「多国籍メンバーと会わずに30曲制作」も! チャレンジ続けるDJ TAROがラジオで生み出す“世界とつながる場”

DJ TAROが、10年ぶりにWEEKDAYの夜に帰ってきた。4月1日からスタートした『GARAGE COLLECTIVE』(月曜-木曜21:00-21:30)は、ラジオを「ガレージ」に見立て、新しい音楽や様々なカルチャーを発信し、世界とつながるプログラムだ。

DJ TAROはこれまで、ワンオペでのラジオ放送や、会ったことのない多国籍なメンバーとの楽曲制作など、あらゆるチャレンジを続けてきた。今回の番組は「場所を作る」ことを目指すという。その背景を聞いた。

日本の音楽が世界とつながるためには?

――平日の帯番組のナビゲーターを務めるのは、2010年10月-2016年3月に放送された『HELLO WORLD』以来、10年ぶりだそうですね。

DJ TARO: まさか平日の帯に戻って来るとは思わず、僕自身びっくりしています(笑)。振り返ってみれば『HELLO WORLD』では、当時前例のなかったSNSのフル活用やスタジオ内での配信など、かなりテックに振り切った生放送をしていました。そこで一通りやり切った後、今度は「自分と音楽だけでいい」という思いが強くなったんですよね。

――それで、オンエアにかかわるすべてのタスクを一人で完結させる“ワンオペ”形式の『SATURDAY NIGHT VIBES』が生まれたわけですね。

DJ TARO: そうなんです。実はラジオって、1920年代にアメリカで始まった頃は、一人のDJが曲をかけてリスナーに語りかけるワンオペスタイルだったんですよ。100年を迎えるにあたって、その原点に戻ってみようと。『SATURDAY NIGHT VIBES』の後継である『WEEKEND VIBES』でも、「ワンオペスタイル」で放送しています。

──今回の『GARAGE COLLECTIVE』では、どんなことを?

DJ TARO: 一言で言うと、「場所」を作りたいんです。ここ3年あまり海外アーティストとの楽曲制作に注力していまして、そのなかで感じたのは、日本の音楽が世界とつながるためには、海外の楽曲を積極的に受け入れて、新たな交流とエネルギーを生み出していく、つまり「音楽的なエクスチェンジ」を起こす必要があるということ。

それと同時に、音楽だけではなく、そこに紐づくカルチャーや価値観も含めて交わっていくことがすごく重要だと感じています多様な音楽やカルチャーが自然に混ざり合い、新しい何かが生まれていく——そんな“場”をラジオの中に作りたいと思って、この番組を企画しました。

あらゆるカルチャーは"ガレージ"から生まれた

──海外アーティストとの楽曲制作は、どういうきっかけで始まったんですか?

DJ TARO: たまたまポーランド人のアーティストとオンラインでつながって、音楽の話で意気投合したんですよ。そしたら向こうから「一緒に曲を作らないか」と。彼はポーランドで、僕は日本在住。会ったこともないし、海を隔ててどうやって作るんだろうと思ったんですけど、彼がチャットでキーボードでコード進行のバッキングトラックの音源やMIDI(演奏情報をやり取りするデータ規格)を送ってくれて、そこから楽曲制作がスタートしました。

そこに他の楽器の要素やドラムを僕が打ち込みをして……というセッションを繰り返しているうちに曲ができて、そこにオランダ人のボーカリスト、さらに別の国のラッパーが加わって、一度も会ったことのない多国籍メンバーで完成させたんです。この過程がとにかく面白くて、そこから30曲以上作りました。

――TAROさんとアーティストのつながりが「場所」になって作品が生まれていったと。まさに番組名の『GARAGE COLLECTIVE』とリンクするようなお話です。

DJ TARO: 「ガレージ」というと、車に由来していると思われるかもしれませんが、実はそれだけではないんです。海外では「ガレージ」から新しい文化が生まれることが多い。スティーブ・ジョブズのAppleも、ジェフ・ベゾスのAmazonもガレージから始まりました。音楽でも「ガレージロック」や「ハウス(ウェアハウス)」など、倉庫や車庫から生まれたカルチャーはたくさんあります。

僕はこの番組を音楽だけでなく、アートやテックなど多様なエネルギーが集まり、そこから新しい何かが生まれる場にしていきたいと考えているんです。ゲストに来て終わりではなく、そこからコラボレーションや海外への発信が始まるような、人が集まり熱を生み出していく場所=ガレージを作りたい。そんな思いが『GARAGE COLLECTIVE』という番組名に込められています。

ラジオ×企業が音楽業界をバックアップ!

――今回の番組は、TOYOTA GROUPとCEIPA(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)による共創プロジェクト「MUSIC WAY PROJECT」がサポートされているそうですね。

DJ TARO: 日本の音楽産業のグローバル化を後押しするプロジェクトで、若手アーティストのバックアップも含まれています。僕は近年トヨタさんの仕事をしているご縁もあって、プロジェクトの関係者の方と今後の展開についていろいろお話を伺う機会があったんです。その中で「ラジオはどうですか」と提案させていただいたところ、番組をサポートしていただけることになりました。

海外に向けてチャレンジしているアーティストや、これから一歩踏み出そうとしている人たちにフォーカスし、その可能性を広げるきっかけを作っていきたいと考えています。自分自身がこれまで培ってきた海外とのネットワークや音楽的な交流も活かしながら、リアルな動きにつなげていけたらと。

そのうえで、今の時代はサブスクがあれば誰でも楽曲をリリースできる一方で、いい音楽が埋もれてしまい、リスナーが本当に求める音楽に出会うのが難しくなっているとも感じています。だからこそラジオでは、楽曲だけでなく、そのアーティストの背景やストーリー、文脈も含めて届けていきたいですね。

さらに、アーティストだけでなく、レーベルやA&R、レコーディングエンジニアといった音楽を支える人たちにもスポットを当てて、音楽がどのように生まれているのか、そのプロセスや裏側まで伝えていきたいと考えています。たとえば、プロがミックスする前と後の音を聴き比べるような企画もおもしろいと思っています。

──プロの説明を聞くと、音楽の楽しみ方が深まりますよね。楽しみです。最後に、リスナーの方へのメッセージや新番組の展望などあればお願いします。

DJ TARO: 28年間、「自分に何ができるのか?」と自問自答しながら試行錯誤を重ねてオンエアに向き合ってきました。今回の番組では音楽+エンタテイメントとしての場がラジオから広がっていく機会を作っていきたいと思います。スポーツと音楽を掛け合わせるとか、ラジオの枠を超えた展開も企んでいます。僕も今年で54歳。なので、これぐらい大きな勝負をしないとおもしろくないですからね。

(取材・文=小島浩平、撮影=夛留見彩、編集=西田友紀)
番組情報
GARAGE COLLECTIVE
月-木曜
21:00-21:30

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