のんが矢野顕子に聞く「生き方」。いい音楽は、健康や生活を保つことで生まれている

女優・創作あーちすと のんが、矢野顕子と対談。矢野がコロナ禍での音楽制作や、興味のある宇宙の話、自身の「生き方」について語った。

のんと矢野が登場したのは、1月17日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。のんは同番組の第3週目のマンスリーナビゲーターを務める。

コロナ禍のレコーディングを思い出すと切なくなる

憧れの人物のひとりである矢野を迎えるにあたり、のんは心臓がバクバクしていると話すほど緊張している様子。矢野は、のんのファーストアルバム『スーパーヒーローズ』に収録されている『わたしはベイベー』の作詞・作曲を手掛けている。

のん - わたしはベイベー【official music video】

まず話題はコロナ禍の音楽活動について。のんは昨年、主催する音楽フェスの中止を決断。そのことを伝えると、矢野は「なかなか難しい時代」と自身の活動を振り返る。

矢野:(新型コロナウイルスなんて)思ってもみなかったからね。
のん:矢野さんはリモートで新曲『愛を告げる小鳥』を制作されましたよね。

矢野顕子『愛を告げる小鳥』 MUSIC VIDEO

矢野:この曲はバンドのメンバーとその前の年に一度やっている曲だったので、みんなよく知ってたけど、ニューヨーク、鎌倉、麻布とかそれぞれ違う自宅で録音して。最初に私が仮の歌とピアノを入れて、それを聴きながらドラム、ベース、ギターと音を重ねていきました。重ねる度に「やったよ」と音源が送られてきて、やっているうちに「一緒にやりたかったな」って涙がでてきちゃうの。でも、気持ちがつながっているから、実際にできあがったものを聴くと、違うところでやったとは思えない盛り上がりがあって。

矢野は、そのレコーディングの状況を思い出すと切なくなるのだという。

矢野:音楽とか演劇、ダンスとかも本来はみんな一緒にやることじゃない。ステージがあって、みんなが力を合わせて生まれたものをお客さんと共有する。その間の空気が全部入ってひとつのコンサートとかショーになるわけだけど、それがない状態。だけど、もとはあるぞっていう。その、もとがよくないと結局は上の空気も本当は生まれなかったんだなって。結局は人だなとか、音楽は本当に大切なものなんだなとか、今回のリモートのレコーディングを通じて初めて分かったって感じかな。
のん:なるほど。『愛を告げる小鳥』はめちゃめちゃカッコよかったです。
矢野:私もできあがったものを聴いて、全然遜色ないじゃんって思ってるけど、自分の部分は機材とかが自宅に全然なくて。昔はスタジオを持っていたけどそれも売却して、異常にプロフェッショナルなマイクスタンドとかマイクもあるけど、部屋で録音するにはちょっと向いていない。しかも組み立て自体も難しいし、iPadを立てて「どうやったら映るかな」「あの散らかった机をどうするかな」とか、すごく苦労しながらレコーディングしました(笑)。

『愛を告げる小鳥』をニューヨークでレコーディングした矢野は、救急車のサイレン音やヘリコプターが飛ぶ音、周辺の生活音を避けるために、夜中に録音をしたと明かした。

矢野:夜中にiPadを立てて、音源を聴きながらすごく楽しく録音をしているんだけど、実は大変で(笑)。そういう状態でした。

宇宙を調べていくうちに、外から地球を見てみたくなった

矢野に今後チャレンジしたいジャンルや注目している世界について質問。「音楽はほぼやりたいことだけをやっている」と話し、宇宙に興味があると答えた。

矢野:宇宙に行きたい。
のん:宇宙の夢があるんですね。
矢野:宇宙のこと自体を考えることとか調べることとか、そういうのが好きな人はいるけど、そこに行ってみたいと真剣に考えるには動機がいるというか。小さい頃から宇宙飛行士に憧れていて、それを目指すのはすごく自然なことだけど、私の場合は自分なりに宇宙について調べていくうちに、外から地球を見てみたくなったの。そして、地球がどんなにスペシャルな星であるかを目で見たい。好きなアーティストだったら絶対にライブを観たいと思うじゃない。それと同じ感じ。しかも地球が丸いことを見るにはめちゃくちゃ遠くに行かなくちゃいけなくて、少なくとも月の近くまで行かないといけない。だけど今、宇宙飛行士の野口(聡一)さんがいる国際宇宙ステーションは地上から400キロメートルだから、そんなに地球から遠くなくて、地球が丸くは見えないの。
のん:それくらいだと丸く見えないんですね。
矢野:国際宇宙ステーションだと、目の前に地球があって、その縁が直線じゃないんだなって分かる感じ。
のん:海に行って、地球は丸いんだなって感覚ですか?
矢野:そうそう。その宇宙版(笑)。

昨年9月、矢野と宇宙飛行士の野口聡一の対談を書籍化した『宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる』(光文社)が発売された。

【『宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる』のあらすじ】
2005年、アメリカのスペースシャトルで初飛行、2009年12月からの2度目の宇宙飛行ではロシアのソユーズ宇宙船に搭乗し、163日間に及ぶ宇宙長期滞在を経験した宇宙飛行士の野口聡一さん。「宇宙好き」で知られ、これまで宇宙に関する数々の楽曲を発表、同時にNASAの宇宙情報をこまめにチェックし、ツイッターで分かりやすく発信しているミュージシャンの矢野顕子さん。2020年、スペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」運用初号機Crew-1への搭乗を控え、2人の対談が実現。「誰もが宇宙に行ける時代」の到来という歴史的転換点を迎えた今、両者が語る宇宙の奥深さと魅力とは?
光文社公式サイトより)

矢野:野口さんにお聞きすると、(国際宇宙ステーションから見ると)地球がゆっくり動いているんだって。
のん:へえ! 目視できるんですね。
矢野:自転の速度ってすごく早いし、国際宇宙ステーションもすごいスピードで動いているんだけど、実際にそこに行って地球を見ると、雄大な景色がゆっくり回ってる。それを聞くと、実際に見たいじゃないって。そういうことに憧れているわけです。
のん:素敵です。見れたらいいですね。

「私がやることは、全部同次元」

最後に、のんが「生き方」について質問した。ミュージシャンとして、また表現者として生きる矢野は、自身の生き方をどう捉えているのだろうか。

矢野:ひとりの人間が音楽を通じて表現しているんだから、もとの人間の部分がダメだと上に作るものはなかなか難しいかなと思う。
のん:オンとオフを分けている方もいるじゃないですか。矢野さんはどうですか?
矢野:私の場合はすごくシンプルで、今自分がここで掃除機をかけているとします。一部屋を掃除したら、次はピアノの練習をして、これが同次元なの。だから、ピアノを弾いている私がお掃除をして当然。そんな私が外に出かけてお買い物をしたり食事を作ったり、子どもを育てたり曲を書いたり、みんなの前で歌ったりするのは全部同次元だと思っているから、どこかはやらなくていいとか、そういう風に思ったことはなくて。だから、ステージに立ってたくさんの人々がいて、みんなから拍手をもらうこと自体は大変に幸せなことではあるけれど、価値としてそれと家をきれいにしたり、宇宙のことを学んだり、横断歩道を歩くおばあちゃんの荷物を持ってあげたりすることと全部が同じだと思っているから、全然普通。
のん:なるほど。生活の営みとして全てがあるというか。
矢野:そうですね。たまたま自分は音楽が得意で、それを喜んでくれる人がいて、すごく長いことそれをやっているけど、それをやるためには私自身が健康でなくちゃいけないこととか、気持ちがちゃんと普通であること、それがすごく大事だと思ってます。だから普通に扱ってください(笑)。

矢野は今年、矢野顕子と上妻宏光のユニット「やのとあがつま」のツアーなどを予定しているという。矢野と野口聡一による『宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる』もぜひ手にとってみては。

矢野顕子の最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも聴くことができる。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。
radikoで聴く
2021年1月24日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23:00-23:54/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信

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