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ホームレス状態の方の自立を支援。雑誌を販売できる「ビッグイシュー」の仕組み

ホームレス状態の方の自立を支援。雑誌を販売できる「ビッグイシュー」の仕組み

ビッグイシュー日本の取り組みについて、有限会社ビッグイシュー日本、東京事務所所長の佐野未来さんが語った。

佐野さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『START LINE』のワンコーナー「CHINTAI NEW STYLE LAB」。オンエアは2022年4月15日(金)。

ホームレス状態の方がすぐに就ける仕事を提供

『ビッグイシュー』は1991年にイギリスで創刊。日本では2003年より販売をスタートした。ホームレス状態の方々の仕事をつくり、自立を応援するビッグイシューは、具体的にどういったシステムになっているのだろうか。

佐野:一度家を失ってホームレス状態になってしまうと、住所や連絡先、身分を証明するようなものを一切なくしてしまう場合が多いです。そういったときに仕事に就く、次のステップに進むのは非常に難しくなります。ですので、そういったものが一切なくてもすぐにできる、敷居の低い仕事を作ろうと始まった取り組みがビッグイシューです。具体的には雑誌を路上で販売しているんですけど、一般の方に「面白い」と思っていただけるような雑誌をつくって、それをホームレス状態の方に路上で販売していただきます。1冊450円です。販売者の方はビッグイシューに相談にいらっしゃって、販売者として登録したあとに220円で私たちから仕入れて450円で販売します。ですので、差額の230円がその方の収入になる仕組みです。

長谷川:これは購入側にも明確に伝わっているわけですね?

佐野:はい、雑誌のなかに仕組みも書いてあります。もしかしたらPRが足りなくて知らない人もまだまだいるかもしれないですけど。ただ、1冊220円といっても、ビッグイシューにいらっしゃるときには本当にお金がなくて2週間くらい水だけで暮らしていらっしゃったとか、Wi-Fiを何とか探して携帯で(電話を)かけてこられる方など、仕入れができない状態の方が多いです。ですので、最初の10冊は無料でその方に差し上げます。それを販売すれば手元に4500円入りますので、それを元手に次からは1冊220円で仕入れてください、という仕組みになっています。

長谷川:根本的に、生活の再建をサポートする仕組みができているんですね。

佐野:相談に来ていただければ、そこからつながっていきます。体調が悪いなどいろいろな事情で雑誌の販売が難しい方には、福祉の仕組みを使うなど、相談に乗りながらサポートしています。

長谷川:2021年3月末の段階で、これまでの販売登録者数は延べ1957人。そのうち生活再建の目途が立ち、販売を辞めた卒業者は205名いるそうです。

コロナの影響は売り上げにも大きなダメージを…

ホームレス状態の方の生活再建を支援するための雑誌『ビッグイシュー』は、コロナ禍で路上販売に大きなダメージを受けたそうだ。

佐野:ホームレス状態の方はコロナ禍でもステイするホームがないわけですから、常に感染症の恐怖と向き合いながら販売をしていました。でもみなさんが(外に)出てこられないので、特に2020年4月あたりは売り上げが半分くらいになってしまう状況がありました。ただ、欧米なんかではロックダウンという形で誰も外に出られない状態でしたけど、幸いにも日本では販売者が立てる余裕があったので、販売を続けられました。一方で販売者さんを応援する緊急通販も立ち上げました。そこからの収入を、販売を続けている方々に「継続協力金」としてお渡しする取り組みを続けてきて、それは全国からたくさんの方が参加してくださったおかげで、なんとか販売者さんたちと一緒に乗り越えることができました。ただやっぱり、人の流れはだいぶ戻ってはきたものの、売り上げが戻っていないので、まだいろいろな形で支えていかなきゃなと思っているところです。

最後に長谷川は、ビッグイシューが抱える今後の課題、そして私たちがホームレス状態の方のためにできることを質問した。

佐野:今ホームレス状態になられている方もそうですけど、コロナが長引いて大変な状況で、その一歩手前にいる方が増えていると思います。炊き出しが必要な方も増えています。そういう状況じゃない方は、もし販売者さんを見かけたらぜひ声をかけて買っていただきたいです。少し余裕があれば、この2年間は支援団体が現場で走り回っているので、そういう人たちを応援するとか寄付をする、そしてこういう状況がなぜこの豊かな日本で起こってしまうのか、家を失って困窮して、死に向き合わざるを得ない人が出てしまうのかを考えてみてほしいです。大きな課題ですが、そういう状況を生み出さないために一人ひとり何ができるのかを、ぜひ一緒に考えていただけたら嬉しいです。これをスタートとして、興味を持っていただけたらと思います。

『ビッグイシュー』には社会問題をわかりやすくまとめた記事が多く、読み手に考えるきっかけを与えてくれる。販売場所はホームページでもチェック可能だ。駅などで赤い帽子をかぶっている人を見かけたら、雑誌購入という形でサポートしてみてほしい。

『START LINE』のワンコーナー「CHINTAI NEW STYLE LAB」では、NEW NORMALな心地のよい暮らしを送るヒントをゲストが紹介する。放送は毎週金曜日の17時15分から。

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2022年4月22日28時59分まで

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