DAOKOとThe fin.のYuto UchinoがTame Impalaの魅力を語ったほか、音楽ライターのJun FukunagaさんがTame Impalaの今までの作品を解説した。
三人が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、「君は世界のチャートを知っているか!? Tame Impala編」をテーマにお届けした4月21日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
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ゲストには、音楽ライターのJun Fukunagaさんが登場。
あっこゴリラ:そもそもTame Impalaは、どんなバンドで、どんなシーンから登場したんですか?
Fukunaga:バンド形態をとっていますが、作詞作曲はもちろんのこと、演奏、スタジオ作業までKevin Parkerが1人でこなすソロプロジェクトになります。
あっこゴリラ:オーストラリア出身なんですね。
Fukunaga:オーストラリアのパースで育っています。2007年ごろにTame Impalaとして活動を開始し、当時流行りだったMyspaceで音源を公開します。
あっこゴリラ:Myspace、懐かしい~!
Fukunaga:そして2008年に、当時オーストラリアで人気だったレーベル「Modular」と契約し、同年『Tame Impala EP』でデビューしました。このEPが、オーストラリアのインディーチャートで1位を獲得するなど、母国でスマッシュヒットとなります。
あっこゴリラ:へえ~。
Fukunaga:2000年代後半のオーストラリアでは、エレクトロハウスが大流行していて、そのことを考えると初期のTame Impalaの音楽性はサイケデリックロックなんですよね。レーベルとしてはエレクトロのイメージが強いから、かなり異端だったのかなと思います。
あっこゴリラ:そうなんだ~。
Fukunaga:とはいえ、オーストラリアは土地柄ロックが強く、「Modular」もエレクトロのイメージは強いが、バンド形態のエレクトロをやっているCut CopyとかVan Sheなども所属していました。
あっこゴリラ:なるほど~。
Fukunaga:また同レーベルには、70年代に影響を受けたハードロック、ストーナーロック系のバンド「Wolfmother」が所属していたことを考えると、その路線の新人に目をつけたのかなっていうのもありますね。
【Tame Impala『Alter Ego』を聴く】
Tame Impalaは、これまでに4枚のアルバムをリリースしているが、アルバムごとにテーマがあるという。Fukunagaさんがそれぞれのアルバムを解説した。
・デビューアルバム:『Innerspeaker』(2010年)
Fukunaga:このアルバムのテーマは、「内なる声との対峙」。自分自身の心の動きや内面に向き合うようなものが多く、もう一人の自分が心の中で問いかける声を表現した歌詞が特徴。自身の孤独や将来に対しての不安や葛藤を、持てる音楽的スキルを総動員して形にしたような作品になっています。デビューアルバムですが、世界中のメディアから高評価を獲得していて、オーストラリアでゴールドディスクを獲得しています。母国の賞レース「ARIAミュージック・アワード」でも複数部門ノミネートされています。
・2ndアルバム『Lonerism』(2012年)
Fukunaga:アルバムのテーマは、「孤独主義」。Kevin曰く、歌詞は前作の前日譚的なもので、「誰かが成長し、他の人々を発見し、自分の居場所が世界の他の部分とは関係ないことに気づくことで自分が一匹狼であることを発見するようなもの」とインタビューで語っている通り、歌詞は本人の別人格から書かれたとされています。そういった内容から“絶望的な場所からの現実逃避”と称する海外メディアもあります。
あっこゴリラ:Kevin Parkerの精神的な変化の過程も覗けてる感じがしておもしろいですね。サウンド的には?
Fukunaga:サウンド的には前作のサイケデリック路線は踏襲していますが、この作品ではギターの音がおさえられ、代わりにシンセサイザー、ドラムマシーン、サンプルの音が多くなります。また、前作よりもメロディックになった印象があり、Kevin自身もキャッチーなメロディーを通じて、ブリトニー・スピアーズのようなポップミュージックへの敬愛ぶりを作詞作曲に取り入れることを試みた作品と言われています。
・3ndアルバム『Currents』(2015年)
Fukunaga:世界的なブレイクを収めるきっかけになった作品と言われています。アルバムのテーマは、「個人的な変容の過程」。『Currents』とは、「絶えず動く流れ」という意味も持つ単語で、「海流(=Ocean Currents)」みたいに壮大なスケールを表現する言葉でもあり、目には見えない、感情的なものの象徴として名付けられています。評論家の多くは、私生活における失恋の結果だと解釈してます(笑)。
あっこゴリラ:なんだ、それ。あはははは。
Fukunaga:パートナーとの失恋を通して、それぞれ人生には人を違う場所へと誘う「流れ」があり、それに抗おうとしても制御はできないため、身を任せて前進するのが良いということを学んだ、みたいなことを歌っています。だから、今まで遮断してきた騒音や自分の変化を受け入れて、「流れ」に身を任せて生きようと決意したという内容が歌われています。
あっこゴリラ:これ、すごい大きな変化ですね。どっちかというと遮断して、現実逃避っていう方向から向き合うっていう方向になるっていう。なるほどな~。サウンド的にはどう変化していくんですか?
Fukunaga:これまでのアルバムとは異なり、サイケ路線とは対照的にギターよりもシンセに重点が置かれていて、よりダンサブルでポップになった作品だと思います。このアルバムもメディアから高く評価さていて、Pitchforkのレビューで同じ年にリリースされたKendrick Lamarの名盤『To Pimp a Butterfly』と並ぶ、9.3点を獲得したことをはじめ、各メディアが絶賛。世界的なブレイクを収めるきっかけになった作品だと言えます。
・4thアルバム『The Slow Rush』(2020年)
Fukunaga:このアルバムのテーマは、「時の流れ」。テーマ通り、アルバムの最初に『One More Year』で「あと一年あると思えばいつもの退屈なルーティーンから抜け出せる」と歌い、最後には『One More Hour』で「もうあと一時間しかない」と歌うなど、時間をテーマにした作品が多く収録されています。ほかにも生前確執があった父親を追悼する曲や「もう昔ほど若くない」という歌詞があったり、時間が流れ、過去の自分ではないことに向き合い、受け入れることをテーマにした曲などもあります。時が流れたことで、これまでのアルバムで歌われてきたことの伏線回収的な内容でもあるところが、僕としては興味深いです。
あっこゴリラ:なるほど~。サウンド的には?
Fukunaga:サウンド的には『Currents』を引き継いだダンスミュージック的な曲が多いです。ディスコ、R&B、ファンク、ヒップヒップ、ハウス、テクノなど、様々な要素が伺える内容であり、ソフトロックの影響も感じさせる作品になっています。
DAOKO:Tame Impalaと出会ったのは、私が18、9歳くらいのときかな。そのときはサイケデリックな音楽にハマってた時期でもあったので、いろいろ聴いててTame Impalaにたどり着きました。どこが好きかというと、やっぱり音作りですかね。空間が広がるようなサイケデリックな感じやロックのギターの音色、エッジ効いたベース、あとドラムの音色とか、耳心地が良くてすごく好きです。今、なかなか日本で海外のアーティストを見れる機会がないですが、いつかライブ観てみたいなと思います。
DAOKO曰く、Tame Impalaは家でのまったり時間やちょっとウキウキしたいようなときにおすすめのサウンドだという。
DAOKO:最近、このTame Impala特集にお声掛けいただいて改めて聴き直してみたら、今の気分にもすごくマッチして、この企画をきっかけにハマり直した節もあります(笑)。アルバムで言うと、特にセカンドアルバムが好きで、進化していってるサウンドだと思うんですけど、このときのちょっと懐かしい感じとか、ロックな感じの音作りがとってもかっこいいなと思います。
【Tame Impala『Feels Like We Only Go Backwards』を聴く】
続いて、The fin.のボーカル、Yuto UchinoがTame Impalaの魅力を語ってくれた。
Uchino:俺、本当にTame Impalaの大ファンです。最初に聴いたのはセカンドアルバム。当時大学生だったんですけど、60年代とか70年代のけっこう古い音楽から新しいバンドまで聴いてたけど、Tame Impalaはそのちょうど真ん中をいってるというか。すごい古いサウンドの感じだけど、新しいところをいってて、当時の自分の欲しいところを取ったみたいなサウンドでたくさん聴きました。
Tame Impala のライブを何回か観たことがあるというUchino。VJがずっと流れていたり、レーザーが音と一緒にリンクしていたり、視覚的な効果も多用されていて、音源とはまた違う印象が味わえるライブだったという。
Uchino:Kevin Parkerは全部一人でプロダクションもやっていますが、あの1人のピュアな世界観がいいですよね。特にファースト・アルバムは本当に1人で作り込んでいて、1人の頭の中を覗いてるみたいなアルバムになってると思います。それがみんなの孤独とマッチしていて。俺も大学生のころとかずっとそのアルバムを聴いていて、自分のいい思い出には常にTame Impalaがいる気がします。
【Tame Impala『Posthumous Forgiveness』を聴く】
あっこゴリラ:Tame Impalaは、HIP HOPシーンからもかなり支持されていますよね。
Fukunaga:そうなんです。Kendrick Lamer、Kanye West、Travis Scott、A$AP Rockyなど名だたるビックネームのラッパーからラブコールを受けてきました。
あっこゴリラ:本当にすごいメンツだよね。ここまでHIP HOPシーンで支持される理由って何なんでしょうか?
Fukunaga:年を経るごとにHIP HOPシーンとのつながりは強くなってきてるんですが、2018年ごろからビックネームとの仕事が増えてると思います。Travis Scottの音楽制作に対する姿勢に影響を受けたとインタビューで語っていたり、4thアルバム『The Slow Rush』の制作に関しても、様々な音楽からのサンプリングというHIP HOP的手法やKanye Westの視点をTame Impalaに取り入れたというメディアもあったりします。
あっこゴリラ:へえ~! じゃあTame Impala自身もHIP HOPから影響を受てるんですね。3枚目以降の音楽的な変化もやっぱりその影響が大きいのかな。
Fukunaga:そうですね。HIP HOPの影響を感じさせる4thアルバムは、サイケデリックロック以外にディスコ、R&B、ファンク、HIP HOP、ハウス、テクノなど様々な要素が伺える内容ですが、なかでもソフトロックの要素がサンプリング的に使われています。
あっこゴリラ:そうなんだ~。
Fukunaga:例えば、『One More Year』のイントロで聴けるシンセパッドは、Kevinが自分の声をサンプリングして作ったものなんですが、10ccの『I'm not in Love』のイントロの影響を感じます。
【Tame Impara『One More Year』を聴く】
あっこゴリラ:Tame Impala自身、HIP HOPと出会い、どんな進化を遂げたと思いますか?
Fukunaga:HIP HOPが辿った「ポップス化」の道筋を、今度はロック側から辿っているような印象が僕はあります。HIP HOPは存在自体がポップカルチャーで、Post MaloneのようにHIP HOPとロックのジャンルの壁を失くし、“新たなポップス”を定義するアーティストも続々と出現しています。Kevin Parker自身もブリトニー・スピアーズやカイリー・ミノーグのようなポップスを好んでおり、ポップスシーンの大物プロデューサー、Max Martinへの接近を口にしていることから、4thアルバム『The Slow Rush』では、HIP HOPが辿ったポップス化の道筋を、今度はロック側から辿っているという仮説を僕の中では立てています。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
三人が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、「君は世界のチャートを知っているか!? Tame Impala編」をテーマにお届けした4月21日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
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Kevin Parkerによるソロプロジェクト・Tame Impala
今週の『SONAR MUSIC』では、一週間を通して特別企画をお届け。この日番組では、昨年リリースされたアルバムが、HIP HOPの全米チャートで初登場3位を獲得、世界中のフェスでヘッドライナーを務めるオーストラリア出身の人気ロックバンド、Tame Impalaを特集。ゲストには、音楽ライターのJun Fukunagaさんが登場。
あっこゴリラ:そもそもTame Impalaは、どんなバンドで、どんなシーンから登場したんですか?
Fukunaga:バンド形態をとっていますが、作詞作曲はもちろんのこと、演奏、スタジオ作業までKevin Parkerが1人でこなすソロプロジェクトになります。
あっこゴリラ:オーストラリア出身なんですね。
Fukunaga:オーストラリアのパースで育っています。2007年ごろにTame Impalaとして活動を開始し、当時流行りだったMyspaceで音源を公開します。
あっこゴリラ:Myspace、懐かしい~!
Fukunaga:そして2008年に、当時オーストラリアで人気だったレーベル「Modular」と契約し、同年『Tame Impala EP』でデビューしました。このEPが、オーストラリアのインディーチャートで1位を獲得するなど、母国でスマッシュヒットとなります。
あっこゴリラ:へえ~。
Fukunaga:2000年代後半のオーストラリアでは、エレクトロハウスが大流行していて、そのことを考えると初期のTame Impalaの音楽性はサイケデリックロックなんですよね。レーベルとしてはエレクトロのイメージが強いから、かなり異端だったのかなと思います。
あっこゴリラ:そうなんだ~。
Fukunaga:とはいえ、オーストラリアは土地柄ロックが強く、「Modular」もエレクトロのイメージは強いが、バンド形態のエレクトロをやっているCut CopyとかVan Sheなども所属していました。
あっこゴリラ:なるほど~。
Fukunaga:また同レーベルには、70年代に影響を受けたハードロック、ストーナーロック系のバンド「Wolfmother」が所属していたことを考えると、その路線の新人に目をつけたのかなっていうのもありますね。
【Tame Impala『Alter Ego』を聴く】
Tame Impalaは、これまでに4枚のアルバムをリリースしているが、アルバムごとにテーマがあるという。Fukunagaさんがそれぞれのアルバムを解説した。
・デビューアルバム:『Innerspeaker』(2010年)
Fukunaga:このアルバムのテーマは、「内なる声との対峙」。自分自身の心の動きや内面に向き合うようなものが多く、もう一人の自分が心の中で問いかける声を表現した歌詞が特徴。自身の孤独や将来に対しての不安や葛藤を、持てる音楽的スキルを総動員して形にしたような作品になっています。デビューアルバムですが、世界中のメディアから高評価を獲得していて、オーストラリアでゴールドディスクを獲得しています。母国の賞レース「ARIAミュージック・アワード」でも複数部門ノミネートされています。
・2ndアルバム『Lonerism』(2012年)
Fukunaga:アルバムのテーマは、「孤独主義」。Kevin曰く、歌詞は前作の前日譚的なもので、「誰かが成長し、他の人々を発見し、自分の居場所が世界の他の部分とは関係ないことに気づくことで自分が一匹狼であることを発見するようなもの」とインタビューで語っている通り、歌詞は本人の別人格から書かれたとされています。そういった内容から“絶望的な場所からの現実逃避”と称する海外メディアもあります。
あっこゴリラ:Kevin Parkerの精神的な変化の過程も覗けてる感じがしておもしろいですね。サウンド的には?
Fukunaga:サウンド的には前作のサイケデリック路線は踏襲していますが、この作品ではギターの音がおさえられ、代わりにシンセサイザー、ドラムマシーン、サンプルの音が多くなります。また、前作よりもメロディックになった印象があり、Kevin自身もキャッチーなメロディーを通じて、ブリトニー・スピアーズのようなポップミュージックへの敬愛ぶりを作詞作曲に取り入れることを試みた作品と言われています。
・3ndアルバム『Currents』(2015年)
Fukunaga:世界的なブレイクを収めるきっかけになった作品と言われています。アルバムのテーマは、「個人的な変容の過程」。『Currents』とは、「絶えず動く流れ」という意味も持つ単語で、「海流(=Ocean Currents)」みたいに壮大なスケールを表現する言葉でもあり、目には見えない、感情的なものの象徴として名付けられています。評論家の多くは、私生活における失恋の結果だと解釈してます(笑)。
あっこゴリラ:なんだ、それ。あはははは。
Fukunaga:パートナーとの失恋を通して、それぞれ人生には人を違う場所へと誘う「流れ」があり、それに抗おうとしても制御はできないため、身を任せて前進するのが良いということを学んだ、みたいなことを歌っています。だから、今まで遮断してきた騒音や自分の変化を受け入れて、「流れ」に身を任せて生きようと決意したという内容が歌われています。
あっこゴリラ:これ、すごい大きな変化ですね。どっちかというと遮断して、現実逃避っていう方向から向き合うっていう方向になるっていう。なるほどな~。サウンド的にはどう変化していくんですか?
Fukunaga:これまでのアルバムとは異なり、サイケ路線とは対照的にギターよりもシンセに重点が置かれていて、よりダンサブルでポップになった作品だと思います。このアルバムもメディアから高く評価さていて、Pitchforkのレビューで同じ年にリリースされたKendrick Lamarの名盤『To Pimp a Butterfly』と並ぶ、9.3点を獲得したことをはじめ、各メディアが絶賛。世界的なブレイクを収めるきっかけになった作品だと言えます。
・4thアルバム『The Slow Rush』(2020年)
Fukunaga:このアルバムのテーマは、「時の流れ」。テーマ通り、アルバムの最初に『One More Year』で「あと一年あると思えばいつもの退屈なルーティーンから抜け出せる」と歌い、最後には『One More Hour』で「もうあと一時間しかない」と歌うなど、時間をテーマにした作品が多く収録されています。ほかにも生前確執があった父親を追悼する曲や「もう昔ほど若くない」という歌詞があったり、時間が流れ、過去の自分ではないことに向き合い、受け入れることをテーマにした曲などもあります。時が流れたことで、これまでのアルバムで歌われてきたことの伏線回収的な内容でもあるところが、僕としては興味深いです。
あっこゴリラ:なるほど~。サウンド的には?
Fukunaga:サウンド的には『Currents』を引き継いだダンスミュージック的な曲が多いです。ディスコ、R&B、ファンク、ヒップヒップ、ハウス、テクノなど、様々な要素が伺える内容であり、ソフトロックの影響も感じさせる作品になっています。
自分の良い思い出には常にTame Impalaがいる
ここからは、Tame Impalaの大ファンを公言する二人のアーティストにその魅力を語ってもらった。まず登場したのは、DAOKO。DAOKO:Tame Impalaと出会ったのは、私が18、9歳くらいのときかな。そのときはサイケデリックな音楽にハマってた時期でもあったので、いろいろ聴いててTame Impalaにたどり着きました。どこが好きかというと、やっぱり音作りですかね。空間が広がるようなサイケデリックな感じやロックのギターの音色、エッジ効いたベース、あとドラムの音色とか、耳心地が良くてすごく好きです。今、なかなか日本で海外のアーティストを見れる機会がないですが、いつかライブ観てみたいなと思います。
DAOKO曰く、Tame Impalaは家でのまったり時間やちょっとウキウキしたいようなときにおすすめのサウンドだという。
DAOKO:最近、このTame Impala特集にお声掛けいただいて改めて聴き直してみたら、今の気分にもすごくマッチして、この企画をきっかけにハマり直した節もあります(笑)。アルバムで言うと、特にセカンドアルバムが好きで、進化していってるサウンドだと思うんですけど、このときのちょっと懐かしい感じとか、ロックな感じの音作りがとってもかっこいいなと思います。
【Tame Impala『Feels Like We Only Go Backwards』を聴く】
続いて、The fin.のボーカル、Yuto UchinoがTame Impalaの魅力を語ってくれた。
Uchino:俺、本当にTame Impalaの大ファンです。最初に聴いたのはセカンドアルバム。当時大学生だったんですけど、60年代とか70年代のけっこう古い音楽から新しいバンドまで聴いてたけど、Tame Impalaはそのちょうど真ん中をいってるというか。すごい古いサウンドの感じだけど、新しいところをいってて、当時の自分の欲しいところを取ったみたいなサウンドでたくさん聴きました。
Tame Impala のライブを何回か観たことがあるというUchino。VJがずっと流れていたり、レーザーが音と一緒にリンクしていたり、視覚的な効果も多用されていて、音源とはまた違う印象が味わえるライブだったという。
Uchino:Kevin Parkerは全部一人でプロダクションもやっていますが、あの1人のピュアな世界観がいいですよね。特にファースト・アルバムは本当に1人で作り込んでいて、1人の頭の中を覗いてるみたいなアルバムになってると思います。それがみんなの孤独とマッチしていて。俺も大学生のころとかずっとそのアルバムを聴いていて、自分のいい思い出には常にTame Impalaがいる気がします。
【Tame Impala『Posthumous Forgiveness』を聴く】
HIP HOPが辿ったポップス化の道筋をロック側から辿っている
【Tame Impala『New Person, Same Old Mistakes』を聴く】あっこゴリラ:Tame Impalaは、HIP HOPシーンからもかなり支持されていますよね。
Fukunaga:そうなんです。Kendrick Lamer、Kanye West、Travis Scott、A$AP Rockyなど名だたるビックネームのラッパーからラブコールを受けてきました。
あっこゴリラ:本当にすごいメンツだよね。ここまでHIP HOPシーンで支持される理由って何なんでしょうか?
Fukunaga:年を経るごとにHIP HOPシーンとのつながりは強くなってきてるんですが、2018年ごろからビックネームとの仕事が増えてると思います。Travis Scottの音楽制作に対する姿勢に影響を受けたとインタビューで語っていたり、4thアルバム『The Slow Rush』の制作に関しても、様々な音楽からのサンプリングというHIP HOP的手法やKanye Westの視点をTame Impalaに取り入れたというメディアもあったりします。
あっこゴリラ:へえ~! じゃあTame Impala自身もHIP HOPから影響を受てるんですね。3枚目以降の音楽的な変化もやっぱりその影響が大きいのかな。
Fukunaga:そうですね。HIP HOPの影響を感じさせる4thアルバムは、サイケデリックロック以外にディスコ、R&B、ファンク、HIP HOP、ハウス、テクノなど様々な要素が伺える内容ですが、なかでもソフトロックの要素がサンプリング的に使われています。
あっこゴリラ:そうなんだ~。
Fukunaga:例えば、『One More Year』のイントロで聴けるシンセパッドは、Kevinが自分の声をサンプリングして作ったものなんですが、10ccの『I'm not in Love』のイントロの影響を感じます。
【Tame Impara『One More Year』を聴く】
あっこゴリラ:Tame Impala自身、HIP HOPと出会い、どんな進化を遂げたと思いますか?
Fukunaga:HIP HOPが辿った「ポップス化」の道筋を、今度はロック側から辿っているような印象が僕はあります。HIP HOPは存在自体がポップカルチャーで、Post MaloneのようにHIP HOPとロックのジャンルの壁を失くし、“新たなポップス”を定義するアーティストも続々と出現しています。Kevin Parker自身もブリトニー・スピアーズやカイリー・ミノーグのようなポップスを好んでおり、ポップスシーンの大物プロデューサー、Max Martinへの接近を口にしていることから、4thアルバム『The Slow Rush』では、HIP HOPが辿ったポップス化の道筋を、今度はロック側から辿っているという仮説を僕の中では立てています。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。