J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)。7月4日(水)のオンエアでは、作家の朝吹真理子さんが登場。最新作『TIMELESS』と、エルメスの展覧会との連動小説について訊きました。
■7年ぶりの長編小説
朝吹さんは、1984年、東京生まれ。2009年に『流跡』でデビューし、翌年にドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年んいは『きことわ』で芥川賞を初候補で受賞して話題になりました。そして2018年6月に、7年ぶりの長編『TIMELESS』を上梓しました。
朝吹:7年というふうに数字で訊かれるとびっくりするというか。やはり短かった気もするし、長かった気もするし。連載小説でしたが、連載がはじまるまで6年くらいなんども書き続きていたので、ようやく形になってよかったなと思います。
クリス:「TIMELESS」というキーワードは『きことわ』の後、わりとすぐに生まれていたそうですね。物語は、どうやって作っていくんですか?
朝吹:私の場合は、いくつかのシーンが生まれてきます。『TIMELESS』だったら、主人公にあたる2人のうしろ姿だけみえていて。ススキ野原がみえて、恋愛関係でもなさそうだけど、何か親密な関係性をもって立っている。「どういう話になるんだろう?」というのをずっと追いかけて、何度も書いては消え、書いては消えて、泡みたいにどんどん浮かんでは消えて、イメージを追いかけ続けていたら6年くらい経ってしまったんですけど。
クリス:最初に「ここはこうだな」というのが見えるという感じなんですね。それが一体どこなのかというきっかけに、ある方の言葉もあったと……
朝吹:歴史学者の磯田道史さんですね。恋愛感情をもったことがない女性のうみと、アミという男の子。2人が恋愛関係はなくて、でも「生殖の交配をしよう」と結婚するんですけど、一体じゃあ2人が「どういうところからはじまるのか」というのがいまいちわからなくて。でも磯田さんと一緒に六本木通りを歩いていたときに、このあたりは江姫が火葬された場所だったということを教えていただいて。400年くらい前の六本木って、麻布ヶ原と呼ばれるかなり寂しいところだったんですよね。そこで江姫の遺体が焼かれて、ものすごい沈香木と一緒に焼かれたから、数キロにわたって首都高3号線の上とか六本木ヒルズの上とか、遺体のにおいと美しい沈香木の香りが雲になって流れていったと、その話を聞いた瞬間に、今の六本木と400年前の麻布ヶ原が重なって自分の目に見えて、「ああ、ここにうみとアミはずっといたんだ」と、合理的じゃないんですけど、確信があって、その日の夜からすごくいっぱい書いたのを覚えています。
■エルメスの展覧会のために執筆した小説
そんな朝吹さんは、国立新美術館で7月11日(水)からエルメスが開催する展覧会「彼女と。」と連動した小説も発表しました。
朝吹:すごく面白かったです。お話をいただいたのが1年くらい前で、エルメスの銀座店でなんとなくエルメスの方が、「朝吹さんとお茶がしたい」と(笑)。それでお茶をしに行きましたらなんとお仕事のお話をいただいて、しかも小説のお話で。ちょうど『TIMELESS』を書いている途中だったので、ちゃんとできるかなと思いながら、「すごく面白い新しい女性像を小説で書いてほしい」とお話をいただいて、2回ほどパリに行ったりして、すごく楽しかったです。
クリス:長さも程よく、短いですよね、朝吹さんにしては。どのように書いていったのですか?
朝吹:フランスの展覧会と並行する形だったので、「どういうふうにしようか」と何度も打ち合わせをして、10個のオブジェを自分で選んで、その中でどういうふうに物語をつくるかと。一番重要だったのは、エルメスが持っている新しい女性像をどういうふうに小説にしたらいいかと。プレフォールのコレクションを見に行ったんですけど、そのとき、フォーブル・サントノーレのお店の2階がショーの会場だったんです。2階にあがった瞬間に、ふわっと磯の香りがして、「なんで磯の香りがするんだろう」と下をみたら、床一面に、海藻とススキと苔と、本当に海辺の別荘とか海辺の景色が見えてきて、そうやって海の香りのする場所に変わっていたんです。それでデザイナーのナデージュ・ヴァネ=シビュルスキーさんのお洋服をその空間でみたんですけど、ナデージュさんのお洋服って、動きがエレガントで美しいんですよね。しなやかで、ぺたんこの乗馬ブーツで、自分の意思を持って、風をまとっているというか。自分の意思をもって海辺を歩いている女性の姿が浮かんで、自分でなんとなく作ってから行ったというよりも、エルメスのビジョンを貰いながら膨らましていったという感じです。
クリス:人物のストーリーがどんなふうに、というのは朝吹さんが考えていったのですか?
朝吹:そうです、本当になんでも自由にということだったので。主人公は古くから続いている和菓子屋さんで生まれた女性なんですけど、今は推理小説を書いていて、ニューヨークに住んでいるクリスという男性と遠距離恋愛をしていて、色々な不思議なことが起きたり旅行をしたりするんですけど、エルメスで働いている人たちの姿がたくさん小説の中に反映されていると思います。
エルメスの展覧会「彼女と。」と連動したこの小説は、全国のエルメスブティックで7月11日(水)からご希望の方に配布します。写真は日本を代表する写真家のひとり、米田知子さん、アートディレクションはグラフィックデザイナーの長嶋りかこさんが担当しています。同じく7月11日からスタートする展覧会「彼女と。」は、予約制となっています。気になった方は、特設サイトをご確認ください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
■7年ぶりの長編小説
朝吹さんは、1984年、東京生まれ。2009年に『流跡』でデビューし、翌年にドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年んいは『きことわ』で芥川賞を初候補で受賞して話題になりました。そして2018年6月に、7年ぶりの長編『TIMELESS』を上梓しました。
朝吹:7年というふうに数字で訊かれるとびっくりするというか。やはり短かった気もするし、長かった気もするし。連載小説でしたが、連載がはじまるまで6年くらいなんども書き続きていたので、ようやく形になってよかったなと思います。
クリス:「TIMELESS」というキーワードは『きことわ』の後、わりとすぐに生まれていたそうですね。物語は、どうやって作っていくんですか?
朝吹:私の場合は、いくつかのシーンが生まれてきます。『TIMELESS』だったら、主人公にあたる2人のうしろ姿だけみえていて。ススキ野原がみえて、恋愛関係でもなさそうだけど、何か親密な関係性をもって立っている。「どういう話になるんだろう?」というのをずっと追いかけて、何度も書いては消え、書いては消えて、泡みたいにどんどん浮かんでは消えて、イメージを追いかけ続けていたら6年くらい経ってしまったんですけど。
クリス:最初に「ここはこうだな」というのが見えるという感じなんですね。それが一体どこなのかというきっかけに、ある方の言葉もあったと……
朝吹:歴史学者の磯田道史さんですね。恋愛感情をもったことがない女性のうみと、アミという男の子。2人が恋愛関係はなくて、でも「生殖の交配をしよう」と結婚するんですけど、一体じゃあ2人が「どういうところからはじまるのか」というのがいまいちわからなくて。でも磯田さんと一緒に六本木通りを歩いていたときに、このあたりは江姫が火葬された場所だったということを教えていただいて。400年くらい前の六本木って、麻布ヶ原と呼ばれるかなり寂しいところだったんですよね。そこで江姫の遺体が焼かれて、ものすごい沈香木と一緒に焼かれたから、数キロにわたって首都高3号線の上とか六本木ヒルズの上とか、遺体のにおいと美しい沈香木の香りが雲になって流れていったと、その話を聞いた瞬間に、今の六本木と400年前の麻布ヶ原が重なって自分の目に見えて、「ああ、ここにうみとアミはずっといたんだ」と、合理的じゃないんですけど、確信があって、その日の夜からすごくいっぱい書いたのを覚えています。
■エルメスの展覧会のために執筆した小説
そんな朝吹さんは、国立新美術館で7月11日(水)からエルメスが開催する展覧会「彼女と。」と連動した小説も発表しました。
朝吹:すごく面白かったです。お話をいただいたのが1年くらい前で、エルメスの銀座店でなんとなくエルメスの方が、「朝吹さんとお茶がしたい」と(笑)。それでお茶をしに行きましたらなんとお仕事のお話をいただいて、しかも小説のお話で。ちょうど『TIMELESS』を書いている途中だったので、ちゃんとできるかなと思いながら、「すごく面白い新しい女性像を小説で書いてほしい」とお話をいただいて、2回ほどパリに行ったりして、すごく楽しかったです。
クリス:長さも程よく、短いですよね、朝吹さんにしては。どのように書いていったのですか?
朝吹:フランスの展覧会と並行する形だったので、「どういうふうにしようか」と何度も打ち合わせをして、10個のオブジェを自分で選んで、その中でどういうふうに物語をつくるかと。一番重要だったのは、エルメスが持っている新しい女性像をどういうふうに小説にしたらいいかと。プレフォールのコレクションを見に行ったんですけど、そのとき、フォーブル・サントノーレのお店の2階がショーの会場だったんです。2階にあがった瞬間に、ふわっと磯の香りがして、「なんで磯の香りがするんだろう」と下をみたら、床一面に、海藻とススキと苔と、本当に海辺の別荘とか海辺の景色が見えてきて、そうやって海の香りのする場所に変わっていたんです。それでデザイナーのナデージュ・ヴァネ=シビュルスキーさんのお洋服をその空間でみたんですけど、ナデージュさんのお洋服って、動きがエレガントで美しいんですよね。しなやかで、ぺたんこの乗馬ブーツで、自分の意思を持って、風をまとっているというか。自分の意思をもって海辺を歩いている女性の姿が浮かんで、自分でなんとなく作ってから行ったというよりも、エルメスのビジョンを貰いながら膨らましていったという感じです。
クリス:人物のストーリーがどんなふうに、というのは朝吹さんが考えていったのですか?
朝吹:そうです、本当になんでも自由にということだったので。主人公は古くから続いている和菓子屋さんで生まれた女性なんですけど、今は推理小説を書いていて、ニューヨークに住んでいるクリスという男性と遠距離恋愛をしていて、色々な不思議なことが起きたり旅行をしたりするんですけど、エルメスで働いている人たちの姿がたくさん小説の中に反映されていると思います。
エルメスの展覧会「彼女と。」と連動したこの小説は、全国のエルメスブティックで7月11日(水)からご希望の方に配布します。写真は日本を代表する写真家のひとり、米田知子さん、アートディレクションはグラフィックデザイナーの長嶋りかこさんが担当しています。同じく7月11日からスタートする展覧会「彼女と。」は、予約制となっています。気になった方は、特設サイトをご確認ください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。