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マカロニえんぴつ、バンドの飛躍で「勝負」から「表現」へ。結成日ライブの拍手に感じた二つの意味

マカロニえんぴつ、バンドの飛躍で「勝負」から「表現」へ。結成日ライブの拍手に感じた二つの意味

マカロニえんぴつが今年、結成9周年を迎えた。近年はCMソングや映画の主題歌を手がけるなど、彼らの楽曲を耳にする人は音楽ファンにとどまらない。今春のホールツアーは横浜アリーナでの追加公演を含む全てがソールドアウトするなど、いま最も注目を集めるバンドのひとつと言えるだろう。

成長するバンドの現状を、ボーカル・はっとりはどう感じているのだろうか? 忙しい日々の中でプライベートをどう過ごしているのかなど素顔にも迫りながら、長い年月をともにしたメンバーへの思いや、7月17日(土)に出演する「J-WAVE LIVE 2021」への意気込みを訊いた。

バンドの規模が拡大「のびのびやれています」

──ここ数年は、マカロニえんぴつにとって飛躍の期間だったと思います。ホールツアーも成功されましたね。今、どんな気持ちで活動されていますか。

楽しいです! ツアーを通して、聴いてくれている方が増えたことを実感しましたね。サブスクの再生回数やCDの売上枚数など数字でもわかりますが、やはりリアルな実感は、ライブでお客さんを前にしないと感じられない部分で。こんなにたくさんの人が、新型コロナ感染の対策にすごく気をつけながらライブに来てくれて、本当にうれしいなと思いました。今はツアーが終わった直後だから、それは大きく感じている部分です。

――ライブの会場規模がどんどん大きくなる中で、緊張感が高まるなどといった、観客と対面するときの体感の違いはありますか?

それはもちろん、少しずつ変わります。だけど不思議なことに、活動初期より圧倒的にバンドの規模は大きくなっているんですけど、今と昔でどっちが無理しているかといったら、今より昔のほうですね。

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「ライブサーキットイベント」ってありますよね。数多くのバンドがひとつのエリアに集って、いろんな会場でライブをする、都市型のフェスみたいな。そういうものは「いかにマカロニえんぴつを選んでもらうか?」という、客取り合戦なわけですよ。音楽は“表現”なのに、“勝負”のような色が自分の中で強くなっちゃって、ちょっとしんどかった。

今は本当に「表現をしているな」という意識があるし、のびのびやれています。チームが大きくなったぶん、プロダクションやレーベル、ツアーチームなどいろんな人に支えてもらっているんですけど、すごくやりやすいように整えてもらっているんです。ありがたいことですし、人に恵まれているバンドだなと思いますね。

自宅のひとり時間は動画鑑賞! おすすめ作品は?

──忙しいと思いますが、プライベートはどんなふうに過ごされていますか。この一年は外でパーッと遊べず、自宅で過ごす時間はみんな長かったと思います。はっとりさんは「自分ひとりで過ごす時間」は好きですか?

ひとりで黙々と何かしたり、何かを観賞したりという時間がわりと好きなので、多いほうがいいですね。YouTube動画を観たり、NetflixやAmazonプライム・ビデオで作品を観ています。あと最近、引っ越しをして、テレビを大きいサイズに買い替えたので、「これでゲームをしたら迫力があるかな」と、PS4やSwitchを買ってプレイしています。楽しくて歯止めがきかないですね(笑)。

──おすすめ作品はありますか? 例えばNetflixだと……。

Netflixは『ブラック・ミラー』がおもしろいですね。イギリス発のSFを題材にした作品で、仮想現実的な設定が多いんです。続きモノのドラマだと集中力が途中で切れることもあるんですけど、一話完結型でスッキリ終わってくれるから観やすい作品。終わり方は、胸くそが悪かったり、ちょっとモヤモヤする終わり方も多いんですけど、そういうのがわりと好きで。例えるなら『世にも奇妙な物語』の海外版みたいな感じですね。

──音楽は聴かれますか?

音楽は、「聴こう」と構えては聴かないですね。音楽って正座して聴くようなものじゃないと思うし、何かしているときにかかっているかな、っていう。新しい音楽を掘り下げるというより、好きなアーティストの曲をかけます。たまたまラジオで好みの音楽が流れたら、ちょっと調べはしますけど。レコードで聴く音も好きなので、ランディ・ニューマンとかをコーヒーを飲みながら聴いてると「あ、シティボーイだな」と思いますね、自分が。

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──(笑)。読者の中には、リモートワークの人もいると思います。または家に帰ったらついダラダラしてしまって、やりたいことができないという悩みもよく聞きます。先ほど、はっとりさんも「歯止めがきかない」という話をされていましたけど、どうやって「よし!」と切り替えたらいいんでしょう。

そういう人は、テキパキする才能がないのかもしれないですね(笑)。それはそれでいいと思います。僕も無理ですよ。受験のときもまったく勉強をせずに、ずっとギターを弾いていて。たまにオカンが僕の部屋がある2階まで勉強しているかどうか見回りにくるんですけど、足音を察知して、ギターをスタンドに置いて机に向かっているふりをする素早さだけは身につけましたから。「これは部屋には来ない、トイレに行く足音だ」とか、そういう変な能力しか身につかなかったくらい、切り替えは苦手ですね。

メンバーは特別な存在。「ファミリー的なシンクロ性」も出てきた

――外出自粛も長くなり、「家でひとりだと孤独を感じる」という声も多く聞かれます。はっとりさんは、さびしさを感じやすい性格ですか

基本的にはさびしがりだと思いますね。でも、ひとりぼっちの時間も大事だし、さびしいなと思っている自分も好きだったりします。僕の場合は、孤独を感じたときの自分を歌の中に投影させるとか、表現として還元ができるからまだいいなと思いますけど……本当の孤独に押しつぶされちゃう方とかもいますよね。本当にしんどいときに弱音を吐ける人がひとりでもいるといいですよね。友だちでも、恋人でも、家族でもいいですけど。僕の場合はメンバーに定期的に会えるので、そのへんで気持ちは和みますね。

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――結成9周年ということで、長い付き合いですよね。はっとりさんにとって、メンバーはどういう存在?

なんか変な感じですね。大学の同級生なので、友だちの感じがいまだに抜けないというか。大学の同級生って、小中高からの友だちとはまたちょっと毛色が違いますよね。育った土地や空気も違うし、個が確立している状態で出会っている。だから、いい意味で距離感があって、干渉しすぎない。それでいて、同じものを作っている団体ですから、音楽となったらすごくわかりあえる。野球とかをやってるチームに近いのかもしれません。試合になったら結束力があるけど、練習は、来るやつも来ないやつもいるみたいな。バラバラなときもあるからいいというか。でも長くいるからか、最近は行動がシンクロすることもあるんですよ。

──というと?

例えばライブが終わって楽屋に戻って、ひと息ついて缶ビールを飲むみたいな一連の動作が完全にリンクしたりするんです。あと、同じタイミングで同じマカロニの曲のフレーズを鼻歌で口ずさんだりとか。そういうことが最近になって増えてきて、結成9周年という長い年月を一緒に過ごすと、ファミリー的なシンクロ性が出てくるのかな。こっぱずかしいけど、ちょっとうれしいような。メンバーはすごく特別な存在ですね。

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メンバー揃っての撮影も笑いが絶えなかった。

バンド結成日のライブで「祝福の拍手」に感じたふたつの意味

――昨年以降、多くのアーティストが「無観客でライブをせざるを得ない」という状況に置かれてきました。観客が目の前にいない状態で演奏するのは、ステージに立つ側として、やはり違和感が大きかったのでは。

最初は「どういうつもりでやったらいいんだろう」と戸惑いましたね。状況的には、テレビの収録に近いんですよ。カメラが何台もあって。ただ、テレビだと「エンターテインメントショー」というか、ちょっとかっこつけたパフォーマンスが映えますけど、ライブはまったく逆ですよね。汗をガンガンかいて、泥くさいところを見せて、お客さんと一体となるのがカッコいいという性質ものじゃないですか。だから、カメラがあるからカッコつけたいんだけど、ライブだからカッコばっかりつけてても……という、折り合いをつけるのが難しかったですね。

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カメラがあるとはいえ、ライブはライブ。お客さんが画面の前にいるんだ、というイメージをしっかり持てるようになってからは、無観客もライブの一種として、楽しんでやれるように……自分たちに言い聞かせながらやっていましたけど。でもやっぱり、慣れたと言っても、有観客がいいですよ。率直にそう思います。

――終わったばかりのホールツアーは、ファンにとっても待望の有観客でしたね。印象的な出来事はありましたか。

ツアーが1カ月延期になっちゃったから、本来は横アリでファイナルだったんですけど、大阪の2DAYSが最後になって。その初日の6月16日はバンド結成日だったので、思い入れのある楽曲『鳴らせ』をアンコールの1曲目でやったら、曲が終わったあとの拍手が鳴りやまなかったんです。それは、9周年の僕らを祝福する拍手でもあったし、お客さんが「マカロニえんぴつに出会えてよかったな」という自分自身に向けての拍手でもあるようにも感じられました。本気の拍手って大きくなりますよね。「あ、すごい大きい」と感じて。いろんな思いが混じっていたのかなと。惰性で続く拍手じゃなく、本当にずっと続いていたのがうれしかった。「続けてよかったな」と思いましたね。

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「J-WAVE LIVE 2021」は丁寧にしっかり表現するライブを

──7月17日(土)には、「J-WAVE LIVE 2021」で、再び横浜アリーナのステージに立たれます。今回はライブイベントということで、マカロニえんぴつのライブを初めて観る方もいると思います。ワンマンと対バンで、気構えはどう違いますか。

緊張感は、フェスや対バン形式のイベントのほうがあります。必ずしも自分たちのファンの人だけがいる空間じゃないから。興味はあるけど曲はそんなに知らない人とか、はたまた、まったく興味がないという人が一番後ろで座って見ていたり……。僕らはその人に興味を持ってもらいたい、もっと言えば好きになって帰ってもらいたいから、気合いは入りますね。

だから、出番の前で出演したバンドがすごく盛り上がったりしていると、「ああ、大丈夫かな」と不安になったり、逃げ出したくなったりもします。そういう中で、自分たちが持てるポテンシャルを出すために、ワンマンを充実させるのかな。のびのびと楽しんだワンマンでの経験が、短い尺の対バンイベントやフェスでは出ますね。出演者が複数いるライブイベントって、スーパーで言う試食みたいなものですよね。だから「ファンにだけ届きゃいいや」という気持ちじゃ絶対ダメだと思う。僕らへの興味がグレーな人たちも巻き込みたいという思いで、ステージに立ちます。

動画で意気込みも語ってくれた。

――「J-WAVE LIVE 2021」への意気込みを教えてください。

ワンマンツアーを終えて、バンド内の演奏のグルーヴは、すごくいい状態に仕上がっているので、ぜひ楽しみにしていてください。「盛り上げよう!」って言ったって、お客さんたちは歓声を出せないので、丁寧にしっかり表現できるライブをしたいと思っています。

「J-WAVE LIVE 2021」は横浜アリーナで7月17日(土)、18日(日)の開催。マカロニえんぴつは17日に出演する。17日はほかにも、JUJU、KREVA、東京スカパラダイスオーケストラ、Nulbarichが出演。チケット詳細は公式サイト(https://www.j-wave.co.jp/special/live2021/?jw_ref=jwl21_jnw)まで。

また、はっとりは「Yahoo!ニュース Voice」にて、SNSと言葉選びをテーマにしたインタビューにも応じた。動画のテキストが掲載されている。

<うっかり発言は努力の証し――マカロニえんぴつ・はっとりが考える「言葉選び」について>(外部リンク) https://news.yahoo.co.jp/pickup/6398205

(取材・文=西田友紀、写真=竹内洋平)

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