人前で喋るのが苦手だったけど…乗り越えた「気づき」を真鍋大度×関 和亮が語る

ライゾマティクス主宰の真鍋大度と、Perfume、サカナクションなどのミュージックビデオを手掛ける映像作家・関 和亮が対談した。ふたりがトークを展開したのは、5月2日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。真鍋は同番組の毎月第1週目のナビゲーターを務める。ここでは、人前で喋ることが苦手だったふたりが、それを乗り越えた「気づき」を紹介する。

デビュー当時のPerfumeのミュージックビデオを手掛けた

真鍋がDJとして出演していたイベントにVJとして関わっていたことが最初の出会いだったという二人は、出会って20年弱になる旧知の仲だそう。当時、関はPerfumeのミュージックビデオを手掛け始めた頃。遊び程度で使っていたプログラムのソフトの参考書に真鍋の例が出てきたために、一方的に「先生」と感じていたそうだ。

真鍋:そういうアンダーグラウンドなソフトを商業ベースのミュージックビデオに使っている人は、日本には関君以外にいなかったんじゃないかな。
関:Perfumeというアーティストなので「なにかエフェクトになればいいな」という気持ちで使っていたんですけど、それを大度君は「あのソフトだ!」と気付いてくれた。
真鍋:たぶんみんな、僕みたいにVJをやってだんだんシアターやミュージックビデオに行くと思うんだけど。
関:そうですね。当時、仕事を始めた頃がちょうど撮影も編集もどんどんデジタル化していく変わり目でした。

関は26歳の頃、デビュー時期のPerfumeのミュージックビデオを手掛けるようになった。Perfumeチームがデザインを手掛ける若手を探していたところ、関が当時所属していた会社の名前が候補に挙がり、関自身が名乗りを上げたという。

真鍋:『エレクトロ・ワールド』、『コンピューターシティ』、『チョコレイト・ディスコ』など、ほぼ全部ですよね。
関:改めて思うと、あんなに長い期間、映像作家とミュージシャンがずっと一緒にやるのはなかなか稀有な関係性だと思いますね。
真鍋:ずっと同じ人がミュージックビデオをやっている例って結構少ないですよね。今って、映像のテンポがめちゃめちゃ速いし、最初の3秒で何かが起きないと見てもらえない。ずっと新しいアイデアを出してやっていてすごいと思うんですけど、そのアイデアの源はどこから出てきているの?
関:今、海外でも合成せずにCGをリアルタイムで作っていっていますよね。普通ならグリーンバックという合成用の素材を使って撮影し、後処理でグリーン部分をなくしてCGを乗せるんですが、海外では大きなスクリーンにCGを投影してカメラを映すとそのアングルに合った映像になる。そういう撮影の効率化で大きなステージの物づくりができるのはすごく興味があります。日本で砂漠の撮影はなかなか難しいけれども、その技術があれば砂漠のCGデータを入れて撮影できる。ロケーションも広がるし、コンテンツとしての幅が広がっていくんじゃないかなと思っているんですよね。

実写映画の初監督を経て見据える世界規模の物づくり

関は、5月21日(金)に公開予定のバカリズム脚本の映画『地獄の花園』で初監督を務めている。

真鍋:こういう質問は僕も困っちゃうんだけど、映画の見どころってありますか?
関:会社で働く女性社員の中にヤンキーが混ざっていて、そのヤンキー同士が社内の権力争いを繰り広げていく話なんです。聞いただけで「なんじゃ、それ」という感じなので、そのまま観ていただいて、おかしいことは心の中でツッコんでもらうのが一番楽しい観方かなと思います。ツッコミ映画です(笑)。
真鍋:変わった組み合わせによって新しい表現が生まれると思うんですけど、やっぱりバカリズムさんとの出会いも大きかったですか?
関:普段であれば出会わない人ですが、人づてに紹介していただきました。めぐり合わせですね。
真鍋:ありますよね。人との出会いってすごく大事ですよね。

今回、実写映画の監督をしたことで、関は世界規模のチャレンジを目指していると意気込みを語った。

関:もっと日本だけではなくアジアや海外でも通用するくらいのものを作っていきたいとはすごく思いますね。日本のコンテンツってアニメーションは注目されますけど、実写はなかなか注目されていない。どういったものなら見てもらえるのかという部分にチャレンジしていきたいです。
真鍋:賞を受賞するまで到達してほしいですね。
関:いや~、そんな(笑)。頑張ります!

演出をする中でぶつかった元来の内気な性格

さまざまな表現を通して作品を発表し続ける関。仕事をする上で、大きな気付きを得たことがあったという。

関:人前で喋ったり説明したり、自分自身でやって見せたりしなければいけない仕事ですが、もともとはこんなに喋る青年時代を送っておらず、写真を撮られるのもすごく苦手でした。仕事の中で自分が被写体となるテスト撮影も、すごく嫌だったんです。自分の写真をみんなに見られるのがすごく恥ずかしかった。でも、あるときに「スタッフはそのポラロイドで照明や色、風などを見ていて僕を見ているわけじゃない」と気付きました。
真鍋:わかります。
関:つまり、自意識過剰でした。「物を作るのに俺のことなんて見ていないよな」、と。僕が何を作りたいか、カメラマンがどういう画を撮りたいかが大事なんだから、恥ずかしがっている場合じゃない。それに気付いてからは喋るのが楽になりましたね。
真鍋:僕もすごく苦手でした。でも自意識過剰だったとあるときに思ったんです。
関:どんなときですか?
真鍋:僕、人前で話すのが苦手過ぎてアナウンススクールとかに行っていたからね。関君は知ってるかもしれないけど(笑)。
関:あ~(笑)。
真鍋:話し方教室とかに通うくらい人前で話すのが嫌だった。でも、あるときに「そんなにみんな、一生懸命に聞いていないよな」と思いました。「一言一句間違えないように喋らなきゃいけない」とか気にしすぎていた。
関:それを直しちゃったら大度くんらしくないし、今のままでいいと思いますけどね。
真鍋:でもいろいろな人の声が届く時代になっちゃったから、そういうことを意識する人はすごく増えたと思いますよ。特にSNSは「余計な事は言わないほうがいい」っていうのが常識みたいになっているし。
関:うん、うん。
真鍋:でも、関君もそんな時代があったんですね。

番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」などでも聴くことができる。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。
番組情報
TOPPAN INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23:00-23:54

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