J-WAVEで放送中の番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。11月21日(土)のオンエアでは、今年で生誕250周年を迎えた偉大なる作曲家にしてピアニストのベートーヴェンを特集。先週に引き続き稲垣吾郎と、クラシックソムリエの田中 泰が楽曲の魅力を語った。
稲垣吾郎が選ぶ、ワインを飲みながら聴きたいベートーヴェンの曲 TOP 3
田中:彼はムジカエテルナという自分の理想のオーケストラを作り上げたんです。ベートーヴェンの時代に戻るような演奏がひとつ評価されています。いまの楽器とベートーヴェンの時代の楽器ってちょっと違っていて、進化というか変化しているんです。大きなホールでもちゃんと響くような楽器に対応してきてるわけですよね。たけど、昔は昔の「繊細な音を好む」というよさがあって、そのよさを残しつつ、現代オーケストラの最高にパワーのある部分をうまく融合させて、新しい音楽を作り上げてるのがクルレンツィスです。
稲垣:昔のエッセンスというのは、僕にはわからなかったです。でもとても現代的というか、現代の音楽を聴いてる人の耳に合わせてレコーディングしたのかなというくらい、すごく迫力がありますよね。
田中:まずスピード感があるんですよね。
稲垣:昔の楽器のエッセンスを取り入れてるというのはおもしろいですね。
グローバー:稲垣さんはなぜ「現代的」と感じたのでしょう?
稲垣:CGのような立体感があるというか。
田中:いい表現ですね。その通りだと思います。メリハリがあるしね。
稲垣:たぶんわかりやすいと思います。僕も初めて聴いたときに「普通のベートーヴェンとは違うな」と、とっても分かりやすく、ほかの指揮者ともほかの楽団とも違う感じです。
番組でテオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ演奏の交響曲第5番『運命』をオンエアすると、「始まった瞬間のメリハリ」「めちゃくちゃエッジが効いている」など、その魅力を口々に語り合った。
グローバーが「オーケストラで聴くベートーヴェンの魅力とは?」と問いかけると、稲垣が指揮を経験した交響曲第5番『運命』のエピソードを語った。
稲垣:僕はまだフルを間近で観たことがないんです。ただ、このあいだ番組企画でハーフオーケストラの指揮を体験させていただきました。そのときの交響曲第5番『運命』の迫力と圧!
グローバー:指揮者の位置は、指揮をする人しか行けない場所ですから。どうでしたか?
稲垣:すごいですよ。風がビュンッときて、僕の前髪がヒラッとなびきました。音の風圧が。テオドール・クルレンツィスのフルで聴いてみたいです。
3位:『トルコ行進曲』
田中:『トルコ行進曲』というと、モーツァルトの『トルコ行進曲』がとても有名なんですけれども、ベートーヴェンもそれに負けないぐらい素晴らしい曲なんです。もともと『アテネの廃墟』という劇音楽のなかのオーケストラ曲だったんですけど、それをピアノに編曲したものが僕らの子どものころのピアノ教本に入ってるんですよね。ちなみに僕が初めてピアノの発表会で弾いたのがこの曲でした。ただしアレンジが全然違いまして、プロが弾くのも難しい演奏なんですけれども、僕らが弾けるようなアレンジもできて、ちゃんと曲が成り立つところが素晴らしいなと思います。素人が弾いてもちゃんと雄大な曲になってくれるんです。
2位:『自然における神の栄光』
田中:これは歌曲ですね。ベートーヴェンの歌曲は、それほど有名な曲は多くないんですけれど、この曲だけは忘れられなくて。これまた個人的な思い出なんですけども、高校のときの校内合唱コンクールで僕がピアノ伴奏をした思い出の曲です。これも第九に通じるベートーヴェンの「崇高な思想」がそのまま具現化された音楽ですね。聴くと「ああ、ベートーヴェンだな」と感じます。
1位:『失われた小銭への怒り』
田中:これはもうタイトルからして笑っちゃうんですけれどもね。
グローバー:女性にも優しく子どもにも弾ける楽曲を作る人が「失われた小銭への怒り」ですか。
田中:ベートーヴェンの名誉のために付け加えると、ベートーヴェンが付けたタイトルじゃないんです。『ロンド・ア・カプリッチョ』が正式名称なんですけど、あとから聴いた人が「これはこういう内容だろう」って勝手につけたものがタイトルになってしまったという。
グローバー:「ベートーヴェンは小銭を失くして怒ってた」って?
稲垣:このタイトルではベートーヴェンが怒りますよね。
田中:でも聴くとまさにこのイメージだなっていう曲なんですよ。ベートーヴェンが慌てて坂道を転がる小銭を追いかけているような。
稲垣:ベートーヴェンのちょっとチャーミングなところですね。怒ってる姿もかわいらしい。
グローバー:ベートーヴェンが影響を与えていないジャンルはないんじゃないかというくらいだと思いますが、クラシック史も含めて音楽界を見たときに、ベートーヴェン最大の功績はなんでしょうか?
田中:人々に勇気を与えてくれるところだと思います。背中をしてくれるというか。ベートーヴェン自身が「本当に辛いことがあってもそれを乗り越えて素晴らしいことを成し遂げようじゃないか」という人生を送った人です。ベートーヴェンの音楽を聴いたときに何か救われるような気がしたり「頑張ろうかな」と思えたりする部分があります。
グローバー:新しくベートーヴェンに興味を持った方に、どんなふうに楽しんでいただきたいですか?
田中:まずはベートーヴェンのあらゆる面を体験してもらいたいですね。特にピアノは吾郎さんもこれだけ浸ってるように、奥の深さは並大抵じゃないです。しかも32曲それぞれ全部違うピアノソナタを残していたり、ピアノ協奏曲でも嵐の中からやすらぎの極地みたいなところまで聴かせてくれたりします。そういう意味では、自分のいまの心境に何が合ってるのかを見つける体験ができるんじゃないかなと思います。
稲垣:ベートーヴェンとは、俳優・稲垣吾郎が生涯演じていく役である! すみません。なんか自分のキャッチコピーになっちゃいました。
グローバー:それがまたベートーヴェンっぽいです。
稲垣:でもね、ベートーヴェンが亡くなったのが56歳じゃないですか。少なくとも56歳までは絶対に演じたいですし、56歳と言わず生涯演じたいです。追い求めても追い求めても掴めない憧れだと思います。
続いて田中は、「ベートーヴェンとは、心のワクチンである」と回答した。
田中:本当に辛いことがあっても頑張ろうっていう気にさせてくれるし、背中を押してくれるし、癒してくれるし、もう全ての要素を持っていますよね。そして傷ついた心をいい方向に持っていってくれる力が、彼の音楽にはあると思います。
『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』では、ゲストを迎え、1組の「レジェンド・ミュージシャン」をテーマに音楽談義を繰り広げる。放送時間は毎週土曜の17時から。
稲垣吾郎が選ぶ、ワインを飲みながら聴きたいベートーヴェンの曲 TOP 3
注目の指揮者はテオドール・クルレンツィス
稲垣と田中が「注目している指揮者」は、偶然にも同じテオドール・クルレンツィスだった。グローバーは「何がほかの指揮者と違うのでしょうか?」と田中に問いかける。田中:彼はムジカエテルナという自分の理想のオーケストラを作り上げたんです。ベートーヴェンの時代に戻るような演奏がひとつ評価されています。いまの楽器とベートーヴェンの時代の楽器ってちょっと違っていて、進化というか変化しているんです。大きなホールでもちゃんと響くような楽器に対応してきてるわけですよね。たけど、昔は昔の「繊細な音を好む」というよさがあって、そのよさを残しつつ、現代オーケストラの最高にパワーのある部分をうまく融合させて、新しい音楽を作り上げてるのがクルレンツィスです。
稲垣:昔のエッセンスというのは、僕にはわからなかったです。でもとても現代的というか、現代の音楽を聴いてる人の耳に合わせてレコーディングしたのかなというくらい、すごく迫力がありますよね。
田中:まずスピード感があるんですよね。
稲垣:昔の楽器のエッセンスを取り入れてるというのはおもしろいですね。
グローバー:稲垣さんはなぜ「現代的」と感じたのでしょう?
稲垣:CGのような立体感があるというか。
田中:いい表現ですね。その通りだと思います。メリハリがあるしね。
稲垣:たぶんわかりやすいと思います。僕も初めて聴いたときに「普通のベートーヴェンとは違うな」と、とっても分かりやすく、ほかの指揮者ともほかの楽団とも違う感じです。
番組でテオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ演奏の交響曲第5番『運命』をオンエアすると、「始まった瞬間のメリハリ」「めちゃくちゃエッジが効いている」など、その魅力を口々に語り合った。
グローバーが「オーケストラで聴くベートーヴェンの魅力とは?」と問いかけると、稲垣が指揮を経験した交響曲第5番『運命』のエピソードを語った。
稲垣:僕はまだフルを間近で観たことがないんです。ただ、このあいだ番組企画でハーフオーケストラの指揮を体験させていただきました。そのときの交響曲第5番『運命』の迫力と圧!
グローバー:指揮者の位置は、指揮をする人しか行けない場所ですから。どうでしたか?
稲垣:すごいですよ。風がビュンッときて、僕の前髪がヒラッとなびきました。音の風圧が。テオドール・クルレンツィスのフルで聴いてみたいです。
田中セレクト「初心者にも聴いてほしいベートーヴェンの隠れ名曲TOP3」
田中がベートーヴェンの「隠れ名曲TOP3」をセレクト。「おもしろいから聴いてほしい」という思いを込めて選んだという。3位:『トルコ行進曲』
田中:『トルコ行進曲』というと、モーツァルトの『トルコ行進曲』がとても有名なんですけれども、ベートーヴェンもそれに負けないぐらい素晴らしい曲なんです。もともと『アテネの廃墟』という劇音楽のなかのオーケストラ曲だったんですけど、それをピアノに編曲したものが僕らの子どものころのピアノ教本に入ってるんですよね。ちなみに僕が初めてピアノの発表会で弾いたのがこの曲でした。ただしアレンジが全然違いまして、プロが弾くのも難しい演奏なんですけれども、僕らが弾けるようなアレンジもできて、ちゃんと曲が成り立つところが素晴らしいなと思います。素人が弾いてもちゃんと雄大な曲になってくれるんです。
2位:『自然における神の栄光』
田中:これは歌曲ですね。ベートーヴェンの歌曲は、それほど有名な曲は多くないんですけれど、この曲だけは忘れられなくて。これまた個人的な思い出なんですけども、高校のときの校内合唱コンクールで僕がピアノ伴奏をした思い出の曲です。これも第九に通じるベートーヴェンの「崇高な思想」がそのまま具現化された音楽ですね。聴くと「ああ、ベートーヴェンだな」と感じます。
1位:『失われた小銭への怒り』
田中:これはもうタイトルからして笑っちゃうんですけれどもね。
グローバー:女性にも優しく子どもにも弾ける楽曲を作る人が「失われた小銭への怒り」ですか。
田中:ベートーヴェンの名誉のために付け加えると、ベートーヴェンが付けたタイトルじゃないんです。『ロンド・ア・カプリッチョ』が正式名称なんですけど、あとから聴いた人が「これはこういう内容だろう」って勝手につけたものがタイトルになってしまったという。
グローバー:「ベートーヴェンは小銭を失くして怒ってた」って?
稲垣:このタイトルではベートーヴェンが怒りますよね。
田中:でも聴くとまさにこのイメージだなっていう曲なんですよ。ベートーヴェンが慌てて坂道を転がる小銭を追いかけているような。
稲垣:ベートーヴェンのちょっとチャーミングなところですね。怒ってる姿もかわいらしい。
人々に勇気を与えるベートーヴェンの音楽
田中がベートーヴェンの功績を解説した。グローバー:ベートーヴェンが影響を与えていないジャンルはないんじゃないかというくらいだと思いますが、クラシック史も含めて音楽界を見たときに、ベートーヴェン最大の功績はなんでしょうか?
田中:人々に勇気を与えてくれるところだと思います。背中をしてくれるというか。ベートーヴェン自身が「本当に辛いことがあってもそれを乗り越えて素晴らしいことを成し遂げようじゃないか」という人生を送った人です。ベートーヴェンの音楽を聴いたときに何か救われるような気がしたり「頑張ろうかな」と思えたりする部分があります。
グローバー:新しくベートーヴェンに興味を持った方に、どんなふうに楽しんでいただきたいですか?
田中:まずはベートーヴェンのあらゆる面を体験してもらいたいですね。特にピアノは吾郎さんもこれだけ浸ってるように、奥の深さは並大抵じゃないです。しかも32曲それぞれ全部違うピアノソナタを残していたり、ピアノ協奏曲でも嵐の中からやすらぎの極地みたいなところまで聴かせてくれたりします。そういう意味では、自分のいまの心境に何が合ってるのかを見つける体験ができるんじゃないかなと思います。
ベートーヴェンのキャッチコピー
稲垣は、12月13日(日)~2021年1月7日(木)に東京・TBS赤坂ACTシアターにておこなわれる舞台『木下グループ presents No.9 -不滅の旋律-』で、ベートーヴェンを演じる。ベートーヴェンのキャッチコピーを、こう答えた。稲垣:ベートーヴェンとは、俳優・稲垣吾郎が生涯演じていく役である! すみません。なんか自分のキャッチコピーになっちゃいました。
グローバー:それがまたベートーヴェンっぽいです。
稲垣:でもね、ベートーヴェンが亡くなったのが56歳じゃないですか。少なくとも56歳までは絶対に演じたいですし、56歳と言わず生涯演じたいです。追い求めても追い求めても掴めない憧れだと思います。
続いて田中は、「ベートーヴェンとは、心のワクチンである」と回答した。
田中:本当に辛いことがあっても頑張ろうっていう気にさせてくれるし、背中を押してくれるし、癒してくれるし、もう全ての要素を持っていますよね。そして傷ついた心をいい方向に持っていってくれる力が、彼の音楽にはあると思います。
『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』では、ゲストを迎え、1組の「レジェンド・ミュージシャン」をテーマに音楽談義を繰り広げる。放送時間は毎週土曜の17時から。
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2020年11月28日28時59分まで
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番組情報
- MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY
-
毎週土曜17:00-17:54