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「クラシックピアノ」演奏者によってどう変わる? ショパンで聴き比べ、角野隼斗が解説

「クラシックピアノ」演奏者によってどう変わる? ショパンで聴き比べ、角野隼斗が解説

“かてぃん”ことピアニストの角野隼斗が、知られざるクラシックピアノの世界を紹介した。

角野が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは11月18日(木)にオンエアした内容をテキストで紹介する。

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楽譜に書かれてない要素をどう弾くか

角野は1995年生まれ。2018年東京大学大学院在学中にピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞したことをきっかけに本格的に音楽活動を始める。現在は国内外でコンサート活動を行うかたわら、かてぃん名義で自ら作編曲や演奏をしている動画をYouTubeで配信。チャンネル登録者数は86万人を超す。また今年10月、第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで日本人ピアニストの反田恭平(27)が2位になり話題となったが、角野も同コンクールでセミファイナリストに選出され、クラシック音楽に確かな位置を築きつつもジャンルを超えた音楽全てに丁寧に軸足を置く新しいタイプのピアニストとして注目を集めている。

そんな角野にまず、クラシックとそのほかの音楽ジャンルとの違いについて訊くと、「自分が作った曲ではない昔の人の曲を演奏するところ」がクラシックの異質な部分だと語った。

あっこゴリラ:たとえばショパンの曲を弾く上で、ショパンの生い立ちとか勉強したりするんですか。
角野:します。もちろん楽譜に書いてあることを弾くんですけど、それだけが全てなわけではなく、それ以外の楽譜に書かれてない要素がめちゃくちゃあるんです。そこを演奏者がどう弾くかを考えるから、弾く人によって違いが生まれてきます。
あっこゴリラ:ちょっと批評的な視点とか、作曲された時代背景を想像して「君はそこでこの音をチョイスしたんだね。俺ならこう弾くぜ」みたいな、その時代からのアンサーみたいな弾き方もあったりするんですか。
角野:その部分で言うと、クラシックの流れとして、今は作曲家の意図をその通りに弾くべきであるという美学があるんですけど、100年前って意外とそうではなくて、楽譜があってわりと自分で細かいところはちょっとアレンジしてもいいよね、みたいな感じだったんです。
あっこゴリラ:そうだったんですね。
角野:200年くらい前からピアノの世界って一般に広がっていったんですけど、その頃って作曲家と演奏家が一緒だったんです。みんな演奏もするし作曲もするし、即興もアレンジもしたから、ほかの作曲家の作品を弾くときに、ときには自分でアレンジを加えることが普通に行われていました。でもそれがエスカレートしていくうちに「これを作曲家は望んでいないのではないの?」って風潮が強まってきました。

4人の演奏を聴き比べると…

同じ曲でも演奏者によってどう違いがあるのか。番組では4人の演奏者によるショパンの『ピアノ・ソナタ第2番』の第一楽章を聴き比べることに。

まずは、マルタ・アルゲリッチが弾く音源を聴いた。

radikoで聴く(再生期限は2021年11月25日まで):https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211118222458

角野:このアルゲリッチの演奏はわりと正統的だと思います。
あっこゴリラ:楽譜に忠実な感じで。
角野:みんな忠実は忠実なんですけど、その中でもみんなのイメージに近い演奏ですね。

続いて、ポリーニの演奏を聴いた。

radikoで聴く(再生期限は2021年11月25日まで):https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211118222714

あっこゴリラ:最初が違いましたね。
角野:アルゲリッチの演奏より、一音目が重いですよね。楽譜にはフォルテとだけ書いてあるんですけど、それがどういう音なのかが全然変わってきます。
あっこゴリラ:確かに!

続いて、ラフマニノフ。ラフマニノフの演奏を聴くと、あっこゴリラは「おお、違いますね!」とその違いが分かり興奮した様子。

radikoで聴く(再生期限は2021年11月25日まで):https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211118222848

角野:ラフマニノフは作曲家として有名な方ですけど、演奏もめちゃくちゃうまくてショパンも結構弾いているんです。僕はラフマニノフの弾くショパンが好きで、さっき流れたのとは全然違いますよね。
あっこゴリラ:アクセントというかリズム感がほかとは違うように聴こえてきました。
角野:ラフマニノフはペダルを少なめにしていて、全体的に悲壮感を強調しているというか。ラフマニノフっぽいなって思います。

最後はポゴレリッチの演奏を聴いた。

radikoで聴く(再生期限は2021年11月25日まで):https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211118223030

あっこゴリラ:すげえ、全然違うわ! めっちゃドラマチック!
角野:最初はめちゃくちゃ遅い、そしてテーマに入った途端のこのドライブ感ですよ。最初はペダルを全く使ってなくて、盛り上がるところで初めて使うからドライブ感を協調しているというか。
あっこゴリラ:面白い! こんな風に演奏する人によってこれだけ違うんですね!

知られざるコンクールのピアノ選び

角野は昨年、1250万円のピアノを購入したと語る。

あっこゴリラ:価格を知って「ひょえー!」って感じですよね。
角野:間違いなくいちばん大きい買いものでした。
あっこゴリラ:このピアノってどんなピアノなんですか?
角野:スタインウェイっていちばんメジャーなピアノですね。大きなコンサートホールに行くとだいたいスタインウェイのピアノが必ずあります。僕のピアノは1250万円だけど、これでも2割引の値段で元値は1600万円なんですよ。
あっこゴリラ:ええ! そのピアノあって何がすごいんですか?
角野:これは好みだと思います。日本だとヤマハとかカワイとかいろいろあるけど、僕はスタインウェイの音がすごく好きなので。
あっこゴリラ:なるほど。私は元々ドラマーなんですけど、このメーカーの音がいいとかありますからね。
角野:ドラムってどれくらいの値段なんですか?
あっこゴリラ:ピンキリですね。ビンテージのヤバいやつだったら、ものすごく高いと思いますけど。
角野:ピアノはビンテージだからといって高くなるわけではないんですよ。新品がいちばん高かったりもします。
あっこゴリラ:かてぃんが買ったのは新品のピアノですか?
角野:そうです。貸与していただいて、その1年後に買いました。
あっこゴリラ:でも、ピアノもピンキリですよね。
角野:安いものだと数十万円とかで買えますけど、コンサートホールにあるピアノは2000万とか3000万くらいになりますね。

先日のショパン国際ピアノ・コンクールでは、演奏者は、2台のスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリと計5台のピアノから1台を選び演奏したという。

角野:それで僕はスタインウェイを選びました。2台のうち、ざっくり言うと1台は大きい音が鳴らしやすいもので、もう1台は小さい音がすごくきれいなピアノ。僕は後者を選んだんですけど、結構悩みましたね。
あっこゴリラ:メーカーによってもそうですし、そのもの一つひとつによっても違うんですね。
角野:まず弾き心地が違って、あとはちょっとクリアだとか、音の質自体も違ったりしますね。
あっこゴリラ:ピアノ選びからコンクールが始まっているわけなんですね。

ポゴレリッチが有名になった意外なエピソード

あっこゴリラは「コンクールの評価基準が気になる」と言うと、角野は「それは難しいところ」と述べた。

角野:さっき聴いた4人の演奏もあった通り、みんな違うし、でもそれぞれによさがあるわけですよね。面白い話があって、さっき紹介したポゴレリッチがショパンコンクールに出て、ファイナルに行けなかったんです。そのときにショパンコンクールで1位を獲ったこともあるアルゲリッチが「ポゴレリッチがファイナルに行けないなんておかしい」って言って審査員を降りちゃったんです。アルゲリッチが審査員を降りちゃったことで、ポゴレリッチはファイナルには行けなかったけど逆にそれで話題になりました。それくらい評価が割れることが起きるんですね。
あっこゴリラ:その話はすごくうれしいですね。コンクールの基準はこうですって決まってるのであれば、それはちょっとつまらない話だから。でもそうやって評価が割れていって審査員が降りちゃうっていうドラマもあると知るとテンション上がりますね。

角野は、先日のショパン国際ピアノ・コンクールで2位になった反田恭平の演奏を生で聴いたそうで、「本当にすごくって、一音目、二音目から感動させられるんです。空気を支配している感じがすごく伝わってくるからどんどん引きこまれるんです」とその素晴らしさを語った。

角野は東京大学での音楽サークルで結成した6人組バンド・Penthouseとしても活動。11月24日(水)にはPenthouseの1st EP『Living Room』を配信リリースする。

角野隼斗の最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。

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2021年11月25日28時59分まで

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