「なぜホラーサウンドは人の肝を冷やすのか」をテーマに、恐怖を感じさせる音の正体に迫った。
この内容をお届けしたのは、7月7日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
さらに、アイスクリームトラックで子どもたちに菓子を配る「アイスクリームマン」が街を狂気へと陥れていく『Ice Cream Man』は8月にアメリカで公開予定。加えて、『バイオハザード』シリーズの新作も今秋の公開が予定されている。
日本でも、清水 崇監督による学園ホラー『だぁれかさんとアソぼ?』(7月24日公開)や、都市伝説とSNSを題材にした『口に関するアンケート』(7月3日公開)など、注目作が続々と登場する。
今回は、こうしたホラー映画で印象的に用いられる「音」や「音楽」に焦点を当て、「なぜホラーサウンドは人の肝を冷やすのか」をテーマに、涼しさや恐怖を感じさせる音の正体について掘り下げた。まず、番組ではアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『サイコ』(1960年公開)のサウンドトラックから、バーナード・ハーマンの『The Murder』をオンエアした。
市川:今ではバラエティー番組などでも恐怖を演出する音楽の定番として使われていますが、弦を強く押さえつけて、きしませるような音をあえて出しています。短く鋭いアクセントによって、悲鳴や刃物、危険といったイメージを一瞬で連想させるよう緻密に計算されていて、それが繰り返されるからこそ怖いんですよね。映画を観ていない人でも恐怖を感じられる、非常に巧みな演出だと思います。さらにこの曲は、途中で急に音量が変化したり音が止まったりするわけではなく、ひたすらバイオリンの音が繰り返されます。だからこそ、人は「この先、何かが起こるのではないか」と勝手に予感してしまう。実によくできた音楽だと思います。
市川:『サスペリア』の日本公開時のキャッチコピーは「決してひとりでは見ないでください」で、これが大流行したそうです。後半は一気にテンポアップして、ロックサウンドへと変化していきます。興味のある方はぜひフルで聴いてみてください。グロッケンシュピール(鉄琴)のかわいらしい妖精のような音色に、太く少しかすれた男性の声。そのアンバランスさが怖いのかもしれません。メルヘンな雰囲気との対比にゾッとさせられるものがあります。やはり、人の声は恐怖を演出する大きな要素ですね。
次に紹介したのは、アリ・アスター監督作『ミッドサマー』(2019年公開 ※日本公開は2020年)のサウンドトラックから『Gassed』。劇中でも特に衝撃的な場面で使用される楽曲で、冒頭では狂気を感じさせる女性の声が響き、その後、不協和音を奏でるバイオリンが重なり合うことで、観る者の恐怖を一層かき立てていく。
市川:まさに恐怖の音のお手本のような楽曲です。怖さを生み出している要素は、まず音程が居場所を失っているように感じられることです。はっきりした長調でも短調でもない、音が宙に浮き、どこへ向かうのかわからない。その曖昧さに脳は強い不安を覚えるのではないでしょうか。さらに、バイオリンが歌っているというより苦しんでいるように聴こえる。この使い方は『サイコ』にも通じるものがあります。鳴き声やすすり泣き、人の息づかいのように聴こえてくるんですよね。
1973年に発表された同曲について、市川は「8分の7拍子と8分の8拍子を繰り返しながらメロディーが積み重なっていく、とてもシンプルながら美しい曲、なのにじわじわ怖い」と語る。その後、映画『エクソシスト』(1973年公開 ※日本公開は1974年)のテーマ曲として広く知られるようになったが、権利上の都合から、劇中ではマイク・オールドフィールド本人の演奏ではなく、別の演奏者によるバージョンが使用されたという。
市川:なんだろう……穏やかで美しいのに、何かが解決しそうで解決しない感覚があります。同じメロディーが何度も繰り返され、普通のポップスのような「ここで終わり」という着地点がありません。終わりそうで終わらない。家の中を歩いていたはずなのに、また同じ廊下へ戻ってきてしまうような感覚というか。日常が少しずつ壊れていくような感覚が恐怖につながっているのでしょうか。ちなみに、この作品は第17回グラミー賞で最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞しています。
続いて、映画『ハロウィン』(1978年公開 ※日本公開は1979年)のテーマ曲を紹介。シンプルな旋律を繰り返しながら、じわじわと不安や緊張感を高めていくサウンドが印象的な作品だ。
市川:これまでに紹介した楽曲を振り返ると、恐怖をかき立てる音にはメロディーによるものもあれば、突然の大きな音、人の声、聴き慣れた音なのにどこか違和感があるものなど、さまざまな要素があります。一方で、あまり聞いたことのない音も、人の警戒心や恐怖心を刺激します。
番組では、「ウォーターフォン」という楽器の音をオンエアした。
市川:私は「ひー」となりましたが、みなさんいかがでしょうか。まさにホラー映画の効果音などによく使われている音です。おそらく、聴いたことがある方も多いと思います。ウォーターフォンは見た目も面白くて、キッチンのボウルを逆さまにしたような土台で、そこに水が入っていて、その土台にいろいろな長さのポールがついています。そのポールを弓でこすることで不思議な音が出るという楽器です。金属を弓でこすっている時点でゾワッとするような音が出るわけで、さらに土台に水が入っているから不思議な反響が起こるわけです。
ウォーターフォンをはじめ、「ミュージックソー」や「テルミン」、「トイピアノ」といった楽器、さらには錆びた農機具までも作品に取り入れているアーティストとして、市川はトム・ウェイツを紹介する。
市川:ちょっと意外ですよね。トム・ウェイツがウォーターフォンを大好きで、かなり集めているそうなんです。トム・ウェイツといえば、詩人のように語ってブルースやロックを歌う方で、みなさんご存知だと思います。ただ、既存の楽器に満足せずに、どうやって音を出すのかわからない楽器や、楽器ではないけれど求めている音が出るものを使って、新鮮な気持ちで作品を作り続けているようです。
さらに、トム・ウェイツは木のイスを引きずる音を作品に使うこともあるという。
市川:少し本題から外れましたが、聞いたことのない音によって聴き手の想像力を刺激するという点では、ホラー作品における恐怖を感じる音と共通するものがありそうです。そんな創造性豊かなトム・ウェイツに敬意を表して、『Clap Hands』をお聴きください。この曲自体は恐怖を感じるような作品でないですが、彼の得たいの知れない魅力に酔いしれてください。
J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを「今」の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。
この内容をお届けしたのは、7月7日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
恐怖を生み出す音楽の仕掛けに注目
この夏は、国内外を問わず話題のホラー映画が相次いで公開される。『死霊のはらわた』シリーズの新作『Evil Dead Burn』が7月10日(金)に全米公開となったほか、父親を亡くした兄弟が不気味な儀式に巻き込まれていく『ブリング・ハー・バック』も7月10日(金)に日本で公開。さらに、アイスクリームトラックで子どもたちに菓子を配る「アイスクリームマン」が街を狂気へと陥れていく『Ice Cream Man』は8月にアメリカで公開予定。加えて、『バイオハザード』シリーズの新作も今秋の公開が予定されている。
日本でも、清水 崇監督による学園ホラー『だぁれかさんとアソぼ?』(7月24日公開)や、都市伝説とSNSを題材にした『口に関するアンケート』(7月3日公開)など、注目作が続々と登場する。
今回は、こうしたホラー映画で印象的に用いられる「音」や「音楽」に焦点を当て、「なぜホラーサウンドは人の肝を冷やすのか」をテーマに、涼しさや恐怖を感じさせる音の正体について掘り下げた。まず、番組ではアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『サイコ』(1960年公開)のサウンドトラックから、バーナード・ハーマンの『The Murder』をオンエアした。
Murder
人の声と不協和音が生みだす恐怖
続いて、肝が冷えるホラーサウンドとして紹介したのは、イタリア映画『サスペリア』(1977年公開)の劇中音楽。演奏を手がけたのはイタリアのプログレッシブロックバンド、ゴブリンだ。市川:『サスペリア』の日本公開時のキャッチコピーは「決してひとりでは見ないでください」で、これが大流行したそうです。後半は一気にテンポアップして、ロックサウンドへと変化していきます。興味のある方はぜひフルで聴いてみてください。グロッケンシュピール(鉄琴)のかわいらしい妖精のような音色に、太く少しかすれた男性の声。そのアンバランスさが怖いのかもしれません。メルヘンな雰囲気との対比にゾッとさせられるものがあります。やはり、人の声は恐怖を演出する大きな要素ですね。
次に紹介したのは、アリ・アスター監督作『ミッドサマー』(2019年公開 ※日本公開は2020年)のサウンドトラックから『Gassed』。劇中でも特に衝撃的な場面で使用される楽曲で、冒頭では狂気を感じさせる女性の声が響き、その後、不協和音を奏でるバイオリンが重なり合うことで、観る者の恐怖を一層かき立てていく。
Gassed
異質な音色が人の想像力を刺激する
ここで番組では、ホラー映画を代表する名曲として知られるマイク・オールドフィールドの『Tubular Bells』をオンエアした。Tubular Bells (Opening Theme / From "The Exorcist")
市川:なんだろう……穏やかで美しいのに、何かが解決しそうで解決しない感覚があります。同じメロディーが何度も繰り返され、普通のポップスのような「ここで終わり」という着地点がありません。終わりそうで終わらない。家の中を歩いていたはずなのに、また同じ廊下へ戻ってきてしまうような感覚というか。日常が少しずつ壊れていくような感覚が恐怖につながっているのでしょうか。ちなみに、この作品は第17回グラミー賞で最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞しています。
続いて、映画『ハロウィン』(1978年公開 ※日本公開は1979年)のテーマ曲を紹介。シンプルな旋律を繰り返しながら、じわじわと不安や緊張感を高めていくサウンドが印象的な作品だ。
市川:これまでに紹介した楽曲を振り返ると、恐怖をかき立てる音にはメロディーによるものもあれば、突然の大きな音、人の声、聴き慣れた音なのにどこか違和感があるものなど、さまざまな要素があります。一方で、あまり聞いたことのない音も、人の警戒心や恐怖心を刺激します。
番組では、「ウォーターフォン」という楽器の音をオンエアした。
市川:私は「ひー」となりましたが、みなさんいかがでしょうか。まさにホラー映画の効果音などによく使われている音です。おそらく、聴いたことがある方も多いと思います。ウォーターフォンは見た目も面白くて、キッチンのボウルを逆さまにしたような土台で、そこに水が入っていて、その土台にいろいろな長さのポールがついています。そのポールを弓でこすることで不思議な音が出るという楽器です。金属を弓でこすっている時点でゾワッとするような音が出るわけで、さらに土台に水が入っているから不思議な反響が起こるわけです。
ウォーターフォンをはじめ、「ミュージックソー」や「テルミン」、「トイピアノ」といった楽器、さらには錆びた農機具までも作品に取り入れているアーティストとして、市川はトム・ウェイツを紹介する。
市川:ちょっと意外ですよね。トム・ウェイツがウォーターフォンを大好きで、かなり集めているそうなんです。トム・ウェイツといえば、詩人のように語ってブルースやロックを歌う方で、みなさんご存知だと思います。ただ、既存の楽器に満足せずに、どうやって音を出すのかわからない楽器や、楽器ではないけれど求めている音が出るものを使って、新鮮な気持ちで作品を作り続けているようです。
さらに、トム・ウェイツは木のイスを引きずる音を作品に使うこともあるという。
市川:少し本題から外れましたが、聞いたことのない音によって聴き手の想像力を刺激するという点では、ホラー作品における恐怖を感じる音と共通するものがありそうです。そんな創造性豊かなトム・ウェイツに敬意を表して、『Clap Hands』をお聴きください。この曲自体は恐怖を感じるような作品でないですが、彼の得たいの知れない魅力に酔いしれてください。
Tom Waits - "Clap Hands"
番組情報
- MIDDAY LOUNGE
-
月・火・水・木曜13:30-16:30