J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:GAKU-MC)をお届けしている。
5月17日(日)のオンエアでは、震災後の地方の特色を生かした企業やビジネスに詳しい、一般社団法人RCF代表理事の藤沢 烈さんをゲストに迎え、「災害に強いプロジェクト」について考えた。今回のオンエアは新型コロナウイルスの感染予防を鑑み、リモートでトークを展開した。
■復興コーディネーターとは
藤沢さんは東日本大震災後、熊本地震や西日本豪雨、甚大な被害をもたらした昨年の台風など、災害が起きる度に活動を続けている。
藤沢:災害が起こるときは、基本的に地元の役所や企業が復興に向けて進んでいくことが多いです。しかし、東日本大震災のような大規模災害になると、地元だけでは手に負えなくなります。私たちは、そのときに復興に向けてのノウハウや資金、人材を都市部から持っていく“復興コーディネーター”の仕事を続けています。
■復興が進む事業者は必ず新しい商品や販路を作っている
GAKU-MCは昨年、台風で甚大な被害を受けた千葉県を取材した。まず木更津にある創業明治30年の老舗料理屋「宝家」を訪れ、台風で被災した事業者同士の「復興×エールプロジェクト」第一弾メニュー「花味たれかつ丼」をいただいた。
このかつ丼は、木更津市内唯一の養豚場「平野養豚場」の豚肉「木更津の恵みポーク」と、市原市にある養蜂家「ワンドロップファーム」の生はちみつ「百花蜜」を使用。「宝家」が提供することで、3事業者の新たなコラボレーションが生まれた。
「ワンドロップファーム」の豊増洋右さんが、この「復興×エールプロジェクト」が誕生した背景を紹介した。
豊増:昨年9月9日に上陸した台風15号にはじまり、2度の台風や豪雨被害によって、私たちも野菜がダメになってしまうなど苦しい思いをしました。私たちは生産者なので、人がいるところに商品を売りに行けばいい。しかし、飲食店や旅館、温泉は売りに行くことができません。昨年の災害で、今まで取引をしていた飲食店などが、私たちよりも大変な思いをしていると知り、どんどん人が食べに来ていただけるようなスペシャルなメニューをみんなで作ろうと、このプロジェクトがスタートしました。
豊増さんの話を聞き、東日本大震災から10年近くさまざまな地域の支援を続ける藤沢さんは、「(大きな災害時には)必ずこういった新しい取り組みが生まれている」と話す。
藤沢:東日本大震災の際に東北でもかなり多くの事業者が被災をしてしまい、1、2年は生産物の出荷が止まってしまうこともありました。そういったなかでもだんだん復興に向けて進んで行くのですが、復興が進む事業者と進まない事業者が大きく分かれるところがあります。復興が進む事業者は必ず新しい商品を作ったり、新しい販路を作ったりしています。反対にそれができていない事業者はなかなか売り上げが戻らないんです。
GAKU-MC:災害発生後は、地域の被災者同士が連携して新しい化学反応を起こして行くべきだということですね。
藤沢:そうですね。私たちは2018年の西日本豪雨の際に、愛媛県宇和島市で支援をおこないました。そこでは生産されているミカンが大きなダメージを受けたんです。そこで、これまでの売り方だとなかなか厳しいという状況から、インターネットを活用した新しいお客さんへの売り込みを始めました。そういったことをやることで、多くの方に宇和島市のミカンのおいしさを知ってもらい、その輪が広がっていく。被災地も工夫して、生産者と売り上げをあげる事業者などが連携して取り組みを進めています。
GAKU-MCは、被災前から地域の人同士が繋がり、日常的にアイデアの交換ができる環境にあることが重要だと語ると、藤沢さんもそれに同調する。
藤沢:災害が起きてから「はじめまして」となると、なかなか取り組みが進まないところがあるので、一刻も早く繋がりの動きを始めることが大切です。生産者と飲食店など、もともと地域で繋がりがあったところのほうが(復興が)早いんですよね。災害前から繋がりがあるかどうかで、その後に大きな差が出るところですね。
GAKU-MC:人との繋がりってなあなあにしがちなところがありますけど、普段から人と人とが尊重し合うべきだと、新型コロナウイルスの影響がある今だからこそあらためて考えさせられています。
現在、「花味たれかつ丼」を提供する「宝家」は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言などを受け、営業形態を一部変更。現在はテイクアウトを中心に営業を行っている。訪れる際には、「宝家」のフェイスブックページやホームページで確認してほしい。
・「宝家」フェイスブック
・「宝家」ホームページ
■国に頼る前に地域同士でいち早く支援に入れるか
「ワンドロップファーム」の豊増さんは、今回の「復興×エールプロジェクト」を通して、災害への備えについて気づいたことがある。
豊増:やっぱり地域で顔が見えていること、顔が見えている信頼関係を続けていくことがセーフティーネットになっていくと思います。私たちがお世話になっている11の町会長さんは、みなさんそれぞれの集落の人たちを把握しているんですよね。それってすごく安心できると思います。災害時に、「あいつの家はこうなっているかもしれない」とか「あの人の家を助けに行こう」という会話が普通にできる。一方で、私たち農業会は農業会で「きっと彼のところは困っているに違いない」とか「こういうものを持っているから貸してあげた方がいいんじゃないか」というような会話が、顔が見える環境でできる。昨年のような災害は毎年起こると思っていなきゃいけないと考えているので、顔の見える人間関係があれば、ある程度乗り越えていけるのではないかと思っています。
豊増さんの話から、藤沢さんは「地震、台風、豪雨、そして現在の感染症など、毎年のように何かが起きてしまうので、それを当たり前だと思って過ごさなくてはいけない」と言及する。
GAKU-MC:大切なのは地域の関係性における人間関係の構築だと実感しました。
藤沢:東日本大震災時で最も産業の復興が早かった地域は岩手県宮古市でした。その地域は震災前から行政の方が宮古市の会社の一軒一軒を把握していたので、災害が起きたときに「この会社の資金繰りが厳しいから、すぐに支援しないとダメだ」というようにわかっていたんです。だから、国が支援を決める前に宮古市独自の制度で資金繰りを支えることもできました。やはり国に頼っても、国は地域のことがわからないので、地域の方々がちゃんと連携して、国に頼る前にいち早く支援に入れるか。これがとても大事ですね。
GAKU-MC:とは言っても、都市部に住む人たちは近所付き合いも少ない場合もありますよね。
藤沢:これは都市部に限らず、地方もどんどん高齢化が進み、以前より人との繋がりが弱くなっています。そのため、外から若い人が住み始め、新しい関係作りをしていくことが重要です。地方でもインターネット環境が当たり前になってきているので、顔を合わせる環境と、新しいやり方で関係を作ることの両軸をやらないと、地方と言えど関係性がなくなっています。
GAKU-MCは、番組をリモートで放送することも、今までとは違うやり方で人と繋がれる方法だと実感したという。
GAKU-MC:新型コロナウイルスの登場によって、できることを探しながら人との繋がりは続けていけることを僕らは教わったような気がします。
藤沢:地方でインターネットを使える方が、すごく活動の幅が広がったと話していました。地方に居ながらにして東京の人とも連携できるようになっていますので、この状況を前向きに捉えた新しい関係作りや新しい仕事の仕方が生まれているように感じています。
番組では他にも、昨年の台風発生から千葉でボランティア活動を続けている「ピースボート災害ボランティアセンター」の上野祥法さんや、被災した農産物を流通、加工まで繋げた一般社団法人「野菜がつくる未来のカタチ」の鳥海孝範さんの取材を紹介する場面もあった。
GAKU-MCは「今こんな時期だから、あらためて僕らがやるべきこと、見るべき未来を再確認させてもらえた」と、この日の放送を振り返った。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月24日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
5月17日(日)のオンエアでは、震災後の地方の特色を生かした企業やビジネスに詳しい、一般社団法人RCF代表理事の藤沢 烈さんをゲストに迎え、「災害に強いプロジェクト」について考えた。今回のオンエアは新型コロナウイルスの感染予防を鑑み、リモートでトークを展開した。
■復興コーディネーターとは
藤沢さんは東日本大震災後、熊本地震や西日本豪雨、甚大な被害をもたらした昨年の台風など、災害が起きる度に活動を続けている。
藤沢:災害が起こるときは、基本的に地元の役所や企業が復興に向けて進んでいくことが多いです。しかし、東日本大震災のような大規模災害になると、地元だけでは手に負えなくなります。私たちは、そのときに復興に向けてのノウハウや資金、人材を都市部から持っていく“復興コーディネーター”の仕事を続けています。
■復興が進む事業者は必ず新しい商品や販路を作っている
GAKU-MCは昨年、台風で甚大な被害を受けた千葉県を取材した。まず木更津にある創業明治30年の老舗料理屋「宝家」を訪れ、台風で被災した事業者同士の「復興×エールプロジェクト」第一弾メニュー「花味たれかつ丼」をいただいた。
台風被害に遭った養豚場と養蜂家、老舗料理店がコラボした復興×エールプロジェクト 「花味たれかつ丼」
このかつ丼は、木更津市内唯一の養豚場「平野養豚場」の豚肉「木更津の恵みポーク」と、市原市にある養蜂家「ワンドロップファーム」の生はちみつ「百花蜜」を使用。「宝家」が提供することで、3事業者の新たなコラボレーションが生まれた。
「ワンドロップファーム」の豊増洋右さんが、この「復興×エールプロジェクト」が誕生した背景を紹介した。
豊増:昨年9月9日に上陸した台風15号にはじまり、2度の台風や豪雨被害によって、私たちも野菜がダメになってしまうなど苦しい思いをしました。私たちは生産者なので、人がいるところに商品を売りに行けばいい。しかし、飲食店や旅館、温泉は売りに行くことができません。昨年の災害で、今まで取引をしていた飲食店などが、私たちよりも大変な思いをしていると知り、どんどん人が食べに来ていただけるようなスペシャルなメニューをみんなで作ろうと、このプロジェクトがスタートしました。
豊増さんの話を聞き、東日本大震災から10年近くさまざまな地域の支援を続ける藤沢さんは、「(大きな災害時には)必ずこういった新しい取り組みが生まれている」と話す。
藤沢:東日本大震災の際に東北でもかなり多くの事業者が被災をしてしまい、1、2年は生産物の出荷が止まってしまうこともありました。そういったなかでもだんだん復興に向けて進んで行くのですが、復興が進む事業者と進まない事業者が大きく分かれるところがあります。復興が進む事業者は必ず新しい商品を作ったり、新しい販路を作ったりしています。反対にそれができていない事業者はなかなか売り上げが戻らないんです。
GAKU-MC:災害発生後は、地域の被災者同士が連携して新しい化学反応を起こして行くべきだということですね。
藤沢:そうですね。私たちは2018年の西日本豪雨の際に、愛媛県宇和島市で支援をおこないました。そこでは生産されているミカンが大きなダメージを受けたんです。そこで、これまでの売り方だとなかなか厳しいという状況から、インターネットを活用した新しいお客さんへの売り込みを始めました。そういったことをやることで、多くの方に宇和島市のミカンのおいしさを知ってもらい、その輪が広がっていく。被災地も工夫して、生産者と売り上げをあげる事業者などが連携して取り組みを進めています。
GAKU-MCは、被災前から地域の人同士が繋がり、日常的にアイデアの交換ができる環境にあることが重要だと語ると、藤沢さんもそれに同調する。
藤沢:災害が起きてから「はじめまして」となると、なかなか取り組みが進まないところがあるので、一刻も早く繋がりの動きを始めることが大切です。生産者と飲食店など、もともと地域で繋がりがあったところのほうが(復興が)早いんですよね。災害前から繋がりがあるかどうかで、その後に大きな差が出るところですね。
GAKU-MC:人との繋がりってなあなあにしがちなところがありますけど、普段から人と人とが尊重し合うべきだと、新型コロナウイルスの影響がある今だからこそあらためて考えさせられています。
現在、「花味たれかつ丼」を提供する「宝家」は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言などを受け、営業形態を一部変更。現在はテイクアウトを中心に営業を行っている。訪れる際には、「宝家」のフェイスブックページやホームページで確認してほしい。
・「宝家」フェイスブック
・「宝家」ホームページ
宝家も黒塀の倒壊や瓦が飛ぶなどの被害が出た。
■国に頼る前に地域同士でいち早く支援に入れるか
「ワンドロップファーム」の豊増さんは、今回の「復興×エールプロジェクト」を通して、災害への備えについて気づいたことがある。
豊増:やっぱり地域で顔が見えていること、顔が見えている信頼関係を続けていくことがセーフティーネットになっていくと思います。私たちがお世話になっている11の町会長さんは、みなさんそれぞれの集落の人たちを把握しているんですよね。それってすごく安心できると思います。災害時に、「あいつの家はこうなっているかもしれない」とか「あの人の家を助けに行こう」という会話が普通にできる。一方で、私たち農業会は農業会で「きっと彼のところは困っているに違いない」とか「こういうものを持っているから貸してあげた方がいいんじゃないか」というような会話が、顔が見える環境でできる。昨年のような災害は毎年起こると思っていなきゃいけないと考えているので、顔の見える人間関係があれば、ある程度乗り越えていけるのではないかと思っています。
豊増洋右さん
豊増さんの話から、藤沢さんは「地震、台風、豪雨、そして現在の感染症など、毎年のように何かが起きてしまうので、それを当たり前だと思って過ごさなくてはいけない」と言及する。
GAKU-MC:大切なのは地域の関係性における人間関係の構築だと実感しました。
藤沢:東日本大震災時で最も産業の復興が早かった地域は岩手県宮古市でした。その地域は震災前から行政の方が宮古市の会社の一軒一軒を把握していたので、災害が起きたときに「この会社の資金繰りが厳しいから、すぐに支援しないとダメだ」というようにわかっていたんです。だから、国が支援を決める前に宮古市独自の制度で資金繰りを支えることもできました。やはり国に頼っても、国は地域のことがわからないので、地域の方々がちゃんと連携して、国に頼る前にいち早く支援に入れるか。これがとても大事ですね。
GAKU-MC:とは言っても、都市部に住む人たちは近所付き合いも少ない場合もありますよね。
藤沢:これは都市部に限らず、地方もどんどん高齢化が進み、以前より人との繋がりが弱くなっています。そのため、外から若い人が住み始め、新しい関係作りをしていくことが重要です。地方でもインターネット環境が当たり前になってきているので、顔を合わせる環境と、新しいやり方で関係を作ることの両軸をやらないと、地方と言えど関係性がなくなっています。
GAKU-MCは、番組をリモートで放送することも、今までとは違うやり方で人と繋がれる方法だと実感したという。
GAKU-MC:新型コロナウイルスの登場によって、できることを探しながら人との繋がりは続けていけることを僕らは教わったような気がします。
藤沢:地方でインターネットを使える方が、すごく活動の幅が広がったと話していました。地方に居ながらにして東京の人とも連携できるようになっていますので、この状況を前向きに捉えた新しい関係作りや新しい仕事の仕方が生まれているように感じています。
番組では他にも、昨年の台風発生から千葉でボランティア活動を続けている「ピースボート災害ボランティアセンター」の上野祥法さんや、被災した農産物を流通、加工まで繋げた一般社団法人「野菜がつくる未来のカタチ」の鳥海孝範さんの取材を紹介する場面もあった。
GAKU-MCは「今こんな時期だから、あらためて僕らがやるべきこと、見るべき未来を再確認させてもらえた」と、この日の放送を振り返った。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月24日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
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