世界が注目する日本のアニメと音楽を音楽プロデューサー・ライター・音楽評論家の冨田明宏さんが語った。
冨田さんが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは2月7日(月)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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あっこゴリラ:そもそも日本のアニメってなぜ世界に広がったんですか?
冨田:昔から日本のアニメって世界中で観られてはいるんですけど、『ヒロアカ』(僕のヒーローアカデミア)みたいな作品が観られるようになったのは、ここ10年から15年くらいのことなんです。そもそも日本って他の国と比べて大人向けに作られたアニメがめちゃくちゃ多くて。
あっこゴリラ:確かに。
冨田:普段はアニメを観ない人たちでも、「深夜にアニメってすごくあるな」って思う人がいると思うんです。それは子ども向けに作っていなくて大人に観てほしい作品だから深夜に放送しているわけです。日本は大人向けのアニメが全体の8割と言われていて、子ども向けに作られるアニメよりも多いと言われています。
あっこゴリラ:日本は「アニメ=子ども向け」っていう印象はないかもしれないですね。
冨田:でも海外だと基本的にはキッズ向けの作品が主流なので、海外でアニメが好きっていう大人たちは日本のアニメを観たがるんですよ。そのときになかなかな観ることが難しかった時代が長かったんです。昔は違法サイトでアップロードされた作品をこっそり観るみたいな感じですが、ここ10年くらいでその部分がかなりクリーンになりました。その背景があるので、「日本のアニメが好きだよ」ってやっと言えるようになってきた感じですね。
また、「お互い違うものを認めていこう」という意識が世界中で広がったことも、日本のアニメが広がった要因のひとつだと冨田さんは続ける。
冨田:例えば日本のオタク文化も、「俺は好きだよ」とか「君の好きなものはマイノリティな文化かもしれないけど、僕はそれもいいと思うよ」みたいな風潮がどんどんできあがってきたことによって、セレブやアーティストが「日本のアニメっていいよね」とか「俺は子どもの頃にこれが好きだったんだ」と言う人が増えてきたんだと思います。
冨田:カニエ・ウェストの『Stronger』という曲は、アニメ『AKIRA』にめちゃくちゃ影響を受けている作品で、ミュージックビデオは完全に『AKIRA』のオマージュです。『AKIRA』の作者である大友克洋さんとも交流があったりして、カニエ・ウェストは大ファンなんですね
あっこゴリラ:ヤバいですね。
冨田:あとはヒップホップグループのウータン・クランのリーダー・RZAの『Must Be Bobby』という曲は『ドラゴンボールZ』についてラップしているんですよ。RZAは昔から「『北斗の拳』がめちゃくちゃ好きだぜ」とも言っています。こういうビッグなアーティストやセレブたちによって、日本のアニメやオタク文化の評価がどんどん変化していったんじゃないかと思います。
あっこゴリラ:先ほど違法で観られていたアニメが合法になったとお話されていましたが、きっかけは何ですか?
冨田:特に海外において、クランチロールというアニメを配信するサイトが大きな影響を与えています。
クランチロールは、世界200以上の国や地域でアニメやマンガのファンを結ぶコンテンツを提供するサイトだ。
冨田:基本的には日本のアニメを配信しているんですけどアニメ好きなユーザーがつながることもできて、登録者数は1億人を超えてると言われています。クランチロールはアメリカの会社なんですけど、アメリカだけじゃなく南米やヨーロッパ、南極、中東など本当にさまざまな地域に日本のアニメを届けています。
あっこゴリラ:へえ!
冨田:クランチロールが立ち上がった2006年くらいはみんな日本のアニメを観たかったけれど正規の配信も放送もされないから、致し方なく違法アップロードをしてアニメを観ていたんですけど、2008年頃から徐々に権利まわりがクリアになりました。
冨田:ル・ウージー・ヴァートはとても人気のあるラッパーなのですが、この曲のタイトルの『Sasuke』は『NARUTO -ナルト-』のキャラクター「うちはサスケ」ですよね。
あっこゴリラ:やっぱり、サスケ人気だな!
冨田:『NARUTO -ナルト-』の影響ってハンパないですよね。彼はもはやアニメ好きのレベルではないんです。日本のアニメで例えば『けいおん!』とか『境界の彼方』とか、マニアックな作品も深掘りして観ていて。しかも自分のアニメ愛を表現するのに車を改造してボディーにアニメのキャラクターを描いたりする、いわゆる痛車(いたしゃ)をル・ウージー・ヴァートはたくさん持っているんですけど、ランボルギーニとかに描いているんですよ。
冨田さんは、ル・ウージー・ヴァートがアニメ『デス・パレード』の楽曲をサンプリングした1曲『New Patek』を紹介した。
続いて、冨田さんはサンダーキャットの『Dragonball Durag』を紹介した。
冨田:タイトルに『ドラゴンボール』の名前が入っちゃってますよね。彼は『ドラゴンボール』が本当に好きみたいで。ミュージックビデオではサンダーキャットが『ドラゴンボール』をモチーフにした服に身を包んでダンスしながら熱唱しているんですけど、おちゃめでかわいいんですよ。
あっこゴリラ:自宅の写真が載っている記事を見たんですけど、すごいですよね!
冨田:『エヴァンゲリオン』のアスカのポスターが貼ってあったり。
あっこゴリラ:フィギュアもめちゃくちゃたくさん置いてあるし。
冨田:本当にアニメが好きで、しかも彼は日本のアニソンも大好きみたいなんです。僕らが語るようなアニソンの解説みたいなこともよくしています。
あっこゴリラ:へえ!
海外アーティストにおける日本のアニメの影響を語った冨田さんは、「今の時代だからこそのハイクオリティーなコラボレーションが実際に起こっている」と語る。
あっこゴリラ:10年前まで「アニメとかって……」って言ってた人たちは、この状況を見て一気に手のひらを返すよね(笑)。
冨田:日本のアニメって海外で高い評価を受けているんですよっていう言い方をして、初めて日本人が「じゃあ観てみようかな」みたいになるというか。どんなきっかけでも構わないと思っているんですけど、日本では年間200本くらいの新作アニメが作られていると言われていて、その作品ごとに音楽がたくさん生まれています。それが日本のユーザーだけじゃなくて、海外のセレブやビッグアーティストも含めた大勢のファンたちに愛されていることを知ってもらえたらうれしいですね。
■トップ画像詳細
『AKIRA』で知られる大友克洋。時代順に全作品をまとめた全集『OTOMO THE COMPLETE WORKS』の第1期・第1回配本が、2022年1月21日に講談社より刊行開始。一人の作家のパーソナルな仕事集というだけでなく、1970年代から現代までの漫画、アニメ、映像までをも含む、現代文化の冒険を愉しめる作品集となっている。この本の詳細、および画像の出典はこちら。
トップ画像クレジット:(C)1988 マッシュルーム/アキラ制作委員会
冨田さんが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは2月7日(月)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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日本のアニメは8割が大人向け
今、日本のアニメが世界の音楽シーンに影響を与えている。まず番組ではリスナーに「日本が世界に誇るアニメは?」とアンケートを実施。『僕のヒーローアカデミア』や『少女革命ウテナ』、『On Your Mark』(スタジオジブリ)と、さまざまな作品があがった。あっこゴリラ:そもそも日本のアニメってなぜ世界に広がったんですか?
冨田:昔から日本のアニメって世界中で観られてはいるんですけど、『ヒロアカ』(僕のヒーローアカデミア)みたいな作品が観られるようになったのは、ここ10年から15年くらいのことなんです。そもそも日本って他の国と比べて大人向けに作られたアニメがめちゃくちゃ多くて。
あっこゴリラ:確かに。
冨田:普段はアニメを観ない人たちでも、「深夜にアニメってすごくあるな」って思う人がいると思うんです。それは子ども向けに作っていなくて大人に観てほしい作品だから深夜に放送しているわけです。日本は大人向けのアニメが全体の8割と言われていて、子ども向けに作られるアニメよりも多いと言われています。
あっこゴリラ:日本は「アニメ=子ども向け」っていう印象はないかもしれないですね。
冨田:でも海外だと基本的にはキッズ向けの作品が主流なので、海外でアニメが好きっていう大人たちは日本のアニメを観たがるんですよ。そのときになかなかな観ることが難しかった時代が長かったんです。昔は違法サイトでアップロードされた作品をこっそり観るみたいな感じですが、ここ10年くらいでその部分がかなりクリーンになりました。その背景があるので、「日本のアニメが好きだよ」ってやっと言えるようになってきた感じですね。
また、「お互い違うものを認めていこう」という意識が世界中で広がったことも、日本のアニメが広がった要因のひとつだと冨田さんは続ける。
冨田:例えば日本のオタク文化も、「俺は好きだよ」とか「君の好きなものはマイノリティな文化かもしれないけど、僕はそれもいいと思うよ」みたいな風潮がどんどんできあがってきたことによって、セレブやアーティストが「日本のアニメっていいよね」とか「俺は子どもの頃にこれが好きだったんだ」と言う人が増えてきたんだと思います。
海外で爆発的に日本のアニメが観られるようになった理由
冨田さんは日本のアニメに影響を受けた海外アーティストを紹介。まずはラッパーのカニエ・ウェストをあげる。冨田:カニエ・ウェストの『Stronger』という曲は、アニメ『AKIRA』にめちゃくちゃ影響を受けている作品で、ミュージックビデオは完全に『AKIRA』のオマージュです。『AKIRA』の作者である大友克洋さんとも交流があったりして、カニエ・ウェストは大ファンなんですね
冨田:あとはヒップホップグループのウータン・クランのリーダー・RZAの『Must Be Bobby』という曲は『ドラゴンボールZ』についてラップしているんですよ。RZAは昔から「『北斗の拳』がめちゃくちゃ好きだぜ」とも言っています。こういうビッグなアーティストやセレブたちによって、日本のアニメやオタク文化の評価がどんどん変化していったんじゃないかと思います。
あっこゴリラ:先ほど違法で観られていたアニメが合法になったとお話されていましたが、きっかけは何ですか?
冨田:特に海外において、クランチロールというアニメを配信するサイトが大きな影響を与えています。
クランチロールは、世界200以上の国や地域でアニメやマンガのファンを結ぶコンテンツを提供するサイトだ。
冨田:基本的には日本のアニメを配信しているんですけどアニメ好きなユーザーがつながることもできて、登録者数は1億人を超えてると言われています。クランチロールはアメリカの会社なんですけど、アメリカだけじゃなく南米やヨーロッパ、南極、中東など本当にさまざまな地域に日本のアニメを届けています。
あっこゴリラ:へえ!
冨田:クランチロールが立ち上がった2006年くらいはみんな日本のアニメを観たかったけれど正規の配信も放送もされないから、致し方なく違法アップロードをしてアニメを観ていたんですけど、2008年頃から徐々に権利まわりがクリアになりました。
サンダーキャットはアニソンの解説までする?
冨田さんは、アニメにインスパイアされている曲としてリル・ウージー・ヴァート『Sasuke』を紹介した。あっこゴリラ:やっぱり、サスケ人気だな!
冨田:『NARUTO -ナルト-』の影響ってハンパないですよね。彼はもはやアニメ好きのレベルではないんです。日本のアニメで例えば『けいおん!』とか『境界の彼方』とか、マニアックな作品も深掘りして観ていて。しかも自分のアニメ愛を表現するのに車を改造してボディーにアニメのキャラクターを描いたりする、いわゆる痛車(いたしゃ)をル・ウージー・ヴァートはたくさん持っているんですけど、ランボルギーニとかに描いているんですよ。
冨田さんは、ル・ウージー・ヴァートがアニメ『デス・パレード』の楽曲をサンプリングした1曲『New Patek』を紹介した。
あっこゴリラ:自宅の写真が載っている記事を見たんですけど、すごいですよね!
冨田:『エヴァンゲリオン』のアスカのポスターが貼ってあったり。
あっこゴリラ:フィギュアもめちゃくちゃたくさん置いてあるし。
冨田:本当にアニメが好きで、しかも彼は日本のアニソンも大好きみたいなんです。僕らが語るようなアニソンの解説みたいなこともよくしています。
あっこゴリラ:へえ!
海外アーティストにおける日本のアニメの影響を語った冨田さんは、「今の時代だからこそのハイクオリティーなコラボレーションが実際に起こっている」と語る。
あっこゴリラ:10年前まで「アニメとかって……」って言ってた人たちは、この状況を見て一気に手のひらを返すよね(笑)。
冨田:日本のアニメって海外で高い評価を受けているんですよっていう言い方をして、初めて日本人が「じゃあ観てみようかな」みたいになるというか。どんなきっかけでも構わないと思っているんですけど、日本では年間200本くらいの新作アニメが作られていると言われていて、その作品ごとに音楽がたくさん生まれています。それが日本のユーザーだけじゃなくて、海外のセレブやビッグアーティストも含めた大勢のファンたちに愛されていることを知ってもらえたらうれしいですね。
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<(C)2022 MASH・ROOM (C)1983 角川映画>
トップ画像クレジット:(C)1988 マッシュルーム/アキラ制作委員会
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