J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。5月9日(土)のオンエアでは、ミュージシャンの高野 寛が登場。新型コロナウイルス感染症の影響によって生まれた新しいプログラム「新生音楽」や、自身が影響を受けたYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の魅力について語った。今回のオンエアは今の状況を鑑みてリモートで収録された。
■逆境から生まれたライブストリーミングプログラム「新生音楽」
新型コロナウイルス感染症の影響でライブの延期や中止など、活動自粛が続く中、3月から高野はライブストリーミングプログラム「新生音楽(シンライブ)」をおこなっている。
高野:ライブの自粛要請が始まったあとにブログでその思いを綴ったんですね。ミュージシャンにとっては、本当にどうしたらいいのかわからないような事態だったんですけど、そこでできることをやろうと。
その思いに共感した映像制作ユニット「GRAPHERS' GROUP」 の石原淳平が高野に連絡。「いま自分がやりたいと思っていることがあるから、ぜひ協力してくれないか」と相談を受け、「新生音楽」が生まれた。
「新生音楽」の初回は、高野とクラムボン・原田郁子によるスタジオライブを配信。4月には「MUSIC AT HOME」と題して、高野と緒川たまきがMCを務め、曽我部恵一、七尾旅人、鈴木慶一など15名を超えるミュージシャンが自宅で撮った映像を配信した。
高野:ライブが中止になってきて、みんなが無観客配信ライブを始めた時期に「新生音楽」の初回を配信しました。せっかくならいい音といい映像を届けたいと思って、レコーディングスタジオから原田さんと配信しました。その後、たくさんの人がスタジオに集まることもままならない状況になってきたので、2回目はそれぞれのミュージシャンに自撮り動画を送ってもらいました。最近SNSで投稿されるような細切れで1曲を聴くのではなくて、じっくり1時間以上にわたり音楽に浸る時間を作ってみるのもいいんじゃないかと思って、やってみました。
市川:短い動画はいっぱいありますけど、長い動画でゆっくり聴きたいですよね。
高野:そう。夜にちょっと明かりを消して、時にはお酒でも飲みながら聴くのもいいかなって感じで2回目をやりました。
■いまミュージシャンは根源的なことを問われている
高野は2020年の間に録音したギターと歌だけで構成される未発表音源を集めたアルバム『歌とギター』を4月に配信リリース。新型コロナウイルス感染拡大の影響で営業を自粛しているライブハウスなどの施設を支援する企画「Save Our Place」の一環で発表された。
高野:このアルバは1カ月も準備期間がないくらいで制作しました。いまライブハウスとか音楽業界でいろいろと苦しんでいる関係者を支援するイベントがあるんですけど、僕もお世話になった人たちに少しでも恩返しがしたいなと思いました。いままでためていた音源もあったので、そこに録り下ろし音源も加えて、この企画に参加しました。
市川:新型コロナウイルス感染症の影響はミュージシャンにとってどんな意味を持っていると感じていますか?
高野:本当に考えさせられますよね。おそらく作り手はなんのために、どういう気持ちで音楽をやっているのか、これから続けていくのかという根源的なことを問われているような気がします。テレビとかネットを見続けていると、ちょっと不安になってくるじゃないですか。そういうときに一度自分をオフラインにして音楽を聴いたり作ったり練習をしたりするだけで、音楽で自分が救われていく気持ちも味わっているんです。だから、音楽は何かの助けにはなる。心のサプリみたいなものになるのであれば、自分たちのやっていることには意味があるんじゃないかなと、それを自問自答しているところです。
いま“エンターテインメント”は必要不可欠ではないのではないか、という問いが出てしまう傾向にあり、「もしかしたらアートが問われる時代なのかも知れない」と高野は言う。
高野:アートって本当の意味で人生の根本を揺さぶるようなこともあるわけで、そんなことを日々自問自答しながら、いろいろと制作したり発信したりしているところです。
番組では、4月にリリースした『STAY Hiroshi Takano with Michael Kaneko』をオンエアした(再生はradikoで2020年5月16日28時59分まで)。
■YMOが辿ってきた道を無意識に追いかけている
2018年にデビュー30周年を迎えた高野。青春時代にYMOから影響を受けていたこともあり、「YMOのみなさんが辿ってきた道を無意識に追いかけているところがある」と話す。
高野:YMOは変わった存在で、インストが中心なのに大ヒットしたし、メンバー3人ともプロデューサーであり、ソロアーティストであり、ときには歌も歌い、でも楽器の達人でもあるという、いろんな顔がある人たちですよね。一般的な歌手とは違うから、正直わかりにくいところもあると思うんです。僕はそこの影響を受けてしまったがゆえに、自分の立ち位置がわかりにくくなっている部分もあるのかな、なんて思います。
市川:自然とYMOの背中を追うようになったんですね。
高野:生まれた瞬間に見た動くものを親だと思ってしまうような感じですね(笑)。
YMO結成40周年を記念し、2019年3月に開催されたトリビュート・コンサート「Yellow Magic Children ~40年後のYMOの遺伝子」で高野はバンド・マスターを、その公演を収めたライブ盤『Yellow Magic Children #1』でミックスを担当した。
市川:YMOの影響は現代にどう響いていると思いますか?
高野:僕らが感じている以上にYMOは海外での影響がすごく大きいみたいで、ヒップホップとかハウスミュージック、テクノはほぼYMOのフォロワーから成り立っているし、今はスマホにも音楽制作ソフトが入っていますけど、もしかしたらそういうものが発展したのもYMOの影響なのかもしれません。
オンエア当日の朝、高野はふとYMOが頭に浮かんだという。
高野:YMOのセカンドアルバムは『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』ってタイトルなんですよ。これって今の自分たちだなって思うんです。在宅でネットを使って仕事をして生きていこうって。
市川:本当だ!
高野:それを40年以上も前のアルバムタイトルにするってすごいなと。今と同じビジョンではないと思うんだけど、予言めいてるなと思って。
市川:残るものって時代によってそのときに解釈ができますよね。
高野:そうですね。自然と解釈が新しくなっていくというか。タイムレスであり、その時代ごとに違う響きを持つことが、本当の意味での深い表現なのかなと思っています。
■自分のやるべきことはまだまだ探せる
今後の活動について、高野はこれからも「新生音楽」はなるべく月1回のペースで配信したいと意気込む。
高野:とはいえ、刻一刻と状況は変わっていくじゃないですか。「新生音楽」は「新しく生まれる音楽」「新しい生音楽」がコンセプトであり、それくらい大上段に構えたからには、みんなが新鮮に感じるようなものをやりたいという志があります。よく動画で見かける感じではなくて、何か新しいことをやりたいなといつも思っています。
「混沌とした時期ではあるけど、もしかしたら何か新しい可能性も見つけられるんじゃないか」と期待しつつ、「今はいろんなことを調べたりしながら活動を続けている」と高野は続ける。
高野:ずっと自宅で録音するスタイルでやっているけど、不便は不便なんですよ(笑)。昔からそういう制約の中でやることを続けているので、DIY精神で乗り切るしかないけど、しばらくは宅録魂を発揮してやっていくしかないですね。自分のやるべきことはまだまだ探せるんじゃないか、という思いはいつもあるから、不便な状況を楽しむ気持ちでやっています。
また、「こんなに世界中の人が世界のことを見守りながら暮らしていたことっておそらくなかった」と語る。
高野:戦争のときとかもそういう気持ちがあったかもしれないけど、その状況とは違い、今は逐一いろんな映像とか情報が入ってくる。その中で、みんなが地球規模で物事を考え始めているじゃないですか。だから、そこから進化っていうと大げさかも知れないけど、人間の意識が変わっていくようなことがあるといいなと思います。
市川:今はこれまでにないような世界規模の一体感があるので、それを無駄にしたくはないですよね。
高野:音楽で言えば、日本の音楽ってまだ世界に知られていない部分があるので、もっと日本の音楽が世界に届くといいなという気持ちがありますね。
高野が「新生音楽」で届ける「新しく生まれる音楽」、「新しい生音楽」をぜひ体感してほしい。詳しくは公式サイトから。
J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』では、革新的な活動によって各界を牽引する人をゲストに迎え、現在の活動についてはもちろん、これまでどのような時を歩んできたのか、そしてこれから先はどのようなビジョンに向かって時を進めていくのかに迫る。放送は毎週土曜の21時から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月16日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/
■逆境から生まれたライブストリーミングプログラム「新生音楽」
新型コロナウイルス感染症の影響でライブの延期や中止など、活動自粛が続く中、3月から高野はライブストリーミングプログラム「新生音楽(シンライブ)」をおこなっている。
高野:ライブの自粛要請が始まったあとにブログでその思いを綴ったんですね。ミュージシャンにとっては、本当にどうしたらいいのかわからないような事態だったんですけど、そこでできることをやろうと。
その思いに共感した映像制作ユニット「GRAPHERS' GROUP」 の石原淳平が高野に連絡。「いま自分がやりたいと思っていることがあるから、ぜひ協力してくれないか」と相談を受け、「新生音楽」が生まれた。
「新生音楽」の初回は、高野とクラムボン・原田郁子によるスタジオライブを配信。4月には「MUSIC AT HOME」と題して、高野と緒川たまきがMCを務め、曽我部恵一、七尾旅人、鈴木慶一など15名を超えるミュージシャンが自宅で撮った映像を配信した。
高野:ライブが中止になってきて、みんなが無観客配信ライブを始めた時期に「新生音楽」の初回を配信しました。せっかくならいい音といい映像を届けたいと思って、レコーディングスタジオから原田さんと配信しました。その後、たくさんの人がスタジオに集まることもままならない状況になってきたので、2回目はそれぞれのミュージシャンに自撮り動画を送ってもらいました。最近SNSで投稿されるような細切れで1曲を聴くのではなくて、じっくり1時間以上にわたり音楽に浸る時間を作ってみるのもいいんじゃないかと思って、やってみました。
市川:短い動画はいっぱいありますけど、長い動画でゆっくり聴きたいですよね。
高野:そう。夜にちょっと明かりを消して、時にはお酒でも飲みながら聴くのもいいかなって感じで2回目をやりました。
■いまミュージシャンは根源的なことを問われている
高野は2020年の間に録音したギターと歌だけで構成される未発表音源を集めたアルバム『歌とギター』を4月に配信リリース。新型コロナウイルス感染拡大の影響で営業を自粛しているライブハウスなどの施設を支援する企画「Save Our Place」の一環で発表された。
高野:このアルバは1カ月も準備期間がないくらいで制作しました。いまライブハウスとか音楽業界でいろいろと苦しんでいる関係者を支援するイベントがあるんですけど、僕もお世話になった人たちに少しでも恩返しがしたいなと思いました。いままでためていた音源もあったので、そこに録り下ろし音源も加えて、この企画に参加しました。
市川:新型コロナウイルス感染症の影響はミュージシャンにとってどんな意味を持っていると感じていますか?
高野:本当に考えさせられますよね。おそらく作り手はなんのために、どういう気持ちで音楽をやっているのか、これから続けていくのかという根源的なことを問われているような気がします。テレビとかネットを見続けていると、ちょっと不安になってくるじゃないですか。そういうときに一度自分をオフラインにして音楽を聴いたり作ったり練習をしたりするだけで、音楽で自分が救われていく気持ちも味わっているんです。だから、音楽は何かの助けにはなる。心のサプリみたいなものになるのであれば、自分たちのやっていることには意味があるんじゃないかなと、それを自問自答しているところです。
いま“エンターテインメント”は必要不可欠ではないのではないか、という問いが出てしまう傾向にあり、「もしかしたらアートが問われる時代なのかも知れない」と高野は言う。
高野:アートって本当の意味で人生の根本を揺さぶるようなこともあるわけで、そんなことを日々自問自答しながら、いろいろと制作したり発信したりしているところです。
番組では、4月にリリースした『STAY Hiroshi Takano with Michael Kaneko』をオンエアした(再生はradikoで2020年5月16日28時59分まで)。
■YMOが辿ってきた道を無意識に追いかけている
2018年にデビュー30周年を迎えた高野。青春時代にYMOから影響を受けていたこともあり、「YMOのみなさんが辿ってきた道を無意識に追いかけているところがある」と話す。
高野:YMOは変わった存在で、インストが中心なのに大ヒットしたし、メンバー3人ともプロデューサーであり、ソロアーティストであり、ときには歌も歌い、でも楽器の達人でもあるという、いろんな顔がある人たちですよね。一般的な歌手とは違うから、正直わかりにくいところもあると思うんです。僕はそこの影響を受けてしまったがゆえに、自分の立ち位置がわかりにくくなっている部分もあるのかな、なんて思います。
市川:自然とYMOの背中を追うようになったんですね。
高野:生まれた瞬間に見た動くものを親だと思ってしまうような感じですね(笑)。
YMO結成40周年を記念し、2019年3月に開催されたトリビュート・コンサート「Yellow Magic Children ~40年後のYMOの遺伝子」で高野はバンド・マスターを、その公演を収めたライブ盤『Yellow Magic Children #1』でミックスを担当した。
市川:YMOの影響は現代にどう響いていると思いますか?
高野:僕らが感じている以上にYMOは海外での影響がすごく大きいみたいで、ヒップホップとかハウスミュージック、テクノはほぼYMOのフォロワーから成り立っているし、今はスマホにも音楽制作ソフトが入っていますけど、もしかしたらそういうものが発展したのもYMOの影響なのかもしれません。
オンエア当日の朝、高野はふとYMOが頭に浮かんだという。
高野:YMOのセカンドアルバムは『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』ってタイトルなんですよ。これって今の自分たちだなって思うんです。在宅でネットを使って仕事をして生きていこうって。
市川:本当だ!
高野:それを40年以上も前のアルバムタイトルにするってすごいなと。今と同じビジョンではないと思うんだけど、予言めいてるなと思って。
市川:残るものって時代によってそのときに解釈ができますよね。
高野:そうですね。自然と解釈が新しくなっていくというか。タイムレスであり、その時代ごとに違う響きを持つことが、本当の意味での深い表現なのかなと思っています。
■自分のやるべきことはまだまだ探せる
今後の活動について、高野はこれからも「新生音楽」はなるべく月1回のペースで配信したいと意気込む。
高野:とはいえ、刻一刻と状況は変わっていくじゃないですか。「新生音楽」は「新しく生まれる音楽」「新しい生音楽」がコンセプトであり、それくらい大上段に構えたからには、みんなが新鮮に感じるようなものをやりたいという志があります。よく動画で見かける感じではなくて、何か新しいことをやりたいなといつも思っています。
「混沌とした時期ではあるけど、もしかしたら何か新しい可能性も見つけられるんじゃないか」と期待しつつ、「今はいろんなことを調べたりしながら活動を続けている」と高野は続ける。
高野:ずっと自宅で録音するスタイルでやっているけど、不便は不便なんですよ(笑)。昔からそういう制約の中でやることを続けているので、DIY精神で乗り切るしかないけど、しばらくは宅録魂を発揮してやっていくしかないですね。自分のやるべきことはまだまだ探せるんじゃないか、という思いはいつもあるから、不便な状況を楽しむ気持ちでやっています。
また、「こんなに世界中の人が世界のことを見守りながら暮らしていたことっておそらくなかった」と語る。
高野:戦争のときとかもそういう気持ちがあったかもしれないけど、その状況とは違い、今は逐一いろんな映像とか情報が入ってくる。その中で、みんなが地球規模で物事を考え始めているじゃないですか。だから、そこから進化っていうと大げさかも知れないけど、人間の意識が変わっていくようなことがあるといいなと思います。
市川:今はこれまでにないような世界規模の一体感があるので、それを無駄にしたくはないですよね。
高野:音楽で言えば、日本の音楽ってまだ世界に知られていない部分があるので、もっと日本の音楽が世界に届くといいなという気持ちがありますね。
高野が「新生音楽」で届ける「新しく生まれる音楽」、「新しい生音楽」をぜひ体感してほしい。詳しくは公式サイトから。
J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』では、革新的な活動によって各界を牽引する人をゲストに迎え、現在の活動についてはもちろん、これまでどのような時を歩んできたのか、そしてこれから先はどのようなビジョンに向かって時を進めていくのかに迫る。放送は毎週土曜の21時から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月16日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/
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