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「その本は読みました」と、本当に言い切れるのだろうか? 読書とは何か捉え直す一冊

「その本は読みました」と、本当に言い切れるのだろうか? 読書とは何か捉え直す一冊

人工衛星から和菓子まで幅広くものづくりに取り組むデザイン・イノベーション・ファームTakramの渡邉康太郎が、さまざまなテーマでトークセッションするJ-WAVEの番組『TAKRAM RADIO』。渡邉が最近読んだ本や過去に読んで心に残っている本を紹介する「TAKRAM RADIO BOOKMARK」のコーナーで、パリの精神分析家ピエール・バイヤールの世界的ベストセラー本『読んでいない本について堂々と語る方法』(筑摩書房)を紹介した。オンエアは2020年12月3日(木)。

同番組の過去のオンエアはデジタル音声コンテンツサービス「SPINEAR」(https://spinear.com/shows/takram-radio/)でも配信されている。

タイトルとは裏腹に、読みごたえのある一冊

最近、渡邉も参加する経営者・経営幹部のためのカンファレンス「ICC(INDUSTRY CO-CREATION)」では、読書セッションが行われている。いろいろな人が登壇し、渾身の一冊を紹介するのだという。そこで渡邉は『読んでいない本について堂々と語る方法』を取り上げた。会場から失笑が漏れたそうだが、「本を読むとは何か?」と考えすきっかけになる良書なのだとか。

渡邉:この本には、古今東西の知識人がどんな風に読んだ振りをしてきたかの事例が書かれているんです。著者のピエール・バイヤールはパリ第8大学教授で、精神分析家。この本のタイトルとは裏腹に、けっこう読みごたえのある一冊です。

「読んでいない本について堂々と語る方法」というタイトルではあるが、読み進めると「なぜか本が読みたくなるという矛盾に満ちた一冊」だと、渡邉は表現した。

・『読んでいない本について堂々と語る方法』の内容

本は読んでいなくてもコメントできる。いや、むしろ読んでいないほうがいいくらいだ――大胆不敵なテーゼをひっさげて、フランス文壇の鬼才が放つ世界的ベストセラー。ヴァレリー、エーコ、漱石など、古今東西の名作から読書をめぐるシーンをとりあげ、知識人たちがいかに鮮やかに「読んだふり」をやってのけたかを例証。テクストの細部にひきずられて自分を見失うことなく、その書物の位置づけを大づかみに捉える力こそ、「教養」の正体なのだ。そのコツさえ押さえれば、とっさのコメントも、レポートや小論文も、もう怖くない!すべての読書家必携の快著。
筑摩書房公式ホームページより)

渡邉は目次にも注目する。たとえば「未読の諸段階(『読んでいない』にも色々あって…)」の章では、「ぜんぜん読んだことのない本」「ざっと読んだ(流し読みをした)ことがある本」「人から聞いたことがある本」「読んだことはあるが忘れてしまった本」と、また「どんな状況でコメントするのか」の章では、「大勢の人の前で」「教師の面前で」「作家を前にして」「愛する人の前で」とそれぞれパターン分けしながら、これまでいかに人が本について語ってきたか、知識人が読書についてどう書いてきたかを引用しながら、面白い事例をたくさん紹介している。

渡邉:この本は、「読んだ」と「読んでいない」には、けっこうグラデーションがあるよねと語っています。そもそも「読んだ」ってなんなのか。私はこの本を読み切ったのか。そもそも本の内容を覚えているのか。ちゃんと理解しているのか。そう問われたときに「本の一字一句を読み切ったのか」とか「全部は覚えているわけではないよな」とか、「理解していると言っても、自分で理解しているだけで、本当にそれが正しいのかはわからない」とか、読んだと言ってもツッコミどころがあるんですよね。

『読んでいない本について堂々と語る方法』でピエール・バイヤールは、参考文献に、未読だから「未」、流し読みしたから「流」、聞いただけだから「聞」、忘れてしまったから「忘」など、漢字一文字を当てている。

渡邉:たとえば、夏目漱石のこの本は「流」、つまり流し読みした。そのようにマーキングがしてあります。すごく正直ですよね。著者は「完璧な読みなんてない」「全ての読書は不完全だ」という前提に立った上で、参考文献に触れています。

本を読むこと自体の概念を広げてくれる一冊

『読んでいない本について堂々と語る方法』は「人類には共有図書館のようなものがある」と紹介されているそう。

渡邉:本一冊の中に書いてあることを越え、その本がどういう脈略の中で、世界中のいろんな本に接続しているのかということ。その本の位置付けは何なのかと。また、読み手にとっての内なる書物って概念も出てきます。その人にとって、その本がどういう風に共鳴するのか。その人の読書履歴の中にどういう風に当てはまってくるのかという問題。もちろん、本を書くのは筆者の仕事なのだけど、そこに意味を与えるのは読み手の仕事となっていて、あらゆる本を通過していくことの大事さを語っています。

この本は、「読んだ」「読まない」のような二元論的なパラダイムから脱却して、本を読むこと自体の概念を広げるような内容になっているという。いくつか印象に残っている話を紹介した。

渡邉:ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』(東京創元社)では、ラストシーンで対決があります。盲目の図書館司書と主人公が一冊の本について語るのですが、「そもそも盲目の図書館司書は本を読めていないよね」とか「主人公もその本を読んでいないよね」っていう中で、一冊の本について語り、その会話が成立している。また、アフリカの西海岸に住むティブ族と西洋から来たある学者がシェイクスピアの『ハムレット』について語り合う。ティブ族の人たちは『ハムレット』を読んでいないけど、すごく全うに批判する。「『城壁の上に父の亡霊が現れた』と言うけど、亡霊なんてないじゃん」みたいなことで、学者はティブ族に叱られる(笑)。そんないろんな面白いエピソードを通して、読んでいない本について紹介しています。

最後に、渡邉は「みなさんも勇気を出して、この本を手に取ってみてほしいけど……読まなくてもいいと思う」と笑いを誘った。

『TAKRAM RADIO』では、デザイン・イノベーション・ファームTakramの渡邉康太郎が、毎月さまざまなテーマでトークセッションを繰り広げる。放送は毎週木曜日の26時分から。公式サイトはこちら

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木曜
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