アイスランド在住で音楽ジャーナリストの小倉悠加が、アイスランドの音楽の魅力や注目の若手アーティストを紹介した。
小倉が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
1月18日(火)のオンエアでは「音楽世界旅行〜アイスランド編」をテーマにお届けした。
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アイスランドはヨーロッパと北米大陸の間に浮かび、北海道より大きな台地に人口約36万人が住む小さな国。1年の半分は冬で溶岩や氷河など大自然が広がる国だが、世界的に評価されるアーティストが次々と登場している。
ゲストの小倉はアイスランドに何度も足を運び、2017年から現地に居住。渋谷生まれだがノイズが苦手だった小倉は、アイスランドの音楽や自然に魅了されたという。そんな小倉によると、BjörkとSigur Rosはアイスランド音楽が国際的に認知される上で欠かすことのできない存在だと語る。
小倉:Björkは子どもの頃にレコーディングした曲が大ヒット。子役としても活躍した後、ティーンエイジャーになった80年代に冗談半分で友だちと作ったThe Sugarcubesでも大ヒットしました。その後は渡英して国際的に知られ、ソロになってもさらに大ヒット。グラミー賞はソロで15回ノミネートされ、女優としてもカンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲っていて本当に偉大な存在です。
あっこゴリラ:Björkは本当に素晴らしいアーティストですよね。Sigur Rosは?
小倉:レイキャビクで結成されたバンドです。あの頃のレイキャビクの雰囲気をすごく反映している音響で、ダイナミックなサウンドに繊細なボーカルが乗るあの感じは誰もマネできないですよね。日本のバンドの中にもSigur Rosのようなサウンドを作りたいと影響を受けた人は多かったと思います。
あっこゴリラ:(Sigur Rosのフロントマンである)Jónsiのソロもめちゃめちゃ格好いいですもんね!
あっこゴリラも「本当にオルタナティブでオリジナルがすごい」と絶賛するBjörk。しかし小倉によると、世界的に成功しているBjörkだが国内評価はそこまで高くないという。地元の人からは「変わり者」と思われている。
小倉:グラミー賞を獲っている坂本龍一さんや喜多郎さんをすべての日本人が聴いているわけではないですもんね。彼女の存在なくしてアイスランドの音楽はなかったんですが、貢献度はあっても地元の人気はもっと軽いノリのポップスターのほうが上ですね。それはそれで面白いんですが。Sigur Rosはようやく庶民に受け入れられたと思ったらメンバーが脱退したり脱税の問題があったりしたのが残念ですね。Jonsiはアメリカに住んでいるのでバンドで音楽活動をしていないのが残念です。
あっこゴリラ:めっちゃいいですね!
小倉:BjorkやSigur Rosに次いで有名なバンドですね。「おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド」とよく言われています。メンバーが流動的なんですが、一時期在籍していたのがHildur Guonadottir。映画『ジョーカー』や『チェルノブイリ』のサウンドトラックを制作し、女性で初めてアカデミー賞を獲った女性です。グラミー賞なども総ナメにした女性がいたグループです。
あっこゴリラ:そうなんだ!
小倉によると、アイスランドは日本と同じように国民的アーティストと言うと国内でのみ活躍しているアーティストなのだそう。また日本人からすると「大自然に囲まれた土地ならではのアイスランド音楽らしさ」とステレオタイプ化したがるが、彼らは自由にやっているだけでそういう意識はないという。小さな国なので売れたとしてもたかが知れているため、「友だちと楽しく音楽活動をやって海外旅行に行きたい」と考えるアーティストが多いと語った。
小倉:だからこそ個性的な音楽がたくさん出てくるのかもしれませんね。
あっこゴリラ:たしかに土地や気候は無理矢理ステレオタイプ化するものではなく、自然にフィットするものですよね。だから音楽世界旅行という気分になれるのかも。
小倉:そこでOf Monsters and Menが優勝してデビューしました。また優勝はしなかったんですが、1994年にJonsiがいたバンド、Bee Spidersも出ていました。
あっこゴリラ:そうなんですね。アイスランドではどのような音楽教育が行われるんでしょうか。
小倉:音楽学校もあるし、音楽教室が課外活動としてたくさんあって音楽が好きな子はピアノや歌をやります。その質を均一にさせるための試みの中で育ったのがSigur Rosなんだそうですよ。小さな頃から人の前で演奏させたり歌を歌ったりするんだそうです。「失敗しても大丈夫だよ」ということで見てくれるから、失敗を恐れずにステージの前で立つことをよくやっています。
あっこゴリラ:最高。それ大事ですね。最初がそれで始まると実験精神も育つし、おもしろい音楽が生まれる土壌にもなりそうです。
小倉:ノスタルジックな音楽で大好きだったBagdad Brothersというバンドが解散してしまったんですが、その中心人物だったビャルニ君が作ったバンドです。ロンドンのロックバンドのベーシストがアイスランド人で、彼と共同プロデュースで曲を作っているのでロンドンでもヒットしているようです。
あっこゴリラ:へ~。なるほどね。
小倉:地元の若いアーティストが集まるアート自助コミュニティの中心メンバーとしても活躍しています。また秋にBjörkがレイキャビクでコンサートシリーズをやったんですが、その中で声だけでやるステージにコーラス隊として立った1人がSupersport!のメンバーでした。
続いてはレイキャビク在住の作曲家Mikael Lind。彼自身はスウェーデン人だが、奥さんがアイスランド人の画家でSigur Rosのアルバム『Kveikur』のアートワークを手がけた。
小倉:彼は地味なんですが、深くシーンに浸透しています。電子音楽が得意で作曲や音楽制作の傍ら、学校でも教えています。サウンドスケープがとても素晴らしくて「1人Sigur Ros」とも言われるほど壮大な音楽です。
あっこゴリラ:格好いいですね。本当に静かな雪の中で聴きたい。もしくは東京でノイズをオフりたいときに聴きたい(笑)。本当に東京のネオン街からは絶対に出てこない音楽性なので格好いいと思っちゃいますね。
小倉:私は彼女のお兄さんと知り合いで、5年くらい前に彼女の実家のレストランに行ったことがあります。そのときに彼女のCDを聴いたんですが、その頃はジャズスタンダードみたいな音楽であまり面白くなかった。でも数年後にレイキャビクで本格的に音楽学校に行き始めてソロになったら、全然当時と違ってビックリしました。声もいいし、Kate Bushのようで音域も広くて驚きました。彼女さえその気になればBjörkの次になると思います。
あっこゴリラ:格好いいですね!
小倉:Bjorkのような弾け方はしないんだけど、ボーカルテクニックがすごく上手です。
小倉によるとアイスランドは小さな国であるため、アーティスト同士の繋がりやお互いに助け合う空気が形成されているそう。狭い社会のために人間同士の繋がりも狭くて濃いものになるが、アーティストは他の人と絶対に違うことをしたいという心意気があるために音楽性に個性が出るのだという。
小倉:また楽器も少ないので「私はクラシックだからロックバンドのようなギターは弾けないわ」なんて言っていられないんです。だからクラシックやジャズなどのジャンルの垣根がない。クラシックのミュージシャンでもロックもメタルもやるので、ジャンルが融合していくんだと思いますね。
ラストにピックアップしたのはSucks to be you Nigelだ。2020年に結成されたばかりの4人組のポストパンクバンド。
小倉:有望な新人として新人だけに与えられる音楽賞を受賞しました。350枚のEPやLPの中から選ばれた7組のアーティストのうちの1組です。
あっこゴリラ:へ~! すっごい気になる。
小倉:BjörkとSigur Rosがかつてやっていたパンク精神とも通じるような、はっちゃけた感じがするので楽しいと思います。
あっこゴリラ:最高ですね。大好き! ライブ見たい! こんなにはっちゃけたボーカルはなかなか難しいからすごいよ。今日教えていただいたアーティスト、どれも格好よくて全部好き!
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
小倉が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
1月18日(火)のオンエアでは「音楽世界旅行〜アイスランド編」をテーマにお届けした。
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アイスランド音楽を語る上で欠かせないBjörkとSigur Ros
番組では、アイスランドを特集。アイスランドはヨーロッパと北米大陸の間に浮かび、北海道より大きな台地に人口約36万人が住む小さな国。1年の半分は冬で溶岩や氷河など大自然が広がる国だが、世界的に評価されるアーティストが次々と登場している。
ゲストの小倉はアイスランドに何度も足を運び、2017年から現地に居住。渋谷生まれだがノイズが苦手だった小倉は、アイスランドの音楽や自然に魅了されたという。そんな小倉によると、BjörkとSigur Rosはアイスランド音楽が国際的に認知される上で欠かすことのできない存在だと語る。
小倉:Björkは子どもの頃にレコーディングした曲が大ヒット。子役としても活躍した後、ティーンエイジャーになった80年代に冗談半分で友だちと作ったThe Sugarcubesでも大ヒットしました。その後は渡英して国際的に知られ、ソロになってもさらに大ヒット。グラミー賞はソロで15回ノミネートされ、女優としてもカンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲っていて本当に偉大な存在です。
あっこゴリラ:Björkは本当に素晴らしいアーティストですよね。Sigur Rosは?
小倉:レイキャビクで結成されたバンドです。あの頃のレイキャビクの雰囲気をすごく反映している音響で、ダイナミックなサウンドに繊細なボーカルが乗るあの感じは誰もマネできないですよね。日本のバンドの中にもSigur Rosのようなサウンドを作りたいと影響を受けた人は多かったと思います。
あっこゴリラ:(Sigur Rosのフロントマンである)Jónsiのソロもめちゃめちゃ格好いいですもんね!
あっこゴリラも「本当にオルタナティブでオリジナルがすごい」と絶賛するBjörk。しかし小倉によると、世界的に成功しているBjörkだが国内評価はそこまで高くないという。地元の人からは「変わり者」と思われている。
小倉:グラミー賞を獲っている坂本龍一さんや喜多郎さんをすべての日本人が聴いているわけではないですもんね。彼女の存在なくしてアイスランドの音楽はなかったんですが、貢献度はあっても地元の人気はもっと軽いノリのポップスターのほうが上ですね。それはそれで面白いんですが。Sigur Rosはようやく庶民に受け入れられたと思ったらメンバーが脱退したり脱税の問題があったりしたのが残念ですね。Jonsiはアメリカに住んでいるのでバンドで音楽活動をしていないのが残念です。
女性初のアカデミー賞受賞したメンバーもかつて在籍したmum
小倉はまずおすすめアーティストとして、エレクトロバンドのmumをピックアップ。あっこゴリラ:めっちゃいいですね!
小倉:BjorkやSigur Rosに次いで有名なバンドですね。「おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド」とよく言われています。メンバーが流動的なんですが、一時期在籍していたのがHildur Guonadottir。映画『ジョーカー』や『チェルノブイリ』のサウンドトラックを制作し、女性で初めてアカデミー賞を獲った女性です。グラミー賞なども総ナメにした女性がいたグループです。
あっこゴリラ:そうなんだ!
小倉によると、アイスランドは日本と同じように国民的アーティストと言うと国内でのみ活躍しているアーティストなのだそう。また日本人からすると「大自然に囲まれた土地ならではのアイスランド音楽らしさ」とステレオタイプ化したがるが、彼らは自由にやっているだけでそういう意識はないという。小さな国なので売れたとしてもたかが知れているため、「友だちと楽しく音楽活動をやって海外旅行に行きたい」と考えるアーティストが多いと語った。
小倉:だからこそ個性的な音楽がたくさん出てくるのかもしれませんね。
あっこゴリラ:たしかに土地や気候は無理矢理ステレオタイプ化するものではなく、自然にフィットするものですよね。だから音楽世界旅行という気分になれるのかも。
失敗を恐れない音楽教育から生まれるアイスランドの個性的な音楽
アイスランドでは音楽シーンの発展において重要になる新人発掘コンテスト「Musiktilraunir」がある。小倉:そこでOf Monsters and Menが優勝してデビューしました。また優勝はしなかったんですが、1994年にJonsiがいたバンド、Bee Spidersも出ていました。
あっこゴリラ:そうなんですね。アイスランドではどのような音楽教育が行われるんでしょうか。
小倉:音楽学校もあるし、音楽教室が課外活動としてたくさんあって音楽が好きな子はピアノや歌をやります。その質を均一にさせるための試みの中で育ったのがSigur Rosなんだそうですよ。小さな頃から人の前で演奏させたり歌を歌ったりするんだそうです。「失敗しても大丈夫だよ」ということで見てくれるから、失敗を恐れずにステージの前で立つことをよくやっています。
あっこゴリラ:最高。それ大事ですね。最初がそれで始まると実験精神も育つし、おもしろい音楽が生まれる土壌にもなりそうです。
小倉が注目する若手アーティスト!「1人Sigur Ros」との評価も
そして小倉は、今アイスランドで注目すべきバンドとしてSupersport!を挙げる。あっこゴリラ:へ~。なるほどね。
小倉:地元の若いアーティストが集まるアート自助コミュニティの中心メンバーとしても活躍しています。また秋にBjörkがレイキャビクでコンサートシリーズをやったんですが、その中で声だけでやるステージにコーラス隊として立った1人がSupersport!のメンバーでした。
続いてはレイキャビク在住の作曲家Mikael Lind。彼自身はスウェーデン人だが、奥さんがアイスランド人の画家でSigur Rosのアルバム『Kveikur』のアートワークを手がけた。
小倉:彼は地味なんですが、深くシーンに浸透しています。電子音楽が得意で作曲や音楽制作の傍ら、学校でも教えています。サウンドスケープがとても素晴らしくて「1人Sigur Ros」とも言われるほど壮大な音楽です。
あっこゴリラ:格好いいですね。本当に静かな雪の中で聴きたい。もしくは東京でノイズをオフりたいときに聴きたい(笑)。本当に東京のネオン街からは絶対に出てこない音楽性なので格好いいと思っちゃいますね。
Björkの後継者になるかも!注目の女性シンガーソングライター
次に紹介したのはシンガーソングライターのSalome Katrin。小さな漁村で育った女性だという。小倉:私は彼女のお兄さんと知り合いで、5年くらい前に彼女の実家のレストランに行ったことがあります。そのときに彼女のCDを聴いたんですが、その頃はジャズスタンダードみたいな音楽であまり面白くなかった。でも数年後にレイキャビクで本格的に音楽学校に行き始めてソロになったら、全然当時と違ってビックリしました。声もいいし、Kate Bushのようで音域も広くて驚きました。彼女さえその気になればBjörkの次になると思います。
あっこゴリラ:格好いいですね!
小倉:Bjorkのような弾け方はしないんだけど、ボーカルテクニックがすごく上手です。
小倉によるとアイスランドは小さな国であるため、アーティスト同士の繋がりやお互いに助け合う空気が形成されているそう。狭い社会のために人間同士の繋がりも狭くて濃いものになるが、アーティストは他の人と絶対に違うことをしたいという心意気があるために音楽性に個性が出るのだという。
小倉:また楽器も少ないので「私はクラシックだからロックバンドのようなギターは弾けないわ」なんて言っていられないんです。だからクラシックやジャズなどのジャンルの垣根がない。クラシックのミュージシャンでもロックもメタルもやるので、ジャンルが融合していくんだと思いますね。
ラストにピックアップしたのはSucks to be you Nigelだ。2020年に結成されたばかりの4人組のポストパンクバンド。
小倉:有望な新人として新人だけに与えられる音楽賞を受賞しました。350枚のEPやLPの中から選ばれた7組のアーティストのうちの1組です。
あっこゴリラ:へ~! すっごい気になる。
小倉:BjörkとSigur Rosがかつてやっていたパンク精神とも通じるような、はっちゃけた感じがするので楽しいと思います。
あっこゴリラ:最高ですね。大好き! ライブ見たい! こんなにはっちゃけたボーカルはなかなか難しいからすごいよ。今日教えていただいたアーティスト、どれも格好よくて全部好き!
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
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2022年1月25日28時59分まで
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番組情報
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