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『小説新潮』編集者の人生に影響を与えた一節は?

『小説新潮』編集者の人生に影響を与えた一節は?

山田詠美、池澤夏樹、三浦しをん、角田光代など、数多くの著名作家を担当した『小説新潮』(新潮社)の編集者の小林加津子さんに、人生で影響を受けた一節を聞いた。

小林さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」。2月13日(日)のオンエアをテキストで紹介。

長編作品がたくさん収められた本棚

新潮社編集者である小林加津子さんは、これまで「新潮ミステリー倶楽部賞」「ホラーサスペンス大賞」などの選考にも関わり、2000年には「女による女のためのR-18文学賞」を立ち上げた。新潮社内にある小林さんの本棚の写真を見ながら、玄理はトークを進行した。

玄理:分厚い本がとても多いんですね。

小林:長編を書かれる方が多いのと、私自身も長編が好きなんですよ。話が長いと「しばらくこの作品の世界に浸れるぞ」と舌なめずりしたくなっちゃいます。

玄理:(笑)。じゃあ、読み終わると寂しい気持ちになったりしませんか?

小林:すごくします。残りあと数ページになると「終わっちゃう。この先はもう読みたくない」って気持ちになります。

玄理:その気持ちすごくわかります! 担当されている作家さんは30名ほどいらっしゃるとお聞きしているんですけども、本棚にあるのはその方たちの本なのでしょうか?

小林:そうですね。ほとんどが担当作家さんのものです。読書の時間は担当作家さんの本を読むので終わりますね。

玄理:担当されるってことは、出版されるまでに内容は知っているわけじゃないですか。だけども、出版されてからもう一度読むということですか?

小林:すごくちゃんと読むという形ではないんですけども、本にするにあたって一部を直される方が多いんですよ。「ここがちょっと違っているな」って見つけて読んでいますね。

随筆家・白洲正子の一節を紹介

白洲正子の随筆集『夕顔』(新潮社)のなかに、小林さんの人生に影響を与えた一節があるそうだ。

田舎に住んで、まともな生活をしている人々を、私は尊敬こそすれ、田舎者とはいわない。都会の中で恥も外聞もなくふるまう人種を、イナカモンと呼ぶのである。

玄理:白洲正子さんは担当されていた作家さんなんですよね?

小林:はい。私が会社に入ってすぐくらいの頃に前任者が退職してしまったので、引き継ぐ形となりました。そこから随分と長く担当させていただいたんですけども、お婆さんと孫ぐらいの歳の差があったのでかわいがっていただきました。

玄理:担当されるとなると、作品の内容以外にも合間合間にいろんなお話をされるんですよね?

小林:そうですね。

玄理:白洲正子さんはどんな方でしたか?

小林:竹を割ったような性格で、きっぱりと鋭くいろんなことを突く方でしたね。一方で、『夕顔』もなんですけども面白いこともおっしゃる方だったので、この一節を読んで「この婆さん、面白いことを言うなあ」って思いましたよ。

玄理:(笑)。

小林:今、日本っていろんな嫌なことがありますけども、白洲さんの本を読んでいると「日本の自然や文化ってとっても素敵なんだな」って思わせてくれるんですよ。それがすごく好きですね。

玄理:なるほど。白洲さんの作品のなかで、特にこの一節が影響を受けた理由は何でしょうか?

小林:白洲さんっていろんなところに行って職人さんと付き合っていらしたので、地道に地に足をついて生きている人たちをすごく尊敬してらしたと思うんですよ。私もそういった視点はずっと持っていたいなと思っています。人を外見とかお金のあるなしとかで判断したくないです。

玄理:すごく素敵な一節だなと思いましたし、「他にどんなことを鋭く切ってくれるんだろう」という気持ちになりましたので、『夕顔』を読みたくなりました。

小林:たくさんありますので、みなさんにもぜひ白洲さんの作品を読んでいただきたいです。

次号の『小説新潮』は“お金”がテーマ

『小説新潮 2022年 3月号』(新潮社/2月22日発売)は、“お金”がテーマだ。

玄理:お金がテーマって面白そう!

小林:柚木麻子さん、久坂部羊さん、花房観音さんらにお金にまつわる小説を書いていただきました。あとは、原田ひ香さんと井上はじめさんの投資に関する対談も掲載されておりますので、書店で見かけたらぜひ手に取ってみてください。

玄理:文芸誌から知るお金の話って面白いですね。トピックとしてすごく気になります。私は「小説新潮 2022年 2月号」でコラムを掲載させていただいたんですけども、「小説新潮」では小説家以外の方、芸人さんや芸能人の方がエッセイやコラムを書かれていますよね。人選はどういう基準なんでしょうか?

小林:編集部のなかにもいろんな編集者がいるので「この人、面白い!」と思った人には会いに行ったり「何か書きませんか?」と、それぞれがアプローチをしたりしていますね。

玄理:なるほど。文芸誌と聞くと高尚なイメージを持つんですけども、手を伸ばしやすい人選だなと感じました。

小林:そうですね。

玄理:「読むのは好きでいろんな話に触れたい」という人にとって、文芸誌はすごくおすすめだなと思います。私、合間にある漫画もすごく好きなんですよ。

小林:よかった! 最近は漫画も評判です。矢部太郎さん(カラテカ)の『ぼくのお父さん』は『小説新潮』で連載されていたんですよ。

玄理:そうだったんですね! みなさんもぜひ、『小説新潮 2022年 3月号』を手に取ってください。

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、本棚からゲストのクリエイティヴを探る。オンエアは10時5分頃から。

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