Official髭男dism『Pretender』最初はサビが違った! YOASOBI・Ayaseが、小笹大輔に楽曲制作の裏話を聞く

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい"音楽をつくるクリエイターが“WOW"と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

12月のマンスリープレゼンターはYOASOBIのAyase。12月11日(金)のオンエアでは、Official髭男dism(略称:ヒゲダン)の小笹大輔(Gt./Cho.)がゲストに登場。ここでは、10代の頃に聴いていた音楽や影響を受けた楽曲、Official髭男dism『Pretender』の誕生秘話を語った部分を紹介する。

ルーツには激しい音楽もある。ヒゲダンが生み出すJ-POPとのバランスは?

数カ月前にAyaseと小笹は友人ギタリストの紹介で初対面して意気投合。そこから、LINEを送り合うなどの親交がある。

まずは小笹が10代に聴いていた音楽の話題になった。

小笹:パンクとかハードロック、メタルにすごく傾倒していましたね。一番聴いたバンドは、海外だとFall Out Boyで、日本だとHi-STANDARD。TOTALFATも僕の地元に何度もツアーで通ってくれて、楽曲も人も大好きで、ずっと聴いてましたね。ギタリストって早弾きできるのが偉いみたいな時期が一回来ちゃうんですけど、そういうテクニカル系で言うとMr. Bigを一番聴いてたかな。
Ayase:ヒゲダンはJ-POPとかポップスをうまくやっているけど、もっと早弾きを出していきたいとか、もっとパンクな感じを出していきたいってなっていかないの?
小笹:そもそもヒゲダンのメイン作曲者である、さとっちゃん(藤原 聡)もメタルとか大好きなのよ。Slipknotも好きだし、もともと僕とさとっちゃんが意気投合したきっかけって、Children of Bodomなの。
Ayase:そうなの!?
小笹:あれから始まったりはしているんだけど、それにハマっていたのは10代の頃の話で、0歳から9歳まではヒゲダンのメンバーは共通してJ-POPを聴いてた。僕だったら松任谷由実さんとか、KANさんとか、スピッツ、Mr.Children、aikoさんとか、それがもとにあって、自分たちが音楽をやるってなったら、興味があるのはそういうポップスのほうで。でも、たまにアルバムとかライブになると、パンクなメロとか、激しめな面を出していく今のバランスがすごく気に入っているというか、上手にやれていると思っています。

Ayaseは小笹の音楽遍歴に共感する部分があるという。

Ayase:僕も小学生のときはJ-POPを一番聴いていて、中学生になってマキシマム ザ ホルモンとかが入口になってからは、ハードコアのほうにいったので、海外のハードコアのバンドとかメタルコアのバンドを聴きまくって今に至る……ってだいぶ端折り過ぎてるけど(笑)、僕も近しいところがあるかもしれないですね。

小笹がギターに目覚めたのは、中学1年生のとき。兄と一緒にギターを買ったことがきっかけだったという。

小笹:ギターを始めた頃、Hi-STANDARDとかHawaiian6、locofrank、Green Day、The OffspringとかのMDが家に来て、黒船襲来というか、「これカッコいいな」と思って、楽器と音楽、バンドが一気に自分の中に入り込んで、のめり込んでいきましたね。
Ayase:なるほど。よくあるモテたくてギターを始めるとかではなく、わりと無邪気にお兄ちゃんきっかけでギターが始まったんだね。
小笹:そう。あとからよこしまな思いは出てきたけどね(笑)。女の子の前でギターを弾きたいなとか、妄想はずっとしてた(笑)。

『ノーダウト』のタイアップは「本当に寝耳に水」 激動のデビュー

島根県出身の小笹をはじめ、中国地方出身のメンバーで結成されたヒゲダン。上京のきっかけは、小笹が島根県の高等専門学校を卒業する時期と、現事務所とヒゲダンが一緒にやるタイミングが重なったから。小笹は学校の最後の試験を受けた2日後に上京したと語り、すぐにミニアルバム『MAN IN THE MIRROR』のレコーディングを始めた。

Ayase:(小笹)大輔くんが思う、ヒゲダンのターニングポイントっていつだったの?
小笹:やっぱりメジャーデビューのタイミングだったかな。インディーズ最後のアルバム『エスカパレード』のオケ録りが終わって、「いいアルバムができたな」と思っていたら、マネージャーにスタジオの扉をバンと閉められて、「大事な話があります。月9ドラマの主題歌が決まりました」って言われて。「えー!」「僕らですか!?」「間違えてないですか?」って言ったんだけど、それが『ノーダウト』って曲。

Official髭男dism 『ノーダウト』

小笹:アルバムができたところだけど、そこに『ノーダウト』を入れてアルバムを出したいってなって。メジャーデビューの話もポニーキャニオンさんと水面下で進んでいて、「1年くらいかけてメジャーデビューの準備をしていこうか」って思っていたら、本当に寝耳に水みたいな感じでドラマ主題歌が決まって「このタイミングで押していくしかない」って。ヒゲダンは渋谷のフリーライブでゲリラメジャーデビューを発表したんだけど、それはずっと仕込んでいたわけじゃなくて、それくらいの時間しかなかった。しかも、『ノーダウト』をアルバムに入れなきゃいけないから、ドラマの納期よりもさらにストイックに自分たちで納期を早めないといけなかったり、すごくいろんな事情があって。あそこで大型タイアップの曲を作るってすごく大変でしたね。

苦労した分、バンドの成長を感じた一曲になったそうだ。

小笹:大きな課題をもらって、それをうまく自分の中で消化することができて、『ノーダウト』って楽曲を自分たちはすごく愛しているし、今でもすごくカッコいい楽曲だなって思う。その激動の瞬間でいい曲を生み出すことができたことでバンドとしての結束も強くなったし、チームも一歩大きくなった。ポニーキャニオンの人たちもいい人で、すごく楽しく音楽制作ができるようになったから、メジャーデビューのタイミングがヒゲダンのターニングポイントで、一番ドラマがある瞬間だったなって思います。
Ayase:いい話だな。震える。
小笹:事実は小説より奇なりって言葉があるけど、本当にこんなことがあるんだって思ったな。

ヒゲダンはどうやって楽曲を作っていく?

小笹は楽曲制作の過程を明かした。最初に藤原が弾き語りで披露することが多いそうだ。

小笹:ボーカル・ピアノとメイン作曲者のさとっちゃんが、ピアノの周りにメンバーを集めて、「今こんな曲があります」って弾き語りをして。
Ayase:めちゃめちゃカッコいい! 
小笹:俺、本当にこの瞬間のためにヒゲダンをやっていると言っても過言ではないんだけど、毎回鳥肌が立つ。そこで、なんとなくこの曲がいいかなってみんなで話して、何曲か選ぶ。さとっちゃんってすごくて、曲を作る量が半端じゃないのよ。何曲たまってるんだろうって思うんだけど、その中から何曲かをピックアップして作っていく。さとっちゃんは小さい頃からピアノもドラムもやってるし、DTMもできるから、自分でデモを作ってくれる。ワンコーラスくらいをフルのアレンジで作ってくることが多くて、尺よりもどんな楽器を使うかみたいなことが一番にあり、それでトラックメーク的な楽曲とバンドサウンド的な楽曲の2タイプに分かれて、バンドサウンドだったら、各パートのアレンジはみんなに任せるよってなってる。

最近は録って聴くことを繰り返しながら楽曲制作を進めているという。

小笹:やっぱり他の楽器のことって同時に演奏していると把握するのが難しかったりするから、録って聴いてみんなの楽器がどこで動いているかを把握してすりあわせていくことを、バンド型ではやっています。逆にトラックメイク的な作り方をしていくときには、「こういうフックのフレーズがあって」とか楽曲のフレーズが決め打ちになっていることが多くて、音をどれだけよく録るかみたいな感じ。それもレコーディングベースで、録ってみないとわからないというか、音作りを頑張っているかな。
Ayase:ヒゲダンの制作って、歌詞先行なのかメロディ先行なのかどっち?
小笹:昔はメロディ先行だったけど、最近は手法に縛られるのはよくないというか、いろんな角度から曲を作ってみたいという思いがあるから、歌詞先行から書いている曲も増えてきてて。それって聴いてみるとやっぱり違うんだよね。
Ayase:それはあるよね。
小笹:それがすごくおもしろくて、楽曲のバリエーションにもつながるし、すごく楽しいことだなって。でも、メロディが決まったら歌詞が決まるし、歌詞が決まったらメロディが決まる。その相互作用がすごくあるから、決め込みすぎないってことを今は一番大事にしているかもしれない。どっちかを優先すると、もうひとつの自由度が減っちゃうから、けっこうふわっとしたまま、ふたつをすりあわせていくことが多いかな。

藤原 聡の「音楽を咀嚼する力」

Ayaseはヒゲダンの楽曲を「引き出しの多さを感じる」と絶賛する。

小笹:それに関しては、俺はさとっちゃんをすごく尊敬してる。彼に「こういう曲をやってみたら」とか投げて、返ってくるもののデカさがすごい。それこそ、『FIRE GROUND』は「アニメの主題歌で、ハードロックみたいなものをやってみたらおもしろいんじゃない」ってそれくらい軽い一言で、あんな楽曲を生み出せるんだって。

Official髭男dism『FIRE GROUND』

小笹:彼の音楽を咀嚼する力っていうか、それで自分が書くっていうほうに持っていける力って当たり前にできることじゃないよなって。近くで見ていてもすごいなって思う。
Ayase:すごいな。全部吸収していいアウトプットができてるんだろうなってすごく感じる。

『Pretender』の制作秘話。最初はサビが違った

代表曲『Pretender』は、どのように生まれたのか。

Official髭男dism『Pretender』

Ayase:お世辞抜きで『Pretender』は名曲だと思っていて、何度聴いてもいいし、カラオケで歌ってみても最高にいいなと思うし、不意にどこかで耳にしてもいいなと思う。当たり前だけど名曲を作ろうと思って作れるわけでもないから、どうやって『Pretender』が生まれたのかが気になって。
小笹:この曲はもともとギターリフが最初からあって。これも映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』の主題歌で、映画側から「UKロックの雰囲気」って要望があり、最初はサビのメロディーが違ったんだよね。このギターリフと、神聖、荘厳な雰囲気で美しい曲ってベースはあったんだけど、それ故にサビが突き抜けるというか、パンチがある感じではなくて、いい意味でサーッと流して聴けるようなサビで。全体としての雰囲気でカッコいい曲ではあったんだけど、そこに「俺はサビがもっとある気がするんだ」ってさとっちゃんが言ってサビを書き換えてきて。そのときってすごく過酷なツアー中で、さとっちゃんが喉をつぶしながら仮歌を録っていて、それが今のサビ。それを聴いた瞬間に「勝った」って(笑)。
Ayase:うわー、そう思うだろうな。
小笹:あれも鳥肌ものだったんだけど、イントロもすごく大事で、その雰囲気を持ったままあの強いサビと、グッバイっていうつかみがあって、ずっとメロディが最強。その前の曲も十分いい曲だったけど、それを壊して作り直してアップデートできる力。『Pretender』ができた瞬間の手応えは忘れられない。

ヒゲダンの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterで。

『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

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2020年12月18日28時59分まで

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