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『進撃の巨人』ED曲『悪魔の子』が大ヒット、ヒグチアイが制作秘話を語る

『進撃の巨人』ED曲『悪魔の子』が大ヒット、ヒグチアイが制作秘話を語る

シンガーソングライターのヒグチアイが、ヒット曲『悪魔の子』の制作や自身の生い立ちについて語った。

ヒグチが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。オンエアは4月29日(金)。

この番組ではゲストが、ビールに合う“おみや”を紹介する。ヒグチは“ガリ”を持参し、ビールとともに楽しんだ。

『悪魔の子』が大ヒット

1月に配信リリースされたヒグチアイの楽曲『悪魔の子』が世界で大ヒット。同曲はアニメ『進撃の巨人』The Final Season Part 2のエンディングテーマになっている。

悪魔の子

クリス:こんなことになると思ってました?
ヒグチ:いや、まったく思ってなかったです。いまだに信じられてないところがありますね。
クリス:世界に広まったのはすごいですよね。
ヒグチ:最初から最後まで日本語しかないので「どういうふうに楽しんでくれているのか」とすごく気になります。日本語の響きとして楽しんでくれているのか、音として楽しんでくれているのか、そういうところも訊いてみたいなと思います。
クリス:これってけっこうJ-POPというか、日本のサウンドですもんね。
ヒグチ:そうですね。メロディーラインとかも、自分がずっと聴いてきた邦楽や合唱曲、そういう曲をもとに作っているので、かなり日本のメロディーですね。

クリスは『悪魔の子』の依頼があったときのことを訊く。

クリス:完ぺきに書き下ろしで「このシーズンのエンディングテーマでお願いします」ということだったのかな?
ヒグチ:そうです。最初に「(物語の)ここからここまで」と言われていました。ファイナルシーズンのパート2という形だったんですけど、視聴者はみんな物語の最後までいくと思っていたと思うんです。だけど私は「終わらない」と知っていたので、ここでちょっと「終わりますよ」みたいな曲にしたら裏切れるんじゃないかなっていう。
クリス:なるほど、逆にね。「終わるんですよ感」はどうやって出したんですか?
ヒグチ:漫画の最終巻を読んで、そういう描写がちょっと入っているという感じです。
クリス:あえて入れたということですね。その部分は歌詞で触ったという感じなのかな。
ヒグチ:触ってます。
クリス:依頼がくる前から漫画『進撃の巨人』を読まれていたんですか?
ヒグチ:メチャクチャ読んでました。もう大好きでした。自分がエンディングテーマをやる前に最終巻が出まして、そこまで読んでいたので、「いいんですか、私で」みたいな感じでしたね。
クリス:ある意味『進撃の巨人』のスピリットみたいな部分は把握していたというか、熟知していたと言っても過言ではないわけですもんね。
ヒグチ:でも書くにあたって、「楽しんでいるだけじゃいけない」というか、自分の意見だけじゃいけないというのはすごく考えましたね。『進撃の巨人』は何を言いたいのか、というところを考えながら読んでいたわけではないので。そこを一回探す時間はありました。
クリス:だから世界的にヒットしたのかもしれませんよね。
ヒグチ:私の愛情はメチャクチャこもっていると思います。

ヒグチは、『悪魔の子』も収録されている通算4枚目のオリジナルアルバム『最悪最愛』を3月2日にリリース。アルバムタイトルへの想いを語った。

ヒグチ:これは一言で言えば、「矛盾を受け入れる」みたいな。ずっと人のことが怖かったり、なめられないように、傷つけられないように、なにかがあったら常に自分が攻撃できるようにしておこうみたいな、かなりビクビクして生活していたような気がしたんです。でも最近、人のことをもうちょっと信じられるようになってきて。両極端な気持ちを持っていたほうが、人に優しくできるんじゃないかと、ここ1、2年で気づいたことだったので、その両極端の気持ちを常に持っていようっていう、そういうアルバムになりました。

子どものころは「いい子」だった

香川県で生まれ、長野県で18歳までをすごしたヒグチ。かつては自身が育った長野の地を好きになれなかったのだとか。

ヒグチ:そこに住んでいるときはどうしても好きじゃない部分ばかり見えるというか。とにかく東京に行きたいと思っていたんですけど、東京に出てから「長野ってこんなにいいところがいっぱいあるんだ」と気づきました。
クリス:どんなお子さんだったんですか?
ヒグチ:メチャクチャいい子だったと思います。親の言うことは絶対という感じでしたね。兄と妹がいるんですけど、とにかくその2人が仲悪かったんですよ。なので自分がずっとバランスを取り続けて、2人の喧嘩を止め、母親と父親にはいい顔して、「私は面倒かけませんよ」という体でいましたね。
クリス:お父さんお母さんは一番感謝している。
ヒグチ:そうでいてほしいですよね。
クリス:「私はここまでやったんだぞ」と。
ヒグチ:思いました(笑)。で、その話を母親にして「私はあんなにいい子でいたのに、全然なにもしてくれなかった、愛してくれなかった」みたいなことを言ったら、私には「お金をかけていた」と。私がほしがったものはすべて買い与えていたという話をされて。そのことをまったく覚えてなくて、「意外とバランスとってくれていたんだな」という。そういう都合のいいことを自分のなかでなかったことにしちゃってたな、と最近知りました。

ヒグチは2歳のころからピアノを、さらに5歳でバイオリンを習ったが、母親の期待が大きかったことがプレッシャーとなり、やめてしまったそうだ。その後、中学生になってドラムとギターを始めたという。

ヒグチ:そのときは1人でひたすらドラムを叩くっていう(笑)。いま考えれば寂しいですけど、当たり前にやってました。
クリス:ギターも1人で?
ヒグチ:1人でアコギを弾いてました。最初に弾いたのは長渕 剛さんの『乾杯』です。
クリス:ずいぶん渋い曲を。いくつのときですか?
ヒグチ:中学1年生とかなので、13、14歳とかです。メチャクチャコード進行が簡単なんです。簡単なのにこんなにいいメロディー。歌っていて気持ちよかったです。
クリス:じゃあ歌い始めたのも、このあたりからなんですか?
ヒグチ:小学生のときに合唱団みたいなところには入っていたんですけど、歌をうまいと言われたことが一度もなくて。「うまくないものだったら期待されないだろう」と思って、中学生ぐらいから合唱部に入って歌を歌い始めました。
クリス:期待されなければ余計なプレッシャーがかからないから。
ヒグチ:好きに歌っていいだろうと。
クリス:それがヒグチさんにとって、のびのびできる秘訣だったのかもしれませんね。

安室奈美恵への憧れ

幼いころから音楽が身近にあったヒグチは、音楽関係の仕事をするだろうと確信を持っていたという。

ヒグチ:自分がまさかシンガーソングライターをやるとは思ってなかったんですけど(笑)、なにかしら音楽に関わってはいるだろうなと思っていました。
クリス:それはおいくつぐらいのときからですか?
ヒグチ:幼稚園や小学生低学年とか。ずっと安室(奈美恵)ちゃんになりたいと思っていたんですね。
クリス:今の話から安室ちゃんが出てくるとは、ちょっとビックリしました。でもストイシズムみたいな、ヒグチさんはすごくストイックな方というか、目標に向けた姿勢は安室ちゃんに似ているのかもしれませんね。
ヒグチ:そう言っていただけてとてもうれしいんですけど、たぶん「弱さ」みたいなのも安室ちゃんが持っているから、みんな魅了されるところがあると思うんです。それを越えていこうと自分はあまり思っていないというか、弱さを弱さとして存在させているのが、いまの自分かなと思います。

大学生になって長野から上京したヒグチは東京生活を満喫。しかし次第に心境に変化が起きていったという。

ヒグチ:すごしていくにつれて、だんだん小さな世界がたくさんあることを知っていって。3年ぐらい経って、自分のなかで冷静に「東京」というものをとらえるようになっていったと思います。
クリス:その結果、東京はどんな存在でしたか?
ヒグチ:「なにかにならなきゃいけないんだな」っていう感じでしたね。「なにものでもない」ということがすごく怖いというか。なにかにならなきゃ存在できないということをすごく感じました。
クリス:なんらかの役割じゃないけど、秀でたものが必要という感じなのかな。
ヒグチ:そのころにはもうシンガーソングライターとして活動し始めて3、4年だったので。ライブをやっているのにノルマを払ってお金がマイナスになっていったり、お客さんが1人しか来ない状況だったり、そういうことに焦っていた感じですね。

ヒグチは5月6日(金)オンエアの同番組でも、引き続きゲストに登場する。放送は23時から。オンエアから一週間後までradikoでも楽しめる。

【radikoで聞く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20220506230000

また、番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。

・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html

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2022年5月6日28時59分まで

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番組情報
SAPPORO BEER OTOAJITO
毎週金曜
23:00-23:30