小説家の朝吹真理子が、自宅の本棚のなかからお気に入りの本を紹介し、最新刊『閉じた目』(新潮社)について語った。
朝吹が登場したのは、9月20日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」。本棚からゲストのクリエイティブを探るコーナーだ。
この日、朝吹は「積読」(つんどく)をテーマにした丸善ジュンク堂書店のキャラクターシリーズ「つんどくず」から、古典籍が大好きな「つむむ」のぬいぐるみと一緒にスタジオに登場。朝吹が見せてくれた自宅の本棚の写真にも、古典文学の書籍とともに、つむむが写り込んでいる。
朝吹:講談社学術文庫がすごく好きで、日本の古典籍が並んでいる本棚があります。本棚がキチキチなんですけど、あるとき『枕草子』を読もうと思って上巻を抜いたらそのまま家のどこかにいってしまって、代わりにつむむが挟まれている状態です(笑)。うちは本のなかに家のスペースがあるような感じで、こんなことばっかりです。本を中心に家が存在しているので、「床が沈むんじゃないか」とか心配ですね(笑)。
小川:あははは(笑)! でも、つむむくんは古典籍が好きということなので、このスペースはけっこう喜びなんじゃないですか。
朝吹:そうですね。しばらく(『枕草子』の)代わりにいてもらおうと思います(笑)。
小川:2枚目の本棚は、江戸川乱歩や谷崎潤一郎などの本ですね。
朝吹:これはちくま文庫の「ちくま日本文学」というシリーズです。私はこれがとても好きで、大学時代にはとにかく片っ端から読むというのが楽しかったです。一人ひとり選者がいて、その人があらゆる著作物のなかから選んだ内容になっています。文庫サイズなので、有名な文章でも一部が抜粋されていることもあるんですけど、いろいろな人の文章を文庫サイズの小さい全集として持てるというのがいいなと思って、ずっと好きですし、素晴らしいシリーズだと思っています。
小川:なるほど。たとえば、谷崎潤一郎だったら『痴人の愛』だけではなくて、いくつかの作品が入っているということですか?
朝吹:はい。いわゆるエッセイから短い小説、ないしは(長編小説の)断片的な部分などで構成されていて、それがすごく面白いです。
小川:いいですね、日本文学のベテランを網羅できそうな感じがします。
朝吹:そうですね。私は石川 淳とかはこれで初めて知って読みました。また、いわゆる小説家だけではなく、花田清輝のような批評家や、民俗学者の本も読めるのでとてもいいシリーズだと思います。
小川:3枚目の本棚には『チェス入門』など、いろいろな単行本が並んでいますね。
朝吹:大学、大学院時代に読んでいた本がありますね。『チェス入門』は、小学校のときにパソコンのなかでチェスができるゲームにハマって、そのときにもらったものです。当時、学校で友だちが誰もいなかったので、休み時間に『チェス入門』をひとりで読んでいました(笑)。
小川:朝吹さんを作った本と言っても、過言ではない1冊ですね。
朝吹:そうですね。ページを開くと出席番号が書いてあって、すごくつらかった日々を思い出します(笑)。
小川:歴史を感じる1冊です。
朝吹:私は、いろいろなところで迷ってしまったり、外で何をするのか忘れてしまったり、誰とどこで会うのかわからないけども土地の場所と時刻だけ書いてあるGoogleの予定表があったりすることがあって。そうして、混乱しているときに、いつも友だちから「カフカ状態になっている」と言われていて、「“カフカ状態”っていうのは、小説のなかだとどういうことなんだろう?」と思っていたんです。もともと『城』は持ってはいたのですが、まさに積読で、家のなかに絶対あるはずなのに見つけられなくて、「もう仕方がない」と思って、このあいだ書店で手に入れて、いま読んでいる途中です。
小川:では、ある種、自分の状態を確かめるためでもあるということですね。
朝吹:文庫本は小さいので(本棚の)奥と手前の2段につめていて、それが上下にあるので4段くらいつまっているのですが、それを3日間ぐらい引っこ抜いたり入れたりしても見当たりませんでした。
小川:どこかのタイミングで、出てくるんでしょうね。
朝吹:こういうのって「もういいかな」というときにすっと出てきたり、あと、たまに布バッグのなかに入っているんですよね。
小川:それが出てくるのも、楽しみにしております(笑)。
続いて朝吹は、ライフスタイル、人生に影響を与えた1冊として詩人・吉増剛造が1995年に刊行した『花火の家の入口で』(青土社)を挙げた。
朝吹:大学時代に吉増剛造さんのことを知って、「本当に素晴らしい詩だ」と思って、朗読会にもお邪魔しました。吉増剛造さんは『奥の細道』や松尾芭蕉にもすごくお詳しいんですけど、そのことを知っていたので、まだ幼かった私は「今年の夏休みに、家族と『奥の細道』をたどる旅をするんです」と、勢い余って話しかけてしまったんです。そうしたら、吉増さんが「よかったら、ここにお手紙をください」とサササっと書いたメモをくださいました。私が吉増さんの詩への敬愛や感想、『奥の細道』を訪ねた旅のことなどを大量の手紙で書くと、吉増さんからお葉書が返ってくるという、細い糸のような文通が数カ月おきに続いて、それがきっかけで私は小説を書き始めました。ですから、書くことにおいても、私にとってとても大事な方です。
朝吹:吉増さんの言葉の一つひとつは、吉増さんのもとへ電撃的にやってきた言葉を書き綴っていっている感覚があります。それぞれの言葉にはかつて書かれた詩への応答だったり、かつて哲学者が思考した考えへの応答だったり、自分の近しい人の言葉だったりが幾重にも重なっていて、それがひとつの言葉に連綿と続いて、文学や詩への考えが込められているように思います。だからすごく秘密めいた感じで、一見すると言っている意味がわからない。けれど、持っている音のリズムや、声のなかにたくさんの声があるというのがすごく好きで、よく読んでいました。
小川:たしかに、パっと読んで「不思議だな」と思うけど、響きがすごく素敵ですよね。
朝吹:ですよね。ひとつの詩のなかにたくさんのイメージや、たくさんの誰かから聞いた声が入っていて、そういった「詩の運動」みたいなものに、私はすごく強く影響を受けていると思います。
朝吹は8月26日(水)に新刊『閉じた目』(新潮社)を発売。同書は「岡山芸術交流2025 青豆の公園」のために書き下ろされたものだという。
朝吹:2025年に、岡山市で「岡山芸術交流」という芸術祭があって、それに呼んでいただいて。芸術祭中にいろいろな場所を訪ねて、それを一篇の小説にしました。その一篇の小説自体が「岡山芸術交流」という芸術祭そのものを表現しているという体裁でできていて、小説なんだけど、同時に公式カタログでもあるというすごく不思議な本になっています。
小川:主人公の可子さんが持っている心の痛みや、訪れた岡山という土地が持っている歴史の痛みなどがすごく渦巻いていて、これを芸術祭で、この土地で書いたんだということにけっこう驚きました。
朝吹:読んでくださってありがとうございます。さっきの吉増さんの話にも通じますが、岡山に長く滞在して、東京にいた岡山出身の人にも岡山の好きなところや嫌いなところなどのいろいろな話を聞きました。それでいろいろな人の声が自分のなかにたくさんやってきたときに、現代の岡山で可子という人がひと晩ホテルで眠るんですけど、そのあいだにたくさんの岡山空襲の声や、明治時代にあった農民一揆の集団の暴力といったものが可子のなかにやってくる、そんな話になるのではと思いました。けっこう陰惨な小説になってしまったなと思いますが、岡山空襲や農民一揆といった昔の話ではあるものの、現在もまったく変わっていない暴力の構造があるんじゃないかなと思いながら書いていました。
小川:声として降ってくるのは昔の空襲や農民一揆の人たちのものですが、それが可子の生きている現代、そして私たちの生きている現代にすごく皮肉的につながってきたりして、面白かったです。
朝吹:ありがとうございます。
『閉じた目』は300部限定の特別版として発売され、完売。現在は電子書籍版で読むことができる。朝吹真理子の最新情報はInstagram公式アカウント(@mariko_asabuki)まで。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、本棚からゲストのクリエイティブを探る。オンエアは10時5分ごろから。
朝吹が登場したのは、9月20日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」。本棚からゲストのクリエイティブを探るコーナーだ。
本であふれた家のなかで、特に気に入っているシリーズ
朝吹真理子は、大学院在学中に小説を書き始め、2009年に『流跡』で小説家デビュー。2010年、同作で第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少で受賞。その後、2011年には『きことわ』で芥川賞も受賞している。この日、朝吹は「積読」(つんどく)をテーマにした丸善ジュンク堂書店のキャラクターシリーズ「つんどくず」から、古典籍が大好きな「つむむ」のぬいぐるみと一緒にスタジオに登場。朝吹が見せてくれた自宅の本棚の写真にも、古典文学の書籍とともに、つむむが写り込んでいる。
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本棚からお気に入りの本をご紹介#jwave #sky813 pic.twitter.com/keDZqKcrrh
小川:あははは(笑)! でも、つむむくんは古典籍が好きということなので、このスペースはけっこう喜びなんじゃないですか。
朝吹:そうですね。しばらく(『枕草子』の)代わりにいてもらおうと思います(笑)。
小川:2枚目の本棚は、江戸川乱歩や谷崎潤一郎などの本ですね。
朝吹:これはちくま文庫の「ちくま日本文学」というシリーズです。私はこれがとても好きで、大学時代にはとにかく片っ端から読むというのが楽しかったです。一人ひとり選者がいて、その人があらゆる著作物のなかから選んだ内容になっています。文庫サイズなので、有名な文章でも一部が抜粋されていることもあるんですけど、いろいろな人の文章を文庫サイズの小さい全集として持てるというのがいいなと思って、ずっと好きですし、素晴らしいシリーズだと思っています。
小川:なるほど。たとえば、谷崎潤一郎だったら『痴人の愛』だけではなくて、いくつかの作品が入っているということですか?
朝吹:はい。いわゆるエッセイから短い小説、ないしは(長編小説の)断片的な部分などで構成されていて、それがすごく面白いです。
小川:いいですね、日本文学のベテランを網羅できそうな感じがします。
朝吹:そうですね。私は石川 淳とかはこれで初めて知って読みました。また、いわゆる小説家だけではなく、花田清輝のような批評家や、民俗学者の本も読めるのでとてもいいシリーズだと思います。
小川:3枚目の本棚には『チェス入門』など、いろいろな単行本が並んでいますね。
朝吹:大学、大学院時代に読んでいた本がありますね。『チェス入門』は、小学校のときにパソコンのなかでチェスができるゲームにハマって、そのときにもらったものです。当時、学校で友だちが誰もいなかったので、休み時間に『チェス入門』をひとりで読んでいました(笑)。
小川:朝吹さんを作った本と言っても、過言ではない1冊ですね。
朝吹:そうですね。ページを開くと出席番号が書いてあって、すごくつらかった日々を思い出します(笑)。
小川:歴史を感じる1冊です。
小説家としての人生に大きな影響を与えた、ある詩人の存在
自らも小説家としてさまざまな作品を手がける朝吹さんが、最近読んだなかで本棚に残したいのは、1926年にフランツ・カフカが書いた『城』だと言う。DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF
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作家 #朝吹真理子 さんが
最近、本棚に残したいと思った本
フランツ・カフカ「城」
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小川:では、ある種、自分の状態を確かめるためでもあるということですね。
朝吹:文庫本は小さいので(本棚の)奥と手前の2段につめていて、それが上下にあるので4段くらいつまっているのですが、それを3日間ぐらい引っこ抜いたり入れたりしても見当たりませんでした。
小川:どこかのタイミングで、出てくるんでしょうね。
朝吹:こういうのって「もういいかな」というときにすっと出てきたり、あと、たまに布バッグのなかに入っているんですよね。
小川:それが出てくるのも、楽しみにしております(笑)。
続いて朝吹は、ライフスタイル、人生に影響を与えた1冊として詩人・吉増剛造が1995年に刊行した『花火の家の入口で』(青土社)を挙げた。
📚DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF📚
— ACROSS THE SKY (@acrossthesky813) September 20, 2026
✍️作家 #朝吹真理子 さんの
人生に影響を与えた一冊💁♂️
🎇吉増剛造「花火の家の入口で」
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多くの“声”に耳を傾け、書き上げた1冊
朝吹は、『花火の家の入口で』は活版印刷の美しさも特徴だという。「今は古書でしか手に入らないと思うので、ぜひ古書店で見ていただけたら」とリスナーに呼びかけ、吉増剛造の魅力をさらに語る。朝吹:吉増さんの言葉の一つひとつは、吉増さんのもとへ電撃的にやってきた言葉を書き綴っていっている感覚があります。それぞれの言葉にはかつて書かれた詩への応答だったり、かつて哲学者が思考した考えへの応答だったり、自分の近しい人の言葉だったりが幾重にも重なっていて、それがひとつの言葉に連綿と続いて、文学や詩への考えが込められているように思います。だからすごく秘密めいた感じで、一見すると言っている意味がわからない。けれど、持っている音のリズムや、声のなかにたくさんの声があるというのがすごく好きで、よく読んでいました。
小川:たしかに、パっと読んで「不思議だな」と思うけど、響きがすごく素敵ですよね。
朝吹:ですよね。ひとつの詩のなかにたくさんのイメージや、たくさんの誰かから聞いた声が入っていて、そういった「詩の運動」みたいなものに、私はすごく強く影響を受けていると思います。
朝吹は8月26日(水)に新刊『閉じた目』(新潮社)を発売。同書は「岡山芸術交流2025 青豆の公園」のために書き下ろされたものだという。
朝吹:2025年に、岡山市で「岡山芸術交流」という芸術祭があって、それに呼んでいただいて。芸術祭中にいろいろな場所を訪ねて、それを一篇の小説にしました。その一篇の小説自体が「岡山芸術交流」という芸術祭そのものを表現しているという体裁でできていて、小説なんだけど、同時に公式カタログでもあるというすごく不思議な本になっています。
小川:主人公の可子さんが持っている心の痛みや、訪れた岡山という土地が持っている歴史の痛みなどがすごく渦巻いていて、これを芸術祭で、この土地で書いたんだということにけっこう驚きました。
朝吹:読んでくださってありがとうございます。さっきの吉増さんの話にも通じますが、岡山に長く滞在して、東京にいた岡山出身の人にも岡山の好きなところや嫌いなところなどのいろいろな話を聞きました。それでいろいろな人の声が自分のなかにたくさんやってきたときに、現代の岡山で可子という人がひと晩ホテルで眠るんですけど、そのあいだにたくさんの岡山空襲の声や、明治時代にあった農民一揆の集団の暴力といったものが可子のなかにやってくる、そんな話になるのではと思いました。けっこう陰惨な小説になってしまったなと思いますが、岡山空襲や農民一揆といった昔の話ではあるものの、現在もまったく変わっていない暴力の構造があるんじゃないかなと思いながら書いていました。
小川:声として降ってくるのは昔の空襲や農民一揆の人たちのものですが、それが可子の生きている現代、そして私たちの生きている現代にすごく皮肉的につながってきたりして、面白かったです。
朝吹:ありがとうございます。
『閉じた目』は300部限定の特別版として発売され、完売。現在は電子書籍版で読むことができる。朝吹真理子の最新情報はInstagram公式アカウント(@mariko_asabuki)まで。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、本棚からゲストのクリエイティブを探る。オンエアは10時5分ごろから。
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2026年9月27日28時59分まで
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