J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。11月10日(土)のオンエアでは、作家の海堂尊さんをお迎えして、作家になったきっかけや執筆時の心構えなどをお訊きしました。
■二足のわらじ
海堂さんは、作家と研究者の二足のわらじを履いています。5年ほど前からは執筆活動にほぼ専念していて、医療面では「放医研(放射線医学総合研究所)」の研究協力員というスタンスで所属しています。
市川:それはどういった研究ですか?
海堂:「オートプシー・イメージング(Ai)」という“死亡時画像診断”の広報活動をしています。
市川:普通の解剖とは違うんですか?
海堂:人が亡くなった時に、MRIやCTなどの画像診断によって死因を検証する方法です。それを普及させるために研究していて、今では法律にも明記され正式に導入されました。
■鬱屈していたところ、大ヒット
現在は「キューバ革命」を成し遂げたチェ・ゲバラとフィデル・カストロを並列した物語を執筆しています。「キューバ革命」を取り上げたのは、ゲバラが元医学生という“何となくの理由”から。題材を決める時は、“強いモチベーション”はないと言います。
海堂:始めの頃は医療のことを書きました。作家デビューするまで、20年以上にわたって医療の現場で働き、鬱屈したものが溜まっていて『チーム・バチスタの栄光』を執筆したところ、大反響になってしまって。
市川:たくさんの作品が映像化されていますが、不安はないですか?
海堂:ないです。僕ができることは作品を書くことだけで、チャンスがあれば磨きをかけることに集中しているので。条件をつけることはほぼないです。ただ、登場人物の心の根は曲げないようにしてほしいです。それくらいです。ほかの人が作ってくれた豪華絢爛なドラマなので、ただひたすら楽しむだけです。僕は何も関わっていません。
■1ヶ月放置すると、戻ってくる
市川:医者として作家活動をする上で、健康について心がけていることはありますか?
海堂:“医者の不養生”という言葉がありますが、ほとんど何も考えずにやっています。ただ、体が要求するものは素直に聞いてます。書いていて、お腹が空いたら食べて、眠くなったら寝て、野生児のような生活を送っています。
市川:(笑)。詰まった時はどうしていますか?
海堂:書きません。常に締め切りよりもずっと前に仕上げているので、書けるところまで書くんです。煮詰まったら放っておきます。書かないので悩むことはありません。連載も半分くらいまで書いて、ストックができてからお願いしています。
市川:なるほど。
海堂:でも、煮詰まったら放置して、別なことをして1ヶ月も放置していると何となく戻ってきます。意外に堅実なんです。
■小説を書き始めたきっかけ
海堂さんは44歳の時に『チーム・バチスタの栄光』を執筆しました。それは小学生の時に「人は誰でも一つは物語が書ける」という話をラジオで聴いて、それを信じて書いたことに始まるそうです。
海堂:大学の時も、大学院の時も書こうとしたんですけど、書けなくて4、5枚で放り出してたんです。それでも挫折を味わなかったのは、“いつか1冊書く”という目標だったから、その時に書けなくても、「今じゃないんだ」という気持ちだったんです。
市川:面白い! 挫折ではないんですね。
海堂:作家で生きて行こうと思ってたら「俺はダメだ」って思うけど、“1冊の本を書きたい”となると、いくらコケても平気なんです。
市川:そうなんですか!
海堂:“小説を書くのは、自転車に乗るようなもの”だと思っていて、一度乗れたらなんということもないけど、乗れない人からしたら“凄いことをやっているな”と。それと同じなんですよ。
市川:医療ものを書こうと思ったのは、ストーリーが出てきたからなんですよね。
海堂:仕事にどっぷり浸っていて、いろいろな鬱屈とか、不満やいいことが、全て溶鉱炉みたいになってたから、作品の素材はたっぷりありましたね。形にするコツは一作目を書いた時に分かったかなって思いました。
市川:小学校の時に書いた物語は覚えていますか?
海堂:当時のクラスメイトを主人公にして、誹謗中傷や悪口を満載にした小説「四国志」を書きました。大学ノート3冊に書いたもので、クラス内で大ベストセラーを記録しました。
市川:しっかり書いたんですね(笑)。
一方、読書の方はというと、海堂さんが最も影響を受けたのは、筒井康隆さんでした。
海堂:作家になって振り返って考えてみると、筒井さんからは“作家は何を書いてもいい”ということだけを教わったような気がします。やりたい放題だし(笑)。
■アイデアが浮かばないことはない
続いて、プライベートについてお訊きしました。
海堂:医師として働いていた頃は、「医療が仕事で執筆は趣味」と明確でした。今は執筆が仕事になっていることがとても幸せで、限りなく趣味に近い気持ちで臨んでいます。
市川:アイデアが浮かばないことはあるんですか?
海堂:一つの作品を書いている時に次のアイデアが浮かぶので、アイデアが浮かばないことはないですね。
市川:見習いたい……(笑)。まとまったお休みはとれますか?
海堂:趣味と仕事が一体化しているので見方によってはワーカホリックだし、見方によっては超遊び人という表裏一体。コインの裏表のような生活を送っています。
市川:作品を執筆する上で大切にしていることは何ですか?
海堂:文章の正確性と必要最小限、そして、清潔で美しく書きたいということ。
市川:無駄がないですもんね。
海堂:ただ、無駄を排し過ぎるのはダメで、不純物は少しあったほうがいいです。不純物を完全に取り去った水は美味しくない、という話はよく聞きますよね。でも、もともとそんなにストイックな人間ではないので、不純物が入りまくりなんです(笑)。
■壮大なテーマを執筆中
市川:今、温めているジャンルはありますか?
海堂:執筆しているゲバラとカストロの物語が壮大で、10年ものなんです。書いているうちに西半球史、南北アメリカの歴史についての知識が蓄積されたので、今後はその辺りをテーマにしてみたいと思ってます。医療に関するネタもまだまだあるので、書こうと思っています。
今年の秋に『ブラックペアン1988』を含めた数作品が電子書籍化され、来年の春には『ゲバラ』シリーズが文庫化されます。今後も楽しみですね!
【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/
■二足のわらじ
海堂さんは、作家と研究者の二足のわらじを履いています。5年ほど前からは執筆活動にほぼ専念していて、医療面では「放医研(放射線医学総合研究所)」の研究協力員というスタンスで所属しています。
市川:それはどういった研究ですか?
海堂:「オートプシー・イメージング(Ai)」という“死亡時画像診断”の広報活動をしています。
市川:普通の解剖とは違うんですか?
海堂:人が亡くなった時に、MRIやCTなどの画像診断によって死因を検証する方法です。それを普及させるために研究していて、今では法律にも明記され正式に導入されました。
■鬱屈していたところ、大ヒット
現在は「キューバ革命」を成し遂げたチェ・ゲバラとフィデル・カストロを並列した物語を執筆しています。「キューバ革命」を取り上げたのは、ゲバラが元医学生という“何となくの理由”から。題材を決める時は、“強いモチベーション”はないと言います。
海堂:始めの頃は医療のことを書きました。作家デビューするまで、20年以上にわたって医療の現場で働き、鬱屈したものが溜まっていて『チーム・バチスタの栄光』を執筆したところ、大反響になってしまって。
市川:たくさんの作品が映像化されていますが、不安はないですか?
海堂:ないです。僕ができることは作品を書くことだけで、チャンスがあれば磨きをかけることに集中しているので。条件をつけることはほぼないです。ただ、登場人物の心の根は曲げないようにしてほしいです。それくらいです。ほかの人が作ってくれた豪華絢爛なドラマなので、ただひたすら楽しむだけです。僕は何も関わっていません。
■1ヶ月放置すると、戻ってくる
市川:医者として作家活動をする上で、健康について心がけていることはありますか?
海堂:“医者の不養生”という言葉がありますが、ほとんど何も考えずにやっています。ただ、体が要求するものは素直に聞いてます。書いていて、お腹が空いたら食べて、眠くなったら寝て、野生児のような生活を送っています。
市川:(笑)。詰まった時はどうしていますか?
海堂:書きません。常に締め切りよりもずっと前に仕上げているので、書けるところまで書くんです。煮詰まったら放っておきます。書かないので悩むことはありません。連載も半分くらいまで書いて、ストックができてからお願いしています。
市川:なるほど。
海堂:でも、煮詰まったら放置して、別なことをして1ヶ月も放置していると何となく戻ってきます。意外に堅実なんです。
■小説を書き始めたきっかけ
海堂さんは44歳の時に『チーム・バチスタの栄光』を執筆しました。それは小学生の時に「人は誰でも一つは物語が書ける」という話をラジオで聴いて、それを信じて書いたことに始まるそうです。
海堂:大学の時も、大学院の時も書こうとしたんですけど、書けなくて4、5枚で放り出してたんです。それでも挫折を味わなかったのは、“いつか1冊書く”という目標だったから、その時に書けなくても、「今じゃないんだ」という気持ちだったんです。
市川:面白い! 挫折ではないんですね。
海堂:作家で生きて行こうと思ってたら「俺はダメだ」って思うけど、“1冊の本を書きたい”となると、いくらコケても平気なんです。
市川:そうなんですか!
海堂:“小説を書くのは、自転車に乗るようなもの”だと思っていて、一度乗れたらなんということもないけど、乗れない人からしたら“凄いことをやっているな”と。それと同じなんですよ。
市川:医療ものを書こうと思ったのは、ストーリーが出てきたからなんですよね。
海堂:仕事にどっぷり浸っていて、いろいろな鬱屈とか、不満やいいことが、全て溶鉱炉みたいになってたから、作品の素材はたっぷりありましたね。形にするコツは一作目を書いた時に分かったかなって思いました。
市川:小学校の時に書いた物語は覚えていますか?
海堂:当時のクラスメイトを主人公にして、誹謗中傷や悪口を満載にした小説「四国志」を書きました。大学ノート3冊に書いたもので、クラス内で大ベストセラーを記録しました。
市川:しっかり書いたんですね(笑)。
一方、読書の方はというと、海堂さんが最も影響を受けたのは、筒井康隆さんでした。
海堂:作家になって振り返って考えてみると、筒井さんからは“作家は何を書いてもいい”ということだけを教わったような気がします。やりたい放題だし(笑)。
■アイデアが浮かばないことはない
続いて、プライベートについてお訊きしました。
海堂:医師として働いていた頃は、「医療が仕事で執筆は趣味」と明確でした。今は執筆が仕事になっていることがとても幸せで、限りなく趣味に近い気持ちで臨んでいます。
市川:アイデアが浮かばないことはあるんですか?
海堂:一つの作品を書いている時に次のアイデアが浮かぶので、アイデアが浮かばないことはないですね。
市川:見習いたい……(笑)。まとまったお休みはとれますか?
海堂:趣味と仕事が一体化しているので見方によってはワーカホリックだし、見方によっては超遊び人という表裏一体。コインの裏表のような生活を送っています。
市川:作品を執筆する上で大切にしていることは何ですか?
海堂:文章の正確性と必要最小限、そして、清潔で美しく書きたいということ。
市川:無駄がないですもんね。
海堂:ただ、無駄を排し過ぎるのはダメで、不純物は少しあったほうがいいです。不純物を完全に取り去った水は美味しくない、という話はよく聞きますよね。でも、もともとそんなにストイックな人間ではないので、不純物が入りまくりなんです(笑)。
■壮大なテーマを執筆中
市川:今、温めているジャンルはありますか?
海堂:執筆しているゲバラとカストロの物語が壮大で、10年ものなんです。書いているうちに西半球史、南北アメリカの歴史についての知識が蓄積されたので、今後はその辺りをテーマにしてみたいと思ってます。医療に関するネタもまだまだあるので、書こうと思っています。
今年の秋に『ブラックペアン1988』を含めた数作品が電子書籍化され、来年の春には『ゲバラ』シリーズが文庫化されます。今後も楽しみですね!
【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/