音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
近田春夫が語る、日本の音楽が世界に羽ばたくために足りないサポートとは

近田春夫が語る、日本の音楽が世界に羽ばたくために足りないサポートとは

J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。

6月26日(金)のオンエアでは、近田春夫が出演。韓国の音楽シーンの勢いや、日本のアーティストが世界進出をするために足りない“サポート”について語った。


■韓国エンタメは国としてのサポートが強い

K-POPを筆頭に勢いのある韓国の音楽シーン。近田はDJに注目しており、「韓国の音楽の世界って、常に世界に対して問いかけている感じがする」と語る。名前が挙がったのは、女性の音楽プロデューサーでDJのペギー・グー。ファッションブランドなども立ち上げており、世界から注目を集めている。

近田:「こういうDJがなんで日本に出てこないんだろう?」という歯がゆい気持ちで見てるのよ。グルーヴみたいなものを大切にする音楽は、日本と韓国だとぜんぜん解釈が違うというのか、韓国のDJはおもしろい人が多い。BTSも最初からすぐれていたもの。絶対にこの子たちは世界的になるだろうなと思ったけど、残念ながら日本のアーティストたちって「世界に出よう」という意識は韓国と比べると全然乏しいよね。
クリス:ないない。
近田:俺はこの歳だけどさ、何度も何度も海外に挑戦はしていたんだよ。これは言い訳するわけじゃないけど、やっぱり国としてのサポートが弱い。たとえば現場でウケたとしても、そのあとにレコード会社なりが最初の部分はバックアップしてくれないと、向こうでやっていくのは本当に難しいんだよ。韓国は国策として、音楽を産業として、世界レベルのものを作っていこうという意識が日本より強い気がするよ。
クリス:強いよ。だって、スウェーデンだってABBAの時代から国際市場に出るというので、国自体が援助をしていた。今はテイラー・スウィフトとかアメリカのポップアイコンがいっぱいいるけど、半分ぐらいはみんなスウェーデンのソングライターだぜ?
近田:書いてるのもね。
クリス:書いてるのはみんなそうなんだよ。それをABBAの時代から、国も一緒になって援助していたじゃない? 日本というのはよくも悪くも、日本でビジネスができちゃうんだよね。海外に行かなくても儲かっちゃうんだよ。
近田:内で回していたら済んじゃうから。だけどさ、本当のことを言ったら、音楽は世界に向けて発信しないとおもしろくないじゃない? そういうところで、俺は本当に韓国のミュージシャンたちというのが日本人と違う意識を持っているなといつも思うよ。


■若いアーティストたちが持つ可能性…平等に発信できる強み

クリスが「今の若い子たちはちょっと変わってきてる」と語ると、近田も「今の10代の子たちはすごい」と同意する。

近田:「他にないものをこれから出せるかも」みたいなさ、そういう若い子がいっぱいいる気がする。俺がおもしろいと思ったのは、トラックメーカーのSASUKEって知ってる?
クリス:知ってる。
近田:あの子はすごいと思う。たまたま聴いたとき、普遍的なコード進行を今の時代のなかでもう一回再構築して作るということを、16、7歳の子が自然にしてる。しかも自分で歌ったりしてさ。YouTubeとかを観ていると「どうしてこんなことをこの歳でできるんだろう?」という子が最近いっぱい出てきてる。だからそういう子たちがなにかおもしろいものをこれからやっていく可能性はある気がする。日本独特な緻密な感じとかさ。SASUKE以外にもいっぱいいるから、これからの日本は決して悲観することはないなと。
クリス:プラットホームが違うじゃない。インターネットで世界の人が観ようと思えば観られるわけだから、国土で仕切られるようなマーケットはもうないわけじゃん。なんでもありでどこでもアクセス可能なわけだから。
近田:全てが平等なんだよね。おうちからできるんだもん。
クリス:昔だと俺たちは物理的な距離や文化的な距離がいろいろあったけど、どんどんその距離や垣根が取っ払われている。ワンワールド状態になっているから好き勝手にやればいいんだよね。変に狙わらずに好きなことをやるのが一番素晴らしいんだよ。
近田:ビリー・アイリッシュみたいな人の、あの自然さというものを世界中が出してくれる気がするのよ。たまたまそういうことと新型コロナの時代というものが、いい形で化学変化を起こして、今までと違う音楽シーンが生まれつつあるのかな、という気がするんだけど、そのなかでひとつ思うのは、ヒットチャートというものがなくなるかもしれないね。


■コロナ渦で変わった仕事の形

番組では、近田のプライベートにも迫った。新型コロナウイルスで自身が受けた影響について、近田は2月25日の自身の誕生日ライブが「公でやった最後のことだった」と振り返る。その後、なくなってしまった仕事もあったが、もともとライブやリハーサル以外はデータのやりとりが主だったため、影響は少なかったそうだ。

近田:実感として新型コロナで何か変わったということは、本当のことを言うとないね。
クリス:俺の友だちなんかも、デザイン事務所をやっている連中はみんなリモートでやっているから、事務所を解約するやつが出てきているんだよね。
近田:俺の友だちもそうだよ。もともとリモートでできる仕事ってけっこうあるじゃない? 家賃がもったいないからというので、小さいところに移しちゃった友だちもいるし。
クリス:だからさ、よくあるシェアオフィス系でミーティングルームだけ使うみたいな、ああいうのでいいのかもしれないよね。
近田:それ以上におうちで全部済んじゃうよ。


■奥深いぬか漬けの世界

近田はもともと外食を好まないため、緊急事態宣言があけた今でも、自宅で料理を楽しんでいるそうだ。最近はぬか床にハマっているという。

近田:前も佃煮とか作ったけど、なんでも自分で作って食べる。自粛生活になっていっそう、自分で料理を作りたいというほうにエネルギーが向いていったね。それで最近おもしろかったのは、ぬか床を作るということ。いっときの佃煮以上に燃えちゃって。というのは、佃煮はある程度極めると、工業製品的に安定したものが作れるんだけど、ぬか床というのは生き物なので、毎回違う味になるのよ。ちょっとした温度や湿気の問題、いろいろと複雑な要素が絡んでいるので、毎回同じにならないんですよ。「そうか、こういうことなのか」ってわかったと思ったら、また次のときにやったやつが「ちょっとすっぱすぎたかな」とか、そういう試行錯誤を、この新型コロナのお休みのなかでやっていた。毎朝起きて、まず犬を散歩に連れて行く感じよ。
クリス:会話をしないといけないわけだ。
近田:そうそう。まずはビールを飲みながらぬか床をかき回して、そこから漬かったやつを別の容器に移して「これはもうちょっとぬかを足したほうがいいのかな」「味付けにからしを足したほうがいいのかな」「こんぶを入れたほうがいいのかな」「とうがらしを何本か入れたほうが、殺菌効果があるのかな」とか、毎日そういうことをずっとやるという喜び。新型コロナのなかでその部分が自分のなかで大きくなって、その結果、佃煮に関しての興味がすごく薄くなっちゃったのよ。
クリス:あはは(笑)。俺はぬか漬け大好きだから、究極はぬか漬けのおしんことご飯、しょうゆと七味がちょっとあれば一生生きていけると思う。
近田:ビールにも合うんだよ。
クリス:なんにだって合うよ。体にもいいしさ。
近田:発酵食品だからね。

邦楽シーンを切り開いてきた近田と、長きにわたり業界を見てきたクリスによる濃密な音楽トークは、7月3日(金)の同番組でも続く。オンエアはJ-WAVEで毎週金曜23時から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年7月3日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『SAPPORO BEER OTOAJITO』
放送日時:毎週金曜 23時-23時30分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/

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