J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組「J-WAVE SELECTION」。毎月第3日曜は、東日本大震災の被災地を訪れ、復興の現状をお伝えする「Hitachi Systems HEART TO HEART」(ナビゲーター:重松 清)をお届けしています。
5月20日(日)のオンエアでは、いわて復興ツーリズム推進協議会のメンバーとして、被災地を学びの場とすべくプログラム開発支援を続けている、経営コンサルタントの守屋智敬さんがゲストに登場。「震災後のリーダー」について一緒に考えました。
■「社員をクビにしないで済むように」
重松:もともとリーダーの育成に携わっている守屋さんも、被災地から学ぶことは多いんですか?
守屋:とっても多いですね。私自身、被災地には数え切れないほど訪れています。リーダーということだけではなくて、人としての生き方やリーダーのあり方について本当に多くを学ばせていただいています。
重松は今回、気仙沼市と南三陸町にて被災地のリーダーを取材。話を伺ったひとりは、納品まで数カ月待ちという人気商品もある、宮城県気仙沼市の編み物会社「株式会社気仙沼ニッティング」の社長・御手洗瑞子さんです。
御手洗さんは東京大学を卒業後、コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」を経て、ブータン政府の首相フェローとして同国の産業育成に尽力。その後、知り合いのコピーライター・糸井重里さんから「気仙沼で編み物会社の社長をやりませんか」と誘いを受け、未経験ながらもゼロから起業。そんな御手洗さんに、起業の理由と会社の未来像について伺いました。
御手洗:編み物の会社というと、突拍子もないように思うかも知れませんが、“明日にでも始められること”だった。具体的には、編み物は編み針と毛糸さえあれば、建物がなくても始められますよね。縫い物だとミシンを置く場所の確保が難しい状況でしたが、「編み物であればできる。では、やろう」と。この地で被災した会社の社長さんたちは、新しい事業に勝算があるかどうかではなくて、社員さんをクビにしないですむようにと考えているんです。
重松:みんなの生活のために。
御手洗:はい。みんなが何かやらなくてはいけない環境であった。そのために本当に大変な人たちが頑張っている姿を見ていて、編み物の会社は少なくともその営みができる。それを望んでくれる人たちがいるだろう。「これは決心してやることだな」と思いました。震災直後、会社を立ち上げた直後からずっと思っているのは、震災がきっかけで生まれたことを忘れられていて、ただ「いいな」「いつかあそこの物がほしいな」っていう気持ちでお客さんが買ってくれている。そして、そういう仕事をしていることを、働く人たちが誇りに感じられる。そうした循環になればいいなと思っています。
■できることから始めていく
御手洗さんの話を聞いて、「起業は計算ではないんだな」と守屋さん。
守屋:「ここからならできるかな」と一歩踏み出すことに対して、「これをやらなきゃ」とか「これがないからできない」とか考えるのではなくて、「ここからならできるだろ」。正解だから決めるというよりは、決めたことをいかに正解にできるかだと。正解というのも、何か大きな収益を得るとかではなくて。「社員をクビにしないですむように」という、とても切実で現実的なことが、御手洗さんのひとつの正解なのではないかなと思います。「働いている方々が誇りを持って働ける、そして生活を維持していける。そのための器(場所)を作っているんだ」と話す御手洗さんの「できることから始めていこう」という考えに感銘を受けました。
被災地のリーダーに共通することは「自分のために生きていること」だと守屋さんは話します。
守屋:それは自分だけのために生きるという自己中心的なことではなく、自分の使命のために生きることだと非常に感じます。“誰かのために、何かのために”といっても、自分を犠牲にすることはよくない。誰かのために自分ができることを、できる範囲で、少しでもいいからやってみよう……このように一歩一歩を重ねていく生き方が、被災地のリーダーに共通することじゃないかなと思います。
重松:全てがない状態からはじまったから、できることが本当に少ない。その少ないできることから、一歩ずつ広げていく。逆説的ですが、できることが絞られているからこそ、そこに向かって進んでいかれたんじゃないかなと思います。そうなると震災から7年が経って、できることが広がってきたという感慨がみなさん大きいのではないでしょうか。
守屋:大きいと思います。7年のなかで、うまくいったところもあれば、うまくいかなかったところもあるでしょうが、“私は一つ一つやっていく”ということは、決して理屈で考えたんじゃないと思います。できることは限られている。いろんなものを失った。だからこそ一歩やってみよう。一歩やってみたら結果が出るわけですね。それは関わった方々の笑顔であったり、いままでなかった物が生み出せたり。「じゃあ、もう一歩いってみようかな」と一歩一歩やってみると現れてくるものにまた希望を感じてさらに一歩を踏み出してみる。やりながら一歩を踏み出すことの大切さであったり、何もなくなっても踏み出せるんだということを、被災地の方々はやりながら学ばれているような気がします。
番組では他にも、地域の問題を解決するために起業したバイオマス発電会社の社長や、自社のことだけではなく、地域のことを考えて様々な取り組みをしているホテルの女将さんを取材した内容なども紹介しました。番組の公式サイトでは、取材時の写真も掲載しています。ぜひご覧ください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜日22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
5月20日(日)のオンエアでは、いわて復興ツーリズム推進協議会のメンバーとして、被災地を学びの場とすべくプログラム開発支援を続けている、経営コンサルタントの守屋智敬さんがゲストに登場。「震災後のリーダー」について一緒に考えました。
■「社員をクビにしないで済むように」
重松:もともとリーダーの育成に携わっている守屋さんも、被災地から学ぶことは多いんですか?
守屋:とっても多いですね。私自身、被災地には数え切れないほど訪れています。リーダーということだけではなくて、人としての生き方やリーダーのあり方について本当に多くを学ばせていただいています。
重松は今回、気仙沼市と南三陸町にて被災地のリーダーを取材。話を伺ったひとりは、納品まで数カ月待ちという人気商品もある、宮城県気仙沼市の編み物会社「株式会社気仙沼ニッティング」の社長・御手洗瑞子さんです。
御手洗さんは東京大学を卒業後、コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」を経て、ブータン政府の首相フェローとして同国の産業育成に尽力。その後、知り合いのコピーライター・糸井重里さんから「気仙沼で編み物会社の社長をやりませんか」と誘いを受け、未経験ながらもゼロから起業。そんな御手洗さんに、起業の理由と会社の未来像について伺いました。
御手洗:編み物の会社というと、突拍子もないように思うかも知れませんが、“明日にでも始められること”だった。具体的には、編み物は編み針と毛糸さえあれば、建物がなくても始められますよね。縫い物だとミシンを置く場所の確保が難しい状況でしたが、「編み物であればできる。では、やろう」と。この地で被災した会社の社長さんたちは、新しい事業に勝算があるかどうかではなくて、社員さんをクビにしないですむようにと考えているんです。
重松:みんなの生活のために。
御手洗:はい。みんなが何かやらなくてはいけない環境であった。そのために本当に大変な人たちが頑張っている姿を見ていて、編み物の会社は少なくともその営みができる。それを望んでくれる人たちがいるだろう。「これは決心してやることだな」と思いました。震災直後、会社を立ち上げた直後からずっと思っているのは、震災がきっかけで生まれたことを忘れられていて、ただ「いいな」「いつかあそこの物がほしいな」っていう気持ちでお客さんが買ってくれている。そして、そういう仕事をしていることを、働く人たちが誇りに感じられる。そうした循環になればいいなと思っています。
■できることから始めていく
御手洗さんの話を聞いて、「起業は計算ではないんだな」と守屋さん。
守屋:「ここからならできるかな」と一歩踏み出すことに対して、「これをやらなきゃ」とか「これがないからできない」とか考えるのではなくて、「ここからならできるだろ」。正解だから決めるというよりは、決めたことをいかに正解にできるかだと。正解というのも、何か大きな収益を得るとかではなくて。「社員をクビにしないですむように」という、とても切実で現実的なことが、御手洗さんのひとつの正解なのではないかなと思います。「働いている方々が誇りを持って働ける、そして生活を維持していける。そのための器(場所)を作っているんだ」と話す御手洗さんの「できることから始めていこう」という考えに感銘を受けました。
被災地のリーダーに共通することは「自分のために生きていること」だと守屋さんは話します。
守屋:それは自分だけのために生きるという自己中心的なことではなく、自分の使命のために生きることだと非常に感じます。“誰かのために、何かのために”といっても、自分を犠牲にすることはよくない。誰かのために自分ができることを、できる範囲で、少しでもいいからやってみよう……このように一歩一歩を重ねていく生き方が、被災地のリーダーに共通することじゃないかなと思います。
重松:全てがない状態からはじまったから、できることが本当に少ない。その少ないできることから、一歩ずつ広げていく。逆説的ですが、できることが絞られているからこそ、そこに向かって進んでいかれたんじゃないかなと思います。そうなると震災から7年が経って、できることが広がってきたという感慨がみなさん大きいのではないでしょうか。
守屋:大きいと思います。7年のなかで、うまくいったところもあれば、うまくいかなかったところもあるでしょうが、“私は一つ一つやっていく”ということは、決して理屈で考えたんじゃないと思います。できることは限られている。いろんなものを失った。だからこそ一歩やってみよう。一歩やってみたら結果が出るわけですね。それは関わった方々の笑顔であったり、いままでなかった物が生み出せたり。「じゃあ、もう一歩いってみようかな」と一歩一歩やってみると現れてくるものにまた希望を感じてさらに一歩を踏み出してみる。やりながら一歩を踏み出すことの大切さであったり、何もなくなっても踏み出せるんだということを、被災地の方々はやりながら学ばれているような気がします。
番組では他にも、地域の問題を解決するために起業したバイオマス発電会社の社長や、自社のことだけではなく、地域のことを考えて様々な取り組みをしているホテルの女将さんを取材した内容なども紹介しました。番組の公式サイトでは、取材時の写真も掲載しています。ぜひご覧ください。
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【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜日22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
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