J-WAVEで放送中の番組『TOPPAN FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。1月6日(日)のオンエアでは、脳科学者の中野信子さんをゲストに迎えて、「お金に振り回されない、脳のしつけ方」をテーマに、お話を訊きました。
■金銭感覚に影響する前頭前野
お金が存在しない頃は、「物理的に希少価値が高いもの」や「美しいもの」が、共通の価値基準を持ち、流通してきました。例えば、「美しい貝殻」と何かを交換する、といった具合です。
しかし現在は価値だけが分離され、数字として流通するようになりました。たとえば、紙幣、コイン、クレジットカードなどです。この高度な価値の交換は、「他の動物にはない、人間の脳・前頭葉の発達によるもの」と、中野さんは解説します。
小川:お金というと、金銭感覚には個人差がありますけど、これも脳、特に前頭葉の影響が大きいんですか?
中野:おっしゃる通りです。前頭葉のうちでも、前頭前野の外側の部分が関わっています。ここは損得を計算する場所なんですよ。これをしたら得になる、これをしたら損になるということを冷静に計算します。自分がこれだけの働きをしたのだから、周りの状況と照らし合わせてこれくらいの対価があって然るべきだということを考えたり、それに見合わない報酬だったら文句を言ったり、たくさん報酬を与えられたら相手に感謝する気持ちになったり、従う気持ちが出たり、そういうことが起きるんです。
■「お金が貯まる人」と「貯まらない人」
「お金が貯まる人」と「貯まらない人」の行動パターンや考え方の違いも、脳科学で分析されています。
中野:金銭感覚そのものではなく、もう少し広げて考えます。いろんな実験によると、よい機会が与えられる確率はみんな平等なんです。では、どうして「貯まる人」「貯まらない人」にわかれるのか。それは、例えば雨が降っているとき、その雨をコップで受け止めているかザルで受け止めているか、みたいな話なんですよ。
両者の大きな違いは「外向性」と「開放性」。「外向性」とは、たくさんの人と付き合いがあり、さまざまな情報を人脈から得ることができる性質です。「開放性」とは、自分の知らない情報がきたときに怖がらない性質です。
中野:つまり、「お金が貯まる人」と「貯まらない人」の違いは、人脈をどれだけ多く築こうとできるかどうか。そして、新しい情報があったときに怖がらずにそれを吟味できるかどうか、という違いなんです。
一方で、お金が貯まらない人、つまりチャンスを逃してしまう人は、目立つことによって他者から攻撃されるリスクを減らすために同調したり、他人の意見に流されたりしやすい傾向があります。
■年収1500万円を超えると「幸せ度」が下がる!?
脳科学の視点から見ると、「お金」と「幸せ」には密接な関係にあると中野さん。何をもって「幸せ」とするかは測りにくいものではありますが、「不安ではない」「日々に満足している」など、いくつか指標があります。また、これらのどの指標で測った場合でも、ある程度まで年収が上がると、それ以上は「幸せ度」が増えないことがわかっているそう。
中野:値段が国によってちょっと違ったりするんですけど、アメリカだ7万5000ドルくらい。日本円に換算すると800万円くらいですかね。日本だとこれが少し上がって、だいたい1500万円くらい。
小川:それが、幸せのボーダーライン?
中野:そこまでは、稼げば稼ぐほど幸せになっていくんだけども、そこから先は、稼いでも逆に不幸になるんですよ。「不幸になる」はちょっと言い過ぎかもしれないですけど、そこから先は幸せ度が必ずしも上がらない。日本の場合、2000万円くらいまでは、下がっていったりするんですね。
それ以上はサンプル数が少ないため、研究があまり進んでいないとのことです。
■お金を増やさないと不安…
小川は、十分な所得がありながらも「もっと稼がないと不安」と言う知人がいると明かします。これは「認知の歪み」と中野さんは指摘します。
中野:「お金があれば安心」という学習を、どこかでしちゃってるんですね。本当の安心というのは、その人が満足して暮らしていくために必要な友だちだったり、パートナーとの良好な関係だったり、健康だったり、他の基準であるんですけど、「お金でなんとかなる」という学習をしているために、「お金がないと不安だな」という言葉が出るんです。
もうひとつ重要なのは、所得額より「所得順位」と中野さん。「準拠集団」という、自分が基準にしている集団内において、「自分の所得の順位がどこにいるか」が「幸せ度」に影響すると言います。
中野:たとえば、3億円を稼いでいても、となりの家の人は10億円稼いでいるとなったら、「これは不幸だ」というわけですね。
小川:相対的な自分がどうか、ということなんですね。
中野:そうなんです。所得順位は意外と大事だということです。
問題は、お金がたくさんあるかどうかより、脳がどう捉えるかにあるようです。人それぞれが幸せの基準を持つことが大切ですね。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/
■金銭感覚に影響する前頭前野
お金が存在しない頃は、「物理的に希少価値が高いもの」や「美しいもの」が、共通の価値基準を持ち、流通してきました。例えば、「美しい貝殻」と何かを交換する、といった具合です。
しかし現在は価値だけが分離され、数字として流通するようになりました。たとえば、紙幣、コイン、クレジットカードなどです。この高度な価値の交換は、「他の動物にはない、人間の脳・前頭葉の発達によるもの」と、中野さんは解説します。
小川:お金というと、金銭感覚には個人差がありますけど、これも脳、特に前頭葉の影響が大きいんですか?
中野:おっしゃる通りです。前頭葉のうちでも、前頭前野の外側の部分が関わっています。ここは損得を計算する場所なんですよ。これをしたら得になる、これをしたら損になるということを冷静に計算します。自分がこれだけの働きをしたのだから、周りの状況と照らし合わせてこれくらいの対価があって然るべきだということを考えたり、それに見合わない報酬だったら文句を言ったり、たくさん報酬を与えられたら相手に感謝する気持ちになったり、従う気持ちが出たり、そういうことが起きるんです。
■「お金が貯まる人」と「貯まらない人」
「お金が貯まる人」と「貯まらない人」の行動パターンや考え方の違いも、脳科学で分析されています。
中野:金銭感覚そのものではなく、もう少し広げて考えます。いろんな実験によると、よい機会が与えられる確率はみんな平等なんです。では、どうして「貯まる人」「貯まらない人」にわかれるのか。それは、例えば雨が降っているとき、その雨をコップで受け止めているかザルで受け止めているか、みたいな話なんですよ。
両者の大きな違いは「外向性」と「開放性」。「外向性」とは、たくさんの人と付き合いがあり、さまざまな情報を人脈から得ることができる性質です。「開放性」とは、自分の知らない情報がきたときに怖がらない性質です。
中野:つまり、「お金が貯まる人」と「貯まらない人」の違いは、人脈をどれだけ多く築こうとできるかどうか。そして、新しい情報があったときに怖がらずにそれを吟味できるかどうか、という違いなんです。
一方で、お金が貯まらない人、つまりチャンスを逃してしまう人は、目立つことによって他者から攻撃されるリスクを減らすために同調したり、他人の意見に流されたりしやすい傾向があります。
■年収1500万円を超えると「幸せ度」が下がる!?
脳科学の視点から見ると、「お金」と「幸せ」には密接な関係にあると中野さん。何をもって「幸せ」とするかは測りにくいものではありますが、「不安ではない」「日々に満足している」など、いくつか指標があります。また、これらのどの指標で測った場合でも、ある程度まで年収が上がると、それ以上は「幸せ度」が増えないことがわかっているそう。
中野:値段が国によってちょっと違ったりするんですけど、アメリカだ7万5000ドルくらい。日本円に換算すると800万円くらいですかね。日本だとこれが少し上がって、だいたい1500万円くらい。
小川:それが、幸せのボーダーライン?
中野:そこまでは、稼げば稼ぐほど幸せになっていくんだけども、そこから先は、稼いでも逆に不幸になるんですよ。「不幸になる」はちょっと言い過ぎかもしれないですけど、そこから先は幸せ度が必ずしも上がらない。日本の場合、2000万円くらいまでは、下がっていったりするんですね。
それ以上はサンプル数が少ないため、研究があまり進んでいないとのことです。
■お金を増やさないと不安…
小川は、十分な所得がありながらも「もっと稼がないと不安」と言う知人がいると明かします。これは「認知の歪み」と中野さんは指摘します。
中野:「お金があれば安心」という学習を、どこかでしちゃってるんですね。本当の安心というのは、その人が満足して暮らしていくために必要な友だちだったり、パートナーとの良好な関係だったり、健康だったり、他の基準であるんですけど、「お金でなんとかなる」という学習をしているために、「お金がないと不安だな」という言葉が出るんです。
もうひとつ重要なのは、所得額より「所得順位」と中野さん。「準拠集団」という、自分が基準にしている集団内において、「自分の所得の順位がどこにいるか」が「幸せ度」に影響すると言います。
中野:たとえば、3億円を稼いでいても、となりの家の人は10億円稼いでいるとなったら、「これは不幸だ」というわけですね。
小川:相対的な自分がどうか、ということなんですね。
中野:そうなんです。所得順位は意外と大事だということです。
問題は、お金がたくさんあるかどうかより、脳がどう捉えるかにあるようです。人それぞれが幸せの基準を持つことが大切ですね。
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/