音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
医療テクノロジーの進歩で未来はどう変わる? 海堂尊、杉本真樹、石川善樹がトーク

医療テクノロジーの進歩で未来はどう変わる? 海堂尊、杉本真樹、石川善樹がトーク

日本最大級のテクノロジーと音楽の祭典「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018 Supported by CHINTAI」(以下、イノフェス)が、9月29日(土)、30日(日)に六本木ヒルズで開催。30日には、トークセッション「医療テクノロジーと人類の未来」が行われた。

この日は台風が迫りつつあった悪天候にもかかわらず、TDKイノフェス・メディアカフェで行われた本トークセッションは、立ち見が出るほどの大入りぶり。登壇したのは、『チーム・バチスタの栄光』『ブラックペアン1988』などで知られる医師・作家の海堂 尊、医療イノベーターの杉本真樹、予防医学研究者の石川善樹、ファシリテーターを務めたのは、ジャーナリストの堀 潤。そこで語られた、医療と未来を語ったトークの様子を紹介する。

この日登壇した杉本、海堂、石川の3名は、それぞれ専門分野が異なる。一番、関心のある医療×テクノロジーは何だろうか。

杉本:ひとつは人工知能(AI)ですね。AIは何でもできると思われがちですが、何を教えるかによって全く違ってきます。解析のアルゴリズムなどがありすぎて、一般人が何を利用できるのか、グレーな段階なんです。現在はデータ集めの時期だと思う。健康志向が強まる日本で、どうやってデータを収集していくかに興味がありますね。これまでの医療は、“Evidence-based medicine(根拠に基づく医療)”といって、論文などを根拠に進められてきました。しかし、個人によって適切な医療が異なることがわかってきた。そこで、遺伝子、環境因子や生活因子に加え、レントゲンや採血などの3つのデータを組み合わせた、個人に合わせた医療が徐々に日本でも取り入れられるようになってきて、これをプレシジョン・メディシンといいます。個々に合わせた医療はお金かかるため、大まかに体系化をして、個々のケースに当てはめるのです。それを手術で導入する“プレシジョン・サージェリー”を提唱しています。

海堂:私は、オートプシーイメージング(死亡時画像診断画像診断の一分野)に関心があります。死亡時医学検査で非常に重要なエリアです。杉本先生の話を伺って感じたのは、技術は先端を目指して最適化していきますが、進歩しすぎた結果、高コストで社会に適用されなくなったり、過剰な法律で情報が抑制されたり、といったことが起こります。ですから技術の進歩させる前に、社会的環境を整え、情報をオープンにしないといけないと思います。進んだらみんなに共有をしてもらう、セーフティーネットが必要なのではないかと思います。

石川:僕は、食を研究しています。一日3食で100年とすると、10万回食になります。それをいかに豊かなものにするかを研究しており、今は世界各地のレシピデータを集めてます。料理はイノベーションが起きていない分野なんですよ。ほとんどの食材の組み合わせは研究されていないんです。たとえば生ハムメロンは、メロンが本当に最適なのか。人工知能で検査すると、理論的にはグアバの方が合うとわかりました。食べ比べをしてもらうと、どちらがいいかは半々だったんですが、このような意外な組み合わせはたくさんあるんですよ。

医療テクノロジーと人類の未来

医療とテクノロジーということで、個人データを医療に活かすための動きについても話が及んだ。特に杉本は医療VRを提供しており、CTやMRIなどのデータを、個人と結びつける情報を消した状態で、スマホなどで確認できるデータに変換し、世界中でみられるようにしている。

杉本:日本はCTやMRIが世界で一番普及しているにもかかわらず、みんなそのデータを持って帰らない。これはもったいないということで、個人情報を消した状態で、スマホなどで確認できるデータに変換し、世界中でみられるようにしている。日本はデータの活用は一番進んでいると思います。(VRを活用することで)病気に向き合う姿勢が変わると思います。健康な人が病気のデータを見ると、「これはまずい」と実感します。普及すれば、また健康な人同士で気づきあえ、予防につながります。これは医療を社会が担うということなんです。

医療テクノロジーと人類の未来

技術革新により、医者だけでなく、我々も医療の一部になれると話す杉本。海堂がそれに伴った規制を危惧しながらも、二手三手先を読むことで回避できるのではないかと杉本は続けた。

海堂:技術の進歩が進んでも、世界が閉じてしまい、情報を扱う部分で必ず規制をかけてくることがあります。社会制度の中で抑制をかけようとし、そういう技術を多くの人から離してしまう。VRなども、名を成した教授は拒絶してしまうかもしれません。それをどう回避するかが大事だと思います。
杉本:みんなを仲間に取り入れることが大事だと思います。先生のおかげで、周りにもメリットがあるということを明確にすれば、その教授も意外と動くのでは。また、組織体になると戦い方も変わってきます。来年のことだと利害があるかもしれませんが、2030年のようにまだ先のことであれば利害はぶつかりません。二手三手先を読むことが大事なのではないでしょうか。

最後に3名が考える、人類とテクノロジーが融合する未来について、未来予想図をうかがった。

石川:歩くという動作にイノベーションが起きたかと考えると、まず1度目は靴を履きました。2度目はウォークマンの登場で、音楽を聴きながら歩くようになりました。しかし3度目はまだ起きていないとおもうわけです。できれば歩いた方がいいですが、歩くことほどつまらないものはない。病気をどうするというところに最先端技術をつかうのは当たり前で、日常の出来事にイノベーションが起こっているのではないかと思います。

杉本:自分でテクノロジーを作って広めていく時代になると思います。テクニウムという造語がありますが、テクノロジー時代も生態系を持って進化していくことです。僕らが意図しない方向にテクノロジーが進む場合もあるし、その逆もある。我々がそれをいかに受け入れ、それを他の人にどう広めていくのかという時代になるのではないかと思います。

海堂:テクノロジーということば自体が消えていくのでは? いまはスマホで騒ぐ人はいません。それと同じように、医療も診断も病院ではなく、その場でできるようになる。最低限の治療を受けるためだけに通うようになるのはないでしょうか。そして、それが当たり前の社会になると思います。そこで大事なことが規制です。私たちは、その反発する力に戦わなくてはいけないと思います。

医療テクノロジーと人類の未来

私たちの生活には欠かすことのできない“医療”。それにかかわる技術の進歩は、私たちにの生活を大きく豊かにしてくれるはずだ。それに伴い規制なども出てくるだろうが、3人が語るようにテクノロジーと人類が融合した未来は大きな可能性が広がっている。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン