J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「ZOJIRUSHI MORNING INSIGHT」。9月17日(月・祝)のオンエアでは、横浜国立大学准教授・筆保弘徳さんが開発した台風ハザードマップ「台風ソラグラム」に注目しました。
■台風の逆襲が起こっている!?
まずは、近年の台風の傾向や特徴を伺いました。
筆保:強いままやってくる台風の数が増えました。それから、今まで台風がこなかったコースのものが目立ってきました。それがあって、台風による被害も日本各地で起こるようになりました。“台風の逆襲”みたいなものを感じます。
別所:“台風の逆襲”って、どういうことですか?
筆保:戦争中や戦後のころは、ひとつの台風で1000人以上が亡くなることが、けっこうあったんです。1959年の伊勢湾台風では5000人以上が亡くなったことを皮切りに、国を挙げて台風の対策に乗り出しました。たとえば、治水整備を全国的に行ったり、気象庁は台風に対する取り組みを強化しました。そのおかげで、1960年以降はひとつの台風で死者・行方不明者数が100人以上ということはなくなりました。それは今でも続いていて、台風に対しての対策は取れていて、台風も脅威ではなくなったんじゃないか、と思っていたところ、2010年以降は台風が進化したかのように襲いかかってきていて、それがまさに“台風の逆襲”というわけです。
■なぜ勢いが弱まらないのか
先日、甚大な被害を出した台風21号では、台風の怖さを知ることとなりました。では、なぜ強い勢力のまま上陸したのか、なぜ被害が広がったのか、お訊きしました。
筆保:今までは、日本に北上するときに、だんだん弱まりながらやってくるのが普通でしたが、今回の台風21号は非常に強い台風のままやってきています。原因のひとつは、日本の南まで暖かくなっている海水温です。さらに、台風21号は被害が出やすいコースをとおりました。同じ強さの台風でも、被害が出やすいコースや、そうでないコースがあります。それぞれの地域で、山岳や海の位置関係で変わってくるので、地域ごとに台風の被害が出やすい最悪のコースが変わってきます。今回開発した「台風ソラグラム」は、全国の市区町村の、それぞれの地域の、最悪のコースを示しています。
別所:どのようにして作られたんですか?
筆保:天気予報などでも使われている、数値シミュレーションというコンピュータの中で仮想の大気を作って、大気がこれからどのように変わっていくか、というのを計算する技術を使っています。それを何千回と繰り返しやることで、コースによってその地域に起こるリスクを統計的に示します。
■日頃から見ておくといい「台風ソラグラム」
筆保さんによると、「台風ソラグラム」は備えとして使用するといいそうです。スマホからの場合、「ライフレンジャー」にアクセスし、左のメニューから「防災・備え」をクリック、「台風ソラグラム」を選択すると見ることができます。
筆保:台風がきているときに確認するのもいいんですけど、平常時にゆっくり見るのがいいでしょう。台風が遠くにいるときでも「自分たちの街は風が強くなるんだ」ということがわかり、外出を控えようといった判断ができるようになります。そういうことを友だちや家族と話し合うのがいいと思います。
別所:実際に台風がきたときはどのように活用すればよいでしょう。
筆保:台風21号では、直撃した大阪に目がいきがちですが、各地で風の被害が起きています。たとえば、東京の八王子では強風で看板が飛んで、4人が負傷する被害が出ています。まさか、東京で台風の被害に遭うとは予想していなかったのではと思いますが、「台風ソラグラム」で八王子を見てもらうと、台風が日本海側にいても八王子は風のリスクが高いことがよくわかるようになっています。あらかじめ知っておけば、リスクが少しは軽減できたのでは。
別所:近ければ備えるし、緊張感もありますが、台風から遠いと「大丈夫じゃないか」と思いますよね。
筆保:そうですね。台風に対する意識を持つために、ハザードマップを使ってもらえたらと思います。
さらに、高潮に関するハザードマップの作成にも取り組んでいるそうです。
筆保:今回の「台風ソラグラム」と同じように、台風がどのコースを通ると、高潮のリスクが高まるかということを示す図を作っています。高潮は台風の進路が少し変わるだけで、発生する規模がすごく変わるんです。それは高潮の研究の世界でも、形成的には「このくらいになるだろう」ということは言われていたんですが、実際にどのくらいコースがズレて、どのくらい変わってくるか、というのはよくわかっていなかったんです。今回作成した高潮ハザードマップは、研究としても貴重な情報を与えてくれます。
■台風との向き合い方
では、毎年必ずやってくる台風と、どのように付き合っていけばいいのでしょうか。
筆保:悪い面ばかり報道されますが、台風にはいい面もあります。台風は日本に貴重な水資源をもたらしていて、台風が日本に全くこない年は水不足になる場所がいくつもあります。我々がもっと理解をして、上手に台風と付き合うことができたらと思います。
みなさんも「台風ソラグラム」をチェックして、万が一のときに備えましょう。
【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/tmr/index.html
■台風の逆襲が起こっている!?
まずは、近年の台風の傾向や特徴を伺いました。
筆保:強いままやってくる台風の数が増えました。それから、今まで台風がこなかったコースのものが目立ってきました。それがあって、台風による被害も日本各地で起こるようになりました。“台風の逆襲”みたいなものを感じます。
別所:“台風の逆襲”って、どういうことですか?
筆保:戦争中や戦後のころは、ひとつの台風で1000人以上が亡くなることが、けっこうあったんです。1959年の伊勢湾台風では5000人以上が亡くなったことを皮切りに、国を挙げて台風の対策に乗り出しました。たとえば、治水整備を全国的に行ったり、気象庁は台風に対する取り組みを強化しました。そのおかげで、1960年以降はひとつの台風で死者・行方不明者数が100人以上ということはなくなりました。それは今でも続いていて、台風に対しての対策は取れていて、台風も脅威ではなくなったんじゃないか、と思っていたところ、2010年以降は台風が進化したかのように襲いかかってきていて、それがまさに“台風の逆襲”というわけです。
■なぜ勢いが弱まらないのか
先日、甚大な被害を出した台風21号では、台風の怖さを知ることとなりました。では、なぜ強い勢力のまま上陸したのか、なぜ被害が広がったのか、お訊きしました。
筆保:今までは、日本に北上するときに、だんだん弱まりながらやってくるのが普通でしたが、今回の台風21号は非常に強い台風のままやってきています。原因のひとつは、日本の南まで暖かくなっている海水温です。さらに、台風21号は被害が出やすいコースをとおりました。同じ強さの台風でも、被害が出やすいコースや、そうでないコースがあります。それぞれの地域で、山岳や海の位置関係で変わってくるので、地域ごとに台風の被害が出やすい最悪のコースが変わってきます。今回開発した「台風ソラグラム」は、全国の市区町村の、それぞれの地域の、最悪のコースを示しています。
別所:どのようにして作られたんですか?
筆保:天気予報などでも使われている、数値シミュレーションというコンピュータの中で仮想の大気を作って、大気がこれからどのように変わっていくか、というのを計算する技術を使っています。それを何千回と繰り返しやることで、コースによってその地域に起こるリスクを統計的に示します。
■日頃から見ておくといい「台風ソラグラム」
筆保さんによると、「台風ソラグラム」は備えとして使用するといいそうです。スマホからの場合、「ライフレンジャー」にアクセスし、左のメニューから「防災・備え」をクリック、「台風ソラグラム」を選択すると見ることができます。
筆保:台風がきているときに確認するのもいいんですけど、平常時にゆっくり見るのがいいでしょう。台風が遠くにいるときでも「自分たちの街は風が強くなるんだ」ということがわかり、外出を控えようといった判断ができるようになります。そういうことを友だちや家族と話し合うのがいいと思います。
別所:実際に台風がきたときはどのように活用すればよいでしょう。
筆保:台風21号では、直撃した大阪に目がいきがちですが、各地で風の被害が起きています。たとえば、東京の八王子では強風で看板が飛んで、4人が負傷する被害が出ています。まさか、東京で台風の被害に遭うとは予想していなかったのではと思いますが、「台風ソラグラム」で八王子を見てもらうと、台風が日本海側にいても八王子は風のリスクが高いことがよくわかるようになっています。あらかじめ知っておけば、リスクが少しは軽減できたのでは。
別所:近ければ備えるし、緊張感もありますが、台風から遠いと「大丈夫じゃないか」と思いますよね。
筆保:そうですね。台風に対する意識を持つために、ハザードマップを使ってもらえたらと思います。
さらに、高潮に関するハザードマップの作成にも取り組んでいるそうです。
筆保:今回の「台風ソラグラム」と同じように、台風がどのコースを通ると、高潮のリスクが高まるかということを示す図を作っています。高潮は台風の進路が少し変わるだけで、発生する規模がすごく変わるんです。それは高潮の研究の世界でも、形成的には「このくらいになるだろう」ということは言われていたんですが、実際にどのくらいコースがズレて、どのくらい変わってくるか、というのはよくわかっていなかったんです。今回作成した高潮ハザードマップは、研究としても貴重な情報を与えてくれます。
■台風との向き合い方
では、毎年必ずやってくる台風と、どのように付き合っていけばいいのでしょうか。
筆保:悪い面ばかり報道されますが、台風にはいい面もあります。台風は日本に貴重な水資源をもたらしていて、台風が日本に全くこない年は水不足になる場所がいくつもあります。我々がもっと理解をして、上手に台風と付き合うことができたらと思います。
みなさんも「台風ソラグラム」をチェックして、万が一のときに備えましょう。
【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/tmr/index.html