「日本は新しいことができない空気がある…」 弁護士・水野 祐が語る法律の新しいあり方とは

J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。8月11日(土)のオンエアでは、弁護士の水野 祐さんをゲストにお迎えし、イノベーションを促す、法律の「新しいあり方」についてお伺いしました。


■新しい技術展開を法律家としてサポートする

現在、水野さんは、クリエイターやベンチャー企業、スタートアップのような、新しい技術を使ってビジネスを展開している人たちを法律家としてサポートしています。代表的なクライアントのひとつとして、テクノロジーを使った演出、アート作品やクリエイティブな広告を制作する「ライゾマティクス」の顧問弁護士も務めるほか、AI(人工知能)やまちづくり関連のクライアントなどいろいろな領域に携わっています。

今、人工知能やブロックチェーン、あるいはシェアリングエコノミーなど、テクノロジーを使った新しいアイデアが既存のビジネスモデルを次々と塗り変えています。そのようななかで、法律にはどのような役割が求められるでしょうか。

水野:企業として活動していくと、どうしても契約書や書類作成などが出てくるのでそのサポートもしています。それだけではなく、今までなかったプロジェクトや事業、ビジネスをやろうとすると、いろいろな法律や規制に引っかかってくることもあります。「どこまでやっていいのか」などについて、企画やプロジェクトに最初の段階から関わり、一緒にディスカッションしながら作っていくことが自分は大好きで、そういうことを意識して仕事をしています。


■最先端なことでも、法律的に未開な領域はない

市川:一般的な法律面の課題では、今どのようなものがありますか。
水野:音楽だと著作権の問題がありますよね。すぐ楽曲を使えないとか。例えばボーカル・アンドロイド=VOCALOID(ボーカロイド)の「初音ミク」のアイデアを持っている人がいる場合、「初音ミク」を今までの著作法に当てはめてそのまま運用すると、キャラクターの著作権侵害や音声の問題などいろいろ出てきてしまいます。

「初音ミク」のプロジェクトを実現しようとしたときに、イラストの部分は「非商用目的であれば誰でも無料で使用していい」と条件をつけ、ライセンス契約で広げる際には、水野さんのような法律家がライセンスや契約をデザインしていると説明します。

市川:最先端のことをやっていると、法律が追いつかない部分が多いわけですよね。
水野:ジャンルとして判例がないものが多かったりします。判例がないということは、(法律的で認められるか認められないかの)どちらもありうるにせよ、そこの分野の学者はすでに議論をしていたり、過去の判例からすると「この分野もこうなりそうだ」とある程度見えたりするわけです。実は本当に未開な領域はなくて温故知新というか、いかに似たような利益状況をうまく引っ張ってきて、自分たちのロジックとして肉付けできるかが、新しい分野の法律家の腕の見せ所なのかなと思います。


■規制に対する意識を変える必要がある

「日本の規制は厳しすぎる」という声や空気を感じることが多いですが、弁護士から見ると必ずしも日本だけが厳しいわけでないと水野さんは話します。

水野:日本の規制が緩い法制度を持っているところもあるし、逆に日本が厳しいところもあります。ただ、日本で生きる私たちが「何も新しいことができないんじゃないか」という空気にとらわれすぎていて、「何か今までにない新しい表現をしよう」とか、「新しいビジネスを作っていこう」とした時に、「でも法律的に厳しいから」とか「規制に厳しいから」とみんな思考停止してしまいがちです。その場合に、自分のような法律家、弁護士を使ってうまく課題を乗り越えるロジックを作っていくことが大事だと思います。


■自分の好きな分野を学ぶことが好き

趣味などプライベートな部分を伺うと、水野さんは「僕はスーパー公私混同です」と明かします。

水野:片時も仕事から離れることはなくて、仕事も趣味の延長というか。もちろん、仕事として苦しい仕事もあるんですけど、オンとオフがあまりなくて、自分のクライアントの映画とかライブとか演劇とかを観に行ったりしています。他には、めちゃくちゃ本を読んでいますね。
市川:どんなジャンルの本ですか。
水野:あらゆるジャンルを読みます。ただ、最近はフィクションとか小説はあまり読めていないですね。
市川:実用書とかですか。
水野:そうですね。自分の好きな分野を学ぶことが好きですね。弁護士って普通は依頼があってからその分野を勉強しますが、今自分が熱いものを趣味的に掘り起こしたりして、例えばその分野の人に会いに行ったり、シンポジウムに行ったり、その分野にいる人たちと仲よくなり、そのコミュニティに入り込むようになって、それがやがて仕事につながるケースが比較的多いですね。

ちなみに、最近気になる分野は「ブロックチェーンの技術」や「ゲノム編集」ということで、「自分なりに学んでいます」と水野さんは教えてくれました。


■今後の目標は?

今後の目標を伺うと「ひとりでも面白い人に会うこと」と水野さんは教えてくれました。

水野:プロジェクトとか仕事でヒリヒリした瞬間を面白い人と一緒に味わえるような機会を、1回でも多くつくっていきたいな思っています。

新しい分野が切り開かれたとき、それは水野さんが法律家としてサポートしていることかもしれません。これからの活躍にも目が離せません。

この記事の放送回をradikoで聴く
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/

関連記事