罪を償って刑務所から出所しても、仕事がなく社会復帰ができず再犯してしまうケースがある。そんな現状を変えるために生まれたのが、日本初の受刑者等専門求人誌『Chance!!(チャンス)』。非行歴・犯罪歴のある人の教育や採用を支援する、株式会社ヒューマン・コメディが発行している。求人誌を作った経緯を、同社の代表取締役、三宅晶子さんに訊いた。
三宅さんに話を訊いたのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING INSIGHT」。8月26日(水)のオンエア。
三宅:ポスティングとかコンビニとか(の求人)もありますし、飲食業などもたまにありますが、今のところ建設系がほとんどです。
別所:これは全国展開なんでしょうか?
三宅:全国展開なんですが、関東の企業(の掲載)が多くなっています。
別所:なぜこのような求人誌を作ろうと思われたんでしょう?
三宅:求人誌を作る前は、出所者向けの職業紹介事業をしていていました。しかし、求人誌を作るまでの約1年半のあいだに、企業と面接ができた人が20人くらい。そのうち採用内定者はたった6人で、その6人も次々に行方不明になってしまったんです。
職業紹介として機能しない、職をみつけた人も続かない。その背景には、こんな事情が隠れていた。
三宅:何人かの出所者の方から「刑務所内にハローワークの求人票が貼ってあったけれども、よくわからなかったから見なかった」という声が聞かれたんです。文字だけで条件だけが書いてあっても、どんな会社なのかよくわからないと。あと、小学校低学年からほとんど学校に通っていないから漢字が読めないという人も少なくないので、漢字が読めないとアウトなんですよね。
まず、仕事を探すことにハードルがある。さらに、企業側にも問題があった。国の制度として、出所者等を雇った企業に補助金を出すというものがある。この制度を悪用するケースがあるのだという。例えば、「会社に入ったはいいが、毎日サービス残業をしていて、最低賃金以下で働かされている」「寝るときも、何人もの社員が狭い部屋に押し込められている」などの声があったそうだ。
三宅:(就職したが企業環境が悪く)嫌になって飛び出してしまって、それでお金がなくなって再犯してしまったという話も聞きました。そこで、受刑中に「どんな会社なのか」がイメージできて、かつ当社で最低限環境の整った企業だけを選定した求人誌を作って配ろうと思ったんです。
創刊から2年半が経った『Chance!!』。番組放送日の8月26日までに479件の企業への応募があり、87人の実質採用が内定している。うち、21人が退職・行方不明であり、三宅さんが把握している限りそのうち再逮捕が5人程度。現在は35人の方が就労中だという。
三宅:高校を退学になったときに、母親が入院してたんです。病院で退学の報告をしたときに母を泣かせてしまいまして。そのときにすごく「自分の人生が傾いてるな」とことを自覚して、申し訳ないと思うのと同時に、いつかこれを絶対にネタに変えようと決めたんです。その後、17歳で高校に入り直して、お好み焼き屋さんに就職したのち、23歳で早稲田大学に入学しました。
2004年に商社へ入社し、2014年に退職。その後は自立援助ホームや受刑者支援団体などでボランティアを行い、2015年7月に株式会社ヒューマン・コメディを設立した。会社設立のきっかけとなったのは、ある少女との出会いだった。
三宅:奄美大島にある子どもたちの自立支援施設でボランティアをしていたときに、当時17歳の女の子と仲良くなりました。私が東京に戻ったあと、彼女は逮捕されて少年院送致になりました。2015年の春に彼女が少年院から手紙をくれたので、翌日すぐに面会に行き、(私が)彼女の身元引受をすることになったんです。それまでのボランティア活動を通じて、出所者はやり直しがきかないという現状を知っていたからです。所持金が1~2万もあればいいほうで、家族からも見放されていて帰る家もないと。住所がないと普通の仕事って探せないんですよね。それでネットカフェとかに泊まって僅かな所持金を使い果たすと、他に生きる術がないので、生きるために自ら些細な犯罪をして刑務所に戻っていく人が非常に多いんです。
身元引受をするにあたり、「どういう環境だと彼女はハッピーなんだろう」と考えた三宅さん。少年院や刑務所を出た人たちを支援できるような会社を作ったとしたら……と考えたのが、会社設立のきっかけになったそうだ。
三宅:「自分とは関係のないこと」ではなく、みんなが自分事としてちょっと想像してみるといいんじゃないかなって思います。たとえば、(罪を犯した人の中には)今日食べるものがない家に生まれる人もいるし、壮絶な虐待を受けたのち施設で育つ人もいるし、事件には背景とか理由がたいがいあるんですよね。なので、自分がその人と同じ環境だったらどうかなと想像するといいと思います。また、もし病気や事故で仕事をすることができなくなってしまったとしたら、あっという間に家賃を滞納してしまったとしたらどう生きていくだろうかと、ちょっと想像してみると、社会が変わってくるんじゃないかなって思います。
ヒューマン・コメディが掲げる目的は、「“人は変われる”と信じることのできる社会の実現」。公式サイトでは、『Chance!!』の最新号を閲覧することができる。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。
三宅さんに話を訊いたのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING INSIGHT」。8月26日(水)のオンエア。
社会復帰を支援し、再犯を防ぐ『Chance!!』
『Chance!!』は2018年3月に創刊した、「絶対にやり直すという覚悟のある人と、それを応援する企業のための求人誌」だ。求人情報の多くは建設系の仕事だそう。三宅:ポスティングとかコンビニとか(の求人)もありますし、飲食業などもたまにありますが、今のところ建設系がほとんどです。
別所:これは全国展開なんでしょうか?
三宅:全国展開なんですが、関東の企業(の掲載)が多くなっています。
別所:なぜこのような求人誌を作ろうと思われたんでしょう?
三宅:求人誌を作る前は、出所者向けの職業紹介事業をしていていました。しかし、求人誌を作るまでの約1年半のあいだに、企業と面接ができた人が20人くらい。そのうち採用内定者はたった6人で、その6人も次々に行方不明になってしまったんです。
職業紹介として機能しない、職をみつけた人も続かない。その背景には、こんな事情が隠れていた。
三宅:何人かの出所者の方から「刑務所内にハローワークの求人票が貼ってあったけれども、よくわからなかったから見なかった」という声が聞かれたんです。文字だけで条件だけが書いてあっても、どんな会社なのかよくわからないと。あと、小学校低学年からほとんど学校に通っていないから漢字が読めないという人も少なくないので、漢字が読めないとアウトなんですよね。
まず、仕事を探すことにハードルがある。さらに、企業側にも問題があった。国の制度として、出所者等を雇った企業に補助金を出すというものがある。この制度を悪用するケースがあるのだという。例えば、「会社に入ったはいいが、毎日サービス残業をしていて、最低賃金以下で働かされている」「寝るときも、何人もの社員が狭い部屋に押し込められている」などの声があったそうだ。
三宅:(就職したが企業環境が悪く)嫌になって飛び出してしまって、それでお金がなくなって再犯してしまったという話も聞きました。そこで、受刑中に「どんな会社なのか」がイメージできて、かつ当社で最低限環境の整った企業だけを選定した求人誌を作って配ろうと思ったんです。
創刊から2年半が経った『Chance!!』。番組放送日の8月26日までに479件の企業への応募があり、87人の実質採用が内定している。うち、21人が退職・行方不明であり、三宅さんが把握している限りそのうち再逮捕が5人程度。現在は35人の方が就労中だという。
自身も非行からやり直した経験を持つ
三宅さんは早稲田大学を卒業して商社に入社し、退職後に起業した。順風満帆の経歴に思えるが、実は「中学時代から非行を繰り返していて」と語る。三宅:高校を退学になったときに、母親が入院してたんです。病院で退学の報告をしたときに母を泣かせてしまいまして。そのときにすごく「自分の人生が傾いてるな」とことを自覚して、申し訳ないと思うのと同時に、いつかこれを絶対にネタに変えようと決めたんです。その後、17歳で高校に入り直して、お好み焼き屋さんに就職したのち、23歳で早稲田大学に入学しました。
2004年に商社へ入社し、2014年に退職。その後は自立援助ホームや受刑者支援団体などでボランティアを行い、2015年7月に株式会社ヒューマン・コメディを設立した。会社設立のきっかけとなったのは、ある少女との出会いだった。
三宅:奄美大島にある子どもたちの自立支援施設でボランティアをしていたときに、当時17歳の女の子と仲良くなりました。私が東京に戻ったあと、彼女は逮捕されて少年院送致になりました。2015年の春に彼女が少年院から手紙をくれたので、翌日すぐに面会に行き、(私が)彼女の身元引受をすることになったんです。それまでのボランティア活動を通じて、出所者はやり直しがきかないという現状を知っていたからです。所持金が1~2万もあればいいほうで、家族からも見放されていて帰る家もないと。住所がないと普通の仕事って探せないんですよね。それでネットカフェとかに泊まって僅かな所持金を使い果たすと、他に生きる術がないので、生きるために自ら些細な犯罪をして刑務所に戻っていく人が非常に多いんです。
身元引受をするにあたり、「どういう環境だと彼女はハッピーなんだろう」と考えた三宅さん。少年院や刑務所を出た人たちを支援できるような会社を作ったとしたら……と考えたのが、会社設立のきっかけになったそうだ。
「自分だったら」と想像してみてほしい
社会のレールからこぼれ落ちてしまうのは、罪を犯した人に限らない。何らかの事情で働けなくなることもある。そんなとき、やり直しがきく社会にするためには、どうすればいいのだろうか。三宅:「自分とは関係のないこと」ではなく、みんなが自分事としてちょっと想像してみるといいんじゃないかなって思います。たとえば、(罪を犯した人の中には)今日食べるものがない家に生まれる人もいるし、壮絶な虐待を受けたのち施設で育つ人もいるし、事件には背景とか理由がたいがいあるんですよね。なので、自分がその人と同じ環境だったらどうかなと想像するといいと思います。また、もし病気や事故で仕事をすることができなくなってしまったとしたら、あっという間に家賃を滞納してしまったとしたらどう生きていくだろうかと、ちょっと想像してみると、社会が変わってくるんじゃないかなって思います。
ヒューマン・コメディが掲げる目的は、「“人は変われる”と信じることのできる社会の実現」。公式サイトでは、『Chance!!』の最新号を閲覧することができる。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。
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