大御所は官能小説を書きたくなる!?

J-WAVE土曜24時からの「BOOK BAR」(ナビゲーター:大倉眞一郎・杏)。9月10日のオンエアでは、ナビゲーターの大倉眞一郎が今読みたい本として『伯爵夫人』をセレクト。その面白さを紹介しました。

『伯爵夫人』は、フランス文学、映画評論家の大御所にして、東京大学の総長を務めあげた蓮實重彦さんが書いた小説。同作が三島由紀夫賞を受賞し、優れた新人に贈られるこの賞が、80歳の重鎮に与えられたことに世間が驚かされました。何より、「馬鹿な質問はやめていただけますか」などと蓮實さんが不機嫌に徹し、記者たちを凍り付かせた会見シーンは記憶に新しいのではないでしょうか。

大倉がこの小説に興味を持ったのは、この記者会見。「見ている分には最高に面白くて。当然のことながら、そうすると読みたくなるわけです。私のような人間が読んでウワーッと思ったんですね。蓮實さん、よく書いたなと」(大倉)。

というのも、この小説は全編が音読できないほどの言葉で連ねられる官能小説。青年が伯爵夫人に性の手ほどきを受けるという内容なのですが、直接的な言葉のオンパレードに、ナビゲーターの杏も「ここまでのは…読んだことがない」とたじたじ。これまで多くの著作物のある大御所の蓮實さんが、80歳にして書き上げた小説が、官能を追求したものだったというそのギャップに、大倉は痛快さを感じたのだとか。

実は、大御所が晩年になって、官能小説を書いた例は少なくありません。例えば、川端康成、室生犀星、谷崎潤一郎など。

「大御所になると、みんなちょっとおかしな小説を書くんですね。文章は格調が高いんですよ。高いんですが展開と言葉遣いは『ハアーッ?』みたいな。そのまま、ここじゃ言えません、みたいなお言葉が並ぶんですね。谷崎潤一郎の『痴人の愛』しかり、室生犀星の『蜜のあわれ』しかり。フランスの詩人ギヨーム・アポリネールが『一万一千本の鞭』という、これはポルノとしか言えないだろうというような小説を書いていたり…。これは年を取ると、そういうものが『いいんだよ、これで俺』という気分になったりするんじゃないかなと。その辺が面白いなと思って」(大倉)

ポルノと読むか、あるいはそこに格調高き文学を見いだすのか。大御所、蓮實重彦さんが満を期して書いた『伯爵夫人』。一読してみては?

【関連サイト】
「BOOK BAR」オフィシャルサイト
http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/

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