J-WAVEで放送中の番組『RADIO DONUTS』(担当ナビゲーター:渡辺 祐・山田玲奈)のワンコーナー「TOKYO GAS LIFE IS A GIFT」。6月23日(土)のオンエアでは、CGモデラーの成田昌隆さんが登場。まもなく公開される『スター・ウォーズ』シリーズの最新作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に登場する、ミレニアム・ファルコンのCGモデリングを担当した日本人クリエイターです。
■モデリングとは? ファルコン号を120日かけて制作
まず、モデリングという仕事についてお訊きしました。
成田:モデリングは、わかりやすく言えば、コンピュータの上でプラモデルを作っているということを想像していただくとわかると思います。違うのは、プラモデルは箱の中にあらかじめ部品が入っていてそれを組み立てますが、私たちのCGモデリングの仕事は、その部品一つひとつをデザイン・クリエイトして、それを組み立ててひとつのモデルにしていきます。
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、ハン・ソロのレガシーがテーマです。ミレニアム・ファルコン号のレガシーも描かれており、成田さんは新しいファルコンを120日間かけて制作したと言います。
そんな成田さんは、ルーカスフィルムのVFX部門「インダストリアル・ライト&マジック(Industrial Light & Magic)」、通称「ILM」でCGモデリングを担当。2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、ミレニアム・ファルコン号をメインで担当しました。さらに、去年の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では、AT-M6やスキー・スピーダーなど、全てのメカのCGモデリングを担当し、大活躍しています。
■「どうしても映画の世界に入りたい」
しかし、モデラーとしてデビューしたのは2009年、成田さんが46歳のときです。それまではシリコンバレーで証券マンとして働いていたという、異色の経歴を持っています。
成田:95年に『トイ・ストーリー』が公開されて、あれを観たときに衝撃を受けました。私は、証券会社でIT部門といって、コンピュータを使って仕事をする技術者だったんです。「同じコンピュータを使う人たちがあんなに素晴らしい作品を作っているのに、自分は何をやっているんだろう」と、すごく焦りを感じたんです。同時に、映画の世界に入りたくて、でも何をやればいいかわからなかったんです。でも「CGというものがあるんだ」と、自分がメシを食っているコンピュータを使った仕事があるとわかった途端、いても立ってもいられなくなって。それで、CGのソフトを自分で買って勉強しました。2008年にリーマン・ショックが起きて、証券会社がおかしくなったときに、くすぶっていた炎が燃え上がって、「どうしても映画の世界に入りたい。CGがやりたい」とそう思ったんです。会社を辞めてCGの専門学校に行って、運良く仕事を得て、この世界に入ることができました。
■いきなり「作れ」と言われたものが…
証券会社からCGの世界に転職し、仕事を得た成田さん。その後、なぜミレニアム・ファルコンを作ることになったのでしょうか。
成田:『アイアンマン3』を違う会社で担当させていただいたときに、ハリウッドのVFXの業界にすごい構造変化が起こって、カナダとかイギリスとか、国を挙げてCGの仕事を税制優遇措置で持っていっちゃったんです。予算が40パーセントキックバックするとか、アメリカからどんどん仕事がなくなって、『アイアンマン3』も途中で会社が倒産しまして。運良く最後まで制作はできたんですけど、そのあと放りだされて失業の身ですよ。とにかく仕事さえもらえればいいと、仕事を探していたときに、「ILM」に一か八か応募してみたら、1~2カ月くらいのフリーランスの仕事で、テーマパークのライドロボットを作る仕事だったんですけど、それで雇っていただいて。
それだけで御の字だったんですが、ちょうどその頃は『フォースの覚醒』のスタッフィングをやりだした頃で、たまたま運がよかったのが、ライドのスーパーバイザーが『フォースの覚醒』のスーパーバイザーをやることに決まっていて。彼が僕の仕事ぶりを気に入ってくれたもんですから、4人いるモデラーの1人に選んでいただいた。ビックリしたのは、プロジェクトの初日にスーパーバイザーが来て、「これ作れ」って渡されたのが、ミレニアム・ファルコンだったんです。
■制作時の苦労
こうして、ミレニアム・ファルコンを手掛けることになった成田さん。その制作現場についても伺いました。
成田:『フォースの覚醒』のように、延長で作るのではなく、新しいデザインになっているんですね。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』では、ハン・ソロの船なんですが、今回はランド・カルリジアンの船で、宇宙最速の無骨なオンボロ船というコンセプト。ランドのキャラクターを考えると「それはあわない」と。宇宙一美しいスリムでスタイリッシュなミレニアム・ファルコン号があうということで、全く真逆のデザインコンセプトになっているんです。見栄えがかなり違っていまして、これが10年前の姿だと想定させるような、細かいデザインを踏襲して、そうした点がはずれないように新たな形を作るのが苦労した点です
一体、どのように作り上げていったのでしょうか?
成田:アートディレクター、コンセプトデザイナーとの緊密な連携が必要なんです。コンセプトデザイナーが作った2次元のデザイン画をもとに、私が形を起こしていくわけなんですけど、全部できてからではなく、日々ちょっとずつ作りながら「これはコンセプトに合っているんじゃないか」というコミュニケーションを取りながら、作り込んでいくものなんです。非常に抽象的な結果を求められる仕事で、“カッコイイ基準”というのが人それぞれなので、『トランスフォーマー』みたいになっちゃって「これは違うよね」とか。そういうことを見極める力が、モデラーには重視されるんです。たとえば、今回のミレニアム・ファルコン号では「スリーク」(流線型)というのがひとつのキーワードで、ゴツゴツしたところを減らしたりしました。
■アメリカの採用基準
最後に、「クリエイションの世界で大切なこと」を伺いました。
成田:アメリカは、採用時に年齢を訊いてはいけないんです。採用時、その人が男か女かを訊いてもいけない。ましてや、履歴書に写真を貼るなんてもってのほかで、顔で選んじゃいけない。どんな美術大学を卒業したというのも関係ないんですよ。過去どのような経歴で何をやったかで、アウトプットをみて判断する。結局何を見せられるかで、見せてそれがよければ採用される世界なんですよね。そういった世界ですから、自分が何歳であろうと頑張ればできるのではないかと思いますよね。その要素が僕には大きかったのかなと思います。
成田さんの作ったCGモデリングも注目の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、6月29日(金)に公開されます。120日かかったというミレニアム・ファルコン号、ぜひ大きなスクリーンで確認してみてください!
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【番組情報】
番組名:『RADIO DONUTS』
放送日時:土曜 8時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radiodonuts/
■モデリングとは? ファルコン号を120日かけて制作
まず、モデリングという仕事についてお訊きしました。
成田:モデリングは、わかりやすく言えば、コンピュータの上でプラモデルを作っているということを想像していただくとわかると思います。違うのは、プラモデルは箱の中にあらかじめ部品が入っていてそれを組み立てますが、私たちのCGモデリングの仕事は、その部品一つひとつをデザイン・クリエイトして、それを組み立ててひとつのモデルにしていきます。
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、ハン・ソロのレガシーがテーマです。ミレニアム・ファルコン号のレガシーも描かれており、成田さんは新しいファルコンを120日間かけて制作したと言います。
そんな成田さんは、ルーカスフィルムのVFX部門「インダストリアル・ライト&マジック(Industrial Light & Magic)」、通称「ILM」でCGモデリングを担当。2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、ミレニアム・ファルコン号をメインで担当しました。さらに、去年の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では、AT-M6やスキー・スピーダーなど、全てのメカのCGモデリングを担当し、大活躍しています。
■「どうしても映画の世界に入りたい」
しかし、モデラーとしてデビューしたのは2009年、成田さんが46歳のときです。それまではシリコンバレーで証券マンとして働いていたという、異色の経歴を持っています。
成田:95年に『トイ・ストーリー』が公開されて、あれを観たときに衝撃を受けました。私は、証券会社でIT部門といって、コンピュータを使って仕事をする技術者だったんです。「同じコンピュータを使う人たちがあんなに素晴らしい作品を作っているのに、自分は何をやっているんだろう」と、すごく焦りを感じたんです。同時に、映画の世界に入りたくて、でも何をやればいいかわからなかったんです。でも「CGというものがあるんだ」と、自分がメシを食っているコンピュータを使った仕事があるとわかった途端、いても立ってもいられなくなって。それで、CGのソフトを自分で買って勉強しました。2008年にリーマン・ショックが起きて、証券会社がおかしくなったときに、くすぶっていた炎が燃え上がって、「どうしても映画の世界に入りたい。CGがやりたい」とそう思ったんです。会社を辞めてCGの専門学校に行って、運良く仕事を得て、この世界に入ることができました。
■いきなり「作れ」と言われたものが…
証券会社からCGの世界に転職し、仕事を得た成田さん。その後、なぜミレニアム・ファルコンを作ることになったのでしょうか。
成田:『アイアンマン3』を違う会社で担当させていただいたときに、ハリウッドのVFXの業界にすごい構造変化が起こって、カナダとかイギリスとか、国を挙げてCGの仕事を税制優遇措置で持っていっちゃったんです。予算が40パーセントキックバックするとか、アメリカからどんどん仕事がなくなって、『アイアンマン3』も途中で会社が倒産しまして。運良く最後まで制作はできたんですけど、そのあと放りだされて失業の身ですよ。とにかく仕事さえもらえればいいと、仕事を探していたときに、「ILM」に一か八か応募してみたら、1~2カ月くらいのフリーランスの仕事で、テーマパークのライドロボットを作る仕事だったんですけど、それで雇っていただいて。
それだけで御の字だったんですが、ちょうどその頃は『フォースの覚醒』のスタッフィングをやりだした頃で、たまたま運がよかったのが、ライドのスーパーバイザーが『フォースの覚醒』のスーパーバイザーをやることに決まっていて。彼が僕の仕事ぶりを気に入ってくれたもんですから、4人いるモデラーの1人に選んでいただいた。ビックリしたのは、プロジェクトの初日にスーパーバイザーが来て、「これ作れ」って渡されたのが、ミレニアム・ファルコンだったんです。
■制作時の苦労
こうして、ミレニアム・ファルコンを手掛けることになった成田さん。その制作現場についても伺いました。
成田:『フォースの覚醒』のように、延長で作るのではなく、新しいデザインになっているんですね。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』では、ハン・ソロの船なんですが、今回はランド・カルリジアンの船で、宇宙最速の無骨なオンボロ船というコンセプト。ランドのキャラクターを考えると「それはあわない」と。宇宙一美しいスリムでスタイリッシュなミレニアム・ファルコン号があうということで、全く真逆のデザインコンセプトになっているんです。見栄えがかなり違っていまして、これが10年前の姿だと想定させるような、細かいデザインを踏襲して、そうした点がはずれないように新たな形を作るのが苦労した点です
一体、どのように作り上げていったのでしょうか?
成田:アートディレクター、コンセプトデザイナーとの緊密な連携が必要なんです。コンセプトデザイナーが作った2次元のデザイン画をもとに、私が形を起こしていくわけなんですけど、全部できてからではなく、日々ちょっとずつ作りながら「これはコンセプトに合っているんじゃないか」というコミュニケーションを取りながら、作り込んでいくものなんです。非常に抽象的な結果を求められる仕事で、“カッコイイ基準”というのが人それぞれなので、『トランスフォーマー』みたいになっちゃって「これは違うよね」とか。そういうことを見極める力が、モデラーには重視されるんです。たとえば、今回のミレニアム・ファルコン号では「スリーク」(流線型)というのがひとつのキーワードで、ゴツゴツしたところを減らしたりしました。
■アメリカの採用基準
最後に、「クリエイションの世界で大切なこと」を伺いました。
成田:アメリカは、採用時に年齢を訊いてはいけないんです。採用時、その人が男か女かを訊いてもいけない。ましてや、履歴書に写真を貼るなんてもってのほかで、顔で選んじゃいけない。どんな美術大学を卒業したというのも関係ないんですよ。過去どのような経歴で何をやったかで、アウトプットをみて判断する。結局何を見せられるかで、見せてそれがよければ採用される世界なんですよね。そういった世界ですから、自分が何歳であろうと頑張ればできるのではないかと思いますよね。その要素が僕には大きかったのかなと思います。
成田さんの作ったCGモデリングも注目の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、6月29日(金)に公開されます。120日かかったというミレニアム・ファルコン号、ぜひ大きなスクリーンで確認してみてください!
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番組名:『RADIO DONUTS』
放送日時:土曜 8時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radiodonuts/
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