関西のラジオDJとして活躍するヒロ寺平。FM802の開局当初から看板DJとして親しまれ、2013年からはFM COCOLOに移った。そんな寺平が、9月末をもってラジオDJを引退する。そこには、どんな思いがあるのか? クリス・ペプラーがナビゲーターを務めるJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』にて、音楽に囲まれた人生や、引退の理由、ラジオ業界への思いを語った。オンエアは9月7日(土)。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年9月14日28時59分まで)
■生まれたときから音楽漬けの日々だった
大阪生まれ大阪育ちの寺平。実家がレコード屋を営んでいたこともあり、「生まれたときから音楽しか聴いてこなかった」という。
寺平:昭和26年生まれの僕の世代は、まずはThe Venturesにパンチを喰らって、その後すぐにThe Beatlesが追いかけてきた。みんな学校の掃除の時間にほうきを持って「俺がポールだ」とか、「俺がジョンだ」とかやってましたね。
当時放送されていたテレビの音楽番組に出たいという憧れからエレキギターを弾き始めたが、あまり上達はせず、高校に入学する際に楽器を変えることにした。
寺平:高校にいる女の子に「バンドしようと思ってるんだけど、どの楽器がカッコいい?」と訊いたら、みんな「ドラム」と答えたんです。
クリス:えっ、ドラム?
寺平:僕はその言葉を鵜呑みにしてドラムを始めたんです。ギターは持って歩けるけど、ドラムは機材が多くて持ち運ぶのが大変で。そのときはドラムボーカルをしていました。これをやったことで、リズム感がすごく培われましたね。
■全曲をハミングできるほど影響を受けた1枚
寺平が影響を受けた音楽は、Al Kooper,Mike Bloomfield,Steve Stillsが連名で発表したアルバム『Super Session』だ。
寺平:このレコ--ドのA面はMike Bloomfieldがやって、B面はSteve Stills、そしてAl Kooperは全編に入っている。面白いのは、Mike Bloomfieldはギブソン系のハムバッキングの人で、Steve Stillsはフェンダーのシングルコイルの音だった。この分厚い音と薄い音の違いが大好きで、今でもアルバムの全曲をハミングできるほどです。
Al Kooperが所属したロックバンド・Blood, Sweat And Tearsも大好きだそう。
寺平:僕はこのバンドには本当に入り込みました。僕は1975年から77年までカナダのバンクーバーで生活していて、そのときにキャバレーでBlood, Sweat And Tearsがライブをしたんです。だから、ものすごくステージが近くて、目の前でDavid Clayton-Thomasが歌っている光景は今でも忘れないです。
■ラジオDJを引退「業界全体に危機意識を持ってほしかった」
寺平がラジオDJを引退するというニュースは、業界関係者やファンに大きな衝撃を与えた。クリスもそのひとりだ。
クリス:僕も衝撃を受けたんですけど......なぜですか?
寺平:6月3日に自分の番組で引退表明をしたとき、僕は全ての言霊を置いたつもりなんです。だから、同じことを何度も言うつもりはないんだけど、総括して言うとしたら、いろんな意味で潮目が変わってきた。同時に、僕自身はひとりの人間でしかないのに、あまりにもラジオを背負い込みすぎていた。いきなり決めたのではなく、今年の初めくらいに、「そろそろ潮時かな」と。考えてみたら、今年で68歳になるんですけど、まだ元気だし、スポーツも大好きだし、それを今なら100パーセント楽しみながらやっていけるバイタリティーもある。背負い込みすぎているものを一度下ろして、ラジオ以外できることは何なのかという可能性を探し求めるために、これから10年くらい、いろんなことをしたいなと思ったんですよね。
「潮目が変わってきた」とは、どういう意味なのだろうか。
寺平:みんなの向かっている方角が、このままではよくないんじゃないかと。ラジオはあくまで広告ベースだから、お金は稼いでこなくてはいけないメディアではあるけど、稼ぐためだったら何でもいいのか、と感じるようになって。
クリス:僕もそれは感じます。ラジオ自体が強迫観念みたいなものを感じているような気がします。インターネットをはじめ、いろいろな媒体があるし、「若い人はこうだから」みたいなこともある。でも、それは時代が変わるわけだから仕方がないこと。当たり前のことって考えなくなるけど、僕は当たり前のことだからこそ、「なぜこんなことをやってるんだろう」って常に考えないといけないと思う。この2019年に我々がやっているラジオを一度分解してみたり、僕はそういう風に整理することを心掛けているんです。そういう再確認がラジオには必要なのかなと思います。
寺平は、自身が引退発表をすることで、ラジオ業界全体に危機意識を持ってほしかったとも話す。
寺平:以前のようにラジオを聴いてくれる人を広げていくことはすごく難しい。でも、今ラジオを聴いてくれているすごくいいリスナーはたくさんいるから、少なくともその人たちがラジオから離れてほしくない。その人たちにずっとラジオを聴き続けてもらいたい。
さらに寺平は、「フィジカルなものがなくなって、ダウンロードビジネスがはびこっても、ラジオは声があるから間違いなくヒューマンメディアだ」と語気を強める。
寺平:この有機質なものは絶対に永らえるはず。だけど、今の状況のまま安易な気持ちで「ここにお金があるから、これを捕まえて」というカタチでラジオが前に進んだら、確実に先は細くなっていく。引退は大阪のいちラジオ局で発表したけど、僕は日本全国のラジオというメディアに対して、ひと言もの申して看板を下ろすことを決めたんです。
音楽談義に始まり、ラジオの未来まで語った1時間。寺平の意思をたっぷり受け取った様子のクリスだった。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『SAPPORO BEER OTOAJITO』
放送日時:毎週土曜 18時-18時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/
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■生まれたときから音楽漬けの日々だった
大阪生まれ大阪育ちの寺平。実家がレコード屋を営んでいたこともあり、「生まれたときから音楽しか聴いてこなかった」という。
寺平:昭和26年生まれの僕の世代は、まずはThe Venturesにパンチを喰らって、その後すぐにThe Beatlesが追いかけてきた。みんな学校の掃除の時間にほうきを持って「俺がポールだ」とか、「俺がジョンだ」とかやってましたね。
当時放送されていたテレビの音楽番組に出たいという憧れからエレキギターを弾き始めたが、あまり上達はせず、高校に入学する際に楽器を変えることにした。
寺平:高校にいる女の子に「バンドしようと思ってるんだけど、どの楽器がカッコいい?」と訊いたら、みんな「ドラム」と答えたんです。
クリス:えっ、ドラム?
寺平:僕はその言葉を鵜呑みにしてドラムを始めたんです。ギターは持って歩けるけど、ドラムは機材が多くて持ち運ぶのが大変で。そのときはドラムボーカルをしていました。これをやったことで、リズム感がすごく培われましたね。
■全曲をハミングできるほど影響を受けた1枚
寺平が影響を受けた音楽は、Al Kooper,Mike Bloomfield,Steve Stillsが連名で発表したアルバム『Super Session』だ。
寺平:このレコ--ドのA面はMike Bloomfieldがやって、B面はSteve Stills、そしてAl Kooperは全編に入っている。面白いのは、Mike Bloomfieldはギブソン系のハムバッキングの人で、Steve Stillsはフェンダーのシングルコイルの音だった。この分厚い音と薄い音の違いが大好きで、今でもアルバムの全曲をハミングできるほどです。
Al Kooperが所属したロックバンド・Blood, Sweat And Tearsも大好きだそう。
寺平:僕はこのバンドには本当に入り込みました。僕は1975年から77年までカナダのバンクーバーで生活していて、そのときにキャバレーでBlood, Sweat And Tearsがライブをしたんです。だから、ものすごくステージが近くて、目の前でDavid Clayton-Thomasが歌っている光景は今でも忘れないです。
■ラジオDJを引退「業界全体に危機意識を持ってほしかった」
寺平がラジオDJを引退するというニュースは、業界関係者やファンに大きな衝撃を与えた。クリスもそのひとりだ。
クリス:僕も衝撃を受けたんですけど......なぜですか?
寺平:6月3日に自分の番組で引退表明をしたとき、僕は全ての言霊を置いたつもりなんです。だから、同じことを何度も言うつもりはないんだけど、総括して言うとしたら、いろんな意味で潮目が変わってきた。同時に、僕自身はひとりの人間でしかないのに、あまりにもラジオを背負い込みすぎていた。いきなり決めたのではなく、今年の初めくらいに、「そろそろ潮時かな」と。考えてみたら、今年で68歳になるんですけど、まだ元気だし、スポーツも大好きだし、それを今なら100パーセント楽しみながらやっていけるバイタリティーもある。背負い込みすぎているものを一度下ろして、ラジオ以外できることは何なのかという可能性を探し求めるために、これから10年くらい、いろんなことをしたいなと思ったんですよね。
「潮目が変わってきた」とは、どういう意味なのだろうか。
寺平:みんなの向かっている方角が、このままではよくないんじゃないかと。ラジオはあくまで広告ベースだから、お金は稼いでこなくてはいけないメディアではあるけど、稼ぐためだったら何でもいいのか、と感じるようになって。
クリス:僕もそれは感じます。ラジオ自体が強迫観念みたいなものを感じているような気がします。インターネットをはじめ、いろいろな媒体があるし、「若い人はこうだから」みたいなこともある。でも、それは時代が変わるわけだから仕方がないこと。当たり前のことって考えなくなるけど、僕は当たり前のことだからこそ、「なぜこんなことをやってるんだろう」って常に考えないといけないと思う。この2019年に我々がやっているラジオを一度分解してみたり、僕はそういう風に整理することを心掛けているんです。そういう再確認がラジオには必要なのかなと思います。
寺平は、自身が引退発表をすることで、ラジオ業界全体に危機意識を持ってほしかったとも話す。
寺平:以前のようにラジオを聴いてくれる人を広げていくことはすごく難しい。でも、今ラジオを聴いてくれているすごくいいリスナーはたくさんいるから、少なくともその人たちがラジオから離れてほしくない。その人たちにずっとラジオを聴き続けてもらいたい。
さらに寺平は、「フィジカルなものがなくなって、ダウンロードビジネスがはびこっても、ラジオは声があるから間違いなくヒューマンメディアだ」と語気を強める。
寺平:この有機質なものは絶対に永らえるはず。だけど、今の状況のまま安易な気持ちで「ここにお金があるから、これを捕まえて」というカタチでラジオが前に進んだら、確実に先は細くなっていく。引退は大阪のいちラジオ局で発表したけど、僕は日本全国のラジオというメディアに対して、ひと言もの申して看板を下ろすことを決めたんです。
音楽談義に始まり、ラジオの未来まで語った1時間。寺平の意思をたっぷり受け取った様子のクリスだった。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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番組名:『SAPPORO BEER OTOAJITO』
放送日時:毎週土曜 18時-18時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/