑張っていく”という、すごく強いメッセージがあったと思うんだよね。

運命を大きく変えた塾講師との出会い

「慶應大学に行ってよかった」と話す小林さんだが、そもそも大学を受験するつもりはなかったという。小林さんは当時の心境の変化を振り返った。

小林:私は慶應に行ってよかったけど、それは慶應がすごく有名な大学だからとか、いい就職先に恵まれるからじゃなくって、慶應に行ったことで開けた世界が私にはあった。あのまま、どこの大学に行かず、名古屋から一歩も出なかった自分の人生も、すごくイメージできるんだよね。
志村:そっかそっか。それでも夢があって、「慶應に行きたいんだ!」って思ったわけじゃない?
小林:思った!
志村:それに対して、大人が「よっしゃ!」って言ってくれたの?
小林:言ってくれた! まず、うちのお母さんは泣いて喜んだの。私、大学に行く気はなかったし、中学のときも無期停学処分を受けて……(笑)。
志村:あはは(笑)。
小林:学校の先生には「お前は人間のクズだな」、校長先生からは「我が校の恥だ」みたいに言われた。「おめぇみたいなおじさんに何でわかんだよ!」みたいな感じで私は反抗し続けた(笑)。
志村:うんうん。
小林:「ここには私の理解者が誰もいねえな。見る目ねえなあいつら」みたいな感じで、私は周りの大人をみんな見下してた。

どんな状況下にあっても、小林さんの母は常に支え続けてくれたという。

小林:うちのお母さんだけは「さやちゃんは世界一幸せになれるんだよ。さやちゃんだったら絶対大丈夫だよ」って言い続けてくれた。「ワクワクすることを、自分の力で見つけられる人になってほしい。それだけでいいんだ」っていう子育てを、ずっとうちのお母さんがやってくれた。
志村:すごいなあ。
小林:それで、(塾講師の)坪田先生に出会った日に「ああちゃん(お母さん)、私慶應行くわ! あの塾通いたいんだけどいい?」って帰ってすぐに言ったら、うちのお母さん泣いて喜んだの。

自分の可能性を信じる者に未来は拓かれていく

母以外の人で、小林さんの話に耳を傾けてくれた大人は坪田先生が初めてだったという。

小林:私が金髪でおへそ出して、香水プンプンで、サーカスみたいな靴を履いて塾に行って、「チーッス!」みたいな感じで先生と初めて面談したときに、坪田先生が「さやかちゃん、そのまつ毛一体どうなってんの?」って聞いてくれたの。「マスカラで1時間塗り続けたらこうなるよ」みたいなことを言った(笑)。
志村:あはは(笑)。
小林:「へえ。ひじきみたい」みたいな返事だった(笑)。学校の先生はメイク落としシートみたいなのを持って追いかけてくるばっかりなのに、「それどうやって作るの?」って笑って聞いてくれたのが私は結構衝撃的で、「この人、怒らないんだ!」って思った。
志村:いいねえ。
小林:最初の面談でずーっと私が2時間ベラベラ喋って、元彼の話とかジャニーズの話とかいろんな話をしたら、先生がゲラゲラ笑って聞いてくれて。「君めっちゃ面白いな。東大興味ある?」って言ったのね。「東大興味ない。なんかイケメンいなさそうだし」みたいな感じで答えた(笑)。
志村:あはは(笑)。
小林:そうしたら、「じゃあ慶應はどう?」って言ってくれたんだよね。

坪田先生は、生徒との面談の最後に「東大に興味があるか」を尋ねるそうだ。そう訊かれた学生はほとんど「無理だ」と答えるが、坪田先生によるとそれは先入観がそうさせているのだそう。

小林:「東大なんか興味ねぇ。自分はもっとキラキラした世界に行きたい」と私が言ったときに、(坪田先生は)「この子はもしかしたら伸びるかもしれないと思った」って言ってくれたんだよね。

坪田先生は「自身の可能性を信じているか否か」で伸びしろを判断していたのだと小林さんは語る。

小林:「自分はできる!」って信じて、一歩踏み出せる勇気があるかどうかが先生のなかでの物差しだったんだよね。「私もそういう大人になりたい!」って思った。

コロンビア留学を決意した理由は?

ビリギャルとして話題になった小林さんは、これまでさまざまな学校や行政機関の講演に出演。講演を重ねるなかで教育現場に携わりたい気持ちが大きくなったという。“学ぶ楽しさ”を子どもたちにもっと伝えたいと考えた小林さんは、自身の実力をつけるために海外留学を決意。コロンビア大学教育大学院に合格した小林さんは、ニューヨークに2年間滞在する予定だ。

小林:コロンビアに秋から留学することを決めました。
志村:おめでとうございます!
小林:ありがとうございます(笑)! 本当によかった。ニューヨークで2年間、生活すると思います。
志村:覚えた英語って、使わないから忘れちゃってたでしょ?
小林:もう1回ゼロから、中学英文法からやりましたね。2年前に。
志村:そうだよね。勇気がいる行動だったんじゃない?
小林:そうですね。でもね、やっぱり“成功体験がある”ってでかいんですよ。
志村:そっかあ!
小林:「あのときにできたから、絶対大丈夫!」って、自分を信じられたのはでかかったですね。
志村:それは本当に大きいねえ。
小林:一度も経験していなかったら無理でしたね。多くの人と一緒で、「超人じゃないとできないだろう」と思った気がする。
志村:うん。
小林:教育者……教育者って言葉、おこがましいっていうか、上からな感じがしちゃうから私なんかは使いたくないんだけども。「教壇に立った経験もないのに教育者って名乗るなし」って思う人もいるだろうし(笑)。だけど、1回日本から出ると、私の価値観とかバイアスみたいなものが、いい意味でぶち壊されると思うんだよね。教育に携わる者として、それはやっぱり必須だなって思ったから、海外に行こうと思ったのはすごく大きいですね。
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2022年5月15日28時59分まで

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番組情報
DIALOGUE RADIO-in the Dark-
毎月第2日曜
25:00-26:00

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