J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組は【Listen to the Magazine, Reading the Radio 雑誌を聴く、ラジオを読む。】をコンセプトに、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動しながらお届け。
9月14日(土)は、『SWITCH』編集長・新井敏記による、是枝裕和へのインタビューの模様をオンエアした。
■樹木希林に「駄目なのね。あなた」と言われたくない
9月15日(日)で、女優の樹木希林さん(享年75)が亡くなってから1年を迎えた。樹木さんは、是枝監督作品のうち『歩いても 歩いても』『奇跡』『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』『万引き家族』の6作品に出演。是枝は「とてもいい時間を過ごさせてもらいました」と、樹木さんと過ごした日々を振り返る。
是枝:上手く言えないですけど「育ててもらった」という感じがしますね。監督って、現場のピラミッドの頂点に立とうと思えば立てちゃうから、わがままに振る舞おうと思えば振る舞えちゃう危険性があるんです。だけど、希林さんのような人が現場にいてくれると歯止めになるというか、ちゃんとした人間でいたいとか、ちゃんとした監督でありたいとか......「駄目なのね。あなた」と言われたくないという(笑)。そういう思いが常にありました。
新井:それは母であり、お姉さんであり、恋人でもあり。
是枝:認めてほしい、褒められたいというのとはちょっと違うんですけど、彼女の前では「ちゃんとした監督でありたいな」と常に思っていました。
新井:「ちゃんとした監督」というのは?
是枝:常に前作を上回る成長を見せていくということと、一切手を抜かずにきちんと役者の芝居を見て、見極めて指示を出し、選択をする......厳しいですね(笑)。
樹木さんとの思い出を振り返った是枝監督の最新作が、第76回ヴェネチア国際映画祭(8月27日から9月7日開催)でオープニング作品に選出された『真実』だ。国民的大女優ファビエンヌが、自伝本『真実』を出版。それを祝うために集まった家族だが、次第に母と娘の間に隠された「真実」が露になっていく......というあらすじだ。
主演を務めるのは、フランスが誇るオスカー女優のカトリーヌ・ドヌーヴ(75)。樹木さんが亡くなったのと同じ年齢だった。是枝は『真実』の撮影中、ふたりを重ねてしまうことはなかったのだろうか。
是枝:映画を観た方に「カトリーヌ・ドヌーヴが樹木希林に見えたよ」と言われることがあって。確かに自分で観ていてもそういう瞬間がなくはないんですけど......。
新井:例えば、どういう瞬間ですか?
是枝:「人の生き死に」に関して、ちょっと暴力的な冗談を言う辺りとか、ちょっとしたシニカルな笑いとか、男に対する毒の吐き方だったり......別に「希林さんみたいにやってください」って言ってないんですよ。でも、書いているのが僕だから、その部分が似てきてるのかなという気もしないでもないですけど、不思議だなと思いました。
■「すごい演出家だな」と感じた樹木の最期
是枝は『万引き家族』での樹木さんについて、「オファーしたときは病気だということを忘れるくらい元気だった。そのときはあまり深く考えずに亡くなる役をお願いして、『いいわよ』と引き受けてくれました」と振り返る。
新井:是枝さんと希林さんは、今までは脚本をちゃんと読んで役を引き受けたり固辞したりというやり取りをされましたけど、『万引き家族』に関してだけは、脚本ができないまま、ふたつ返事で希林さんが引き受けられたという話を聞きました。ご自身のなかで死というものを希林さんが読み取っていたんでしょうか?
是枝:それはわからないですね。
新井:是枝さんと最後の映画を作ろうという意思ではあるんですかね?
是枝:引き受けられたときに「これが最後」と思っていたかは定かではないですけど、撮影が始まって12月に撮影所で記者会見を開いたときに「監督とはこれが最後になるので」という言い方をされていて、不思議な感じはしたんです。どこかしら、そのあたりから彼女が選んでいる作品を観ると、なんとなく終活に入りながら、どんな作品を最後に演っていこうかな、という考えを持たれていたのかもしれません。
是枝は、樹木希林さんが亡くなる年の3月末に「"年内"と余命宣告されたので終活に入ります」と告げられた。「それから5ヶ月ちょっとですか。本当に自分でそこに向かって準備されてく状態だったので......。すごい演出家だなと思いました」と振り返った。
監督最新作『真実』公開直後の『RADIO SWITCH』(10月19日(土)オンエア)でも、再び是枝監督へのインタビューの模様をオンエアする。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜 23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/
9月14日(土)は、『SWITCH』編集長・新井敏記による、是枝裕和へのインタビューの模様をオンエアした。
■樹木希林に「駄目なのね。あなた」と言われたくない
9月15日(日)で、女優の樹木希林さん(享年75)が亡くなってから1年を迎えた。樹木さんは、是枝監督作品のうち『歩いても 歩いても』『奇跡』『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』『万引き家族』の6作品に出演。是枝は「とてもいい時間を過ごさせてもらいました」と、樹木さんと過ごした日々を振り返る。
是枝:上手く言えないですけど「育ててもらった」という感じがしますね。監督って、現場のピラミッドの頂点に立とうと思えば立てちゃうから、わがままに振る舞おうと思えば振る舞えちゃう危険性があるんです。だけど、希林さんのような人が現場にいてくれると歯止めになるというか、ちゃんとした人間でいたいとか、ちゃんとした監督でありたいとか......「駄目なのね。あなた」と言われたくないという(笑)。そういう思いが常にありました。
新井:それは母であり、お姉さんであり、恋人でもあり。
是枝:認めてほしい、褒められたいというのとはちょっと違うんですけど、彼女の前では「ちゃんとした監督でありたいな」と常に思っていました。
新井:「ちゃんとした監督」というのは?
是枝:常に前作を上回る成長を見せていくということと、一切手を抜かずにきちんと役者の芝居を見て、見極めて指示を出し、選択をする......厳しいですね(笑)。
樹木さんとの思い出を振り返った是枝監督の最新作が、第76回ヴェネチア国際映画祭(8月27日から9月7日開催)でオープニング作品に選出された『真実』だ。国民的大女優ファビエンヌが、自伝本『真実』を出版。それを祝うために集まった家族だが、次第に母と娘の間に隠された「真実」が露になっていく......というあらすじだ。
主演を務めるのは、フランスが誇るオスカー女優のカトリーヌ・ドヌーヴ(75)。樹木さんが亡くなったのと同じ年齢だった。是枝は『真実』の撮影中、ふたりを重ねてしまうことはなかったのだろうか。
是枝:映画を観た方に「カトリーヌ・ドヌーヴが樹木希林に見えたよ」と言われることがあって。確かに自分で観ていてもそういう瞬間がなくはないんですけど......。
新井:例えば、どういう瞬間ですか?
是枝:「人の生き死に」に関して、ちょっと暴力的な冗談を言う辺りとか、ちょっとしたシニカルな笑いとか、男に対する毒の吐き方だったり......別に「希林さんみたいにやってください」って言ってないんですよ。でも、書いているのが僕だから、その部分が似てきてるのかなという気もしないでもないですけど、不思議だなと思いました。
■「すごい演出家だな」と感じた樹木の最期
是枝は『万引き家族』での樹木さんについて、「オファーしたときは病気だということを忘れるくらい元気だった。そのときはあまり深く考えずに亡くなる役をお願いして、『いいわよ』と引き受けてくれました」と振り返る。
新井:是枝さんと希林さんは、今までは脚本をちゃんと読んで役を引き受けたり固辞したりというやり取りをされましたけど、『万引き家族』に関してだけは、脚本ができないまま、ふたつ返事で希林さんが引き受けられたという話を聞きました。ご自身のなかで死というものを希林さんが読み取っていたんでしょうか?
是枝:それはわからないですね。
新井:是枝さんと最後の映画を作ろうという意思ではあるんですかね?
是枝:引き受けられたときに「これが最後」と思っていたかは定かではないですけど、撮影が始まって12月に撮影所で記者会見を開いたときに「監督とはこれが最後になるので」という言い方をされていて、不思議な感じはしたんです。どこかしら、そのあたりから彼女が選んでいる作品を観ると、なんとなく終活に入りながら、どんな作品を最後に演っていこうかな、という考えを持たれていたのかもしれません。
是枝は、樹木希林さんが亡くなる年の3月末に「"年内"と余命宣告されたので終活に入ります」と告げられた。「それから5ヶ月ちょっとですか。本当に自分でそこに向かって準備されてく状態だったので......。すごい演出家だなと思いました」と振り返った。
監督最新作『真実』公開直後の『RADIO SWITCH』(10月19日(土)オンエア)でも、再び是枝監督へのインタビューの模様をオンエアする。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜 23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/
【是枝裕和『希林さんといっしょに。』9/15発売】
— SWITCH (@switch_pub) September 10, 2019
是枝裕和の眼と、
樹木希林の眼が「合った」ことは、
もはや事件だ。
----内田也哉子
ご予約・詳細は▷https://t.co/elhF2k65br
写真:川内倫子 @hkoreeda #SWITCH pic.twitter.com/XFh6L50Qfb