Cocco、歌に疲れて「もう音楽はやらない」と決めても...新作が生まれた経緯

J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組は【Listen to the Magazine, Reading the Radio 雑誌を聴く、ラジオを読む。】をコンセプトに、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動しながらお届け。

10月5日(土)のオンエアでは、『SWITCH』編集長・新井敏記による、Coccoへのインタビューの模様をオンエアした。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月12日28時59分まで)


■デビュー20周年を迎えて、ファンに「許された」と感じた瞬間

Coccoは、15年ぶり3冊目の絵本『みなみのしまのはなのいろ』も刊行し、3年ぶり10枚目のアルバム『スターシャンク』もリリースした。

新井:アルバムタイトルの『スターシャンク』ってどういう意味?
Cocco:アクセサリーの作り方を習ったときに「シャンク」という技法を習ったんです。それが人生の繋ぎ方のようなイメージだった。光を繋いで、人生は続くでしょ。だから、「みんなの光を繋いで生きていこう」というイメージで『スターシャンク』にしました。

Coccoは、2017年にデビュー20周年記念ライブを日本武道館で2日間開催。1日目はそれまでのCoccoを支えてきたアーティストたち、2日目はその当時のCoccoの作品やライブに参加していたアーティストと共にステージに立った。新井は、この2日間のライブが非常に感動的なものだったと、Coccoに告げた。

Cocco:20周年を迎えて、達成感とはちょっと違うけど、Coccoを今まで見守ってくれた人たちと和解が成立したというか。お互いに「もう大丈夫かな」って確認が取れた気がした。
新井:Cocco自身がライブで「もう大丈夫だよね?」って問いかけてたよね。
Cocco:20周年まで、ファンのみんなも若かったし、一緒に成長してきたんです。ずっと「死んでもいい」と思って生きてきたところがあったけど、「生きててよかった」ってところまで人生を落とし込めたから、お互いにすごく成長したと思った。だから「もう大丈夫だろうな」って。みんなにも「自由になっていいよ」って言われたから......。思い出すだけで泣けてくる......。みんなにやっと許してもらえた感じで、「自分のやりたいことをしよう」と思った。

Coccoにとって歌とは、"自分がやりたいこと"ではあるが、それ以上に"やらなきゃいけないもの"となっているようだ。

Cocco:歌が勝手に生まれるし、勝手に歌が走っていくので、ついていくのに疲れてしまった。例えば、私が食べられなくなったときは、歌が止まればいいのに止まらないから、食べられないままついていかないといけないから大変だった。休みたいと思っても歌が出てきて、歌に翻弄されてきたから。そこで「自由になっていい」って伝えてもらえたから、「ここからは誰も知らないただの沖縄の女になるぞ」って。デビューする前はただの沖縄の女だったから、そこに20年かけて戻った感じがした。


■Coccoを知らない若者にスカウトされて...!?

日本武道館でのライブを終えてからのある日、Coccoが息子と東京の街を歩いていると、突然、モデルのスカウトを受けたそうだ。

Cocco:スカウトしてきたのは20代の若い子で、Coccoを知らずに「モデルをしてほしい」と言ってきたんです。そのときに、「私は自由なんだ」と思った。「ただの美魔女として生まれ変わるんだ」って(笑)。しかも、そのときはカップルに間違えられたから。そこで、「もう一度、最初から何かができるかも知れない」「これはチャンスだ」と感じました。

当時のCoccoは、結婚する友人から「どんな指輪がいいか」という相談を受けていたそうなのだが、自信を持っておすすめできるものがなかったという。ちょうど「じゃあ、自分でみんなの結婚指輪を作れるようになろう」と思っていた時期だったのだが、さらに同じタイミングで、街で素敵なジュエリーショップを見つけた。

Cocco:その素敵なジュエリー屋さんに入ったら、「とってもかわいいな」と思った。それから、スケッチブックにデザイン画を描いて、「弟子入りさせてください」って持って行ったんです。そしたら「いいよ」って言われて、ジュエリー屋さんで修行を始めたんです。
新井:ジュエリー屋さんの人はCoccoを知っていたの?
Cocco:知っていたけど、ずっと知らないふりをしてくれてた(笑)。
新井:その出会いでシャンクっていう技を習得したわけなんだ。ちなみにシャンクってどんな技法?
Cocco:ワイヤーでパーツとパーツを繋ぐ細やかな技法です。師匠に「まずはシャンクをやりなさい」って言われたんです。私のデザイン画を見て「まずはシャンクだと思う」と言ってくれたから、師匠には感謝してる。


■絵本を描いていても「音はまだずっと鳴っていた」

ジュエリーショップで修行をしながら、絵本の制作も進めていたそうだ。

Cocco:絵本を書く前、私の周りが出産ラッシュで、たくさん子どもが生まれたんです。そのなかで同級生のひとりが切迫流産で入院して、それがすごく心配で、何としても子どもが元気に生まれてきてほしいと思ったから、絵本を描いてしまおうと。「あなたが読む絵本を描いたんだから、子どもが生まれてこないとだめだよ」という思いで作ってしまおうと思った。

Coccoはその頃、プロデューサーの根岸孝旨と手紙のやりとりをしていた。その根岸からの手紙を机に置いて絵本を描いていたところ、頭の中でどんどん音が鳴り出した。

Cocco:「本当にやめて。私はそういうつもりじゃないから」ってその音を無視してたけど、ずっと鳴っていて。絵本は、子どもが元気に早く生まれる事実がほしかったから、2週間も経たずに描き終わった。でも、音はまだずっと鳴っていた。

Coccoは、絵本の原画のカラーコピーをするために所属レコード会社に足を運んだ。そこで大きな転機が訪れた。

Cocco:足を洗ったはずのレコード会社にこっそり行って、たくさんカラーコピーをしていて(笑)。そしたら「もう二度とあなたたちと会わない」と言っていたのに、私を見かけて「Cocco、元気?」と次々といろんな人が声をかけてくれた。そしたら嬉しくなっちゃって。ある人に「絵本を描いているんだったら、CDも付けちゃう?」と言われて、「そういうつもりは全然ないから」と言い返したんだけど、デビューからお世話になってる人が来て、「でも、音は鳴ってるんでしょ?」って言われた。「全部バレてる」と思った。
新井:見透かされてたんだね。
Cocco:「音は鳴ってるけど、これは違う」って言った。「もう私は音楽はやらない。やっとみんなと握手して別れられたのに」って騒いでいて。一方で、ジュエリー屋さんで習ってたシャンクで合格点をもらったの。自分で今まで諦めていたアクセサリーを引っ張り出して、溶接じゃないとダメだと決めつけていたものがシャンクで全部仕上がったときに、歌も全部繋がっちゃったの。そこで『スターシャンク』ってアルバムになっちゃった。「これはもう大変だ。どうしよう」となって、このザマ(笑)。

Coccoは、「同級生の妊娠がなかったら絵本は描いてなかったし、街を歩いてジュエリー屋さんに入らなかったらシャンクも習わなかった」と言う。そして最後に、「結局、何をしても触発されて歌になっちゃうということを、これまでに何度も思い知ってるのに、また思い知った」と、音楽と共に生きる自分の姿を語った。

Coccoが3年ぶりに発表した『スターシャンク』と絵本『みなみのしまのはなのいろ』、ぜひどちらもチェックしてみてほしい。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月12日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜 23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/

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